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4章

46.つかの間のお別れ

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 シルヴァン侯爵家の会議室には、各地を巡っていた幹部達が集った。

 普段は必要以上に明るい幹部達だが、今日の彼等は無言なだけでなく顔色が悪い。

 その様子をコッソリと窓の外から覗き見るのは、私クリスティアとヴェル……そしてドナ。

「ドナはアッチではないの?」

「いえ、ドナは何時だってお嬢様と共にあります」

 最近、ドナに求婚を迫る者がいて少しばかり鬱陶しがっているのだ。

 そして、計画後半月が経った今もヴェルが私の元にいるのは、ホワイトノース公爵が嫌いだからと言う……なんとも救いようのない理由だった。 まぁ、監禁はいいとして腐った生肉を食事として出してくるのは最低だし、嫌われるのも当然よね。

 で、嫌がらせの一つもしなければ気が済まないと言うヴェルは、腐った肉の上に、私愛用のヴェルっぽい毛皮もーふをヴェルっぽい姿に切ったのちに腐敗しドロドロになった肉の上にかけてきたそうだ。

 ソレを聞いた日呆れたダニエルは呆れて頭を抱えていた。



『ガキか……』

『どうせアイツ等の事だ、良く調べもせずに慌ててくれるさ』

『それ以前に、私の毛皮の上に腐敗肉が延々と積み上げられ、毛皮置いておく意味がなくなったりしないかな?』

『大丈夫、匂いがアレのせいか、もう腐った肉も届けられていなかったから……」

 正直、ソレでいいのか?! 普通に死ぬでしょう!! とか、腐敗した肉を誰が片付けるのか? とか、まぁ色々と思ったけれど……深く考える事は止めた。



 そんな事を考えているうちに、会議が開始された。

 現在、国王陛下に娘を差し出せと言われた貴族達は混乱に陥り、営業に出向いた幹部達に(娘の変わりに差し出すための)美しい娘を調達して欲しいと頼んできたそうだ。



 私はボソボソとヴェルとドナに話しかける。

「うちへの食糧対価に連れて来た人達はどうしたんだろう?」

「王宮で美男美女を買い取ってハーレム用の使用人として教育を行っていると言う話です」

 答えてくれたのはドナで、そして突っ込みを入れるヴェル。

「ぼんくらかと思っていたが策略家なのか?」

「ただの好色でしょう」

 ドナは軽蔑の籠った声で会話をしめた。



 国王好みの女性を調達しろ!! そんな、貴族達の伝言を持ち帰ったのかと思っていたけれど……、実際には女性を寄越せと言う要求を拒むと同時に食料の売却も停止してきたらしい。

 支払われる対価も微妙になってきたし、まぁ、商売人としては当然の対応だと思う。 貴族達は慌てて自分達の言葉を撤回したらしいのだけど、即OKする訳ないよね。

 ここまでが報告された現状。

 そして、会議の結果、貴族達に借りを作って公爵家を紹介してもらうよりも、公爵家を困窮させる事で、コチラ優位で向こうから接触してくるよう促した方がいいんじゃないかな? と言う事で話はまとまった。

 交渉のためにどうご機嫌を取ろうか? と色々と思案していたけど……これならかなり優位な交渉をできるはず。



 ヴェルが特殊牢に入れられた頃から1月が経過。
 現国王就任3周年記念式典まで残り2か月となった。

 公爵家とは無事に同盟が組まれた。

 同盟と共に、王宮内の出来事への報告を願い出た。

 最初は嫌だ。
 庶民の分際で。

 そんな風に言われていたけど、ホワイトノース公爵家の野望を伝えれば、積極的に情報をもたらせてくれるようになったのだ。 

 そして……ホワイトノース公爵が使用人を殺すと言う乱心が続いているとの報告がもたらされた。

「そんな危ないところにいくの?」

「心配しないで、大丈夫だから。 僕が居なくなったせいで、都合の良い未来が見通せなくなって混乱しているだけだろうからね。 僕とすれば……ざまぁ見ろって感じだけど。 僕の重要性を理解して待遇が良くなるだろうから、問題ないよ」

「ヴェルが居ないと寂しいよ」

「僕だってティアと一緒に居られないのは寂しいよ。 でも、少しの間だから我慢して」

 静かに語るヴェルに私は抱き着きお日様の匂いを嗅ぐ。

「ヴェルが戻らなければ、ホワイトノース公爵家は終わるのだから、それで脅威は去りました!! ではダメなの?」

「ダメ。 だって……ティアの力は便利過ぎるから……。 何時か……誰かが、君の秘密を暴こうとするだろう。 そうなった時。 僕らは追い詰められる。 他国で新たに商売を行う事も出来るだろうけど、そこの人達が僕たちに害を及ぼさないとは言い切れない。 それに、今の状態……大勢の部下を持つと言う事は、それだけリスクを背負っていると言う事なんだ。 ティアは賢い子だからわかるよね? ほんの少し側から離れるだけだから。 好きだよティア。 僕の大切なお姫様。 いい子だから悲しまないで、すぐにあえるからさ」

 ずっと、ずっとグズグズ言ってとどめて、一緒に行きたいとか、毎日帰って来てとか言いたいけれど、それはヴェルの弱点を知られる事になるからダメだって言われた。

「わかった……」

「良い子だ。 ほんの少し会えないだけだ」

 身体を寄せ合い、顔を触れ合い、そして別れを惜しんだ。

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