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第39話 ラタの街の情報

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 俺はアンデッド・オーガの素材だけを自分のものとし、オーガ八体の素材は防衛戦に参加した冒険者たちへ提供した。
 見返りはラタの街の情報である。

「有用な情報は聞けたの?」

 孤児院へ向かう道すがら、ユリアーナが聞いてきた。

「助祭の詳しい情報はなかったが、悪代官と騎士団については面白い話が聞けた」

 神聖石を所有している思われる噂の助祭については、赴任してきたばかりということもあり詳しい情報はなかった。

 だが、赴任後間もなくても悪代官は違った。
 意外なことに代官としての職務はまっとうしていた。

 それどころか、真面目で熱心な仕事ぶりを評価する話が幾つも出てきて驚かされた。
 そして予想通り、仕事ぶりが霞むほどの悪評が次々と飛び出す。

 曰く、

『有能かもしれねえが、人格は最低だ』
『人の性癖に口を出すつもりはないが、あれだけは許せねえ』
『あいつは人間のクズだ!』
『間違いなく行方不明者がでるぜ』

 悪代官に関する情報収集はそんな前置きから始まった。
 ロッテに言い寄っている話も十分に有名だったが同様の話が次々と語られた。

 代官という地位と金銭を武器に、あまり裕福でない家庭の、年端もいかない少女たちを狙っていたようだ。
 そんな潜在的な被害者集団のなかで、行方不明者に最も近いのが親のいないロッテと言うことだった。

 そのことを二人に伝えるとユリアーナは、

「クズね」

 とバッサリと切って捨て、ロッテはすがるような目で俺を見上げた。

「御代官様とお話をしてくれるんですよね?」

「安心しろ。ロッテは俺たちが引き取ったんだ。誰にも手出しさせやしない」

「ありがとうございます」

 明るい声と笑顔が返ってきた。

「それに、ロリ代官にはご退場願うつもりだ」

 ロッテの表情が笑顔から驚きに変わった。

「あのー、御代官様も根は悪人じゃありませんから、あまり酷いことは……」

 実行力のあるロリ野郎は、それだけで十分に悪人だ。

「ロッテちゃん、誘拐されそうになったんじゃないの?」

「それはまあ……」

「孤児院に迷惑がかかるようなことにはしないから安心していい」

「え?」

 ロッテが驚いたように俺を見た。

「孤児院だけじゃない。被害にあっている他の女の子たちも救いたいからな」

禍根かこんが残らないようにしましょう」

「証拠も残らないようにしないとな」

 賛同するユリアーナと視線が交錯する。
 不安げな表情で口をパクパクさせているロッテをよそに騎士団の話に移る。

「半年ほど前に騎士団の半数が入れ替わったそうだ――――」

 半年ほど前に前騎士団団長と半数の騎士たちが中央に移動となり、入れ替わりで新しい騎士団長が二つの部隊を率いて赴任してきた。
 それが現在の第一部隊と第二部隊である。
 因みに第三・第四部隊はそのまま留任していた。

 冒険者たちの話では、前騎士団団長は人格者で配下の騎士たちも公正な行いで評判が良かったそうだが、新しい団長と彼に率いられて赴任した第一・二部隊の評判は著しく悪い。
 横暴さが目立つくらいは可愛いもので、公然と賄賂の要求をしてくるそうだ。

「――――代官と騎士団、二つの上層部が変わってからは酷いものらしい」

「この街の人たちも災難ね」

「それでも御代官様が騎士団に圧力を掛けてくださっているので、他の街のように酷い目に遭わずにすんでいます」

 フォローするロッテをユリアーナが信じられないものを見るような目で見る。

「それ本当なの?」

「ロッテの言う通りらしい」

迂闊うかつに悪代官をらしめられないじゃないの」

 恨めしそうに俺を見ないでくれ。

「それもあるが、もう一つ気になる話を聞いた。ラタの街の教会の司教、つまりこの地域全体の教会を管理する責任者も変わる。この新しい司教がここから三日程の距離にあるグラの村に滞在している」

「不幸の種の予感しかしないわ」

 隣を歩いていたロッテが、両手を胸の前に組んだ。

「これも女神・ユリアーナ様の与えた試練です」

「そんな試練を与えた憶えないわよ。何でもかんでもあたしのせいにしないでくれる」

「ひっ、ごめんなさい」

 ユリアーナも理不尽な思いだろうが、怒られたロッテも理不尽な気持ちだろう。

「話には続きがあってだな、どうやらその新しい司教というのが、噂の助祭と同じように奇蹟が起こせるらしい」

「ちょっと、それって……」

「まあ! 素晴らしいです」

 信者を疑う女神と司教に対する尊敬の念に溢れた少女、二人から正反対の反応が返ってきた。
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