文太と真堂丸

だかずお

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~ 運命の悪戯 ~

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僕達はすぐに真堂丸、道来さんを担ぎ、洞海さんの案内する場所に向かい始めることに。
まだ辺りは夜の闇に包まれ真っ暗。

「俺はこの辺りで生まれ育ったんです、だからこれから向かう場所を知っていたんです」

二時間くらい歩いただろうか。

そこは海の入り江
「あそこの岩の裏が洞穴になっていて実は長い一本みちが続くんです、そこを抜けた先に森に繋がります、あの場所ならすぐには見つからないと思います」

「あんな場所が森に続くなんてな、確かに隠れるには最高かもしれない」太一が頷く

確かにその洞穴の入り口は周りの岩によってちょうど隠されるようにあり見つかりにくい位置にあった。
仮に見つかっても、入り口は狭く、誰もこの洞穴が森に続くような道になってるとは思わないだろう。

「まずは二人が完治するまで、この穴を抜けた森で身を潜めましょう」文太が言う

菊一が「そうだな、本当は俺たちの居場所が知られた以上、全然違う地に逃げるのが一番良いが、二人のこの傷の状態では無理はできない、あとは森に潜み、もし敵が攻めて来たら俺たちでこいつらを全力で守るんだ」

「おうっ」  「はいっ」

僕達は一旦、洞穴を抜けた森に身を潜めることとなる。
大帝国に見つからなきゃ良いが。
緊張の糸は途切れることはなく張り詰められたままだった。
見つかれば皆殺される。

森での生活から丸三日がたった頃
「一旦、俺は洞穴を抜け外の様子を調べてくる」菊一が言った。

「分かりました」

「なるべくすぐ戻る」
ザッ 
菊一が立ち上がる

「大帝国は間違いなく秀峰の情報を元に、こないだまであっしらが居たところ付近はくまなく探してるに違いないでごんす、もしあの洞穴の入り口を抜け調べようなんてことを思われたら、ここも非常に危険でごんすね」

「この森は行き止まりになってるのか?」
太一が洞海に聞いた

「この三日の間で調べて見たんですが、この先は断崖絶壁の崖になっていて、行き止まりでした」

「もしあの洞穴が見つかったって考えるとゾッとするな」しんべえが身をすくめる。

「だから、菊一殿は外を見に、なるべくその前の段階で手を打てるよう様子を見に行ったでごんすね」

「二人の回復を待ちましょう、その間僕らは何としても二人を守りましょう」

「おおっ」

菊一は洞穴の外に出た
ここで隠れて、見張りが必要だな。
もし一人でもあそこを抜けようとする者が現れたらここで食い止めるしかない。
雑魚なら問題ないが、もし幹部連中が現れたら厄介だ。
菊一は岩陰に身を潜めていた。

これは一つの不運だったのかも知れない、何故なら雷獣が身を投げ激流に流されたあの場所は実はここから目と鼻の先だったのだ。
そう、つまり大帝国の白い刃と恐れられる大幹部の七人は、すぐこの近くに居たのだ。

ザッ   ザッ   ザッ
「雷獣は必ず生きている、あの男はしぶとい奴だ、くまなく探せ」
全身を白で覆う七つの影は散り、雷獣を探し始める。

ザアア ザアア
その日は雨だった。
菊一と洞海と一之助が交代で洞穴の外で入り口の見張りをしている。
後の者は真堂丸と道来の看病を続けた。
依然二人は目を覚ます事なく眠りについたまま。

ザアア    ザアア      ザアアッ
「ちっ、緊張感がとまらねぇ、もしこいつらがこの状態の時に幹部の一人でも来てみろ、俺たちは途端に全滅だ」しんべえが言った。

「洞海、一応聞くがお前の実力で幹部は倒せないか?」太一が聞く。

「はっきり言って不可能、幹部はどいつも化け物級。正直言って、真堂丸ならまだしも秀峰が無名だったこの道来と言う人に負けるなんて今だに信じられない、あの人も自分から見れば雲の上の存在でしたから、あの人に勝ったこの道来と言う人も只者じゃあない」
太一は何だか道来さんが褒められてるようで鼻が高かった。

「でも考えたら、そんな心配することはないんじゃないですか、ここまででも半数以上の幹部は真堂丸にやられ、秀峰も道来さんが倒してくれた、幹部も今はそんなに残ってないんじゃ」

「そうでしたね」洞海がため息まじりつぶやく

「あなた方は知りませんでしたね、この事実を」

「幹部は鬼道が空いた穴を全て埋めたはずです、確かな情報です、俺は秀峰から聞いたんです、幹部はまた全てすぐに揃うと」

みんなは驚きを隠せなかった。
「そんな馬鹿な、なら今まで俺たちがしたことは」
しんべえが立ち上がる

ギリッ

「とんでもねぇ怪物どもをこいつらは倒してきたんだぜ、本当に生き死にギリギリのところ恐ろしい実力者達、烏天狗、蝿王蛇、女狐、鬼神、骸」

「これが全く意味なかったことだって言うのか?また一から?ふざけんじゃねえよ」しんべえは今しがた知った事実に完全に取り乱していた。

「まぁ、そう焦るなしんべえ」菊一が言う

「この状況でどう焦るなって言うんだ」

「良いか、俺は一つの時代を生きてきた、一山達が居た時代、その中での本当の強者達を知っている」

「何が言いてぇ」

「その頃に居た本当の強者達はことごとくお前達に破れてるってことだ」

「つまり、今の埋め合わせの様な即席幹部じゃあ、あの本物の怪物達とは違うってことだ」

「つまり?」

「実力や、ヤバさは以前の幹部の半分もいかないだろ、鬼神級はそうそう居ないってことだ」

「確かにそうですよね」文太も頷く

「俺の生きた時代に名をはせた様な怪物はもう死んでるか、お前達に敗北してる。つまりあそこまでの実力者は新しい幹部には居ないはずだ」

「そうか」しんべえの表情がようやく明るくなる

「今、幹部で一番気をつけなきゃいけないのは一斎あいつだろう」

「骸ほどの奴に勝った真堂丸の可能性をおれは信じているが」菊一が言った。

「なんだよ、先が明るくなってきた気がするぜ、後は鬼道の奴をなんとかすりゃあ」しんべえが声をあげる。

「ああ、だがとにかく今は油断は禁物、こいつらが回復するまで、見つからない様にしなければ一気にこちらは皆殺しになる」

「気を引き締めていろ、今は俺たちがこいつらに代わり全てをやる時」菊一は立ち上がる。

「一之助と見張りの交代の時間だ」

「行ってくる」

「お願いします」

真堂丸、道来さん 
今は僕達を信じてゆっくり休んでいてください。
回復するまで必ず二人は命に代えて守ります。

辺りは薄暗くなってきていた、見を潜め見張りをする
菊一に突如緊張が走る

そう

目の前に一人の幹部の姿をとらえたからだ。
気配を極限までたち、息を殺し見張りを続ける
頼む…、洞穴をみつけるんじゃねーぜ 菊一が心の中願う。

ザッ   ザッ  ザッ
向かう先は洞穴の方
ちっ、しまった。
こっちに来る……
次の瞬間
全身を白で覆うそいつは洞穴を覗き込んでいたのだ。

何だこの穴は?
菊一が殺気を消しながら、刀に手をかける
緊張が走る

次の瞬間、そいつは穴に入らず元来た道を戻り始めた。

良かった、ただの行き止まりの洞穴としか思わなかったみたいだ。
だが菊一は見逃さなかった、彼のずば抜けた視力と観察眼は次の瞬間、相手が囁いた言葉を唇の動きから読み取ったのだ。
もし、今ここに居たのが菊一でなければ見逃していたやもしれない。


奴は確実にこう囁いていたのだ


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォー



「みぃつけた」


やるしかない、相手は一人、観察するに新入りの幹部
俺が奴をここで止めなきゃ全滅する。
菊一はすぐに相手を追う、この場所でやり合うのはまずい、少し離れた場所まで尾行し、叩き斬るしかない。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォー

運命の悪戯だろうか?

この直後一人の男が洞穴の前の海に流れ着く

そう、それは意識を失った雷獣だったのだ


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォー


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