69 / 72
『ピッグスー』
しおりを挟むザッ
男はジャケットを羽織る。
ジャケット下には小さな文字で大量に豚と書かれたガラシャツ、ズボンの両膝には豚の顔。カシャ グラサンをかけ完成 ジャジャ~ン!!(良くこんな服見つけたな、きみ子)
名付けてピッグスー。
「ゆこうか」
おお~っ、なんか喋り方まで違う。
「格好いいよピッグスー、これならサツキさんも惚れるよ」満足気なコーディネーターきみ子。
「なんかワクワクするね」冬馬君と大喜は駆け足で玄関の外の車に向かう。
さあ車に乗っていざ出陣。
ピッグスーは平静を保っていたが実は失禁していた(おっと、ちょっと盛りすぎたか、失禁はまだしてないがあまりの緊張に失禁しそうだった)。ああ緊張する、なんか僕はとんでもない勘違いしてるんじゃ?こう冷静に考えてしまう自分もいる。
だが男は一歩踏み出しこう言った。
「行こうぜ、ピッグピッグベイブ」
サーは、なんじゃとひっくり返り、子供達は歓声をあげる「イカス」ブゥゥーン、車はサツキさんの働く店に出発する。
車の中、ピッグは(あっ、略された)告白する瞬間を想像していた。
「サツキさん」スーは片膝を地面につけこう言う。
「ピッグピッグベイブ」(何語じゃ!)(英語じゃい)
スーは会話の予行練習をしていた、何を話そう?どんな会話?会話のシュミレーションが始まる。
「美しいっすよね(絶対に言えない)」
「あっ、そんなスーさんったら、私嬉しい(間違いなく言わない)」
「君に出会えて僕は嬉しい」
「私も」
そうだ、どんなポーズでサツキさんの前に座ろう、どんな表情で話を聞こう、どんなキャラでいこう?そこまで考えていた。
こっから今夜はスーの精神を奥深くまで皆さんは覗き込む事となる。が、あまりに浅すぎてすぐ底にコツンと着いてしまうかも知れない。
ブゥゥーン、そんなスーを乗せ車は店に到着する。
「着いたよ」
ズギャアアアンッ
何気ないサーの一言が胸を貫いた(すげー効果音、着いたよ言っただけじゃ)。
男は躊躇する、やっぱ帰ろっかと。サーに背中を押されようやく店に入ったピッグスー。
「あっどっ、ども、どうも、おはようございます」現在19時。
店の中にはサツキさん一人
スーはこのシチュエーションに歓喜した。やったチャンスじゃ、これなら話しやすい、絶対に他の客よ来るな~!スーが祈る。
「本当に来て下さったんですね、嬉しいです」
スーはその言葉に泣きかける。
何か粋な返事をしようと思ったが「あっがはっ、ありがとぅ」噛んだった。
「スーさんって本名はなんですか?」サツキさんのただの社交辞令的な質問を、このいとおめでたき男はこう思う、あっサツキさん自分の事に結構興味あるんだと。
「とけたみです」
「そうなんですか~」
会話は終わる。
この沈黙が異様に気まずいスー、何か言わなきゃ、何か喋らなきゃ一人テンパりだす。
「あっ、あの今日寒いですよね」
「そうですよねー」
終わる会話
「サンマとサバどっちが美味しいですか?」
「えっ?私はサンマが好きです」
「かはっ」不気味で気まずい笑みを浮かべるスー。
再び沈黙
「今日昨日より寒いですよね?」
きみ子がずっこけ頭を抱える。
するとサーのナイスアイデアが友人のスーを救うキラーパスを繰り出した。
「スー僕は運転で飲めないけど、良かったらお酒飲みなよ」
「えっ、悪いね。それじゃお言葉に甘えて」
多網がこんな注文をする「テキーラショット3つ」
ギョッとするスー、むっ無理だよ。
驚くサツキさんが「えっ、一気に飲めるんですか?」
「サツキさんはお酒強い人好き?」きみ子の質問に「大好き」と返事した瞬間だった。
男はグラサンをかけ、こう言った
「テキーラ6ショット下さい」
椅子から転げ落ちた冬馬君と大喜とサー。
「えーっ、凄い本当ですか?お酒強いんですか?」
「まっ、ショットくらいは毎日たしなみますよ(嘘つけ~)」
「凄いです、じゃ私からのサービスも込めて」
10のショットグラスがスーの前に並ばれたそうな。
気を失いかけるスー、まじか!!
「まあ、ゆっくり飲んで下さい」サツキさんの優しいセリフをかき消すかの如し多網が「一気にいくの?」
ギョッ「何言ってるの多網、駄目だよ」サーが止める。
「今どきバーで一人10ショット飲む人も珍しいですよ、なんか惚れ惚れしちゃうな」サツキさんのその言葉に男は飛び出した。
ごキュッ。
「わぁ~良い飲みっぷりですね」
男は微笑み、そして言うたそうな
「甘いね」
冬馬君と大喜は顔を見合わせる
「大丈夫なのか?」
そして男は間髪いれずクビッ二杯目「凄い」
男は言うたそうな
「水だね」
「本当お酒好きなんですね」
するときみ子が「お酒強いスーは好き?」その質問にサツキさんは答える「うんっ」スーのブレーキは消し飛んだ。
クビッ「かははははっ、砂糖だね」
クビッ「うん心地良い」
「ちょっと大丈夫ですか?」
クビッ
「あはははこれは酒だ」
一瞬鼻からゲロとテキーラが飛び出しそうになる。
「ちょっとスー何してんのハイペースで飲み過ぎだよ、無理しないで」サーが止める。
「何言ってんの?僕が無理?いつもこれくらい飲むじゃない」
サーは思う、何だこの見栄はりは(己のいつもの姿)
「まだまだ大丈夫だっほ~いピッグピッグベイブ」既にやばい。
「飲めるのは分かったからゆっくり行こう」サーの発言に一瞬、我にかえる「そうだね」
大喜が「サツキさんはこの場所で生まれ育ったんですか?」
「そうだよ
」すると男は小さく誰にも聞こえない様な声で囁いた
「オーッベイブッ」
きっとサツキさんは思っただろう、なんじゃこいつはと。
「スーさん良かったらお水飲みますか?」
「やだなこれくらいで水なんか」
グビッなんと男はワンショット追加。
これにはみんなびっくり、ちょっと飛ばしすぎだよ。
次の瞬間男は目ん玉からゲロを吐きかけたが、必死に堪えていた。
そして男は酔い覚醒してしまった「オーッピッグピッグベイブ」
ギョッとするサツキさん、いや一同。
多網、きみ子大爆笑「来た~っ、何かが来た~っ」
「ベイブぅ~う~ぅ~ぅ~」
この雄叫びを聞き冬馬君は思った。こ奴大丈夫か?と。
多網ときみ子は言う「ここにカマーン正子とウェルカムウィメン居たらやばかったね」(その名前だけで既にヤバさをかもし出している)
「スーさんちょっと飲み過ぎましたか?」
「オーッノーノーノーオッケーッケー(何故か英語)」
きみ子は思う、よしっこのテンションで会話じゃ、スーの背中を軽く押して合図する。今ならゆける~!!
「サツキさん」
突然のスーの呼び掛けに皆一瞬肝を冷やす。
まさか、いきなり告るとかか?やばいっ!!
今のテキーラピッグスーは何をしでかすか分からないっ。
「ふふっ、サツキさん、このテキーラまいう~でふ」意外に普通な言葉だった。
大喜が冬馬君に耳打ちする「スー相当酔ってるね」
「確かに」
子供二人に気づかれるくらいだ、サツキさんはもちろん気づいているだろう。
「スーさん酔は大丈夫ですか?」
サツキさんの心配にスーは「ならはははっよってないっスー」また見え透いた嘘を。
「あっは~なんか喉が乾いちゃったなぁ」ショットグラスを持ち上げて更にグビッ
みんなは目をまんまる更にプラス大口を開けて驚く
「スー飲み過ぎだよ」
スーは飲んだ直後、目と鼻とけつの穴から、おゲロ様を出現させそうになる、やっ、やばいこのままじゃゲロゲロピッグスーになっちゃう。サツキさんに嫌われちゃう、男は必死に耐えた。
だがこれはやばかった、ちなみに店に入って五分足らずの出来事である。
酒の事を考えるだけで、奴が身体の内から噴出しそうなのだ。
目の前のテキーラが視界に入らないように上を向く。
「スーさん凄い飲みっぷりでなんか格好良かったです」
サツキさんのこの言葉にピッグスーは息を吹き返した、うぅ~~っピッグピッグスー!!
この後ピッグスーが大爆発する。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ピアノ教室~先輩の家のお尻たたき~
鞭尻
大衆娯楽
「お尻をたたかれたい」と想い続けてきた理沙。
ある日、憧れの先輩の家が家でお尻をたたかれていること、さらに先輩の家で開かれているピアノ教室では「お尻たたきのお仕置き」があることを知る。
早速、ピアノ教室に通い始めた理沙は、先輩の母親から念願のお尻たたきを受けたり同じくお尻をたたかれている先輩とお尻たたきの話をしたりと「お尻たたきのある日常」を満喫するようになって……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる