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22.祖母様とお出かけ

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 因果応報と言うべきでしょうか?

 慌ただしい日の翌日。

 私の素人料理ですがと、祖母と自分の朝食を準備した。 祖母は、礼儀作法を守る限り、口うるさいだけで害のない方なんです。

「水仕事は使用人の役割、アナタは公爵様と手を取り合うために美しい手でいるべきですのに……ですが、助かりました」

 祖母は、昔から口うるさく言いながらも、1人でいる私を気にかけてくれたんですよ。

「なんでもかんでも自分でして、人を拒絶していては、私以上に寂しい年よりになりってしまいますよ。 もっと社交性を磨きなさい。 人に愛想をすることの1つでも覚えなさい」

 延々とそう文句を言いながらの食事後には、自ら茶を淹れ秘蔵らしい菓子をだしてくれました。



「お婆様、今日は午後から街に出て宜しいでしょうか? 解毒剤を利用したとはいえソレは人数分で薄めた者と聞きました。 数日の間、マトモに仕事も出来ないようですし。 食事の調達をしてまいろうと思いますの」

 祖母は呆れたように息を吐き、言葉を紡ぐ。

「アナタは……、そのような事は使用人にさせておけば宜しいのです。 貧乏が身については、公爵様に申し訳が立たないと言うものです。 食事の心配よりも、アナタはドレスでも買ってきなさい。 私の名前を出せばよくしてくれる店が幾つかありますから」

「お気遣いありがとうございます。 それなら、祖母様もご一緒していただけないでしょうか?」

「私は、外出は身体に負担が大きくてね」

「それは、私がフォローさせて頂きますので、ご心配はいりません。 むしろ、仕立て屋に私1人向かわせることを心配してくださいませ」

「……本当に、オマエは昔から手間のかかる子ですね」

「申し訳ありません」



 決して、懐かしさだけで祖母を外に誘い出した訳ではありません。

 フリーダに対する疑問を祖母に尋ね、そして治療の許可を得るためです。 だからと言って外出直後に話をするのは無粋と言うもの。 祖母と共に仕立て屋に訪れ、ドレスを選らび、若い女性に人気の食事処とカフェを聞きだし、祖母とそれらを巡り、カフェでお茶をした、茶飲み話で本題を、というのが私の予定です。

 年相応に疲れやすい祖母の身体は、途中途中で、疲労回復のための術式を使い、カフェに行く頃には久々の散策を楽しみ、満足感を覚えられたようで、穏やかな祖母の心の音色と共にお茶の時間を迎えることとなりました。

 予定通りにするには、せっかくの気分を台無しにするようで、多少は躊躇いを覚えると言うものです。

「何か、話しがあって連れ出したのでしょう」

 祖母の方からそう問いかけてくださいました。

 流石に外で話をするような内容ではなく、カフェで手土産用の菓子を購入し、医師の元へと向かう事にしたのです。

 挨拶をすませた後は、医師の妻である女性が、私を迎え入れ私を褒め称えてくれました。 きっと魔術師というものに対する世間の噂と言うものを気にかけてくださっているのでしょう。

「塔から出て医師として夫の跡を継いで欲しいのですが、彼女は魔術師の印象改革に人生をそそぐと言って、なかなか頑固者なのですよ」

 そう医師の妻がふざけ交じりに言えば、祖母は

「そういう悪いところばかりが似るもの。 全く、そうやって自ら面倒ごとを引き受けずとも良いでしょうに……」

「確かに大奥様の言う通りですわ。 ここ子は不思議にも外に出ると厄介ごとを抱えてしまう。 いい加減塔にいるのが、彼女の幸せなのでは? そう思わされては勧誘も諦めるしかありませんでしたのよ」

 褒めているのか、貶しているのかそんな時間を少しばかり凄せば、厳しい顔が当たり前となっている祖母の目元皺が緩み語る。

「魔術師でありながら、自らの信念を見出し取り組んでいたのですね」

 そう尋ねられ、人見知りを発揮し会話から遠ざかっていた私は、一瞬反応は送れたものの、力強く返事をすることができました。

「はい、魔術師であることが私の誇りです」

「では、改めて聞きましょう。アナタが私に何を伝えようとしたかを……」

「フリーダ様の回復を促そうと思っています」

「アナタは決めたのですね」

「私にはフリーダ様が、自分から薬に堕ちたとは思えません。 万が一本人が薬に堕ちたとしても、中毒症状、あのような身体的な劣化は1.2日でなるようなものではないです。 そして、薬の性質上、人に気づかれる事無く薬を続ける事は難しいです」

「では、アナタにしたように使用人が、フリーダさんに対しても薬を盛ったとおっしゃるのですぁ?」

「可能性はあります」

 薬の内容から、あそこまで身体に影響があるなら、屋敷にいる間も性的行為の相手を必要としていたはず。 薬の痕跡等も部屋の清掃を行う者は理解出来たでしょう。 ……ようするに、そのような状態にある事を使用人は報告を行わなかった。 それどころか、使用人が薬を盛っていた可能性がある。

 流石に祖母を相手に性的行為とか、ソレの痕跡とは、言いにくく私は沈黙し、言葉を選びそして発言した。

「祖母様は、フリーダ様の異変にお気づきでしたか?」

「そうですね……、朝食だけは共にしましょうと言っていたのですが、それがなされなくなった時点で、あの子の部屋に向かおうとしたことがありました。 それをフリーダさんが質の悪い風邪を引いたため、私にうつしてはいけないとエミリーさんが間に入り引き留めてきたのです。 あの2人はそれなりに仲の良い姉妹でしたし彼女が言うならと……、それ以降は、エミリーさんと、使用人達によって、日々報告がなされていました」

「その期間を覚えていらっしゃいますか?」

「えぇ、アレは……フリーダさんと公爵様の婚約の話が上がった頃だったはずです」
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