4 / 32
1章 婚約破棄したら負け
03.祖父母と私 01
しおりを挟む
『あの人は、自分の子や孫よりも、ステニウス家の子が可愛いんですよ』
私を育ててくれた祖母の言葉だ。
当然ながら、異論はない。
『でも、お爺様はご当主や次期様を馬鹿だと理解していますよね』
開け透けなく言えば、祖母は笑いながらも私をとがめた。
『これ、口が悪い。 そう言う事実は誰もが分かっている事なのですから、いちいち口にする必要等ないのですよ』
いやいや、今思い返せば、祖母もなかなかだと思うがと、祖母と暮らした小屋で祖母を思い出し苦笑する。
「ですが、お婆様。 誰もが分かっている事実ではないと言うのが現実なようです」
今は亡き祖母に語り掛けるように独り言をつぶやいた。
好き放題に金を使うのを禁じても無駄だったため、当主、次期当主の買い物に対して支払いはしないと言う内容証明を、明らかに無駄遣いが見られた各方面に出した結果。
『オマエは、当主に対する敬意が無い!! 領地に帰って畑でも耕し反省していろ!!』
そう言って、王都の屋敷を追い出されたのは半年前。
それから今日までナターナエル様の恋人と名乗る方が8人も来たのですから。 うち3名はナターナエル様と結婚するんだ!と、家族の制しを無視したため勘当され、帰る家がないと言うから使用人として屋敷で雇っている。
うちの台所事情を考えれば、早々に対処したいところですが、ナターナエル様の被害者だと思えば冷たくできなかった。
「お爺様も、もう少し常識というものを当主とナターナエル様に教えて下さればよかったものを……。 でなければ、あのような無能な家でなく務めがいのある家に仕えるとか。 そういえば、自分で手をかけた子は可愛いとか言っていて、自分の子より可愛いのかと盛大な夫婦喧嘩をしたとお婆様は言っていましたよね。 そこまでするなら、完全に育てろ!!爺様!!」
なんて荒ぶってみるけどお酒は飲んでません。
何しろ、ナターナエル様の気前の良さや、その美貌に勝手にステニウス子爵家は金持ちだと勝手に思い込んでいたものも少なく無かったと言うか、大半がそう思っていたのだから、祖父の育て方は大失敗と言えるでしょう。
まぁ、そう言う人は排除しやすいのですけどね。 ナターナエル様は虚しくないのかしら? と思えば、また祖母の言葉を思い出した。
『失敗だからこそ、言え……心配な子だからこそ、領主家の人達を見捨てることが出来ないのかもしれないねぇ……』
「まぁ、確かに自分が生まれたばかりの赤ん坊の養育に関わっていたなら、一人前になるまでは見守ろうと考えるかもしれませんね。 だけどそんな理由で代々奴隷根性を発揮してまで執事を続けていたなら、馬鹿過ぎません?」
私は夕食用に作っていたタップリ山の幸の団子汁をお椀によそう。 団子は腹持ちが良いし、山の幸は栄養が豊富、挙句に温かくて最高の1品だ。 まぁ……1品しかありませんが。
でも、茸出汁で風味を効かせ、豪華に塩まで使ってある。
この国は海に面していない分、塩は貴重だ。 料理と言えば、基本が素材の味を大切にした煮物か焼き物料理。
宝石のような岩塩の塊を眺め私は呟く。
「岩塩ちゃん、愛しているわぁ~~~」
なんて言ったところで思い出した。 皆が皆ナターナエル様に愛を語られた後、必ずこういわれていたことを。
『愛は永遠のものではない』
何の約束もしていないどころか、牽制すらしているのだから、女性側はそこに罪を持ち出す事はできないだろう。 中途半端に法の抜け道をついてくるのが腹立たしい。 いっそ訴えられれば、私からでも慰謝料なしで婚約破棄にいたれる……か? 使用人は支えるべきだって言われるのでしょうか?
