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1章

06.観光馬車で王宮入り。 静止されないってオカシイよね?

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 馬鹿馬鹿しい……。

 私は古いベッドに身体を投げ出した。
 古い部屋の床は、小さな私が歩くだけでもギシギシと音を立てるような部屋だけど、見た目と違いマッドレスは心地よい物に改造した。 コロンと転がり、天井間際の壁の穴から零れる日の光を眺める。

 地下は快適だけど、日の光が入らないと言う欠点があって、私は久々の日の光に直ぐにウトウトしてしまった。

 ウトウトする中、能天気にハシャグ両親の顔が脳裏をよぎってイラっとした。

いえ……父の長話に疲れたからと言う方が正しいのかな?

 両親の地に足のつかない思考に……。
 毎回振り回され言われるままになる私に……。
 何故か泣きたい気分になっていた。

 それでも感情のままに泣いてしまえば、両親は怒り出す事は……過去の経験から分かっているから、私は夢の中に落ちていく。

 父も、母も……嫌いだ。

 両親には、アダ―商会に出荷していた美容用品以外に作り出す力がある事は秘密にしている。 親相手に秘密に出来るのか? そう思うかもしれない。

 だけど『夢渡り』によって年不相応な言動をする私を両親は気持ち悪がっていたから……。プライドの高い両親は、私に便利で使える力がある事を受け入れたくないと思っているから……。 だから……両親は私の力を確認していない。 交流を持とうなどと欠片もしない。

 先祖の遺産は大事だけど……。
 私も他の兄弟のように祖父母の元に行きたくなる……。
 自分で選んだ事なのに。

 親が馬鹿って辛いなぁ~~。



 建国祭の日、両親は随分と古びた衣装を着ていた。 シルヴァン侯爵家が栄華を極めていた時代の年代物だけど、超一流の品だ。 型は古いけれど、布地もよく、レースも細かな刺繍、縫い付けた小さな宝石、骨董と呼ばれるだろう衣装だった。

 これは一周回って、認められるだろう物を選んできていた事に、少し驚いた。 そして、私には流行りの子供用のワンピースを準備し、髪を整えてくれた……。

 お母様……。

 私を着飾る母にほだされる気には慣れなかった。 幼女好きな王族に私を譲った対価として商売の後ろ盾を得ようとしているのだから……。

 夢渡りを使っていなかったら……もっと幸せを感じる事ができたのでしょうか? 無ければ生き抜く事すら難しかっただろうけど、考えずにはいられない。

「それで、王族の方々への土産は準備したのか?」

 心配なら事前確認ぐらいすればいいのに、直前までこの夫婦は私を無視していた。

 計画性が無い……。
 呆れる。

「隣の部屋に……」

 バスグッズのギフトセット、ボディソープ、シャンプー、コンディショナー、花形の石鹸、香りは数種類準備してある。 ポイントはソレだけで価値のある美しいガラスの入れ物。 王族の人ともなれば自分で身体を洗わないかもしれない。 だけど、香りとガラス瓶の美しさには価値を見出すはず。

 1セットを可愛らしい籠に入れ枯れない花で飾りつけ、ソレを箱に入れてある。 そして大きな箱で100セット準備した。 何しろ数百年前や異世界の知識は夢渡りで得る事が出来るけれど、今の情報を得る手段がないから、貴族様がどれぐらいいるか想像つかないのですよね?

「なんて、素敵。 どうして、これを最初から出さないのよ!! コレがあればアダ―商会や、貴族の小娘からあのような扱いを受ける事等無かったでしょうに!!」

 素敵と言いつつ母は怒り出す。

「止めるんだ……出し惜しんだからこそ、王族との関係構築に仕えると言うものだ」

 両親は勝ち誇った顔をしていた。



 荷馬車しかない我が家は、王都観光用の貸し切り馬車を借り、父が御者を務め王宮へと向かった。

 古いし大きいし……色々不便だけど、ホロがついただけのうちの荷馬車よりは良いでしょう。 いかにも観光に参ります的な馬車で王宮に訪れるのは不向きなハズだった。 追い出されるだろうぐらいに思っていた。 だけど、警備の者に止められるだろうと思っていたのにすんなりと通れた。

 アレ??

 夜会には社交界デビューを終えた15歳以上の子でないと参加できない。 礼儀の無い子供を招く事で過去に大きな騒ぎとなった事があると言う事で、かなり厳しく取り締まられているはずなのに?

 だから窓にカーテンをつける程度で誤魔化せるなんて思わなかった。

 マジで変態な王族を……。
 勘弁して欲しい!!
 叫びたくなるのを必死に我慢し、これからどう誤魔化すかばかりを考える。

 馬車列をカーテンの隙間から見れば、私達が乗っているような大きな荷馬車めいた馬車も多く並んでいた。

 なんだろう?

 そう思うけど……浮かれた母に声をかけるのは気が引け、それに社交界に初めて招かれる……両親が理由を知る訳がないと思っていた。 凄く凄く数が多くて、中にはうちの馬車よりも酷く古いものがあって、気になって仕方が無かったけど、来てはいけない場所に来ている私には問いかけ疑問の答えを求める相手もいない……。

 両親には聞いても無駄ですし?
 何故?
 建国祭ってこんな感じなの?

 脳裏に巡る疑問。

「何を不機嫌そうな顔をしているのよ。 そんな事で王族の方の興味を引けると思っているの? この日のため、アナタにだけは新しいドレスを容易したと言うのに。 私だって!!」

 ガタンッと馬車が止まり、王宮の入り口である門をくぐった。
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