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22.母達による契約破棄 02
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リーセロットの言葉に対して、ルイーズが同意する訳が無い。 ホルト帝国で彼女の味方をするものは、彼女が連れて来た侍女と、森の民だけだったのだから。
「思いませんわ!! 貴方は……私の子を見捨てると言うの」
「既に殿下は、味方を作っておいでです。 身を守る術をお持ちになっておいでです。 ルイーズ様はソレをお認めになれないようですが」
「あの子は、呪われたわ!! まだ子供なのよ!!」
「視力を失う程度の呪い等、脅しでしょう」
「でも、呪われたのよ!!」
「今の殿下であれば、その呪いをかけたものを突き止め、処罰する事もできるのではありませんか?」
「あの子は、呪われたの!! あの子は、嫌われているのよ!! 可哀そうな子なの、私が!! 守ってあげないといけないのよ!! 私はあの子を守ろうとした!!」
「分かったから落ち着いて下さい」
「馬鹿にしているの!! 責任を取りなさい!! 私は、貴方の娘のせいで、貴方の娘が身代わりを完璧にやり遂げなかったせいで、私が、私が責められた!! 責められた!! 息子にまで捨てられたらどうしてくれるの!!」
過剰な叫びは、呼吸を乱していた。
「飲み物を、これをユックリと」
出された水を払い退けた。
「あぁぁああああ、どいつもこいつも私を馬鹿にして!! お前達のような悪魔達にまで馬鹿にされるなんて……認めない、認められる訳がない!! 私は、第一皇妃なのよ!! なのに、悪魔が、私と私の息子の人生を台無しにして許されると思っているの!! あぁ、いいわ……お前達の人生も台無しにしてやる……」
ニヤリと笑うルイーズは、落ち着いて見えた。
多くの森の民が伯爵家に務めていた。
ルイーズの叫びは屋敷中に広まっていた。
終わりである。
例え本気で無かったとしても、森の民は怯えた。
誰もがルイーズに同情していたからこそ怯えたのだ。 同じ差別を受けている者として、皇妃と言う立場にいる彼女に憐れんだ。 憐れみから手を貸した。 同類だと思ったから憐れんだ。 だが、彼女は同じだとみることはなく……森の民を『不幸であれ』と、呪おうとした。
だから終わりだ。
「若奥様」
侍女が神妙に告げると同時に、ランバールがルイーズ様を抑え込んだ。
「何をするのよ!!」
室内の灯りが落とされ、特殊な術式が刻まれたランプが月のように穏やかな光を発する。
「森の民リーセロットが、絆の女神に願う」
ヴェルディの母が、その手をルイーズへの額に向けた。
「我らが誓約は、正しき対価で結ばれず。 誓約における関わりの破綻をここに願わん」
ルイーズ様は『森の民』の事を忘れた。
彼女を危険視したヴェルディの母リーセロットが、森の子ジルヴェルと王太子シグルドの代理誓約を行う時、森の民を危険から守るため『信頼関係の破局による誓約破棄』を行う場合、森の民の記憶を奪う事を誓約に盛り込んでいた。
そして私の図書館通いは終わりを迎え、シグルド殿下との逢瀬は終わりを迎えた。
仕方がない……。
心地よい日々、特別な私、愛される私、そんな夢に少しだけ後ろ髪を引かれたけれど……森の民の安寧が最優先なのだから仕方がない。
「思いませんわ!! 貴方は……私の子を見捨てると言うの」
「既に殿下は、味方を作っておいでです。 身を守る術をお持ちになっておいでです。 ルイーズ様はソレをお認めになれないようですが」
「あの子は、呪われたわ!! まだ子供なのよ!!」
「視力を失う程度の呪い等、脅しでしょう」
「でも、呪われたのよ!!」
「今の殿下であれば、その呪いをかけたものを突き止め、処罰する事もできるのではありませんか?」
「あの子は、呪われたの!! あの子は、嫌われているのよ!! 可哀そうな子なの、私が!! 守ってあげないといけないのよ!! 私はあの子を守ろうとした!!」
「分かったから落ち着いて下さい」
「馬鹿にしているの!! 責任を取りなさい!! 私は、貴方の娘のせいで、貴方の娘が身代わりを完璧にやり遂げなかったせいで、私が、私が責められた!! 責められた!! 息子にまで捨てられたらどうしてくれるの!!」
過剰な叫びは、呼吸を乱していた。
「飲み物を、これをユックリと」
出された水を払い退けた。
「あぁぁああああ、どいつもこいつも私を馬鹿にして!! お前達のような悪魔達にまで馬鹿にされるなんて……認めない、認められる訳がない!! 私は、第一皇妃なのよ!! なのに、悪魔が、私と私の息子の人生を台無しにして許されると思っているの!! あぁ、いいわ……お前達の人生も台無しにしてやる……」
ニヤリと笑うルイーズは、落ち着いて見えた。
多くの森の民が伯爵家に務めていた。
ルイーズの叫びは屋敷中に広まっていた。
終わりである。
例え本気で無かったとしても、森の民は怯えた。
誰もがルイーズに同情していたからこそ怯えたのだ。 同じ差別を受けている者として、皇妃と言う立場にいる彼女に憐れんだ。 憐れみから手を貸した。 同類だと思ったから憐れんだ。 だが、彼女は同じだとみることはなく……森の民を『不幸であれ』と、呪おうとした。
だから終わりだ。
「若奥様」
侍女が神妙に告げると同時に、ランバールがルイーズ様を抑え込んだ。
「何をするのよ!!」
室内の灯りが落とされ、特殊な術式が刻まれたランプが月のように穏やかな光を発する。
「森の民リーセロットが、絆の女神に願う」
ヴェルディの母が、その手をルイーズへの額に向けた。
「我らが誓約は、正しき対価で結ばれず。 誓約における関わりの破綻をここに願わん」
ルイーズ様は『森の民』の事を忘れた。
彼女を危険視したヴェルディの母リーセロットが、森の子ジルヴェルと王太子シグルドの代理誓約を行う時、森の民を危険から守るため『信頼関係の破局による誓約破棄』を行う場合、森の民の記憶を奪う事を誓約に盛り込んでいた。
そして私の図書館通いは終わりを迎え、シグルド殿下との逢瀬は終わりを迎えた。
仕方がない……。
心地よい日々、特別な私、愛される私、そんな夢に少しだけ後ろ髪を引かれたけれど……森の民の安寧が最優先なのだから仕方がない。
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