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向き合わざる現実

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心霊スポットに行く約束をした、タケルのクラスメートの黒木、美佐、正人は廃墟の前に集まっていた。

「思ったより、怖いね、やっぱ、ほら危ないし止めとこうか?」正人が言った。

「ここまで来て何いってんだよ、大丈夫さ、行こう」黒木が歩き出す。

「そうよ、行こっ」美佐が正人の肩を鼓舞するように叩いては言った。

「そっ、そうだよね」

真っ暗な廃墟を歩き出す3人

「やっぱりタケルも連れてくれば良かったかな」怖がりながら歩く正人

「良いんだよ、あいつは最近付き合い悪りぃし、忙しいんだろ」

美佐と正人はそう言いながらも、何処か寂しそうな黒木の表情にしっかり気付いていた。
結局、3人は、一時間程歩いたが特に不可思議な事が起こることは無かった。

「ほらな、幽霊なんか居ないだろ、さっ、帰ろうぜ」黒木が言う。

廃墟から出た3人が家に帰るのに通るのは黒砂木トンネル

「実はあの廃墟より、こっちのが出るなんて噂もあるんだよね」と正人

「来るときも通っただろ、幽霊なんて居ないんだよ」欠伸をする黒木

その時だった。
「ねぇ、今声しなかった?」美佐の顔は何かに怯えている

「やめてよ美佐、変な冗談、ほら速く通り抜けよう」正人がそう言った瞬間、突然足を止めた。

「えっ?僕にも聞こえたよ、男の人の声」

「そう、私が聞いたのも、男の人……」

「やめろよ変な冗談、行くぞ」黒木の歩く速度が少し速くなる。

次の瞬間、完全に黒木の足も止まっていた
「おいっ、あれなんだ?」

トンネルの向かう先に立つ、一つの影

それはゆっくりとこちらに向かって来ていた。
ただの人?
いや、人の身体も何もない、影だけが3人に向かって来ていた。
「おいっ、逃げるぞ」黒木か叫ぶ

ドサッ
地面に座り込む正人

「正人どうしたの?」焦る美佐

「どっ、どうしよう腰が抜けちゃったよ」

ゆっくりと3人に近付いて来る黒い影

「美佐、2人で正人を担ぐぞ」

「うん」

影は3人との距離をどんどんと詰めて来ている

ちっ、なんだよあの影は、このままじゃ追いつかれる、そう思った黒木の次の咄嗟に取った行動だった。
「2人共先に逃げろ、俺があいつを食い止めて時間を稼ぐ」

「何いってんだよ、僕のせいで、2人で逃げてよ」

「出来る訳無いでしょ、黒木、私も闘ってやるわ」美沙の足は震えていた

その時、3人の耳元に囁く様な声が響く

「やつてみろよ」

影は既に3人の目の前に居た。

「うわああああああっ」

次の瞬間だった、その影は突如何事も無かったかの様に消えてしまったのだ。
先程までの出来事がまるで夢だったと思える程に。

「とりあえず、逃げるぞ」
黒木と美沙は正人を担いで逃げるように、その場を後にする。

トンネルの外
黒い影は動けないでいた。

「全く、だから面白半分で行くなって」
そこに立っていたのはタケル

「お前もいつまでも、彷徨って、人にイタズラしてたってしょうがないだろ」

「いやぁ~でも死んでからも、この世に対する未練が消えなくて」

「気持ちは分かるけどさ」

「あんた、俺を浄化してくれよ、こんな能力あるなら浄化出来る人だろ?」

タケルには一つの懸念があった。
浄化するのは良い、何より本人もそう願ってるから、それは良かった、だが、闇の主のエネルギーに取り込まれる可能性の方が今は強い。

「してあげたいんだけどさ、本来、俺に浄化されなくても、自分で望むなら、自分で移行出来るんだよ、だけど正直言うと」

「そうだったんですね、人間生活長くて、すっかり死んだ後の事なんて忘れていました、恩は忘れません、それなら」

「おいっ、待てっ、まだ話は」

魂が望むなら、魂の向かう先に進むのが、魂の本来の道程、だけど、今は…

その黒い影が消え去ろうとしたその時
真っ黒い大きな手がその影を取り込んだ

うっ、嘘だろ……タケルの目の前に現れたのは確かに闇の主の意思が具現化したもの。
やはり、封印されている今でも、全ての魂が他の別次元に移行することは不可能だった。
それは、恐るべき力。

「うがあああああ、助けて下さい、こんなっ、こんな所に永久に?気が、気が、気が狂う うぎゃあああああ」

タケルが耳にしたのは悲惨な悲劇を迎えた魂の叫び

「くそおおおおっ、絶対に助けるから、待ってろ、必ず」

影と手は既に消えていた。

もう、この宇宙に存在する全ての生命は、ここから逃げられない…
奴が目覚めれば、この宇宙は地獄と化す……

タケルはこの事実と向き合い、立ち尽くすしか無かった。


~ アンブラインドワールド 次章 ~

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