冬馬君の秋と冬

だかずお

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『ピッグスー』

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ザッ 

男はジャケットを羽織る。
ジャケット下には小さな文字で大量に豚と書かれたガラシャツ、ズボンの両膝には豚の顔。カシャ グラサンをかけ完成 ジャジャ~ン!!(良くこんな服見つけたな、きみ子)
名付けてピッグスー。

「ゆこうか」

おお~っ、なんか喋り方まで違う。
「格好いいよピッグスー、これならサツキさんも惚れるよ」満足気なコーディネーターきみ子。

「なんかワクワクするね」冬馬君と大喜は駆け足で玄関の外の車に向かう。
さあ車に乗っていざ出陣。
ピッグスーは平静を保っていたが実は失禁していた(おっと、ちょっと盛りすぎたか、失禁はまだしてないがあまりの緊張に失禁しそうだった)。ああ緊張する、なんか僕はとんでもない勘違いしてるんじゃ?こう冷静に考えてしまう自分もいる。
だが男は一歩踏み出しこう言った。

「行こうぜ、ピッグピッグベイブ」
サーは、なんじゃとひっくり返り、子供達は歓声をあげる「イカス」ブゥゥーン、車はサツキさんの働く店に出発する。
車の中、ピッグは(あっ、略された)告白する瞬間を想像していた。

「サツキさん」スーは片膝を地面につけこう言う。

「ピッグピッグベイブ」(何語じゃ!)(英語じゃい)
スーは会話の予行練習をしていた、何を話そう?どんな会話?会話のシュミレーションが始まる。
「美しいっすよね(絶対に言えない)」

「あっ、そんなスーさんったら、私嬉しい(間違いなく言わない)」

「君に出会えて僕は嬉しい」

「私も」

そうだ、どんなポーズでサツキさんの前に座ろう、どんな表情で話を聞こう、どんなキャラでいこう?そこまで考えていた。
こっから今夜はスーの精神を奥深くまで皆さんは覗き込む事となる。が、あまりに浅すぎてすぐ底にコツンと着いてしまうかも知れない。
ブゥゥーン、そんなスーを乗せ車は店に到着する。
「着いたよ」

ズギャアアアンッ 

何気ないサーの一言が胸を貫いた(すげー効果音、着いたよ言っただけじゃ)。
男は躊躇する、やっぱ帰ろっかと。サーに背中を押されようやく店に入ったピッグスー。
「あっどっ、ども、どうも、おはようございます」現在19時。

店の中にはサツキさん一人

スーはこのシチュエーションに歓喜した。やったチャンスじゃ、これなら話しやすい、絶対に他の客よ来るな~!スーが祈る。

「本当に来て下さったんですね、嬉しいです」
スーはその言葉に泣きかける。
何か粋な返事をしようと思ったが「あっがはっ、ありがとぅ」噛んだった。

「スーさんって本名はなんですか?」サツキさんのただの社交辞令的な質問を、このいとおめでたき男はこう思う、あっサツキさん自分の事に結構興味あるんだと。

「とけたみです」

「そうなんですか~」
会話は終わる。
この沈黙が異様に気まずいスー、何か言わなきゃ、何か喋らなきゃ一人テンパりだす。

「あっ、あの今日寒いですよね」

「そうですよねー」

終わる会話

「サンマとサバどっちが美味しいですか?」

「えっ?私はサンマが好きです」

「かはっ」不気味で気まずい笑みを浮かべるスー。
再び沈黙

「今日昨日より寒いですよね?」
きみ子がずっこけ頭を抱える。
するとサーのナイスアイデアが友人のスーを救うキラーパスを繰り出した。

「スー僕は運転で飲めないけど、良かったらお酒飲みなよ」

「えっ、悪いね。それじゃお言葉に甘えて」

多網がこんな注文をする「テキーラショット3つ」
ギョッとするスー、むっ無理だよ。
驚くサツキさんが「えっ、一気に飲めるんですか?」

「サツキさんはお酒強い人好き?」きみ子の質問に「大好き」と返事した瞬間だった。

男はグラサンをかけ、こう言った
「テキーラ6ショット下さい」

椅子から転げ落ちた冬馬君と大喜とサー。
「えーっ、凄い本当ですか?お酒強いんですか?」

「まっ、ショットくらいは毎日たしなみますよ(嘘つけ~)」

「凄いです、じゃ私からのサービスも込めて」
10のショットグラスがスーの前に並ばれたそうな。
気を失いかけるスー、まじか!!

