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第二章
寒いのは苦手
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ビードルと話して分かったが、この村はスノウピークという村で、共和国領になるらしい。
ここ三日は吹雪のようで、雪猿たちは吹雪とともによくやってきて、村人を傷つけたり食べ物を奪ったりする。そんなモンスターを追い払ったということだ。
ビードルの好意にあまえて、パンとスープを食べさせてもらった。これで寝れば、魔力は元に回復するだろう。
今は飛行船を飛ばすには天候が悪いが、明日朝になれば晴れるらしい。
そういことでベッドに寝ていると、マトビアが横から入ってきた。
「一緒に寝るのか?」
「ええ、この部屋しかあてがわれていないので、横で寝ていいでしょうか?」
「ああ、もちろん」
夫婦ということでベッドは一つしかない。
スピカは衝立で区切られた暖炉に近い場所で、布団を敷いて寝ている。
晴れれば寒さが和らぐらしいが、深夜になると気温がさらに下がり、めちゃくちゃ寒い。
暖炉に薪をくべてもベッドまで熱が届かないのだ。
「マトビア寒くないか……」
眠れない。
時折、すきま風が入ってきて目が覚めてしまう。
「……スー……スー……」
「もう寝てるのか、すごいな」
暖炉の火に照らされるマトビアの寝顔を見ていると、その向こうに青白い女の顔が、ぬっと暗がりから現れた。
「ひぃっ!」
モンスターか!
よく見ればスピカの顔だ。雪女のような蒼白さで悲しげな表情をしているので気付かなかった。
「なんでそんなところに突っ立っているんだ! ビックリするじゃないか!」
「……さ……さぶ……寒すぎ……」
「ああ……ほんとに寒さに弱いんだな、どうする一緒に寝るか?」
「い、いえ……さささすがにそそそれは」
「マトビアの横ならいいだろう。もう寝ているし、気にならないだろ」
「すすすすみません……もう、壊死ししししそう……」
スピカはマトビアを挟んでベッドに入った。そんなに大きなベッドじゃないので、スピカと俺はマトビアにくっつくようにして寝る。
「マトビア、あったかいな」
「姫様、太陽のようです……」
朝起きたのは、マトビアがむっくりと上体を起き上がらせたからだ。
「あれ、スピカもこっちにきたのですね」
「ああ、雪女みたいな顔していたからな」
「すすすすみません」
身支度をして三人で外に出ると、雲ひとつない青い空と太陽があった。
「わー、いい景色!」
「ややややっぱり、寒いは寒いですね」
急勾配の屋根に雪が残り、地面も木々も、山までが白一色だ。
「よー、クリス。やっと起きたか?」
村の中央からビードルが声をかけてくる。
中央には馬車が止まっていた。
屋根付きの荷車のうしろに女性がちょこんと座っていて、さきほどまでその女性と会話しているようだった。
「ちょっとこっちに来てくれないか、報酬を渡そう」
「報酬?」
三人で荷車の前に移動する。
「俺はスノウピークの雇われ冒険者なんだが、クリスの手柄だからな。ほら、銀貨三枚」
とりあえずビードルから銀貨三枚を受け取った。
初めて見る貨幣だ。共和国の貨幣事情を知らない。あとでマトビアに聞いてみるか。
そしてなんでビードルが金をくれるのかも分からない。
「……クリス、もしかしてギルドは初めてか? あー、ギルドに冒険者として登録してないのか」
「ギルド?」
小声でつぶやくとビードルが眉をしかめた。
この国では、『ギルド』とは知っていて当たり前なのか……?
「あんたら、もしかして……」
と、ビードルがどことなく指さした。
「冒険初心者か」
うんうん、と俺とマトビアは激しく同意する。
あやうく帝国の人間だと気づかれたのかと思った。
「あー、そうか。それならここじゃギルドに登録できないんだよ。ここはギルド出張所だから、依頼の請負と報酬の受領だけだね」
へー。
帝国と違って共和国はギルドという協会みたいなものがあるんだな。
モンスターとかがいるからか?
雪猿討伐みたいな依頼が各地にあって、取りまとめをしているんだろう。
「共和国をめぐるならギルドに登録してライセンスをとったほうがいいと思うな。ライセンスは共和国内で身分証明に使えるから、旅も楽になるぞ」
「ぜひそうしますわ」
「ちなみにホーンでライセンスは作れるのか?」
「もちろん」
即答したビードルの様子から、ホーンに詳しいとみた。
「ホーンはここからどれぐらいかかりそうかわかるか?」
「そうだな北に100マイルぐらいかな」
「ひゃ、100マイルですか⁉」
驚くマトビアだが、飛行船はかなり速い。たぶん一日ぐらいで移動できるだろう。
「ちなみに、ストーン・エベレクっていう人物を知っているか?」
ギルドに詳しそうだから、ついでに聞いてみる。
「……」
急にビードルの表情が変わった。
牧歌的な雰囲気だったのに、鋭い視線で俺たちを警戒し始めた。
「なんであいつのことを知っているんだ。あいつになんの用事なんだ?」
ストーン・エベレクって、そんな重要人物なのか?
