【R18】利用される日々は終わりにします【完結】

迷い人

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57.欠如した常識 02

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 ホリーに追い詰められ。
 私よりも1つだけだけど若いホリーの色香に戸惑った。

「えぇえっ? っと」

 だが、次の瞬間にホリーの雰囲気が変わる。

 ふんすっと突然に怒り出し、叫ぶように語る。
 呆気に取られれば、私は混乱から解放された。

「幼い頃から、変わらぬ関係と言うのが、未だ、幼少期と変わらぬように見られているって事じゃないんですか!!」

「ど、どうなんだろう?」

 ランバールの方へと視線を向け、助けを求めれば困った様子で上に乗っかったままのソファを抱きかかえ苦笑していた。 その視線の流れで、犬を見れば、背中を向けてしまっている。

「えっと、聞きたいんだけど良いかしら?」

「なんでしょうお嬢様? それより、今日はどのお召し物になさいます?」

 私は指さし、服を選びながら質問を続けた。

「例えば……私の裸を見て、世話をしている様子が異性として意識していないって言うなら、視線を背けるのはどうなのかしら? 見る価値もないとか、興味がないって事かしら?」

 そう聞いた瞬間、

 尻尾に電気が落ちたかのように、ビリビリしだす犬。

「いえ、むしろ女性として意識しているって事じゃないですか!! お嬢様は、幼い頃からランバール様との将来が決まっているからって、ものを知らなさ過ぎですよ」

 なぜか、シグルド様との関係が途切れ、神によって記憶が曖昧とされた頃、私とランバールとの婚約が決まっていた。 何時からと言えば、私も記憶がない。

「あと……浴室で叫ばないでください。 皆、驚きますし、心配します。 今、部屋がこんなになっているのも、お嬢様が心配をさせたからですよ」

「なんだか、ごめんなさい」

 そう言えば、年配の侍女が溜息をつきホリーに対して、過剰なほどの勢いで叱りだした。

「ホリー!! いい加減になさい。 お嬢様を困らせるものではありませんよ!! お嬢様に問題があるなら、私共がフォローすればいいんです!!」

 問題あるなんて言わないで……。

「ですが!! いつも私共が御側に控えている訳にはいきません!! 万が一、お嬢様が他所の御屋敷でお泊りになり、男性がいる部屋で何時ものように裸になれば、男性を誘っていると誤解を与え大変な事になるのですよ!!」

 ここまで侍女が言ったところで、ランバールが声を荒げた。

「無邪気で、天真爛漫なところは、お嬢様の魅力です。 そのお嬢様らしさに因縁をつけるなど、許される事でしょうか? ……ソレはお嬢様に対する否定、敵意と同義ですよ!! どのような教育をしているのですか!!」

 ランバールが年配の侍女に向け、厳しい口調で告げれば。

 強い口調、厳しく冷ややかな視線に、ホリーは凍ったように動かなくなった。

 そして、年配の侍女がホリーの腕をとる。

「ほら、ホリー来なさい……貴方には侍女としての教育が足りないようです」

「まって、ホリーには私の世話をしてもらっている最中です。 貴方達こそ部屋から出て頂戴!!」

 私は、混乱のまま、声を荒げていた。

「お、お嬢様……」

 ホリーは涙ぐむ。

 そしてランバールは私の言葉に困惑を見せていた。

 それでも私は頑張った。

「出て行って!!」

 私の言葉にホリーはホッ吐息をついていて、私は笑みを向けてホリーに命じる。

「着替え、手伝って下さい」

「は、はい」

「貴方達は、食事の準備をお願いします」

 私はランバールと年配の侍女を部屋から追い出した。 そして、一緒に出ていこうとする犬の尻尾を捕まえた。

 ふりかえらずに犬は啼いた。

 きゅ~~ん。



 襟が大きく、ふわりと広がる袖のついた白のブラウス、そして裾をレースで飾ったペチコート。 上から赤いエプロンドレスを着て、アクセントのリボンは黒を選ぶ。 一般的な貴族の普段着からすれば、動きやすいのが特徴だろう。

 最後に、犬がくれた赤い薔薇を髪に飾りつけて終了。

「お嬢様、とてもお似合いですよ~」

「ありがとう。 食事の準備ソロソロできているかしら?」

「直ぐに伺ってきます。 少々お待ち下さい。 ぁ、そうだ……お嬢様、ワンちゃんには名前は無いんですか?」

「……えっと……そうね……どうしましょう。 ねぇどうかしら? ……もう、着替えましたわ? 見てくださらないの?」

 犬の背に向かって言えば、
 犬は、少しだけ振り向いて、覗くような視線を私に向けてくる。

「えっと、可愛くできているかしら?」

 わんっ!!

 尻尾が振られ、周囲を回りだす。
 ソレを視線で追っていた。



 しばらくはワンちゃんで良いかしら?


 
 私には、犬の存在よりも……優先すべき事態がありますし……。



 森を抜け、豪華な貴族の馬車が向かってくるのが見える。

 来客等あるはずもないと言うのに……。
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