生命の樹

迷い人

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09.人か獣か? 前

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 部屋に戻れば、食事をしろと座敷机の前に座れと指差された。 だが、俺はそれを無視し寝室へと向かいベッドに腰を下ろす。

 奇妙な興奮感を隠しながら、獲物を見るように忍を見る。

「栄養を取りなさい」

 静かに淡々とした命令。

 別にソレを腹立たしいと思った訳ではない……。 だけれど、その言葉に逆らうように手を掴んでいた。 掌と掌を重ね撫で、指を絡め手を重ねる。

「なんで……恋人繋ぎ……」

 恥ずかしそうに聞いてくる。

 顔の上部を隠す狐面は、震えるピンク色の可愛らしい唇を隠さない。 何時まで、その仮面をつけているのだろうか? なぜ、こんな格好をしているのか? とか、どうして……欲情しているのか? そんな疑問に思って、悩んで当然の思考は無かった。



 餌を前にした空腹の獣のような……ソレは本能……いや、まるで、そう言う風にプログラムされていたかのように、その身体が欲しかった。



 俺は重ねた忍の手を引く。

 驚きと共に反射的に身体を引き逃げようとした忍は、それでも容易く腕の中に零れ落ちて来る。 両足の間にその身体が投げ出されてきたから、忍の身体をその背からだきしめ……柔らかな毛並は剥き出しの俺の身体を優しく撫でて来る。

 俺は背後から忍を抱きしめ、きつく合わせた衣を乱暴に開き肩口に顔を埋めればビクッと身体を、尾を震わせた。

 獣の……柔らかな毛の感触が身体や頬を撫でる。
 獣臭さ等はない……日向の匂い、草の匂い。
 鼻先で、唇で首筋をなぞって行く。

 首の半分、うなじ部分を覆う黒い毛並み。
 首の半分、その身体を弄ぶのを必死に耐え白い喉が唾液を飲んでいるのが見えた。

 両脇から身体を支えていた人面の女性のような……人工的で、淫靡で、それを目的としているかのような香りや、色香溢れる声、柔らかな煽情的な身体と違い、むしろ強固に閉ざされている……なのに……俺の嗜虐心を煽って来るのだ。

 袴を止める紐をほどき、薄い透けるような白色の布で作られた水干の下に手を伸ばし、赤い│単《ひとえ》を留める腰ひもを解き、小袖を留める紐も解き、腹の部分から手を滑り込ませた。

 手と指に吸い付くように柔らかく滑らかな肌。

 襟の部分を口で咥え引けば、今度は簡単に合わせが崩れ、首元、肩、胸元を露わにする。 身体の前部分は人の滑らかな肌、首、肩、脇は触り心地の良い獣の毛がみっしりと生えていた。

 身体を固定し、まさぐっていれば、逃げ出そうと腕の中で遠慮がちで暴れていた。 暴れる腕を解いた紐で適当に絡め取って行く。

「やっ、今は止めて……」

 身じろぎする程に絡まる様子に、忍の戸惑いが垣間見えた。

「そう言って、昨日は止めてくれたのか?」

 耳元で囁けば、身体、上半分の黒狐の面に隠しきれないピンク色のみずみずしい唇は小さく震えていた。

 柔らかく弱々しい印象は妙に加虐的な気持ちを煽って来る。



 次の瞬間、俺の唇は忍の唇を塞いでいた。

 柔らかく温かな感触が震え、微かに唇が開かれていた。

 強引過ぎる行為に俺は疑問を抱かない。
 あり得ないとは思わない。
 昨日既に関係があるから良いだろう……そんな言い訳すら脳裏になく、唇を貪り、俺の下は忍の口内へと滑り込ませていた。

「んっ、ぁっ」

 小さく身をよじるが逃げる様子はない。 逃げる様子はないが戸惑っているようだ。 緊張した狐の尻尾が床を押さえつけるかのように力が入っていた。

 舌に舌を絡めれば、

「はぁ……」

 吐息混ざりの呼吸を漏らし、俺の舌を迎え入れ絡めて来る。 ちゅっ、ちゅぷ、くちゅ、二人の舌は絡まり合い、唾液を交わし合い、お互いの精を交わし合うように飢えを満たすように喰らいあった。

 欠如、虚無、空虚、自分が空っぽに思えば焦燥感すら感じて、それを必死に埋めようと、舌を絡め、舌を吸い上げ、舐めあげ、唾液腺を刺激し、絡め取り、唾液を吸い上げる。

 喰らう唇の隙間から、漏れる呼吸と小さな喘ぎ声に、無意識に口元を緩めている自分に俺は気づかない。

 ずり落ちている袴の中に手を滑り込ませた。

 柔らかな毛並が足を覆っていて滑るようにスルリと内股に右手を伸ばせば、緊張を帯びた様子で両足が閉ざされる。 その身体を覆う毛並みがどうなっているのか? と考えるよりも……身じろぎ、拒絶が、逃げ惑う狐を追い遊ぶ狼のように楽しい。

 身体を抱きしめ、背後から手を回し形の良い胸を手のひらで覆いながら、忍の背を俺の胸に密着させ首の付け根に口づけた。

 刺激を受けるたびに身体を震わせ、重ねられた衣が滑り着崩れ、黒い毛が覆う背が露わになり、柔らかな毛並が2人の女達に剥かれ露わになった胸元を撫でる。 柔らかな乳房を左掌で包み込み弄び、硬さを持った突起を掌で無遠慮に押しつぶす。 そして右手は、太腿の毛並みを撫で楽しんでいた。

 拒絶するように両足をくねらせ、両足の間の手を追い出そうとするから手を腰部分へと滑らせ、そのまま腹部へと移動した。 柔らかな毛並は、へそ下数センチから覆われショーツはつけていない。

「っう、くっ」

 着崩れた合わせから露わになっている胸、人の肌の部分はじっとりと汗ばんでいた。 忍の胸は俺を誘って来た2人の女性のような重く性的に誘い抗わせないかのような大きさはないが、形よく弾力のあるまろやかな柔らかさだった。 掌の中で動くままに、弄ばれるままに膨らみは形を変える。

 下から、横から、柔らかな肉を救いあげ、上から押しつぶし、指の隙間から肉が盛り上がるように力を入れる。 弾力のある柔らかな感触を楽しみつつも指の間で乳首を挟み、動きに合わせて刺激をすれば、押し殺すような甘い声が羞恥のこまった吐息をこぼし始めていた。

 人差し指の先で、乳首周辺をゆっくりとなぞり、人の部分である白い首筋を舐め、吸い付く、唇や顔に乱れた毛並が触れ唾液に濡れるが気になる事は無かった。

 肉食の獣のような狂暴な思考、そんな思考とは別に与える刺激は緩急をつけ強弱をつける。 繊細さと強靭さを持つ忍の身体を無責任に乱暴に扱う事はないが、感覚、欲求だけは乱暴に追い上げていく。

「んっ、ぁ、ぁっ……」

 乳首回りを弄る指が、硬く主張をする部分に触れると、乳頭に差し掛かろうとするだけで、忍の身体をビクンっと跳ね小刻みに震えていた。
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