冬馬君の夏休み

だかずお

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まさかの事故

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朝目を覚ますと昨日の夜の雨が嘘の様に外は晴れていた。
まだ大喜も多網も寝ている様で、クーラーは一日中付けっ放しになっていた。

そうか、いつもと景色が違うと思ったら昨日は下のリビングで寝てたんだ。

昨日の夜は本当に面白かった、もう一回やりたいなと冬馬君は思い出しては笑った。
子供達だけの留守番で、夜は怖い映画に、雷に、大雨 そして多網の驚いた顔、いやー面白かった。

そしてまだ二人共寝ていたので、また眠りにつく事に

今日は八月の七日 、冬馬君は夏休みが残り一ヶ月を切ったのを一瞬寂しく感じたが、まだ三週間以上遊べると思い直し、わくわくした。

結構色んな事があったなあ、こうやってずっと毎日夏休みで、好きな人達と好きな事だけして過ごせたら最高だなぁなどと考えた

二階で、物音もするから両親も無事に帰って来てるんだなと分かり一安心。
隆と正子の声が聞こえていたので二人共、家にいる事が寝ながらにして分かった。

今日も蝉は元気に鳴いている
蝉の鳴き声を聴きながら冬馬君は再び夢の中に入っていった

二度寝最高

今は14時過ぎ

三人は昼飯を食べ終えて遊んでいる

その日は、部屋の中で音楽をかけて飛び跳ねていた

まさかこの時、あんな事になるとは誰しもが予想していなかった

三人はいつも以上にはしゃいでいて、部屋中飛び跳ねては駆けずりまわっている
冬馬君はテーブルの上に大きな飴を見つけ口にした。
そして引き続き、部屋の中を駆けずりまわって遊んでいたのだ。
だがその時、予期せぬ事が起こってしまった。
まさかこんな事になるなんて

冬馬君が、遊んでいる最中、急に部屋にうずくまる、息が出来ないのだ。なんと飴が喉に引っかかってしまっていた。

まだ誰もそれに気付かない

いっ 息が出来ない !!
冬馬君は、どうして良いか分からず焦った。とりあえず誰かに知らせなきゃ、意識が遠のく、大喜の肩に手をやり必死に大喜を揺らす

大喜はそれを見て、冬馬君がふざけてるのかと思い「何やってるんだよ」と笑った

ただ暫くすると、冬馬君の様子がおかしい様に大喜には思えた。
多網も、それを見ていて叫ぶ

「大丈夫か?」大喜も多網も、冬馬君の様子のおかしさに、気付き焦っている。

大喜が多網が声に出して、焦って叫ぶのを初めて見た、そしてその光景を見て事態がもはや、ただ事でない事を悟った

大喜は走って二階の隆と正子の元に向かう

冬馬君は呼吸が出来ず、意識がもうろうとしていた

ただ多網が叫び、大喜がもの凄い勢いで必死に二階に駆け上がって行く姿を、もうろうとする意識の中で冬馬君は見ていた

すぐに二階から隆と正子が降りて来る
正子は、どうしようとパニックになって慌てていた、

隆は事態の深刻さに気付き救急車をすぐに呼んだ
正子は涙を流し冬馬君の背中をさすっている
正子が泣いてるのを初めて見た。
大喜も必死に叫んでいる、こんな多網も見た事がなかった。必死に何かを言っている

冬馬君は、こんな意識の中でも、みんなが本当に必死で心配してくれてるのが、何だか嬉しかった

そして、今にも消えそうな意識の中、思った。みんなありがとう

あっ 駄目だ 景色が消えそうだ

大喜が泣きながら冬馬君をさすっている
皆の目からも、冬馬君がどれだけ危険な状態なのか一目瞭然だった
今や冬馬君の顔には斑点が出始め、顔は真っ青になっていたからだ

冬馬君は消えそうな意識の中、正子の手を強く握った

「あんたしっかりしなさいよ」正子の声だ


ゆっくり 



ゆっくり



だった




全てがゆっくり流れていた



突然、耳に響いたのか心に響いたのか、分からなかったが、みんなの声がハッキリ聴こえた 感じたと言った方が良いのかも知れない


「おいしっかりしろ おい」隆も必死に冬馬君を抱きかかえ叫んでいた


「駄目だー死ぬなーおいっ」多網らしいユニークな叫びだった


「冬馬 清香に会わなくていいのかよ」大喜は泣きながら叫んでいる

冬馬君は、その光景を冷静に見ながらも、自分の目から涙がこぼれたのを消えいりそうな意識の中感じた。ただただ嬉しかった

最後にこんなに大切にされてる事を知れて こんなに愛されてる事を知れて



死 



もう死ぬのかな



もう限界だった







呼吸がさ 呼吸が出来なかったんだ・・・








家の中が、急に慌ただしくなる

さっき呼んだ救急車が到着したのだった

隊員は冬馬君に近づく

家の人達は「助けて下さい 助けて下さい」と叫び
近所の人達は何事かと、皆家から出て来てその光景を見ている

冬馬君は救急車の中から、自分が景色を見ているのが分かった
隣には正子と隆が居るのがぼんやり感じられる
流れて行く街の景色は薄らいで行き、今にも消えいりそうだった

動いている車の中から見る景色だったからなのか、薄い線が横にどんどん流れて行くように見え何だかロウソクの火をボンヤリと眺めている様な感じだった

救急車が病院に着いた時には・・・






既に











冬馬君の呼吸は






















復活していた


病院の先生いわく
「喉にひっかかっていた飴が、どうやら溶けたみたいです」

「ただ言っておきたいのは、顔に出ていた斑点、死ぬ直前でしたよ」

隆と正子はゾッとした

冬馬君は何でもなかった様にそのまま病院から家に戻ってきた

留守番していた大喜と多網とも笑い合い抱き合った

生きてる事の喜びをかみしめた瞬間

そしてこれだけ心配してくれた家族達に心から礼を言った

その日は、大喜も多網も冬馬君と一緒にいたかったみたいで二人共帰らずに泊まってくれた

夜寝る時に、両端に彼らが居る事がとても嬉しかった

寝ながら冬馬君は普段意識にすらない死という事を考えている

まさか自分には全く関係のない、何処かよその人の体験だと思っていた。でも今日の体験で、死というものを見つめざるを得なかった

だけど、冬馬君は自分が死ぬ事よりも周りの大切な人達が死ぬ事の方が恐いななども考えたりもした。

その日は、今まで考えた事のない事を考えるキッカケになった日
とりあえず今日は疲れたので眠りにつく事に。
今こうして布団の中で眠れる事に人生で初めて感謝した夜だった 。ぼくは今生きてるんだ。

当たり前だと思ってたことが奇跡だったことに気がついた。


呼吸して 今ここに 存在してる これは奇跡

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