tukumo 短編集

酔いしれた生死

　昔、とある村で親に結婚を反対された若い男女がおった。

　なにその時代は決められた者としか夫婦になれないことなぞ多々あったものだ。

　どうしても諦めきれなかった男女は互いに駆け落ちをしようと計画したが村は一種の隔離社会で情報は筒抜け、男は袋叩きにあい、一週間大きな木の枝に縛られて吊るされていた。

　…そんな中、女は夜中こっそりと家を抜け出し、彼に握り飯を与えたり会話に花を咲かせた。

「…なあ、おら達はどうやっても結ばせて貰えねえらしいいっそ、お前と共に彼の世で夫婦になりたいよ」

　男は吊るされながらポツリと呟いた


「…私もです。しかし、自殺はご法度ご先祖様に顔向けできません。」

「そうだな…」


　二人は無言になりました暫しの沈黙の末ある策を女は思い付きました。


「今は神無月、神様は出雲へ出払っております。神が見ていぬまにこの彼岸花で心中致しましょう。」


　そういうと女は近くに咲き乱れた真っ赤な彼岸花を数本摘み取る。


「そうだな彼の世で夫婦になろうか縄を切ってくれないか？」

「はい」

　

　次の日、村の者が見たものは一組の男女が互いの両手首に縄を掛け血反吐を流しながら笑顔で抱き締めあいながら地面に倒れこんで冷たくなった遺体であった。



　報われたのかは本人達次第でしょう。
　だが、死に追い込まれても尚惚れ続けるというのはまた難しい。