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第三章
リオンの一撃
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飛行船の操縦室で俺はレバーを操作して、風袋を後ろに移動させた。
船尾を釣り上げられた飛行船は下に向かって前進する。
ゴンゴンゴン……!
遠くでドラの音がした。
下降する飛行船の視界には、野原と砂漠が混ざった荒涼とした大地が広がり、そこに砂煙がある。
ホーン衛兵団の騎馬隊が横陣をしいて、駆けていた。その真ん中にストーンとサイモンがいる。
そして騎馬隊の先には、ドラゴンを先頭にしたモンスターたちがこちらに向かってきていた。
ホーンを襲撃しようとしているモンスターたちだ。
「ドラゴンはあの金色のドラゴンじゃないけど、モンスターはなかなかな数だな」
「あわわ……あんなに沢山のモンスターが……」
横でスピカが面食らっている。
スピカには操縦の補佐をお願いした。まあ、本人も何か手伝いたいということで、魔力走行船もよく操縦していたこともあり、俺と一緒にいてもらうことにした。
ちなみにマトビアは、拠点でフォーロンとの連絡係を担当している。
「あ! あのドラゴン、こっちに向かって来ていますよ!」
緑の鱗をまとったドラゴンと目が合った。
あちらはドラゴンが率いるモンスター百匹ほど。こちらは騎馬二十騎。数で言えば比較にならないぐらい、あちらが上だ。
まあ、これが軍の戦いだとしたら、正面から戦うことはありえない。
だが、こっちはドラゴン級の強者がそろっている。
下界の衛兵団が再びドラを鳴らす。突進の合図だ。
「スピカ、ちょっと操縦を代わって」
「ふぇ?」
俺が舵を離すと、あわててスピカがひっしと握る。
「ち、ちょっと! フェア様、これどうするんですか!?」
「事前に話したとおりだ!」
「そ、そうじゃなくて! このままだと激突しますよ! ドラゴンに!」
「大丈夫だ──」
ドアを開けると外から風が吹き込む。
俺は半身を外に出して、ライフルで向かってくるドラゴンを狙う。
「『火力』、『浮揚』──」
トリガーを引くと、短かくも重い音が握り手から伝わる。
鉛玉はドラゴンの頬にぶち当たると、突然の見えない張り手にドラゴンは驚き、引き返した。
「ウッヒャー! ガーゴイルぐらい高いナ! こんな重たいものを良く飛ばせるナ!」
俺の肩にぶつかったリオンが気を昂らせている。
ツノのリボンをたなびかせて、好戦的な笑みをドラゴンに向けた。
「ち、ちょっと、俺は飛べないから押さないで!」
「心配するナ! シモベがちゃんとつかまえてくれル」
「……そうだといいんだけどね」
「じゃア、行ってくるナ!」
リオンはピョンと外に飛び出て落ちていく。
飛行船に張り付いていたガーゴイルがそれを見て追いかけ、リオンを空中でつかんだ。
それを機に、飛行船の上に張り付いていたゴブリンや巨人が落ちていく。
ゴブリンも巨人もガーゴイルも、みんな片耳には赤いリボンを結んでいた。衛兵が味方を判別するためだ。
すでに騎馬隊がモンスター集団を貫通したあと、バラバラと黒い点が落ちていき、そこで乱戦を始めた。
騎馬隊に注視していたモンスター集団は、急に空から降ってきて、人間に味方するモンスターに困惑している。
「足、めちゃくちゃ頑丈だな……」
ふつうこの高さから落ちたら、骨折ぐらいじゃ済まなさそうなのに。
「さて、こっちも片付けないとな」
一度退いたドラゴンが、地上の騎馬隊を攻撃しようとしている。
俺はもう一度、ドラゴンの頬に撃ち込んで怯ませた。その隙にガーゴイルがリオンを宙に投げて、空高く舞い上がる。
頂点に達したリオンが、身を翻して静止し、狙いを定めた。
そこから一直線にドラゴンへ落ちる。
ドラゴンは謎の一撃が飛行船から放たれ、その攻撃が囮になっていることに気付いていない。
流星のように銀色の雷に似た光が、とてつもない速度でドラゴンに迫った。
両手の拳を真下にして、リオンはドラゴンの体を貫通した。
「グウワアアアッ!!」
遠くからでも聞こえる叫び声とともに、ドラゴンはじわじわと黒くなり、灰となって散っていく。
それを見たドラゴンの手下たちは、一気に戦意喪失した。
逃げ出したり、倒されたりして灰になる。
「やりました! フェア皇子、私たちの勝利ですね!」
「ああ……圧勝だったな。見た目に反して強いんだな、リオンは」
ただ、サイモンが言っていたモンスター移動の本流が気になる。
俺は少し本流となるモンスターの群れをこの目で見てから、拠点に帰ることにした。
船尾を釣り上げられた飛行船は下に向かって前進する。
ゴンゴンゴン……!
