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『年越しを祝おう』
しおりを挟む鍵をちゃんとかけてから、家中の電気をつけ、更にテレビをつけ、ようやく安心したのか、ニンマリ笑顔を浮かべながらリビングに腰をおろす大ご機嫌なサーとスー。
あーこれでようやく一安心、ホッとした。
森の真っ暗道お外から一変、まるで太陽の陽射しの下にいる気分。
「あーさっきの石の怪物には少しびっくりしちゃった」とスー(ありゃ怪物じゃない、お地蔵様じゃ~)
すると多網が
「父ちゃん後で外に肝試しに行こう」
さすがにこの時ばかりは二人も正直な気持ちでの即答だったそうな「絶対やだ」。
こんな民家も何も無い森の中で肝試ししたらショック死するわい、心の中で二人は叫んでいた。
子供達もさっそくリビングでくつろぎだす
「あー家の中に帰って来ると何だかホッとするなぁ~」冬馬君が言う。
多網ときみ子もアゲアゲテンションマックス「旅先の泊まる室内の中、たまらんのじゃ~~」踊っている。
それを見てる大喜も大爆笑である。
旅先で泊まる場所、日常とは違う部屋の景色に何だか興奮しテンションは上がるのだ。
旅行、それはどうしてこんなに人の気分を酔わせウキウキさせるのだ。
ああ、良いなぁ~旅行!!
「ねぇみんな年越し始まる前に露天風呂入らない?」冬馬君の提案にみんな大盛り上がり「そりゃ最高だ~~」
スーがさっそく露天風呂にお湯はりをしてくれている、子供達もそれを見る為に露天風呂があるベランダに出て行く。
「ううっ、寒いっ」何だか外の空気が冷たいせいかとても澄んでいて気持ちかった。
瞬間瞬間に味わう空気の感じ、今と言うシュチュエーションのせいだろうか?
なんだかとても心地良く、また何故かどことなく懐かしい様な感じまでした。
いつか何処かで会ったことある様な、仲の良い友と再会する様なそんな不思議な気持ち、こんな空気との出会いは何故か気分が高揚する。
次に出会った時に思うのだ、あっ、あの旅行の時に出会った空気の感じだと。そんな時、時間を超えて思い出と出会う。
冬馬君にとってシミジミとなる瞬間の一つかも知れない。
空を見上げる冬馬君「うわぁー星が綺麗」上空に見える空一杯の星空、あまりに荘厳な美しさに身体が勝手に踊りだしてしまう。
「凄い、綺麗だね~~」きみ子が言った。
ああ、なんて最高の時間なんだろう、何だかあまりの嬉しさに涙までこみ上げてきそうになった。
みんなで過ごす旅行の夜、なんて幸せな気分なんだろう、みんなで過ごせるこの瞬間に感謝も、こんにちはと顔を出す。
あーー、生きてるんだ、旅行に来てるんだ、みんなと一緒に。
ビューーーー 冬の力強い風が辺りに吹き渡る、寒さを全身で受け止めながら風を感じ尽くした。
「うわぁー寒い~~」子供達の元気な声が、何も無い森の静寂の中に明かりを灯す様に木霊する。
ああずーっとみんなで一緒にこれからもこうして過ごしたい、いつまでもずーっとみんな一緒だったら良いな、冬馬君はこんな事を思う。
だけど、みんな段々と大人になり、その内全員揃っての旅行がなくなるんじゃないか?多網やきみ子も中学生、その内もう一緒に来なくなったり、受験勉強だったり、みんなで行く旅行もいつまでも続かない、そんな事を考えたら少し寂しくなった。
今こうしてみんなで過ごせる時間がなんとも有り難く、かけがえの無い時に思えた、神様お願いします、みんなでずっとこれからも一緒に居たい。
気づいたらそんな事、みんなの健康を心の中、本気で願っていた。
本当に心が澄んでしまう、美しい星空と今と言う瞬間
きっと僕はこの時の瞬間を一生忘れないだろう。
八十になっても、きっとこの時の思い出と、楽しかった日々を思い出すと思った。こんな事を思ったのはきっとあまりに綺麗な星空と旅行のせい。
「しかし、さすがに外は寒いや」大喜の声で子供達は家の中に戻り出す。
