40 / 62
第三章
新しい拠点
しおりを挟む
拠点で朝を迎えて、背伸びをすると鈍い痛みが走った。
「全然寝れないな……」
薄い木綿の布の上で初めて寝た。
船には備えつけのベッドがあったし、安い宿でもベッドがないということはなかった。
「ストーンはすごいな」
俺の横で熟睡し続けている。元冒険者の経験値というのか、このまま寝れない日が続くと、深刻な状況になるのではないか。
すぐにでもホーンに行って、ベッドなどの家具を揃えないと。
ストーンが起きると、俺たち二人でテーブルを囲い朝食をとる。
パンとスープだけ。少ないがないよりはましだ。拠点に移ることを優先していたので、食材などもない。
これもすぐに揃えないとな。
「それで、フェアはどうするんだ?」
「えっ?」
「ミーナが息子のお前を俺のもとに送ったということは、ミーナは俺のことを責めていないし、ちゃんと認めていることが分かった。俺も踏ん切りがついたし、再びモンスター退治をするつもりだ」
ストーンは前に進むことを決めたのか……。
俺はどうなんだろう。
母は平和のために戦ってほしいと思っているだろうな。だが、ホーンにいると、どこもかしこも平和に思えた。
モンスター退治をすることにそれほど興味はない。
なにせ、俺には武器もないし、攻撃魔法もほとんどない。
「まあ……とりあえずは、拠点の基盤整備をしようかなと」
「き、きば……きばせいび……」
「そうですね、水もでないみたいですし、キッチンもかなりひどい状況みたいですから」
「んー。そういうことか。たしかに、だいぶんガタがきちまってるからな……」
ストーンをギルドに送り出して、俺はとりあえず全部の家具を浮揚で外に出し、風力と水力で床やら壁やらを全て綺麗にする。
「うわー……めちゃくちゃ汚いな」
そういえば、女性専用エリアはどうなっているのだろう。
気になるが、スピカがいるからきっと大丈夫か。
汚れを外に出すと、床のタイルも綺麗に磨かれて新品同様になった。
「さて、ホーンに買い物に行くか」
金貨袋を持って、拠点を出る。
拠点には高さのある門があり、錠前もかなり立派なものだ。
「『開錠』が効かないな」
鍵と回転盤の二重錠になっているので、俺の魔法でさえ開錠できないようになっていた。アーシャがマトビアのために事前に強化していたらしい。
拠点の丘をおりて、ホーンに着くとさっさと家具やら食料を買い込んだ。もちろん、フードを被って顔が分からないようにした。
買い物も即決でどんどん買って、なるべく店主と目を合わせないようにする。
議長のバカ息子の一件があるからな……。俺がバレると、マトビアにも迷惑がかかるし。
すべて荷車に入れて浮揚をかけて軽くし、拠点の門に戻った。
俺は渡された鍵と暗証番号を使って門を開けると、施設に家具を並べて行った。
「あとは水だな」
枯れた井戸が施設の裏にあったので、水力で水脈を探る。
「よしよし、……手ごたえがあるぞ」
ぐっと、魔力を集中させると間欠泉のように水が井戸から飛び出てきた。
「おおっ……!」
土砂を押し上げた圧力で水が噴き出てしまった。
魔力を弱めて井戸を復活させ、とりあえず生活用水として使えるように、大桶へ水をためた。
「いずれタービンを使って自動化をしたいな」
施設には母が使っていた道具もあるので、それを使えばできるかもしれない。
もう日が暮れ始めたので、施設に戻るとスピカがキッチンに立っていた。
「朝はすみません。なかなかマトビア様に起きていただけず……」
「いや、スピカはマトビアの付き人なんだから、俺のことは気にしなくていい」
「いえいえ、そんなわけには……。しかし、キッチンが綺麗になりましたね!」
「そうなんだよ。食材も買って来たし」
「私も買って来たので、今日の夜は豪華にしましょう!」
スピカはそう言って、腕まくりをした。
「全然寝れないな……」
薄い木綿の布の上で初めて寝た。
船には備えつけのベッドがあったし、安い宿でもベッドがないということはなかった。
「ストーンはすごいな」
俺の横で熟睡し続けている。元冒険者の経験値というのか、このまま寝れない日が続くと、深刻な状況になるのではないか。
すぐにでもホーンに行って、ベッドなどの家具を揃えないと。
ストーンが起きると、俺たち二人でテーブルを囲い朝食をとる。
パンとスープだけ。少ないがないよりはましだ。拠点に移ることを優先していたので、食材などもない。
これもすぐに揃えないとな。
「それで、フェアはどうするんだ?」
「えっ?」
「ミーナが息子のお前を俺のもとに送ったということは、ミーナは俺のことを責めていないし、ちゃんと認めていることが分かった。俺も踏ん切りがついたし、再びモンスター退治をするつもりだ」
ストーンは前に進むことを決めたのか……。
俺はどうなんだろう。
母は平和のために戦ってほしいと思っているだろうな。だが、ホーンにいると、どこもかしこも平和に思えた。
モンスター退治をすることにそれほど興味はない。
なにせ、俺には武器もないし、攻撃魔法もほとんどない。
「まあ……とりあえずは、拠点の基盤整備をしようかなと」
「き、きば……きばせいび……」
「そうですね、水もでないみたいですし、キッチンもかなりひどい状況みたいですから」
「んー。そういうことか。たしかに、だいぶんガタがきちまってるからな……」
ストーンをギルドに送り出して、俺はとりあえず全部の家具を浮揚で外に出し、風力と水力で床やら壁やらを全て綺麗にする。
「うわー……めちゃくちゃ汚いな」
そういえば、女性専用エリアはどうなっているのだろう。
気になるが、スピカがいるからきっと大丈夫か。
汚れを外に出すと、床のタイルも綺麗に磨かれて新品同様になった。
「さて、ホーンに買い物に行くか」
金貨袋を持って、拠点を出る。
拠点には高さのある門があり、錠前もかなり立派なものだ。
「『開錠』が効かないな」
鍵と回転盤の二重錠になっているので、俺の魔法でさえ開錠できないようになっていた。アーシャがマトビアのために事前に強化していたらしい。
拠点の丘をおりて、ホーンに着くとさっさと家具やら食料を買い込んだ。もちろん、フードを被って顔が分からないようにした。
買い物も即決でどんどん買って、なるべく店主と目を合わせないようにする。
議長のバカ息子の一件があるからな……。俺がバレると、マトビアにも迷惑がかかるし。
すべて荷車に入れて浮揚をかけて軽くし、拠点の門に戻った。
俺は渡された鍵と暗証番号を使って門を開けると、施設に家具を並べて行った。
「あとは水だな」
枯れた井戸が施設の裏にあったので、水力で水脈を探る。
「よしよし、……手ごたえがあるぞ」
ぐっと、魔力を集中させると間欠泉のように水が井戸から飛び出てきた。
「おおっ……!」
土砂を押し上げた圧力で水が噴き出てしまった。
魔力を弱めて井戸を復活させ、とりあえず生活用水として使えるように、大桶へ水をためた。
「いずれタービンを使って自動化をしたいな」
施設には母が使っていた道具もあるので、それを使えばできるかもしれない。
もう日が暮れ始めたので、施設に戻るとスピカがキッチンに立っていた。
「朝はすみません。なかなかマトビア様に起きていただけず……」
「いや、スピカはマトビアの付き人なんだから、俺のことは気にしなくていい」
「いえいえ、そんなわけには……。しかし、キッチンが綺麗になりましたね!」
「そうなんだよ。食材も買って来たし」
「私も買って来たので、今日の夜は豪華にしましょう!」
スピカはそう言って、腕まくりをした。
0
お気に入りに追加
110
あなたにおすすめの小説

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!
よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。
10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。
ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。
同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。
皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。
こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。
そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。
しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。
その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。
そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした!
更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。
これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。
ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった
根上真気
ファンタジー
高校生活初日。神社の息子の八十神は異世界に転移してしまい危機的状況に陥るが、神使の白兎と凄腕美人魔術師に救われ、あれよあれよという間にリュケイオン魔法学園へ入学することに。期待に胸を膨らますも、彼を待ち受ける「特異クラス」は厄介な問題児だらけだった...!?日本の神様の力を魔法として行使する主人公、八十神。彼はその異質な能力で様々な苦難を乗り越えながら、新たに出会う仲間とともに成長していく。学園×魔法の青春バトルファンタジーここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる