49 / 54
4章
46.つかの間のお別れ
しおりを挟む
シルヴァン侯爵家の会議室には、各地を巡っていた幹部達が集った。
普段は必要以上に明るい幹部達だが、今日の彼等は無言なだけでなく顔色が悪い。
その様子をコッソリと窓の外から覗き見るのは、私クリスティアとヴェル……そしてドナ。
「ドナはアッチではないの?」
「いえ、ドナは何時だってお嬢様と共にあります」
最近、ドナに求婚を迫る者がいて少しばかり鬱陶しがっているのだ。
そして、計画後半月が経った今もヴェルが私の元にいるのは、ホワイトノース公爵が嫌いだからと言う……なんとも救いようのない理由だった。 まぁ、監禁はいいとして腐った生肉を食事として出してくるのは最低だし、嫌われるのも当然よね。
で、嫌がらせの一つもしなければ気が済まないと言うヴェルは、腐った肉の上に、私愛用のヴェルっぽい毛皮もーふをヴェルっぽい姿に切ったのちに腐敗しドロドロになった肉の上にかけてきたそうだ。
ソレを聞いた日呆れたダニエルは呆れて頭を抱えていた。
『ガキか……』
『どうせアイツ等の事だ、良く調べもせずに慌ててくれるさ』
『それ以前に、私の毛皮の上に腐敗肉が延々と積み上げられ、毛皮置いておく意味がなくなったりしないかな?』
『大丈夫、匂いがアレのせいか、もう腐った肉も届けられていなかったから……」
正直、ソレでいいのか?! 普通に死ぬでしょう!! とか、腐敗した肉を誰が片付けるのか? とか、まぁ色々と思ったけれど……深く考える事は止めた。
そんな事を考えているうちに、会議が開始された。
現在、国王陛下に娘を差し出せと言われた貴族達は混乱に陥り、営業に出向いた幹部達に(娘の変わりに差し出すための)美しい娘を調達して欲しいと頼んできたそうだ。
私はボソボソとヴェルとドナに話しかける。
「うちへの食糧対価に連れて来た人達はどうしたんだろう?」
「王宮で美男美女を買い取ってハーレム用の使用人として教育を行っていると言う話です」
答えてくれたのはドナで、そして突っ込みを入れるヴェル。
「ぼんくらかと思っていたが策略家なのか?」
「ただの好色でしょう」
ドナは軽蔑の籠った声で会話をしめた。
国王好みの女性を調達しろ!! そんな、貴族達の伝言を持ち帰ったのかと思っていたけれど……、実際には女性を寄越せと言う要求を拒むと同時に食料の売却も停止してきたらしい。
支払われる対価も微妙になってきたし、まぁ、商売人としては当然の対応だと思う。 貴族達は慌てて自分達の言葉を撤回したらしいのだけど、即OKする訳ないよね。
ここまでが報告された現状。
そして、会議の結果、貴族達に借りを作って公爵家を紹介してもらうよりも、公爵家を困窮させる事で、コチラ優位で向こうから接触してくるよう促した方がいいんじゃないかな? と言う事で話はまとまった。
交渉のためにどうご機嫌を取ろうか? と色々と思案していたけど……これならかなり優位な交渉をできるはず。
ヴェルが特殊牢に入れられた頃から1月が経過。
現国王就任3周年記念式典まで残り2か月となった。
公爵家とは無事に同盟が組まれた。
同盟と共に、王宮内の出来事への報告を願い出た。
最初は嫌だ。
庶民の分際で。
そんな風に言われていたけど、ホワイトノース公爵家の野望を伝えれば、積極的に情報をもたらせてくれるようになったのだ。
そして……ホワイトノース公爵が使用人を殺すと言う乱心が続いているとの報告がもたらされた。
「そんな危ないところにいくの?」
「心配しないで、大丈夫だから。 僕が居なくなったせいで、都合の良い未来が見通せなくなって混乱しているだけだろうからね。 僕とすれば……ざまぁ見ろって感じだけど。 僕の重要性を理解して待遇が良くなるだろうから、問題ないよ」
「ヴェルが居ないと寂しいよ」
「僕だってティアと一緒に居られないのは寂しいよ。 でも、少しの間だから我慢して」
静かに語るヴェルに私は抱き着きお日様の匂いを嗅ぐ。
「ヴェルが戻らなければ、ホワイトノース公爵家は終わるのだから、それで脅威は去りました!! ではダメなの?」
「ダメ。 だって……ティアの力は便利過ぎるから……。 何時か……誰かが、君の秘密を暴こうとするだろう。 そうなった時。 僕らは追い詰められる。 他国で新たに商売を行う事も出来るだろうけど、そこの人達が僕たちに害を及ぼさないとは言い切れない。 それに、今の状態……大勢の部下を持つと言う事は、それだけリスクを背負っていると言う事なんだ。 ティアは賢い子だからわかるよね? ほんの少し側から離れるだけだから。 好きだよティア。 僕の大切なお姫様。 いい子だから悲しまないで、すぐにあえるからさ」
ずっと、ずっとグズグズ言ってとどめて、一緒に行きたいとか、毎日帰って来てとか言いたいけれど、それはヴェルの弱点を知られる事になるからダメだって言われた。
「わかった……」
「良い子だ。 ほんの少し会えないだけだ」
身体を寄せ合い、顔を触れ合い、そして別れを惜しんだ。
普段は必要以上に明るい幹部達だが、今日の彼等は無言なだけでなく顔色が悪い。
その様子をコッソリと窓の外から覗き見るのは、私クリスティアとヴェル……そしてドナ。
「ドナはアッチではないの?」
「いえ、ドナは何時だってお嬢様と共にあります」
最近、ドナに求婚を迫る者がいて少しばかり鬱陶しがっているのだ。
そして、計画後半月が経った今もヴェルが私の元にいるのは、ホワイトノース公爵が嫌いだからと言う……なんとも救いようのない理由だった。 まぁ、監禁はいいとして腐った生肉を食事として出してくるのは最低だし、嫌われるのも当然よね。
で、嫌がらせの一つもしなければ気が済まないと言うヴェルは、腐った肉の上に、私愛用のヴェルっぽい毛皮もーふをヴェルっぽい姿に切ったのちに腐敗しドロドロになった肉の上にかけてきたそうだ。
ソレを聞いた日呆れたダニエルは呆れて頭を抱えていた。
『ガキか……』
『どうせアイツ等の事だ、良く調べもせずに慌ててくれるさ』
『それ以前に、私の毛皮の上に腐敗肉が延々と積み上げられ、毛皮置いておく意味がなくなったりしないかな?』
『大丈夫、匂いがアレのせいか、もう腐った肉も届けられていなかったから……」
正直、ソレでいいのか?! 普通に死ぬでしょう!! とか、腐敗した肉を誰が片付けるのか? とか、まぁ色々と思ったけれど……深く考える事は止めた。
そんな事を考えているうちに、会議が開始された。
現在、国王陛下に娘を差し出せと言われた貴族達は混乱に陥り、営業に出向いた幹部達に(娘の変わりに差し出すための)美しい娘を調達して欲しいと頼んできたそうだ。
私はボソボソとヴェルとドナに話しかける。
「うちへの食糧対価に連れて来た人達はどうしたんだろう?」
「王宮で美男美女を買い取ってハーレム用の使用人として教育を行っていると言う話です」
答えてくれたのはドナで、そして突っ込みを入れるヴェル。
「ぼんくらかと思っていたが策略家なのか?」
「ただの好色でしょう」
ドナは軽蔑の籠った声で会話をしめた。
国王好みの女性を調達しろ!! そんな、貴族達の伝言を持ち帰ったのかと思っていたけれど……、実際には女性を寄越せと言う要求を拒むと同時に食料の売却も停止してきたらしい。
支払われる対価も微妙になってきたし、まぁ、商売人としては当然の対応だと思う。 貴族達は慌てて自分達の言葉を撤回したらしいのだけど、即OKする訳ないよね。
ここまでが報告された現状。
そして、会議の結果、貴族達に借りを作って公爵家を紹介してもらうよりも、公爵家を困窮させる事で、コチラ優位で向こうから接触してくるよう促した方がいいんじゃないかな? と言う事で話はまとまった。
交渉のためにどうご機嫌を取ろうか? と色々と思案していたけど……これならかなり優位な交渉をできるはず。
ヴェルが特殊牢に入れられた頃から1月が経過。
現国王就任3周年記念式典まで残り2か月となった。
公爵家とは無事に同盟が組まれた。
同盟と共に、王宮内の出来事への報告を願い出た。
最初は嫌だ。
庶民の分際で。
そんな風に言われていたけど、ホワイトノース公爵家の野望を伝えれば、積極的に情報をもたらせてくれるようになったのだ。
そして……ホワイトノース公爵が使用人を殺すと言う乱心が続いているとの報告がもたらされた。
「そんな危ないところにいくの?」
「心配しないで、大丈夫だから。 僕が居なくなったせいで、都合の良い未来が見通せなくなって混乱しているだけだろうからね。 僕とすれば……ざまぁ見ろって感じだけど。 僕の重要性を理解して待遇が良くなるだろうから、問題ないよ」
「ヴェルが居ないと寂しいよ」
「僕だってティアと一緒に居られないのは寂しいよ。 でも、少しの間だから我慢して」
静かに語るヴェルに私は抱き着きお日様の匂いを嗅ぐ。
「ヴェルが戻らなければ、ホワイトノース公爵家は終わるのだから、それで脅威は去りました!! ではダメなの?」
「ダメ。 だって……ティアの力は便利過ぎるから……。 何時か……誰かが、君の秘密を暴こうとするだろう。 そうなった時。 僕らは追い詰められる。 他国で新たに商売を行う事も出来るだろうけど、そこの人達が僕たちに害を及ぼさないとは言い切れない。 それに、今の状態……大勢の部下を持つと言う事は、それだけリスクを背負っていると言う事なんだ。 ティアは賢い子だからわかるよね? ほんの少し側から離れるだけだから。 好きだよティア。 僕の大切なお姫様。 いい子だから悲しまないで、すぐにあえるからさ」
ずっと、ずっとグズグズ言ってとどめて、一緒に行きたいとか、毎日帰って来てとか言いたいけれど、それはヴェルの弱点を知られる事になるからダメだって言われた。
「わかった……」
「良い子だ。 ほんの少し会えないだけだ」
身体を寄せ合い、顔を触れ合い、そして別れを惜しんだ。
14
お気に入りに追加
732
あなたにおすすめの小説
【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様
岡崎 剛柔
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです
【あらすじ】
カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。
聖女の名前はアメリア・フィンドラル。
国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。
「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」
そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。
婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。
ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。
そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。
これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。
やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。
〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。
一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。
普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。
だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。
カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。
些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。
嘘つきと呼ばれた精霊使いの私
ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。
リリーの幸せ
トモ
恋愛
リリーは小さい頃から、両親に可愛がられず、姉の影のように暮らしていた。近所に住んでいた、ダンだけが自分を大切にしてくれる存在だった。
リリーが7歳の時、ダンは引越してしまう。
大泣きしたリリーに、ダンは大人になったら迎えに来るよ。そう言って別れた。
それから10年が経ち、リリーは相変わらず姉の引き立て役のような存在のまま。
戻ってきたダンは…
リリーは幸せになれるのか
婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ
水無瀬
ファンタジー
竜が好きで、三度のご飯より竜研究に没頭していた侯爵令嬢の私は、婚約者の王太子から婚約破棄を突きつけられる。
それだけでなく、この国をずっと守護してきた黒竜様を捨てると言うの。
黒竜様のことをずっと研究してきた私も、見せしめとして処刑されてしまうらしいです。
叶うなら、死ぬ前に一度でいいから黒竜様に会ってみたかったな。
ですが、私は知らなかった。
黒竜様はずっと私のそばで、私を見守ってくれていたのだ。
残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ?
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。
公爵様、地味で気弱な私ですが愛してくれますか?
みるくコーヒー
恋愛
ティミリアはどこにでもいるような地味な容姿で、それでいて気の弱い令嬢だった。
そんな彼女は20歳と行き遅れ寸前で容姿端麗、頭脳明晰と巷で人気のアクレセン・ロベルタ公爵から結婚を申し込まれる。
平凡な女性が見初められる物語を期待した彼女だが、現実は異なり彼にとって伴侶は誰でも良かった。
彼女は冷淡な公爵に愛される日など来ないと悲観しながらも、少しでも夫婦らしい生活を送れるように彼女なりに奮闘する。
相反してアレクセンは、ただただ人に興味がなく、それでいて死ぬほど不器用な男であった。
ティミリアとアレクセンはお互い様々な勘違いをしながらもすれ違って行く。
ティミリアは公爵様からの愛を得られるのか、夫婦仲は縮まるのか。
そんなお話です。
※よろしければ感想等頂けると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる