39 / 75
04
38.その皇子を私は知らない 02
しおりを挟む
しっかり握られた手は、振りほどこうにも振りほどけないほどに強い力で取られているが、傷つけないよう優しく柔らかく触れられている。
どう、なっているのだろう?
第二皇子が手の甲に口づけながら言う。
「可愛いね」
恐怖を感じるような言葉ではないのに、私は怯えていた。
どうしてでしょう?
ランバードから繰り返し言われた可愛いと言う言葉に、これほど恐怖を覚えた事はあるだろうか?
「ぁ……えっと……、私、帰らないと」
頭が働かない。
「なぜ?」
「だって、約束があるんだもの」
「皇子達以上に優先するものなどあるのですか? 皇子達は、とても素敵な方です。 皇子達は、貴方に興味を持たれた。 貴方も皇子達を知りさえすれば、私達と同じように、皇子達を愛するようになりますわ」
「な、らない!! 運命なんてくそくらえだわ!! は、なして!!」
「あぁ……汚い言葉を使うのは、いけない。 いけない事だ……お仕置きをしないと駄目だね。 君は理解しないといけない」
強引に手を引かれ、私は椅子から落ちて……第二皇子の腕の中に転がり込んだ。 そして引き寄せ、抱きしめられる。
とても、嫌な臭いがした。
「いやっ」
「あぁ、細い肩、柔らかくて、とてもいい匂いがする」
腕の中で逃げようともがく私と、無理やりに口づけようとしてテーブルと椅子で逃げ場を奪う第二皇子。
捕まった時点で、ミラに私を連れて逃げて欲しいと訴える事は出来ない。 逃げ出したとしても、必ず見つけ出されるだろう。 第二皇子、第三皇子は皇帝にとってとても大切な子供なのだから。
その皇帝にとって大切な子がどうしてこうなっているのか?
明らかに、普通には思えなかった。
いえ、私の普通と違うだけで、コレが彼等の普通と言うこともありえるのだけど……。 分かるのは、ゼーマン公爵からの招待状には応じない方が良いと言うこと。
「離してください!! 私には、大切な人がいるんです」
「それは、私以上に大切な人かい?」
「あぁ、大切だな」
と、答えたのは知らない男の声だった。
「突然に割って入るとは、無粋な男だ。 彼女は私の運命かもしれない、今からソレを確かめる。 ソレは誰にも止められないと言うのに……獣がひっこめ」
何処か演技がかった様子でにやつきながら、第二皇子は言葉を続けた。
「そうだ、この子に選んでもらおう。 騎士訓練と言う名目の元で日々暴力を振るうオークランドの化け物と、私。 どちらの手をとりたい?」
しっかりと腰が抱き寄せられたまま、上体を反らし顔を見合わせながら第二皇子は言う。 シグルド殿下の改革案によって、彼を見る目は変わって言っている。 とは言え世の令嬢達はドチラの手を取るか? と考えれば、家や一族よりも、長い歴史の中で語られるゼーマン公爵家の娘である第二皇妃の御子を選ぶかもしれない。
だからこその自信なのだろう。
「私は、シグルド様を選びます!!」
「はっ、オマエが勝手に選んでも、与えられるものなんて何一つ無いのだぞ!! よく考えるといい!!」
「それは……」
思わず、一族共に散々尽くしてきたのだから、何か返してくれても良いのだろうか? なんて、思考が過って、僅かな間が開いてしまう。
「そう、そうだ……よく考えろ。 兄弟や親、一族のために奴に媚びを売っても、奴が何かを与える何てことはない。 今までだってそうだ!! 奴を選んだって、誰も褒賞を得た者なんていないんだからな!!」
「ぇ……」
うわぁ……やっぱり、エッチな人だったんだぁ~。 と言う視線をシグルド殿下に向けてしまうが……シッカリ言葉を飲み込んだにも関わらず、睨まれ……そして……。
「いたいっ、何をする!!」
叫んだのは第二皇子。
シグルド様は、第二皇子の腕をつかみ力を入れたらしく、私を抱きしめる腕から力が抜けた。 そして、奪うように引き寄せられ……荷物のように左肩にヒョイっと乗せられ、その場を去っていく。
唖然とする視線を送る者達。
誰1人、私を助ける者はいなかった。
どう、なっているのだろう?
第二皇子が手の甲に口づけながら言う。
「可愛いね」
恐怖を感じるような言葉ではないのに、私は怯えていた。
どうしてでしょう?
ランバードから繰り返し言われた可愛いと言う言葉に、これほど恐怖を覚えた事はあるだろうか?
「ぁ……えっと……、私、帰らないと」
頭が働かない。
「なぜ?」
「だって、約束があるんだもの」
「皇子達以上に優先するものなどあるのですか? 皇子達は、とても素敵な方です。 皇子達は、貴方に興味を持たれた。 貴方も皇子達を知りさえすれば、私達と同じように、皇子達を愛するようになりますわ」
「な、らない!! 運命なんてくそくらえだわ!! は、なして!!」
「あぁ……汚い言葉を使うのは、いけない。 いけない事だ……お仕置きをしないと駄目だね。 君は理解しないといけない」
強引に手を引かれ、私は椅子から落ちて……第二皇子の腕の中に転がり込んだ。 そして引き寄せ、抱きしめられる。
とても、嫌な臭いがした。
「いやっ」
「あぁ、細い肩、柔らかくて、とてもいい匂いがする」
腕の中で逃げようともがく私と、無理やりに口づけようとしてテーブルと椅子で逃げ場を奪う第二皇子。
捕まった時点で、ミラに私を連れて逃げて欲しいと訴える事は出来ない。 逃げ出したとしても、必ず見つけ出されるだろう。 第二皇子、第三皇子は皇帝にとってとても大切な子供なのだから。
その皇帝にとって大切な子がどうしてこうなっているのか?
明らかに、普通には思えなかった。
いえ、私の普通と違うだけで、コレが彼等の普通と言うこともありえるのだけど……。 分かるのは、ゼーマン公爵からの招待状には応じない方が良いと言うこと。
「離してください!! 私には、大切な人がいるんです」
「それは、私以上に大切な人かい?」
「あぁ、大切だな」
と、答えたのは知らない男の声だった。
「突然に割って入るとは、無粋な男だ。 彼女は私の運命かもしれない、今からソレを確かめる。 ソレは誰にも止められないと言うのに……獣がひっこめ」
何処か演技がかった様子でにやつきながら、第二皇子は言葉を続けた。
「そうだ、この子に選んでもらおう。 騎士訓練と言う名目の元で日々暴力を振るうオークランドの化け物と、私。 どちらの手をとりたい?」
しっかりと腰が抱き寄せられたまま、上体を反らし顔を見合わせながら第二皇子は言う。 シグルド殿下の改革案によって、彼を見る目は変わって言っている。 とは言え世の令嬢達はドチラの手を取るか? と考えれば、家や一族よりも、長い歴史の中で語られるゼーマン公爵家の娘である第二皇妃の御子を選ぶかもしれない。
だからこその自信なのだろう。
「私は、シグルド様を選びます!!」
「はっ、オマエが勝手に選んでも、与えられるものなんて何一つ無いのだぞ!! よく考えるといい!!」
「それは……」
思わず、一族共に散々尽くしてきたのだから、何か返してくれても良いのだろうか? なんて、思考が過って、僅かな間が開いてしまう。
「そう、そうだ……よく考えろ。 兄弟や親、一族のために奴に媚びを売っても、奴が何かを与える何てことはない。 今までだってそうだ!! 奴を選んだって、誰も褒賞を得た者なんていないんだからな!!」
「ぇ……」
うわぁ……やっぱり、エッチな人だったんだぁ~。 と言う視線をシグルド殿下に向けてしまうが……シッカリ言葉を飲み込んだにも関わらず、睨まれ……そして……。
「いたいっ、何をする!!」
叫んだのは第二皇子。
シグルド様は、第二皇子の腕をつかみ力を入れたらしく、私を抱きしめる腕から力が抜けた。 そして、奪うように引き寄せられ……荷物のように左肩にヒョイっと乗せられ、その場を去っていく。
唖然とする視線を送る者達。
誰1人、私を助ける者はいなかった。
0
お気に入りに追加
457
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
人形な美貌の王女様はイケメン騎士団長の花嫁になりたい
青空一夏
恋愛
美貌の王女は騎士団長のハミルトンにずっと恋をしていた。
ところが、父王から60歳を超える皇帝のもとに嫁がされた。
嫁がなければ戦争になると言われたミレはハミルトンに帰ってきたら妻にしてほしいと頼むのだった。
王女がハミルトンのところにもどるためにたてた作戦とは‥‥
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる