20 / 75
02
19.不平等な誓約の行方
しおりを挟む
ローブで姿も表情も隠していたけれど、私は物凄く困惑していた。
だって、私は問題なく誓約を交わしていたのだから。
誓約の礼儀を欠いて、誓約の言葉を変更したのはシグルド殿下。
誓約は、ほぼ無効化している。
『私ことジルヴェルは、シグルド・カール・テン・ホルトを病める時も、健やかな時も、支える事を神前にて誓います』
私は人生を捧げる誓いをした。
だが、シグルド殿下はと言えば、
『シグルド・カール・テン・ホルトは、その支えに対し、感謝の気持ちを忘れる事無く、自らの使命を果たすため如何なる努力も惜しみません』
私の人生を捧げる誓いに対し、彼は感謝するよと告げただけ。
私とシグルド殿下が差し出したものは不平等で、神は認めていない。
でも、この事実は、当事者でも魔法に精通している私だから知っているだけのようだ。 と、現状から確信している。 当事者だけど、もしかしてシグルド殿下も理解していないのかも?
ソレを説明しようとした。
自分の言い分を伝えようとした。
……当事者であるシグルド様ではなく、ルイーズ様にだけど。
私の逃げ場を押さえるようにルイーズ様に肩を掴まれた。
そして顔を寄せられる。
「貴方は、私のシグルドのために生まれた事を理解しておりませんの?!」
「違います!! 私は、殿下の存在が無くても生まれていました」
「森に生まれた子供。 そんな存在である貴方にどんな意味があると言うの。 シグルドの身代わりとしての役割が与えられた事で、貴方はその生に異議を生み出したのよ!!」
「母上、いい加減にしてください!!」
「貴方は偉大なる皇帝と、私の子よ!! 誓約のバランス? あり得ないわ!! 森の子等、シグルドに尽くせる事を幸運に思うべきなのよ!!」
そう言って、母の鎮静魔法を突き破って、感情が燃え上がり、手を振り上げ私の頬を打とうとした。
ヤバイと思った。
何がって、ランバールが私を守るために突撃しかねない。 ランバールから私の素性がバレかねないと言うピンチ!! どうランバールに伝えるべきか? それともルイーズ様の平手を避けるべきか?
短時間の間にコレだけの事を考えたのは、きっと走馬灯とかいう奴なのだろう。
「誓約は本来の効果を持たなかった(ようですが)!!」
ルイーズ様の手が私に触れようとしたその瞬間も私は、説明を頑張った。 だけどルイーズ様の手は止まりそうになく、シグルド様が私を引き寄せる事で守ってくれた。
シグルド殿下の目が見えないせいか? 物凄く雑にシグルド殿下は私の腕を引っ張り投げ飛ばそうとした……のか、な? なんて、思ったのだけど……気づけばシグルド殿下の腕の中に転がり込んでいた。
「この悪魔!! 私の子から離れなさい!!」
「えっと……」
私は戸惑う。
ルイーズ様の発言もそうだが、シグルド殿下に少しの間、ローブの中の顔を撫でまわされたかと思えば、耳が塞がれた。
「母上、小さな子がいるのに、下品な言葉を使うのはご遠慮ください」
「ぁあ、ごめん、ごめんなさいね。 でも、全部が貴方のため、あの子が悪いの」
「俺を助けてくれるのが、彼女だけと言うなら、彼女の嫌がる事はするべきではない。 そう思うんだが?!」
「平気よ。 アレは、貴方のための存在しているのだから」
「森の民とは言え、人は人……。 差別は良くない」
「貴方のためを思って言っているのよ!!」
「あ、あの……呪いは簡単に返せますから」
ごごごごおごごごとでも背後から擬音を立てるように、場は混乱した。
だって、私は問題なく誓約を交わしていたのだから。
誓約の礼儀を欠いて、誓約の言葉を変更したのはシグルド殿下。
誓約は、ほぼ無効化している。
『私ことジルヴェルは、シグルド・カール・テン・ホルトを病める時も、健やかな時も、支える事を神前にて誓います』
私は人生を捧げる誓いをした。
だが、シグルド殿下はと言えば、
『シグルド・カール・テン・ホルトは、その支えに対し、感謝の気持ちを忘れる事無く、自らの使命を果たすため如何なる努力も惜しみません』
私の人生を捧げる誓いに対し、彼は感謝するよと告げただけ。
私とシグルド殿下が差し出したものは不平等で、神は認めていない。
でも、この事実は、当事者でも魔法に精通している私だから知っているだけのようだ。 と、現状から確信している。 当事者だけど、もしかしてシグルド殿下も理解していないのかも?
ソレを説明しようとした。
自分の言い分を伝えようとした。
……当事者であるシグルド様ではなく、ルイーズ様にだけど。
私の逃げ場を押さえるようにルイーズ様に肩を掴まれた。
そして顔を寄せられる。
「貴方は、私のシグルドのために生まれた事を理解しておりませんの?!」
「違います!! 私は、殿下の存在が無くても生まれていました」
「森に生まれた子供。 そんな存在である貴方にどんな意味があると言うの。 シグルドの身代わりとしての役割が与えられた事で、貴方はその生に異議を生み出したのよ!!」
「母上、いい加減にしてください!!」
「貴方は偉大なる皇帝と、私の子よ!! 誓約のバランス? あり得ないわ!! 森の子等、シグルドに尽くせる事を幸運に思うべきなのよ!!」
そう言って、母の鎮静魔法を突き破って、感情が燃え上がり、手を振り上げ私の頬を打とうとした。
ヤバイと思った。
何がって、ランバールが私を守るために突撃しかねない。 ランバールから私の素性がバレかねないと言うピンチ!! どうランバールに伝えるべきか? それともルイーズ様の平手を避けるべきか?
短時間の間にコレだけの事を考えたのは、きっと走馬灯とかいう奴なのだろう。
「誓約は本来の効果を持たなかった(ようですが)!!」
ルイーズ様の手が私に触れようとしたその瞬間も私は、説明を頑張った。 だけどルイーズ様の手は止まりそうになく、シグルド様が私を引き寄せる事で守ってくれた。
シグルド殿下の目が見えないせいか? 物凄く雑にシグルド殿下は私の腕を引っ張り投げ飛ばそうとした……のか、な? なんて、思ったのだけど……気づけばシグルド殿下の腕の中に転がり込んでいた。
「この悪魔!! 私の子から離れなさい!!」
「えっと……」
私は戸惑う。
ルイーズ様の発言もそうだが、シグルド殿下に少しの間、ローブの中の顔を撫でまわされたかと思えば、耳が塞がれた。
「母上、小さな子がいるのに、下品な言葉を使うのはご遠慮ください」
「ぁあ、ごめん、ごめんなさいね。 でも、全部が貴方のため、あの子が悪いの」
「俺を助けてくれるのが、彼女だけと言うなら、彼女の嫌がる事はするべきではない。 そう思うんだが?!」
「平気よ。 アレは、貴方のための存在しているのだから」
「森の民とは言え、人は人……。 差別は良くない」
「貴方のためを思って言っているのよ!!」
「あ、あの……呪いは簡単に返せますから」
ごごごごおごごごとでも背後から擬音を立てるように、場は混乱した。
0
お気に入りに追加
457
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
人形な美貌の王女様はイケメン騎士団長の花嫁になりたい
青空一夏
恋愛
美貌の王女は騎士団長のハミルトンにずっと恋をしていた。
ところが、父王から60歳を超える皇帝のもとに嫁がされた。
嫁がなければ戦争になると言われたミレはハミルトンに帰ってきたら妻にしてほしいと頼むのだった。
王女がハミルトンのところにもどるためにたてた作戦とは‥‥
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる