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1章 婚約破棄したら負け

04.祖父母と私 02

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 祖父はナターナエル様を大切に育てたけど、無能であることは理解していたんですよね。 で、私がナターナエル様に情の欠片も持ってないことも。 だから、自分が死んだあと、世話を放棄しないように婚約させた。

 呪いのように逃げるなと言われ続けましたからねぇ……。 実際、思いつく限りの逃亡方法が封じられているあたり、容易周到と言うべきか……。

「流石、お爺様! 無駄に有能ですわ!!」

 雨の音に掻き消える独り言。

 そして子爵様には、

『私の財産は全て孫娘に託してあります。 ソレが欲しかったらナターナエル様との婚約をお認め下さい』

 とかって、私の意志は完全に無視し婚約が成立した訳なんです。

 まぁ、その財産ってのは、執事としての知識であったり、アヤシイ薬草の管理方法や、植物魔法の伝授であったり、決して金銭的なモノではないと言うのがポイントなのだけど、なんだかんだと子爵の要望を祖父が叶え続けた事で、子爵は自分の領地はお金持ち、祖父も莫大な給料を持って行っている。 なんて、思ったのかもしれません。

 そこまで強引な事をするのは、子爵も次期子爵のナターナエル様も、領地運営の書類1つ理解できず、ステニウス家には財産がないのだと書類を見せつけても理解できない。

 理解出来ないから、祖父が亡くなった時に、祖父の金融口座には残高が殆ど無く、金庫の中に代々受け継いできた装飾品もなく、祖父が王都に持っていた家もなく、領地にあった家も土地もなくなっている理由が分からない。

 その割に、私から婚約破棄、逃亡、をしたなら莫大な慰謝料を貰えるとか、財産を手に入れようと余計な知識ばかりを何処かから学んでくる。 あぁ、この場合、ナターナエル様の浮気は、私が使用人家と言う立場であるため、婚約破棄の正当理由に当たらないから、私の方からは色々とお手上げ状態なんですよね。



 身勝手な祖父……。



 祖父にとって、家族はステニウス家であって、祖父の妻や子や孫ではなかった。 祖父は一切家を顧みる事はなく、生活費をくれることなどなかったし、古い山小屋に私と祖母が住んでいた事も長く知らなかった。 水のようなスープで生活していたことも知らず、挙句祖母が寒さと飢えで亡くなった事を祖父が知った時、こう言ったのだ。

「オマエに執事教育を施すのに、煩く言う奴がいなくなって丁度良かった。 全く息子夫婦は、旦那様に武勇一つ立てさせることなく、死におってからに……。 オマエが無能な両親の責任をとって、シッカリと学ぶのだぞ」

 妻である祖母の死よりも、息子夫婦の死よりも、ステニウス子爵家を優先した祖父。



 あの世で、お婆様に折檻を受けていればいいのになぁ……。


 当主親子は馬鹿だが!!
 私は、祖父の死後は王都から領地に戻った。

 正確性を持っていうなら、金銭管理に煩く口出しし、アチコチの商人達に彼等は金を持たないからモノを売るな、売っても金は払わないと、延々と公的な書類を作り続けたのだ。 何しろ無駄な品物に金を使う余裕はないんでね。

 私には、いけない人間とお付き合いをしてまで、子爵のために金を準備しようと言う気もなかったですし?

 結果。

「お前のような、当主に逆らう者等いらん!! 領地に戻って頭を冷やすため畑仕事でもしていろ!!」

 まぁ、そんな風に言われ、今の私は祖母と住んでいた山小屋に住まいし、執事としての仕事は一切行わず、畑仕事や、山の収穫に専念している訳なんです。
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