「この寒さの中の露天風呂がたまらないんだよねぇ」ときみ子。
リビングにある、低く大きな木のテーブルにさっきのスーパーで買ったお菓子やジュース、ビールを並べ大晦日を祝うパーティーが始まる
「じゃあみんなカンパーイ」
ここから再び大人を交えた語り合いが始まる(果たして、サーとスーを大人と呼べるかは分からんが)。
「人生振り返るとあっという間だったなぁ」そんな事をサーが言い
「そだね、もう折返し地点は過ぎたかな?」スーが笑う。
「変な話、もう今まで過ぎた年の数は生きれないんだもんねぇ」
「分からないよ寿命が伸びるかも知れないよ」二人は笑った。
「長いようで、過ぎればあっという間だったよここまで」
「ここまでどうだった?」と、多網のすげえ質問。
「うーん、まあ色々あったかなぁ」二人は顔を見合わせ三度微笑んだ。
すると今度は冬馬君が「悩んだ事とかもあった?」
「そりゃもう沢山、日々悩んだり考えてるよ、今だって。毎日の日課かね」と二人は四度笑った。(いちいち数えんでよろしい)
「そうなんだ~大変なんだね生きるって」そんな反応を示す冬馬君の返事にスーは優しく微笑んで「でも、人生は大変な事だけじゃないよ、楽しい事も沢山ある、それに辛かった事や色んな経験、何一つ無駄にはならないと思うんだ、その時は分からなかったけど、過ぎてふと振り返るとそう思うよ、きっといつか全てが贈り物だと笑える日が来る、何だか偉そうにごめんね、いつか壁にぶつかった時、どっかのおじさんが旅行先で何か言ってたなぁ~なんて思い出してね」スーが言った。
冬馬君はスーのこんな優しさが好きだった。
スーはきっとこれから人生を生きる子供達に、生きるのは大変だと言う一つの思いにとらわれて生きて欲しくないと思ったんだと思った。
人生はいつだって喜びに溢れている、それは見つけようと思い、見渡せば必ず見つかる。
可能性はいつだって無限大、いつだって人生を楽しむチケットは僕が持ってるんだ。
冬馬君は永久パスの遊園地チケットをかざすようにニコリと笑った。
テンションの上がっているサーとスーのお酒も進む「いやぁーみんなで呑むお酒は旨しだね」
「最高~~」きみ子が吠える
時刻は23時を過ぎていた
「あー本当に今年も終わっちゃうんだね」何だかしみじみする。
「行く年来る年だっけ?もうそろそろだ」とサーが言う。
「ねぇみんな来年のげん担ぎしよう」と、きみ子
「げん担ぎ?」きょとんとする皆をよそにきみ子が立ち上がり、拳を片方づつ前に突き始めた。
げん担ぎってこれか~、冬馬君は思う。そーいや去年もやったっけ?
「ファイ ファイ ファイ ファイファイファイファイファイファイファイファイ」正拳突きと同時に響き渡る沢山のファイ達(達って、人物かい!)
「よーし」子供達はみんな一斉に立ち上がり叫び出す
「ファイファイファイファイファイファイファイファイファイファイファイ」
サーとスーは思う、なんじゃこりゃと!!
恥ずかしがるサーとスーを見てきみ子はおっしゃったそうな。
「気合いが足りん、みんなファイ言った後、一人一人ポーズを決めて、分かった?まずは私から」
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「ファイ ファイ ファイ ファイ きーーーみぃ~~ファイきみファイきみファイきみファイ ファイ~~~」
きみ子は両手を天にかざしグーチョキパーをして最後に叫んだ。
「きみファイ~~~~~~~や~ー~きみファイ」
あまりの迫力にサーとスーはひっくり返る、なんじゃこれは?この娘大丈夫か?と、まさか取り憑かれたのかと。
「みんな前した人と同じポーズは罰ゲームだよ」そのきみ子の発言にヤバイ先のが有利だと、恥ずかしさを忘れ一斉に子供達が動き出す。
次に動いたのは多網
瞳を閉じてからーの、カッと開きーの も一度 カッ!!
「多網ファイ」 ブワあんっブリブリぶりぶり~~ブフォッ
けたたましいサイレンの様なオナラが爆発した。
多網はウンコするポーズをしたと同時にトイレへ直行する。
きみ子は頷きながらこう言ったそうな「立派な実がでたんや」と。
バッ すぐさま動いたのは大喜、あまりの恥ずかしさに顔は真っ赤だった。しかし、年の終りだ、気合を入れるんだと勇気を振り絞り立ち上がる。
「大喜ーーーーーーーーーーっ ファイ~~~~~~わ~やっちゃってる~~~やっちゃてるよ~自分~~ファイ」(心の声もろに出とる)顔は真っ赤で、今にもトマトの仲間入りが出来そうなくらい、店頭に並んだ暁には大喜ファイトマトと命名しよう。
「大喜のファイ~~」(何故か(の)をつけてしもうた)
ポーズはあまりの恥ずかしさに出来ず、何故か礼をしていたそうな。
その姿を見たきみ子は言ったそうな「アートや」と。
続いて冬馬君、心臓はバクバクしている。ふと一瞬思った、今旅行中だったよな?何故こんな緊張してるんじゃ?と。
「ううーーーーーっうーーーーっトウバ トウバ トウバ」あまりの緊張にファイを忘れてる事に気づいてない。
ハッ思い出し「ファイ ファイ トウバ」よしっ、最初のミスを取り返すぞ。冬馬君はポーズに命を賭ける。
ビュオンッ ジャンプしてしゃがんでジャンプ、この瞬間冬馬君の顔は大喜トマトの顔より赤かった、いや、全身は、と言っておこう。赤ピーマン冬馬の完成である。
店頭に置かれる暁にはこう告知しておこう。
ファイにより熟された旬のファイ漬け赤ピーマン冬馬です。
あーっ恥ずかしいっ、はやくフィニッシュを決めたいが止められなかった。何故なら今終わったらシーンとして沈黙に包まれると分かっていたからだ、なにかやらなきゃ、このままじゃ。
赤ピーマン冬馬は飛び跳ねる度にどんどん熟されていく。
赤く 赤く もっと赤く。
ええいっ、やってやる。
冬馬君は頑張った、頑張ったった!
両手をパーにして前に突き出した。「トウバファイ」
しーーーーーん し~~~~~~~~~~~~ンっ
あまりに長い沈黙が旬の赤ピーマンを一瞬で腐らせてしまう。
ビグチャッ(なんちゅー効果音)
えっ?やばいよ何これっ?誰か笑ってよっ。
この状況を察し、気を遣った大人サーとスーが笑った。
フフッ
ぎょわあああんっ~~そんな微妙な笑いなら要らんわぁ~心の中さっきまで旬だった赤ピーマンが叫ぶ。
「ノオーーーーーッこんな年明け嫌じゃーー」
これがうけたそうな。
続いて最後は嫌だと、清水の舞台から飛び降りたのはスー。
あまりの緊張に真っ黒になってたそうな(なんでじゃ)
緊張は彼の頬をこけさせ、ガリガリにさせる(どんなじゃ)
そして緊張に愛された男スーは一言こう叫んだそうな
「スーファイ」
ポーズは真顔で緊張のあまり立ちすくんでいたと後世に伝えられている。
それは何とも神々しい姿で、見る者をこう思わせたそうな。
緊張は人をここまでやつれさせると。
サーも凄まじすぎる緊張感で震えは止まらず痙攣していた。
「あがががががががががががが」彼は極度の緊張の最中こんな事を思った、ここは地球だよな?何故私はこんなに痙攣してるのか?マッマーーと。
サーは震えてる姿を見せたくなかった、いや、そんな自分を誰にも気付かれたくなかったので、痙攣しながら床をコロコロ這いつくばった、それはまるで掃除する時に使う、床でコロコロしてシールにゴミをくっつけ掃除するあれ!!(名前知らんもん)
この時新商品が完成した、商品名、痙攣サーコロコロ。
開発した私は年商300円はくだらないだろう。
定価一個0.2円。ゴミは少しくっつく。たまに叫ぶマッマと。
サーはコロコロ掃除しながら叫んだ「シーケンサー シーケンサー シーケンサー」彼は緊張のあまりファイを忘れ、何故かシーケンサーを連呼していたそうな。
きみ子は震え悶え吠えた「アンビリーバブル」
シーケンサー シーケンサー シーケンサー
「あっ」大喜のその言葉に一同驚愕する
シーケンサー シーケンサー
「年明けてる」
シーケンサー シーケンサー シーケンサー シーケンサー
新年そうそう部屋に流るる言葉
シーケンサー
シーケンサー
シーケンサー
チーーーーーーンッ
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