「まあ、ゆっくり飲んで下さい」サツキさんの優しいセリフをかき消すかの如し多網が「一気にいくの?」

ギョッ「何言ってるの多網、駄目だよ」サーが止める。
「今どきバーで一人10ショット飲む人も珍しいですよ、なんか惚れ惚れしちゃうな」サツキさんのその言葉に男は飛び出した。
ごキュッ。

「わぁ~良い飲みっぷりですね」

男は微笑み、そして言うたそうな

「甘いね」

冬馬君と大喜は顔を見合わせる
「大丈夫なのか?」
そして男は間髪いれずクビッ二杯目「凄い」
男は言うたそうな

「水だね」

「本当お酒好きなんですね」

するときみ子が「お酒強いスーは好き?」その質問にサツキさんは答える「うんっ」スーのブレーキは消し飛んだ。

クビッ「かははははっ、砂糖だね」

クビッ「うん心地良い」

「ちょっと大丈夫ですか?」

クビッ

「あはははこれは酒だ」
一瞬鼻からゲロとテキーラが飛び出しそうになる。
「ちょっとスー何してんのハイペースで飲み過ぎだよ、無理しないで」サーが止める。

「何言ってんの?僕が無理?いつもこれくらい飲むじゃない」
サーは思う、何だこの見栄はりは(己のいつもの姿)

「まだまだ大丈夫だっほ~いピッグピッグベイブ」既にやばい。

「飲めるのは分かったからゆっくり行こう」サーの発言に一瞬、我にかえる「そうだね」
大喜が「サツキさんはこの場所で生まれ育ったんですか?」

「そうだよ

」すると男は小さく誰にも聞こえない様な声で囁いた

「オーッベイブッ」
きっとサツキさんは思っただろう、なんじゃこいつはと。

「スーさん良かったらお水飲みますか?」 

「やだなこれくらいで水なんか」
グビッなんと男はワンショット追加。
これにはみんなびっくり、ちょっと飛ばしすぎだよ。
次の瞬間男は目ん玉からゲロを吐きかけたが、必死に堪えていた。
そして男は酔い覚醒してしまった「オーッピッグピッグベイブ」
ギョッとするサツキさん、いや一同。
多網、きみ子大爆笑「来た~っ、何かが来た~っ」

「ベイブぅ~う~ぅ~ぅ~」
この雄叫びを聞き冬馬君は思った。こ奴大丈夫か?と。
多網ときみ子は言う「ここにカマーン正子とウェルカムウィメン居たらやばかったね」(その名前だけで既にヤバさをかもし出している)

「スーさんちょっと飲み過ぎましたか?」

「オーッノーノーノーオッケーッケー(何故か英語)」
きみ子は思う、よしっこのテンションで会話じゃ、スーの背中を軽く押して合図する。今ならゆける~!!

「サツキさん」

突然のスーの呼び掛けに皆一瞬肝を冷やす。
まさか、いきなり告るとかか?やばいっ!!
今のテキーラピッグスーは何をしでかすか分からないっ。

「ふふっ、サツキさん、このテキーラまいう~でふ」意外に普通な言葉だった。

大喜が冬馬君に耳打ちする「スー相当酔ってるね」

「確かに」
子供二人に気づかれるくらいだ、サツキさんはもちろん気づいているだろう。

「スーさん酔は大丈夫ですか?」
サツキさんの心配にスーは「ならはははっよってないっスー」また見え透いた嘘を。

「あっは~なんか喉が乾いちゃったなぁ」ショットグラスを持ち上げて更にグビッ

みんなは目をまんまる更にプラス大口を開けて驚く

「スー飲み過ぎだよ」

スーは飲んだ直後、目と鼻とけつの穴から、おゲロ様を出現させそうになる、やっ、やばいこのままじゃゲロゲロピッグスーになっちゃう。サツキさんに嫌われちゃう、男は必死に耐えた。
だがこれはやばかった、ちなみに店に入って五分足らずの出来事である。
酒の事を考えるだけで、奴が身体の内から噴出しそうなのだ。
目の前のテキーラが視界に入らないように上を向く。

「スーさん凄い飲みっぷりでなんか格好良かったです」

サツキさんのこの言葉にピッグスーは息を吹き返した、うぅ~~っピッグピッグスー!!
この後ピッグスーが大爆発する。



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