飼い猫くわえたお魚

神崎

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飼い猫くわえたお魚

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天気は快晴。そんな日の朝。
住宅街の道をわき目もふらずに駆けていく女の子。
学生服に身を包んだ、超絶美少女!! ……ではなく、ごく一般的な女子だ。

実は彼女、遅刻常習犯であり、今週は4日間遅刻していた。今日遅刻すると1週間連続記録になってしまうためさすがに焦っていた。

こうなったら裏道を使うしかないわね。

民家の塀に手をかける女の子。
塀をよじ登り、強引にショートカットを行うようだ。足をかけて何とか塀を超え、民家の裏庭に着地した。服の汚れを落としていると、なにやら家の前が騒がしい様子だ。そっと家の陰から覗くと。

―――!!!

見るとそこには息を荒げている警察官と、猫をくわえた魚がいた。

魚の大きさは2メートル近くあり、見た目は錦鯉のようだ。体の側面から人間の腕だけが生えており、そんな魚が空中浮遊している。女の子は、急いでいることも忘れて、その場に呆然と立ち尽くす。

「私に何か用ですか? 忙しいので、早く用件を伝えてくれると、ありがたいのですが」

魚は丁寧な言葉で警察官に話しかけた。
猫のしっぽを右手で持ち、逆さ吊りにしている。

―――ミャーミャー。

「おっ、お前、その猫をどうするつもりだ?」

「どうするって、食べるに決まってるじゃないですか」
警戒しながら尋ねる警察官。それに対し、あきれた様子で返答する魚。

「食べるだと?  待て! それは佐藤さん家のタマ」
必死に食べるのを止めようとするが。

―――ゴクリ。

2人は驚いた。
なぜなら魚が、猫を丸のみしてしまったからだ。警察官と女の子は、その場に呆然と立ち尽くす。

「ご馳走さまでした。それでは私は急いでいますので」
そう言うと魚は、女の子が来た方角の空へと消えていった。

「何だったんだ、一体……」
警察官は魚が飛んで行った方角を眺めながら呟いた。

―――!!?

女の子は突然、今来た道を引き返す。

塀を超え、さっきよりも全速力で走りまくった。
そして、程なくして自分の家にたどり着く。

「ミケ! ミケ!」

―――ニャー。

庭先から1匹の黒猫が、女の子のもとに駆け寄ってきた。

「ミケ、良かった」
安心した様子で、駆け寄ってきたミケを抱き上げる女の子。

―――ニャー。ニャー。
ミケは鳴きながら女の子の頬をなめる。

「ミケったら、くすぐったいよ」

「ミケって言うのか、美味しそうだね」
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