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3章 ルシッカ伯爵領 中央都市

22.不法投棄者 02

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 伯爵は、ルシッカ領の住民に甘いように見える。
 そういう風に見ていた?

 見えたけど……住民を妙に恐れていて、食料の放棄ポイントに出向いて私が見張って、状況を調べると言う事を危険だからと嫌がった。

 その結果、依頼を受けた仕事をいったん横に置き、監視システムを作り上げるのだから、この人(?)本気で天才なんだなぁって……。

「伯爵……才能の無駄遣い」

「アナタを危険な目に合わせるくらいなら幾らでも無駄遣いをしますよ」

 なんて言っていた。

「それより、住民が食べ物を置きに来ても勝手に一人で駆けださない事。 約束ですからね」

 神妙な瞳、耳、髭で言われて、私は小さく唸る。

「ダメですからね!」

「いえ、そうではなくて……伯爵は私を誤解していますよ」

「いいえ、アナタは私の想像を超える大胆さを持った方です。 衝動的にどう動くか、私は常に冷や冷やさせられているんですよ」

 大きな前足で頭を抱えるが、そうじゃない、そうじゃないのだ。

「私が、森を抜けるまで、人は待ってくれませんよ。 伯爵……私は一般的な運動能力しか持ち合わせていませんから。 で、この一般的は、一般的な成人女子であって、伯爵を基準になさらないでください」

「……」

 何かを考えこんでいるかのように見える伯爵が、良く分からない妄想を暴走させるのでは? と不安になり、私はもう一度念を押す。

「運動神経がある人間は、山の上から転がり落ちそうになりませんから」

 ペシャリと尻尾が揺れた。

「なるほど!!」

「私を有能だと思ってくださるのは嬉しいですが、そういうのは伯爵に頼らせてください」

「あぁ、うん、任せておいてくれたまえ」

 ふんすっと嬉しそうににんまり口元が笑う。

 可愛い……。



 監視は、人が近づくとベルが鳴るようになっているので、日常生活に影響を与えてまで見張る必要はない。 私の1日は料理と、庭先での畑仕事と、伯爵とのまったり時間で1日を終える。

 畑仕事が出来るようになるまでと言えば、やはり伯爵に手間をかけて貰う訳で、私が動けば伯爵の手間がかかると言う感じが申し訳ない……。
 だからと言って、早く役に立ちたいからルシッカ領の住民!! 早く問題を起こせ!! なんて思う訳もないんですけどね。 

 でも……なぁ、問題と言えば問題は起こっているか……。 おきっぱなしの食糧は野生動物に食い荒らされている訳で、食い残されたものは腐敗して悪臭を放ち、虫を呼ぶ。 ソレを見れば伯爵が食べてない事も分かるだろうし、むしろケセルさんと共に再び旅立ったと考えるのが普通じゃないかな? と思う訳。

「どう思います?」

「言われてみれば、確かにその通りだね。 叔父上の所にも帰還の挨拶には行っていませんし」

「ルシッカ領を実質管理している方ですよね」

 管理というか、放置にしか思えませんけど。

「はい、自分が戻るまで放置しておけばいい。 そうヴァルツが言っていましたので、そのようにしているんです」

 ケセルさんの指示のように言うけれど、多分……苦手で行きたくないんだろうなぁ……というのは、左右に微妙に揺れる瞳から予測できた。
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