う~ん、微妙。
なんか、その姑息な様子が祖父に似ている気がします。
何しろ祖父は、ステニウス子爵に豪華な屋敷を王都に手に入れるよう命じられ、上級貴族の使わなくなった別荘を購入し改装、家具は貴族や金持ちが破棄するものを回収し、挙句、処理費用までもらい屋敷を整えたと言う。
そんな祖父を見て育てば、ナターナエル様が姑息なのもうなずけると言うものだ。
ごほごほ……。
「馬鹿な人達」
私を育ててくれた祖母の言葉だ。
当然ながら、異論はない。
『でも、お爺様はご当主や次期様を馬鹿だと理解していますよね』
開け透けなく言えば、祖母は笑いながらも私をとがめた。
『これ、口が悪い。 そう言う事実は誰もが分かっている事なのですから、いちいち口にする必要等ないのですよ』
いやいや、今思い返せば、祖母もなかなかだと思うがと、祖母と暮らした小屋で祖母を思い出し苦笑する。
「ですが、お婆様。 誰もが分かっている事実ではないと言うのが現実なようです」
今は亡き祖母に語り掛けるように独り言をつぶやいた。
好き放題に金を使うのを禁じても無駄だったため、当主、次期当主の買い物に対して支払いはしないと言う内容証明を、明らかに無駄遣いが見られた各方面に出した結果。
『オマエは、当主に対する敬意が無い!! 領地に帰って畑でも耕し反省していろ!!』
そう言って、王都の屋敷を追い出されたのは半年前。
それから今日までナターナエル様の恋人と名乗る方が8人も来たのですから。 うち3名はナターナエル様と結婚するんだ!と、家族の制しを無視したため勘当され、帰る家がないと言うから使用人として屋敷で雇っている。
うちの台所事情を考えれば、早々に対処したいところですが、ナターナエル様の被害者だと思えば冷たくできなかった。
「お爺様も、もう少し常識というものを当主とナターナエル様に教えて下さればよかったものを……。 でなければ、あのような無能な家でなく務めがいのある家に仕えるとか。 そういえば、自分で手をかけた子は可愛いとか言っていて、自分の子より可愛いのかと盛大な夫婦喧嘩をしたとお婆様は言っていましたよね。 そこまでするなら、完全に育てろ!!爺様!!」
なんて荒ぶってみるけどお酒は飲んでません。
何しろ、ナターナエル様の気前の良さや、その美貌に勝手にステニウス子爵家は金持ちだと勝手に思い込んでいたものも少なく無かったと言うか、大半がそう思っていたのだから、祖父の育て方は大失敗と言えるでしょう。
まぁ、そう言う人は排除しやすいのですけどね。 ナターナエル様は虚しくないのかしら? と思えば、また祖母の言葉を思い出した。
『失敗だからこそ、言え……心配な子だからこそ、領主家の人達を見捨てることが出来ないのかもしれないねぇ……』
「まぁ、確かに自分が生まれたばかりの赤ん坊の養育に関わっていたなら、一人前になるまでは見守ろうと考えるかもしれませんね。 だけどそんな理由で代々奴隷根性を発揮してまで執事を続けていたなら、馬鹿過ぎません?」
私は夕食用に作っていたタップリ山の幸の団子汁をお椀によそう。 団子は腹持ちが良いし、山の幸は栄養が豊富、挙句に温かくて最高の1品だ。 まぁ……1品しかありませんが。
でも、茸出汁で風味を効かせ、豪華に塩まで使ってある。
この国は海に面していない分、塩は貴重だ。 料理と言えば、基本が素材の味を大切にした煮物か焼き物料理。
宝石のような岩塩の塊を眺め私は呟く。
「岩塩ちゃん、愛しているわぁ~~~」
なんて言ったところで思い出した。 皆が皆ナターナエル様に愛を語られた後、必ずこういわれていたことを。
『愛は永遠のものではない』
何の約束もしていないどころか、牽制すらしているのだから、女性側はそこに罪を持ち出す事はできないだろう。 中途半端に法の抜け道をついてくるのが腹立たしい。 いっそ訴えられれば、私からでも慰謝料なしで婚約破棄にいたれる……か? 使用人は支えるべきだって言われるのでしょうか?
う~ん、微妙。
なんか、その姑息な様子が祖父に似ている気がします。
何しろ祖父は、ステニウス子爵に豪華な屋敷を王都に手に入れるよう命じられ、上級貴族の使わなくなった別荘を購入し改装、家具は貴族や金持ちが破棄するものを回収し、挙句、処理費用までもらい屋敷を整えたと言う。
そんな祖父を見て育てば、ナターナエル様が姑息なのもうなずけると言うものだ。
ごほごほ……。
「馬鹿な人達」
0
お気に入りに追加
678
あなたにおすすめの小説
私と離婚して、貴方が王太子のままでいれるとでも?
光子
恋愛
「お前なんかと結婚したことが俺様の人生の最大の汚点だ!」
――それはこちらの台詞ですけど?
グレゴリー国の第一王子であり、現王太子であるアシュレイ殿下。そんなお方が、私の夫。そして私は彼の妻で王太子妃。
アシュレイ殿下の母君……第一王妃様に頼み込まれ、この男と結婚して丁度一年目の結婚記念日。まさかこんな仕打ちを受けるとは思っていませんでした。
「クイナが俺様の子を妊娠したんだ。しかも、男の子だ!グレゴリー王家の跡継ぎを宿したんだ!これでお前は用なしだ!さっさとこの王城から出て行け!」
夫の隣には、見知らぬ若い女の姿。
舐めてんの?誰のおかげで王太子になれたか分かっていないのね。
追い出せるものなら追い出してみれば?
国の頭脳、国を支えている支柱である私を追い出せるものなら――どうぞお好きになさって下さい。
どんな手を使っても……貴方なんかを王太子のままにはいさせませんよ。
不定期更新。
この作品は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。
しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。
それを指示したのは、妹であるエライザであった。
姉が幸せになることを憎んだのだ。
容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、
顔が醜いことから蔑まされてきた自分。
やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。
しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。
幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。
もう二度と死なない。
そう、心に決めて。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
(完結)夫に殺された公爵令嬢のさっくり復讐劇(全5話)
青空一夏
恋愛
自分に自信が持てない私は夫を容姿だけで選んでしまう。彼は結婚する前までは優しかったが、結婚した途端に冷たくなったヒューゴ様。
私に笑いかけない。話しかけてくる言葉もない。蔑む眼差しだけが私に突き刺さる。
「ねぇ、私、なにか悪いことした?」
遠慮がちに聞いてみる。とても綺麗な形のいい唇の口角があがり、ほんの少し微笑む。その美しさに私は圧倒されるが、彼の口から紡ぎ出された言葉は残酷だ。
「いや、何もしていない。むしろ何もしていないから俺がイライラするのかな?」と言った。
夫は私に・・・・・・お金を要求した。そう、彼は私のお金だけが目当てだったのだ。
※異世界中世ヨーロッパ風。残酷のR15。ざまぁ。胸くそ夫。タイムリープ(時間が戻り人生やり直し)。現代の言葉遣い、現代にある機器や製品等がでてくる場合があります。全く史実に基づいておりません。
※3話目からラブコメ化しております。
※残酷シーンを含むお話しには※をつけます。初めにどんな内容かざっと書いてありますので、苦手な方は飛ばして読んでくださいね。ハンムラビ法典的ざまぁで、強めの因果応報を望む方向きです。
義母から虐げられ、婚約破棄までされて追放された令嬢、冒険喫茶のシェフとして幸せになる
しろいるか
恋愛
公爵家の令嬢、ナタリーは継母から虐待を受けていた。ある日、屋敷のコックに料理を振る舞っているところを継母と婚約者に見つかり、一方的に婚約破棄された挙げ句、屋敷から崖下へ突き飛ばされて瀕死の重傷を負う。
そこをハーフエルフのエメラダに助けられ、料理ができることから冒険喫茶のシェフとなる。そこではナタリーを苛める人はおらず、幸せに包まれていく。
一方、継母たちには破滅の始まりが襲いかかっていた……
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
幼馴染みに婚約者を奪われ、妹や両親は私の財産を奪うつもりのようです。皆さん、報いを受ける覚悟をしておいてくださいね?
水上
恋愛
「僕は幼馴染みのベラと結婚して、幸せになるつもりだ」
結婚して幸せになる……、結構なことである。
祝福の言葉をかける場面なのだろうけれど、そんなことは不可能だった。
なぜなら、彼は幼馴染み以外の人物と婚約していて、その婚約者というのが、この私だからである。
伯爵令嬢である私、キャサリン・クローフォドは、婚約者であるジャック・ブリガムの言葉を、受け入れられなかった。
しかし、彼は勝手に話を進め、私は婚約破棄を言い渡された。
幼馴染みに婚約者を奪われ、私はショックを受けた。
そして、私の悲劇はそれだけではなかった。
なんと、私の妹であるジーナと両親が、私の財産を奪おうと動き始めたのである。
私の周りには、身勝手な人物が多すぎる。
しかし、私にも一人だけ味方がいた。
彼は、不適な笑みを浮かべる。
私から何もかも奪うなんて、あなたたちは少々やり過ぎました。
私は、やられたままで終わるつもりはないので、皆さん、報いを受ける覚悟をしておいてくださいね?
婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います
ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」
公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。
本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか?
義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。
不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます!
この作品は小説家になろうでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる