文太と真堂丸

だかずお

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~ 直面 ~

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真堂丸の傷を治したかつての一山の友、菊一は自身の家の外に気配を感じていた。
暗い森のすぐ外に殺気を帯びた気配を感じる

「何者だ?」

「さすがだな、殺気を感じとったか?」

「真堂丸は何処にいる、ここに来ていた事は知っているのだ」

入り口の戸口に立つ者を菊一は見る
立っているのは赤い大きな鬼

「やれやれ、鬼か」

菊一は再び語りかける
「んで、俺はお前さんに誰だと聞いてるんだ」

「は?てめぇ何意味わからねえことを言ってやがる?」

すると赤鬼の後ろから声が
「ったく、分かってるくせに俺に話しかけるな」

「ほぉ 珍しい」

「久しぶりだな、ガルゥラ」

「どうやらお前もあいつらにあったらしいな」

「フンッ」

「貴様ら俺を挟んで話てるんぢゃねえ、二人殺すぞ」
赤鬼は刀を抜いた。


ゴロ ゴロ   ゴロ~~   鬼ヶ島では

「ったくよー、この天気何とかならねぇのかよ」
歩いていたしんべえはようやく民家を見つける
それは偶然にも、のの の家だった。

「民家だ、少し隠れさせてもらうとするか」
しんべえは戸口を外から叩く
「おい、誰かいねえか?」
返事はない
「鬼に見つかって殺されるのはごめんだ、誰もいやしねぇ、入っちまえ」

ガラッ
「うわあっ」しんべえは人が中にいた事に驚く
それよりも目の前に立つ女は自身の腹に刀を突き立てていた。
「馬鹿やろう」
しんべえは刀をとりあげた。

「何やってやがる」

「放して私も尚姉のところに」

「しっかりしやがれ」しんべえの怒鳴り声に ののは地面に膝をついた。

「ったく、何だってんだよ」

その頃、道来は皆と別れた洞窟の元へ走っていた、皆無事であってくれ。

ゴロゴロゴロ~~
真っ暗な空に激しい雷鳴が轟いていた。

「ったく、嫌な空だぜ」太一が言う

「それにしても、みなさん無事でごんすかね?」

「あの二人は大丈夫だと思います、今は先にしんべえさんを探さないと」文太は雷の光で一瞬明るくなった空を見上げた。

ドゴオオオーン   バリバリバリバリ

「っひゃー近くに落ちたぜこりゃ」驚く太一

「先を急ぐでごんす、妙な胸騒ぎがする」

「はいっ」

それは同時刻
龍山と呼ばれる場所での出来事
鬼神と並ぶ大怪物
白竜の住まう場所
白竜は遂に目を開いた
この怪物の歩く後には何も残らない、絶対に人間が手を出すことなど許されない、いや不可能だと言ったほうが良い そう伝えられる怪物が女狐の仇を討つ為、いよいよ動きだしたのだ。

「真堂丸と言ったか、人間風情がよく女狐を討ち取ったものよ」白く長い髭 鼻の下からはえるその髭はまるで龍の如くなびく

ゴゴゴゴゴゴ
「余が動き出す事があるとはな」
白竜は自身の立つ祠の外を突如睨んだ。

「ああっ、ああっ その恐ろしい瞳たまりません」

「貴様まだおったか」

「はいっ、白竜様  わたくしあなたの強さに惹かれて生涯あなたをお護りすると決めたのです」
そいつの顔は人間の骸骨であった、全身頭から黒い布を覆い被り、手にはとてつもなく大きな鎌が握られていた。
そいつの名は死神  その姿を見た者は決して生きれないと恐れられた化物であった。
こいつもまた厄介な猛者。

「あなた様だけが私の姿を見て生きておられる」

「あなた様の敵はあたくしの敵、その者に最大限の絶望と恐怖を与えましょうぞ」

「フンッ」
怪物達は動き出す。


その頃、鬼ヶ島では

「ののーののー」
しんべえはその声にギョッとした。
家の中から外を覗くと、そこには青鬼の姿が。

「なんだあいつか、おどかしやがって」
しんべえは外に出る。

その時、後方から声が
「おーいっ、しんべえさーん」
声は文太
しんべえはホッと胸を撫で下ろした。

「よかった無事でごんすか」

「けっしぶといやろうだぜ」微笑む太一

「おめぇら」
突然青鬼がしんべえに掴みかかる

「わっ、何だよっ」

「ののは、ののは?」

「あいつなら、疲れて眠ってるよ、あの落ち込みよう一体何があったんだよ」
青鬼は地面に顔を埋め

「のの の姉が殺された」

一同は言葉を失う
「あの娘にとっては姉が唯一残された家族だった、他は皆殺された」

「なんとっ」

「だから、あの野郎、死のうとしてたのか」

青鬼はうつむいたまま「そうか」とつぶやく
文太は黙って話をきいていた。
青鬼は呼吸を整えてから話はじめた

「お前らの仲間も一人死んだ」

「なんだって」太一、しんべえが叫ぶ。

「まさか、てめぇデタラメ言ってんぢゃねえぞ」太一が怒り青鬼を掴みかかろうとするのを一之助が必死に止める。

「背の低い方が鬼神さんと闘い殺された、もう一人はお前達を探してる」

「先生のほうか?」

「馬鹿やろう、真堂丸が負けるわけねえだろ」今度はしんべえが声をあらげた

「お前達がこの島を生きて出れる確率は無に等しい
それにお前達は普通に死ねない、息絶えるまでの拷問地獄をみるぞ」

その言葉にしんべえの頭は真っ白になる。

「文太さんどうします?」一之助が文太を見つめる。

「まずは、青鬼さん自分の手当てを、それから僕らは少し、のの さんの家にいさせてもらいましょう」

青鬼は男の顔を見上げた
男の目はしっかりしていた、この状況、この現実を目の前にしても不安に揺らがず瞳はまるでこう言っているようだった。

大丈夫

青鬼はその男の姿を見て、目をつむる「少し休む、ののを頼む」

「はいっ」
鬼神さんよりも遥かに小さく弱々しいこの人間、何故だろうな、こんなに弱そうな者の言葉に俺は安心している。
人間は不思議な生き物だな。
青鬼は目をつむった。

「しかし、文太の兄貴、真の兄貴を探しにいかないで良いんで?」

「真堂丸なら大丈夫、真堂丸は無敵ですから」
文太は微笑んだ

その言葉と表情は仲間達の不安を消しさるのに充分だった。

「ああ、そうでした」

「そうでごんすね」

「あの野郎はしぶといからな」

鬼神に吹き飛ばされた、崖の遥か下方
岩に突きさされた刀の上に真堂丸は立っていた。

上空は真っ暗な雷鳴轟く闇

下は嵐そのもの渦巻く荒れる海
ゴロゴロゴロオッ     ゴーオオオオオオオー ッ

「行くか」
刀を岩から抜いた瞬間、脚力だけで垂直に等しい岩を駆け上がって行った。

その頃
のの が目を開ける、姉の姿がないのを確認し、あれは夢ではなかった、ことをまじまじと実感していた。
「夢ぢゃない、現実だったんですね、私にはもう何もない」瞳にはまるで生命力、生きようとする意思はなかった。
しんべえは思った。
こいつも俺と同じく孤独、だがこいつは最初から孤独だったわけぢゃねえ、家族が居たんだ。
それが皆殺され一人になった。
しんべえの心は胸が張り裂けそうな思いにかられた。
かける言葉がみつからねぇ。
同じ経験をした一之助もまるで自身の過去を見ているようであった。

「ののさん、僕は文太です そして、一之助さんに太一さん、にしんべえさん 僕らはののさんの友達です、いつでも頼ってください」
のの  は何の反応も示さなかった。

「少し休ませてあげるでごんす」

皆が外に出ようとした時に、文太の目が本棚にふととまる、目に入ったのは姉の日記

「ののさん、お姉さんの日記が」
姉という言葉に涙を流す のの  か弱く力ない声が、力いっぱい出された
「読    ん  で  く   だ     さ     い」

そこに記されていたのは、のの の姉、尚が記した、ののが産まれるまえの物語

その頃 鬼神は苛立っていた
戻らぬ 幹部たち
「残りのごみを始末させようとしたが、何してやがるあいつら?」
鬼神は再び立ちあがる

「俺が直々に殺しに行くか」
雷は止んたが、空は依然真っ暗な雲に覆われていた。


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