遠くでドラの音がした。
下降する飛行船の視界には、野原と砂漠が混ざった荒涼とした大地が広がり、そこに砂煙がある。
ホーン衛兵団の騎馬隊が横陣をしいて、駆けていた。その真ん中にストーンとサイモンがいる。
そして騎馬隊の先には、ドラゴンを先頭にしたモンスターたちがこちらに向かってきていた。
ホーンを襲撃しようとしているモンスターたちだ。
「ドラゴンはあの金色のドラゴンじゃないけど、モンスターはなかなかな数だな」
「あわわ……あんなに沢山のモンスターが……」
横でスピカが面食らっている。
スピカには操縦の補佐をお願いした。まあ、本人も何か手伝いたいということで、魔力走行船もよく操縦していたこともあり、俺と一緒にいてもらうことにした。
ちなみにマトビアは、拠点でフォーロンとの連絡係を担当している。
「あ! あのドラゴン、こっちに向かって来ていますよ!」
緑の鱗をまとったドラゴンと目が合った。
あちらはドラゴンが率いるモンスター百匹ほど。こちらは騎馬二十騎。数で言えば比較にならないぐらい、あちらが上だ。
まあ、これが軍の戦いだとしたら、正面から戦うことはありえない。
だが、こっちはドラゴン級の強者がそろっている。
下界の衛兵団が再びドラを鳴らす。突進の合図だ。
「スピカ、ちょっと操縦を代わって」
「ふぇ?」
俺が舵を離すと、あわててスピカがひっしと握る。
「ち、ちょっと! フェア様、これどうするんですか!?」
「事前に話したとおりだ!」
「そ、そうじゃなくて! このままだと激突しますよ! ドラゴンに!」
「大丈夫だ──」
ドアを開けると外から風が吹き込む。
俺は半身を外に出して、ライフルで向かってくるドラゴンを狙う。
「『火力』、『浮揚』──」
トリガーを引くと、短かくも重い音が握り手から伝わる。
鉛玉はドラゴンの頬にぶち当たると、突然の見えない張り手にドラゴンは驚き、引き返した。
「ウッヒャー! ガーゴイルぐらい高いナ! こんな重たいものを良く飛ばせるナ!」
俺の肩にぶつかったリオンが気を昂らせている。
ツノのリボンをたなびかせて、好戦的な笑みをドラゴンに向けた。
「ち、ちょっと、俺は飛べないから押さないで!」
「心配するナ! シモベがちゃんとつかまえてくれル」
「……そうだといいんだけどね」
「じゃア、行ってくるナ!」
リオンはピョンと外に飛び出て落ちていく。
飛行船に張り付いていたガーゴイルがそれを見て追いかけ、リオンを空中でつかんだ。
それを機に、飛行船の上に張り付いていたゴブリンや巨人が落ちていく。
ゴブリンも巨人もガーゴイルも、みんな片耳には赤いリボンを結んでいた。衛兵が味方を判別するためだ。
すでに騎馬隊がモンスター集団を貫通したあと、バラバラと黒い点が落ちていき、そこで乱戦を始めた。
騎馬隊に注視していたモンスター集団は、急に空から降ってきて、人間に味方するモンスターに困惑している。
「足、めちゃくちゃ頑丈だな……」
ふつうこの高さから落ちたら、骨折ぐらいじゃ済まなさそうなのに。
「さて、こっちも片付けないとな」
一度退いたドラゴンが、地上の騎馬隊を攻撃しようとしている。
俺はもう一度、ドラゴンの頬に撃ち込んで怯ませた。その隙にガーゴイルがリオンを宙に投げて、空高く舞い上がる。
頂点に達したリオンが、身を翻して静止し、狙いを定めた。
そこから一直線にドラゴンへ落ちる。
ドラゴンは謎の一撃が飛行船から放たれ、その攻撃が囮になっていることに気付いていない。
流星のように銀色の雷に似た光が、とてつもない速度でドラゴンに迫った。
両手の拳を真下にして、リオンはドラゴンの体を貫通した。
「グウワアアアッ!!」
遠くからでも聞こえる叫び声とともに、ドラゴンはじわじわと黒くなり、灰となって散っていく。
それを見たドラゴンの手下たちは、一気に戦意喪失した。
逃げ出したり、倒されたりして灰になる。
「やりました! フェア皇子、私たちの勝利ですね!」
「ああ……圧勝だったな。見た目に反して強いんだな、リオンは」
ただ、サイモンが言っていたモンスター移動の本流が気になる。
俺は少し本流となるモンスターの群れをこの目で見てから、拠点に帰ることにした。
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