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生の実感の巻
しおりを挟む昨日の事故から一夜明け
今こうして目を覚ませる事にホッとした
大喜や多網もホッとした様子で、今や昨日の出来事は笑い話になっているくらいだ。
「しかし昨日は、本当に息が出来なくてやばかったよ」
「最初は冗談かと思った」大喜が本当に焦った様子を振り返る
今こうして無事でいるのも、二人のおかげだと冬馬君は二人に感謝
今はいつもと変わらない平和な一日
ただ昨日の体験のおかげで死というものに初めて直面した気がした
。死を見つめたおかげで初めて生を実感したとでも言えば言いのだろうか?
昨日の出来事がなければ、今の用に感じたりする事はなかったかも知れない。
自分が明日死ぬかもなんて考えたこともなかった。
当たり前に明日も来て、ここで、みんなと過ごせると。
今は昨日までよりも、生の実感がより鮮明になっている様な不思議な感じもあった。それは昨日死というものに対面したからかも知れない。
何だか今というものがより尊く感じられる
冬馬君は考えた。
誰しも寿命というものがある、普通に生きてると忘れてしまうが
当たり前の様にまだまだこの先何十年も生きると思ってる
しかし実際の所、明日死ぬかも知れない
自分は、本当にいつ終わりが来ても後悔ない様に生きているだろうか?
昨日の出来事で冬馬君は今を生きる事の大切さを、前よりかみしめる様になっていた。
明日明後日には、またいつも通りに忘れてるかも知れない。ただ今は、心から大事な事に触れたそんな気もした。
冬馬君はある時、観たテレビ番組を思い出す
ある若い男の人がいて、その人はある時エイズにかかってしまったらしい。
その彼の死期も分かっている状態の時期に、友達が病院に見舞いに行く。
その友達は、あいつ、かなり落ち込んでるだろうなと心配して病院に向かったところ、友達は予想外の彼の様子を見て驚いた。
体は痩せ細って確実に弱まっている様子だったのに、彼の表情は今まで見た事のないくらい生き生きしていた。
友達はビックリして何かあったのかと?と聞いてしまうほどだった
するとその男が言ったのは
俺、今エイズになった事に感謝してると言う意外な答えだった
今病気になって自分が死ぬって分かって生まれて初めて生きてるという事を実感出来る様になったと言うのだ、そして今まで自分は死んでいたと言ったのだ。
病気にならなかったらそれに気付く事なく人生を終えていたという話だった。
この病気のおかげで生まれて初めて、生きてる尊さに気付き生きる
、そこに今まで以上に生の実感がわき、今までは生きてなかったという驚く返事
冬馬君はふと頭の中でその番組を思い出していた。
「おいっ、冬馬大丈夫か?」
ぼうっとしている冬馬君を見て大喜が声をかける
「大丈夫だよ」ニッコリ笑って返事をした
今こうして目の前に広がる景色を見て、心の中でありがとうと呟いた
色々な出来事は、大切な事を僕らに気づかせてくれてると冬馬君はいつかの時の様に、またそれを感じた。
心の耳を澄ましてみれば
そこにはどんな状況にも宝がある
その時は苦しいかも知れない辛いかも知れない 今は分からないかもしれないでも大丈夫
それは自身に贈られたプレゼントになる、そんな声が何処かからする様だった。
昼御飯の時も昨日の話でいっぱいだった。
冬馬君としてはだんだん恥ずかしくなり、もういいよと言う気分だったのだが
すると正子が何かを思い出した様に
「そうだ今日夜近所の毎年行ってるお祭りがやる日だ」と言った
「みんな行きたいでしょ」
やったー三人は飛び跳ね、大喜び
かくして、今夜も大喜と多網は家に泊まる事になり、賑やかな夜を想像して冬馬君はウキウキしていた。
「みんなで夜お祭りか、最高だ」大喜が言う
「しかも今日も泊まって、三人で過ごせる最高」
多網はムフフと静かに笑っている
もはや多網も冬馬君家の居心地が良く、すっかり帰りたくなくなっている様だ。
三人は二階にあがり、何買おうかな?などと話をして盛り上がっている
暫くすると大喜のお母さんも家に来た。毎年四人で行くのが恒例のこの祭り
今年は初めて、多網も一緒だ
そのお祭りは露店なども沢山出ていて、地元では大変賑わうお祭りであった。時刻は夕方になり五人はお祭りに向かう
家からお祭りに向かう最中、沢山の人が浴衣を着て歩いては賑わっている、ああ夏のこの雰囲気が冬馬君は大好きだ
夏のお祭り
今、目の前には沢山の露店が両端にぎっしり並んでいた
沢山のカップルや家族連れ
若い人達 老人達、みんな笑顔で嬉しそうに歩いている
屋台の明かりが夜の街を明るく彩っている
あー夏だなぁと冬馬君は感じた
例年以上にじっくりその光景を眺めてる自分がいた
本当に美しい光景
生きていて良かった。今ここに居るんだなぁ、生きてるんだなぁ、ふと昨日のおかげでそんなことを感じた。
「さてみんな好きなもの買って良いよ」と大喜のお母さん
さて祭り楽しむぞー!!
祭りの夜が始まる
賑やかな活気ある 空気と雰囲気が、子供達の気分をよりワクワクさせていた 夏の夜
つづく
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