58 / 75
06
57.欠如した常識 02
しおりを挟む
ホリーに追い詰められ。
私よりも1つだけだけど若いホリーの色香に戸惑った。
「えぇえっ? っと」
だが、次の瞬間にホリーの雰囲気が変わる。
ふんすっと突然に怒り出し、叫ぶように語る。
呆気に取られれば、私は混乱から解放された。
「幼い頃から、変わらぬ関係と言うのが、未だ、幼少期と変わらぬように見られているって事じゃないんですか!!」
「ど、どうなんだろう?」
ランバールの方へと視線を向け、助けを求めれば困った様子で上に乗っかったままのソファを抱きかかえ苦笑していた。 その視線の流れで、犬を見れば、背中を向けてしまっている。
「えっと、聞きたいんだけど良いかしら?」
「なんでしょうお嬢様? それより、今日はどのお召し物になさいます?」
私は指さし、服を選びながら質問を続けた。
「例えば……私の裸を見て、世話をしている様子が異性として意識していないって言うなら、視線を背けるのはどうなのかしら? 見る価値もないとか、興味がないって事かしら?」
そう聞いた瞬間、
尻尾に電気が落ちたかのように、ビリビリしだす犬。
「いえ、むしろ女性として意識しているって事じゃないですか!! お嬢様は、幼い頃からランバール様との将来が決まっているからって、ものを知らなさ過ぎですよ」
なぜか、シグルド様との関係が途切れ、神によって記憶が曖昧とされた頃、私とランバールとの婚約が決まっていた。 何時からと言えば、私も記憶がない。
「あと……浴室で叫ばないでください。 皆、驚きますし、心配します。 今、部屋がこんなになっているのも、お嬢様が心配をさせたからですよ」
「なんだか、ごめんなさい」
そう言えば、年配の侍女が溜息をつきホリーに対して、過剰なほどの勢いで叱りだした。
「ホリー!! いい加減になさい。 お嬢様を困らせるものではありませんよ!! お嬢様に問題があるなら、私共がフォローすればいいんです!!」
問題あるなんて言わないで……。
「ですが!! いつも私共が御側に控えている訳にはいきません!! 万が一、お嬢様が他所の御屋敷でお泊りになり、男性がいる部屋で何時ものように裸になれば、男性を誘っていると誤解を与え大変な事になるのですよ!!」
ここまで侍女が言ったところで、ランバールが声を荒げた。
「無邪気で、天真爛漫なところは、お嬢様の魅力です。 そのお嬢様らしさに因縁をつけるなど、許される事でしょうか? ……ソレはお嬢様に対する否定、敵意と同義ですよ!! どのような教育をしているのですか!!」
ランバールが年配の侍女に向け、厳しい口調で告げれば。
強い口調、厳しく冷ややかな視線に、ホリーは凍ったように動かなくなった。
そして、年配の侍女がホリーの腕をとる。
「ほら、ホリー来なさい……貴方には侍女としての教育が足りないようです」
「まって、ホリーには私の世話をしてもらっている最中です。 貴方達こそ部屋から出て頂戴!!」
私は、混乱のまま、声を荒げていた。
「お、お嬢様……」
ホリーは涙ぐむ。
そしてランバールは私の言葉に困惑を見せていた。
それでも私は頑張った。
「出て行って!!」
私の言葉にホリーはホッ吐息をついていて、私は笑みを向けてホリーに命じる。
「着替え、手伝って下さい」
「は、はい」
「貴方達は、食事の準備をお願いします」
私はランバールと年配の侍女を部屋から追い出した。 そして、一緒に出ていこうとする犬の尻尾を捕まえた。
ふりかえらずに犬は啼いた。
きゅ~~ん。
襟が大きく、ふわりと広がる袖のついた白のブラウス、そして裾をレースで飾ったペチコート。 上から赤いエプロンドレスを着て、アクセントのリボンは黒を選ぶ。 一般的な貴族の普段着からすれば、動きやすいのが特徴だろう。
最後に、犬がくれた赤い薔薇を髪に飾りつけて終了。
「お嬢様、とてもお似合いですよ~」
「ありがとう。 食事の準備ソロソロできているかしら?」
「直ぐに伺ってきます。 少々お待ち下さい。 ぁ、そうだ……お嬢様、ワンちゃんには名前は無いんですか?」
「……えっと……そうね……どうしましょう。 ねぇどうかしら? ……もう、着替えましたわ? 見てくださらないの?」
犬の背に向かって言えば、
犬は、少しだけ振り向いて、覗くような視線を私に向けてくる。
「えっと、可愛くできているかしら?」
わんっ!!
尻尾が振られ、周囲を回りだす。
ソレを視線で追っていた。
しばらくはワンちゃんで良いかしら?
私には、犬の存在よりも……優先すべき事態がありますし……。
森を抜け、豪華な貴族の馬車が向かってくるのが見える。
来客等あるはずもないと言うのに……。
私よりも1つだけだけど若いホリーの色香に戸惑った。
「えぇえっ? っと」
だが、次の瞬間にホリーの雰囲気が変わる。
ふんすっと突然に怒り出し、叫ぶように語る。
呆気に取られれば、私は混乱から解放された。
「幼い頃から、変わらぬ関係と言うのが、未だ、幼少期と変わらぬように見られているって事じゃないんですか!!」
「ど、どうなんだろう?」
ランバールの方へと視線を向け、助けを求めれば困った様子で上に乗っかったままのソファを抱きかかえ苦笑していた。 その視線の流れで、犬を見れば、背中を向けてしまっている。
「えっと、聞きたいんだけど良いかしら?」
「なんでしょうお嬢様? それより、今日はどのお召し物になさいます?」
私は指さし、服を選びながら質問を続けた。
「例えば……私の裸を見て、世話をしている様子が異性として意識していないって言うなら、視線を背けるのはどうなのかしら? 見る価値もないとか、興味がないって事かしら?」
そう聞いた瞬間、
尻尾に電気が落ちたかのように、ビリビリしだす犬。
「いえ、むしろ女性として意識しているって事じゃないですか!! お嬢様は、幼い頃からランバール様との将来が決まっているからって、ものを知らなさ過ぎですよ」
なぜか、シグルド様との関係が途切れ、神によって記憶が曖昧とされた頃、私とランバールとの婚約が決まっていた。 何時からと言えば、私も記憶がない。
「あと……浴室で叫ばないでください。 皆、驚きますし、心配します。 今、部屋がこんなになっているのも、お嬢様が心配をさせたからですよ」
「なんだか、ごめんなさい」
そう言えば、年配の侍女が溜息をつきホリーに対して、過剰なほどの勢いで叱りだした。
「ホリー!! いい加減になさい。 お嬢様を困らせるものではありませんよ!! お嬢様に問題があるなら、私共がフォローすればいいんです!!」
問題あるなんて言わないで……。
「ですが!! いつも私共が御側に控えている訳にはいきません!! 万が一、お嬢様が他所の御屋敷でお泊りになり、男性がいる部屋で何時ものように裸になれば、男性を誘っていると誤解を与え大変な事になるのですよ!!」
ここまで侍女が言ったところで、ランバールが声を荒げた。
「無邪気で、天真爛漫なところは、お嬢様の魅力です。 そのお嬢様らしさに因縁をつけるなど、許される事でしょうか? ……ソレはお嬢様に対する否定、敵意と同義ですよ!! どのような教育をしているのですか!!」
ランバールが年配の侍女に向け、厳しい口調で告げれば。
強い口調、厳しく冷ややかな視線に、ホリーは凍ったように動かなくなった。
そして、年配の侍女がホリーの腕をとる。
「ほら、ホリー来なさい……貴方には侍女としての教育が足りないようです」
「まって、ホリーには私の世話をしてもらっている最中です。 貴方達こそ部屋から出て頂戴!!」
私は、混乱のまま、声を荒げていた。
「お、お嬢様……」
ホリーは涙ぐむ。
そしてランバールは私の言葉に困惑を見せていた。
それでも私は頑張った。
「出て行って!!」
私の言葉にホリーはホッ吐息をついていて、私は笑みを向けてホリーに命じる。
「着替え、手伝って下さい」
「は、はい」
「貴方達は、食事の準備をお願いします」
私はランバールと年配の侍女を部屋から追い出した。 そして、一緒に出ていこうとする犬の尻尾を捕まえた。
ふりかえらずに犬は啼いた。
きゅ~~ん。
襟が大きく、ふわりと広がる袖のついた白のブラウス、そして裾をレースで飾ったペチコート。 上から赤いエプロンドレスを着て、アクセントのリボンは黒を選ぶ。 一般的な貴族の普段着からすれば、動きやすいのが特徴だろう。
最後に、犬がくれた赤い薔薇を髪に飾りつけて終了。
「お嬢様、とてもお似合いですよ~」
「ありがとう。 食事の準備ソロソロできているかしら?」
「直ぐに伺ってきます。 少々お待ち下さい。 ぁ、そうだ……お嬢様、ワンちゃんには名前は無いんですか?」
「……えっと……そうね……どうしましょう。 ねぇどうかしら? ……もう、着替えましたわ? 見てくださらないの?」
犬の背に向かって言えば、
犬は、少しだけ振り向いて、覗くような視線を私に向けてくる。
「えっと、可愛くできているかしら?」
わんっ!!
尻尾が振られ、周囲を回りだす。
ソレを視線で追っていた。
しばらくはワンちゃんで良いかしら?
私には、犬の存在よりも……優先すべき事態がありますし……。
森を抜け、豪華な貴族の馬車が向かってくるのが見える。
来客等あるはずもないと言うのに……。
0
お気に入りに追加
457
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる