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3章

39.悪い食事、良い食事

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 ショックな顔をされた事にショックを受けた。

「なんで、そんな酷い事を言うの? 私は……ずっと、カイン様を好きだった、理解しようとしたのに!!」

「妹を侮辱する気か? どうやって封じを解いたかは分からないが、また封じる事だってできるんだぞ……」

「お兄様、そんな酷い事は止めて!! 彼は、まだ、理解していないのよ……そのうち、王になれた事を感謝するわ」

「だが、オマエを傷つけた事は許せない……。 もっと物分かりが良い物だと思っていたんだが……反省をしてもらう必要があるようだ」

 好きだと言う言葉にときめいたのは最初だけ、価値観の違いにショックを受けたのは僕の方だ!!

 野山を駆けていた話を聞きたいと言われ語れば、

『綺麗な鳥が……』
『カイン様のために捕らえるように伝えましょう。 突然の王宮住まいはカイン様にとっては退屈でございましょう。 その鳥の名前はどういう名前かご存じですか?』

『月の明かりを受け花開く月華草はキラキラと綺麗なんだ』
『カイン様は月華草がお好きなのですね。 私はもっと華やかな花が好きです』
『月の光を浴びた物の根は高額で取引されている』
『お花に興味があるなら、植物園を案内いたしますわ。 王宮内には近隣国1の庭園がありますのよ。 カイン様は出入りを禁止されていてご存じなかったでしょうけど。 それは、もう素晴らしいものですの。 王宮の主として知っておく必要がありますわ』

『山のリンゴは酸味が強いが、酒と砂糖で煮るとうまいんだ』
『リンゴがお好きなら、今日はリンゴのオヤツを準備するように伝えておきますね』

 カインヴェルの事を知りたいと言うエリナとの会話は、ずっとこんな感じだ。 カインヴェルのためにと考えているのだろうが、カインヴェルにとっては何時だって何かがずれているように感じた。

 そう言う感覚の違いが、愛せないのだと言っても……理解されないだろう事は、目の前の2人を見て良く分かった。

 黙り込むカインヴェルを前にエリナが言う。

「兄様が酷い事を言うから、カイン様が落ち込んでしまったわ」

「だからと言って、オマエを傷つけるような発言は許せる訳がない。 オマエはシバラクカイン様に近づくな。 王宮内での立場が上がったと考えているようだが、側にるエリナに対する敬意が向けられているだけと言う事を理解しておけ。 そうだな……封印牢にシバラク閉じ込めていれば反省するだろう」

 カインヴェルは、王族のためのお仕置き部屋に閉じ込められた。



 エリック・ホワイトノースには丁度良い状況だった。

 このまま、気温が下がって行けば、現国王が何もしていないにもかかわらず現体制への不満が弱まっていく。 現体制への不満が薄れ長期政府になると分かれば、今まで様子をうかがっていた領主達も停滞した行政を動かそうとしてくるだろう。

 そんな思いが隠されていた。

「僕が大人しく拘束されると思っているのか?」

「そうですねぇ……では、こういうのはどうでしょうか? アナタの愛情を獲得できなかった妹にお仕置きを与えると言うのは……」

「妹じゃないのか?」

「えぇ、妹です。 だからこそ信じているのですよ。 愛情は無くても情ぐらいは築いているはずと」

「ごめんなさいカイン様……」

 潤んだ瞳を向けられれば、カインヴェルは溜息をついた。

「好きにしろ」

「人の姿に戻りなさい。 でなければ、獣として扱いますよ」

「どうぞ、お好きなように。 それで、何処に向かえばいいんだ?」

 部屋は食事の出し入れが出来る小さな扉を除いて、空気穴があるのみの密室。 それでも王族が使うのだからと設備はしっかりしており、書籍等で時間を潰す事も出来た。 食べ物に対する不満さえ口にしなければ、野良犬のように暮らしていた頃と比べれば随分と良い扱いだと言えただろう。

「流石にコレでは、身体を壊す」

 腐りかけた生肉に不満を述べれば、素っ気なく返される。

「公爵に謝罪し態度を改めると約束するならと告げるようにと言われております」

「分かった……なら、助けて要らない……」

 腐りかけの肉を食べなければ、ますます腐るだけ。

「嫌がらせのために、わざわざ腐らせるのだから大層な事だ……」

 ソレを最後にカインヴェルは口をつぐんだ。





 クリスティアは、各領主が食料の対価を人で支払おうとすることにうんざりしていた。

 美男美女を前にクリスティアは肩をすくめて見せた。

「顔の良い人なんて、子供の頃からチヤホヤされてきっと使えないわ!!」

 対価として商会に連れてこられた美男美女は愛想良くしていたが、クリスティアに感情を叩きつけられ顔を綺麗な顔を歪めた。

「そう言うものを本人の前で言えばチビが嫌な奴になるんだから止めた方がいい。 それにチビだって十分カワイイらしいが有能だろう?」

「褒めたってなにも出さないわよ。 とりあえず、この支払は無しで」

「遠方からはるばる運んできたのに!! それに見栄えを良くするために、どれほどの対価を払っているか!!」

「あら、それなら王宮で美男美女を集めていると言う話を聞いたわ」

 ダニエルがホワイトノース公爵家から戻ってきた後に聞いた話。 そして最近王のためにハーレムを作ろうと言う計画があると言う話が合ったのを思い出しクリスティアはイラっとして明らかに不機嫌になった。

「うちは道楽で美男美女を買う余裕なんてないもの。 連れて来るならもっと使える人間を寄越しなさい。 まぁ、使える人間ってのは、何処でも使えるから渡したく等ないでしょうけどね」

 何ソレ!! エロワンコ!!

 明らかに不機嫌になるクリスティアをダニエルは捕獲し、妹のドナに渡した。

「腹が減ってイライラしたらしい。 じゃぁ、うちのチビっ子が言った通り、うちでは人を買わない。 帰ってくれ」

 社長室と隣接する部屋は、クリスティアが出入りするようになって改装された。 石造りの床に直接座る。 壁は分厚く、熱を出入りが少なく、音は外に漏れない部屋に置かれた冷風具。

「別にお腹がすいて不機嫌になった訳じゃないわ! 人身売買が気に入らなかっただけよ」

「よ~しよし、うちは人を取引しないから大丈夫だ。 安心しろ。 ど~な、早く何か食い物」

「いい、今日は、私が準備する!!」

「うわぁああああ待て待て! オマエ等は30分ほどでていって、飲み物を準備してこい!!」

 部下を部屋から放り出し、はぁはぁ息をしながら扉の前に立ちふさがり、どうぞと手を出し示した。

「ふんっ!!」

 一気に席に並ぶのは、揚げ野菜とお肉各種、そしてご飯の入った鍋とカレーの入った鍋に、平皿。

「準備万端になったところで、ほら、こっちにこい」

 胡坐をかいた膝の上をとんとんと叩き、膝の上に座れと指示する。

「随分と機嫌が悪いみたいだがどうした?」

「町に掲げられた告知文を見たの。 ハーレムのために美男美女を募集しているってね。 ヴェルが王宮に行った途端よ!!」

「アイツが欲情しているの見た事無いが?」

「見てたら怖いって!!」

「何を想像している何を……そんな事より、仕事の話をしようか?」

「食事が優先じゃない?」

 そう言いながらクリスティアは、フルーツ盛り合わせを作り上げた。
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