だいぶん警戒されているので、変に嘘をつくと見破られそうだ。ここは名前を隠しつつ、本音を伝えるしかないな。
「じつは、昔に俺の母が世話になったんだ。母は亡くなって、遺書にストーン・エベレクに会えと……。それで、こうして旅をしているんだ」
「……なるほど。……昔の依頼で助けた誰かってことか……?」
独り言をいいながらビードルは少し考えると、もとの表情に戻った。
「ストーンは元ギルド冒険者だよ。今は何をしているか分からないが、たぶんホーンにいるんじゃないかな」
「ふーん。元ギルド冒険者か」
まあ、あまり根掘り葉掘り聞かないほうがいい人物なのかもしれない。
食料を調達したら、とりあえずホーンに向かえばいいか。
ここ三日は吹雪のようで、雪猿たちは吹雪とともによくやってきて、村人を傷つけたり食べ物を奪ったりする。そんなモンスターを追い払ったということだ。
ビードルの好意にあまえて、パンとスープを食べさせてもらった。これで寝れば、魔力は元に回復するだろう。
今は飛行船を飛ばすには天候が悪いが、明日朝になれば晴れるらしい。
そういことでベッドに寝ていると、マトビアが横から入ってきた。
「一緒に寝るのか?」
「ええ、この部屋しかあてがわれていないので、横で寝ていいでしょうか?」
「ああ、もちろん」
夫婦ということでベッドは一つしかない。
スピカは衝立で区切られた暖炉に近い場所で、布団を敷いて寝ている。
晴れれば寒さが和らぐらしいが、深夜になると気温がさらに下がり、めちゃくちゃ寒い。
暖炉に薪をくべてもベッドまで熱が届かないのだ。
「マトビア寒くないか……」
眠れない。
時折、すきま風が入ってきて目が覚めてしまう。
「……スー……スー……」
「もう寝てるのか、すごいな」
暖炉の火に照らされるマトビアの寝顔を見ていると、その向こうに青白い女の顔が、ぬっと暗がりから現れた。
「ひぃっ!」
モンスターか!
よく見ればスピカの顔だ。雪女のような蒼白さで悲しげな表情をしているので気付かなかった。
「なんでそんなところに突っ立っているんだ! ビックリするじゃないか!」
「……さ……さぶ……寒すぎ……」
「ああ……ほんとに寒さに弱いんだな、どうする一緒に寝るか?」
「い、いえ……さささすがにそそそれは」
「マトビアの横ならいいだろう。もう寝ているし、気にならないだろ」
「すすすすみません……もう、壊死ししししそう……」
スピカはマトビアを挟んでベッドに入った。そんなに大きなベッドじゃないので、スピカと俺はマトビアにくっつくようにして寝る。
「マトビア、あったかいな」
「姫様、太陽のようです……」
朝起きたのは、マトビアがむっくりと上体を起き上がらせたからだ。
「あれ、スピカもこっちにきたのですね」
「ああ、雪女みたいな顔していたからな」
「すすすすみません」
身支度をして三人で外に出ると、雲ひとつない青い空と太陽があった。
「わー、いい景色!」
「ややややっぱり、寒いは寒いですね」
急勾配の屋根に雪が残り、地面も木々も、山までが白一色だ。
「よー、クリス。やっと起きたか?」
村の中央からビードルが声をかけてくる。
中央には馬車が止まっていた。
屋根付きの荷車のうしろに女性がちょこんと座っていて、さきほどまでその女性と会話しているようだった。
「ちょっとこっちに来てくれないか、報酬を渡そう」
「報酬?」
三人で荷車の前に移動する。
「俺はスノウピークの雇われ冒険者なんだが、クリスの手柄だからな。ほら、銀貨三枚」
とりあえずビードルから銀貨三枚を受け取った。
初めて見る貨幣だ。共和国の貨幣事情を知らない。あとでマトビアに聞いてみるか。
そしてなんでビードルが金をくれるのかも分からない。
「……クリス、もしかしてギルドは初めてか? あー、ギルドに冒険者として登録してないのか」
「ギルド?」
小声でつぶやくとビードルが眉をしかめた。
この国では、『ギルド』とは知っていて当たり前なのか……?
「あんたら、もしかして……」
と、ビードルがどことなく指さした。
「冒険初心者か」
うんうん、と俺とマトビアは激しく同意する。
あやうく帝国の人間だと気づかれたのかと思った。
「あー、そうか。それならここじゃギルドに登録できないんだよ。ここはギルド出張所だから、依頼の請負と報酬の受領だけだね」
へー。
帝国と違って共和国はギルドという協会みたいなものがあるんだな。
モンスターとかがいるからか?
雪猿討伐みたいな依頼が各地にあって、取りまとめをしているんだろう。
「共和国をめぐるならギルドに登録してライセンスをとったほうがいいと思うな。ライセンスは共和国内で身分証明に使えるから、旅も楽になるぞ」
「ぜひそうしますわ」
「ちなみにホーンでライセンスは作れるのか?」
「もちろん」
即答したビードルの様子から、ホーンに詳しいとみた。
「ホーンはここからどれぐらいかかりそうかわかるか?」
「そうだな北に100マイルぐらいかな」
「ひゃ、100マイルですか⁉」
驚くマトビアだが、飛行船はかなり速い。たぶん一日ぐらいで移動できるだろう。
「ちなみに、ストーン・エベレクっていう人物を知っているか?」
ギルドに詳しそうだから、ついでに聞いてみる。
「……」
急にビードルの表情が変わった。
牧歌的な雰囲気だったのに、鋭い視線で俺たちを警戒し始めた。
「なんであいつのことを知っているんだ。あいつになんの用事なんだ?」
ストーン・エベレクって、そんな重要人物なのか?
だいぶん警戒されているので、変に嘘をつくと見破られそうだ。ここは名前を隠しつつ、本音を伝えるしかないな。
「じつは、昔に俺の母が世話になったんだ。母は亡くなって、遺書にストーン・エベレクに会えと……。それで、こうして旅をしているんだ」
「……なるほど。……昔の依頼で助けた誰かってことか……?」
独り言をいいながらビードルは少し考えると、もとの表情に戻った。
「ストーンは元ギルド冒険者だよ。今は何をしているか分からないが、たぶんホーンにいるんじゃないかな」
「ふーん。元ギルド冒険者か」
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