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第24話 市場へ向かう
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第24話 市場へ向かう 騎士団の詰所を出て、街中を適当に歩くこと数分。
詰所から離れたことで安心したのか、
「それにしても頭にくるわね、あのオヤジ!」
ユリアーナはそう吐き出すと見えない相手を殴るように拳を振り回した。
「いけ好かないヤツだったが、部下を従えていたし、騎士団の中ではそれなりの地位にありそうな中年オヤジだったから……」
中年オヤジは盗賊のアジトには盗品の残りがあると信じ込んで上機嫌だった。
空っぽのアジトを目の当たりにしたら矛先はこっちに向くよな。
「明日は揉めるかもしれないな」
「どうするつもり?」
「俺たちが移動している間に、知らない誰かが持っていたことにしよう」
自分で言っておいて何だが、あの横暴な中年オヤジが納得するとは思えない。別の手立てを考えておく必要があるな。
「この街の騎士団って、皆あんなに横暴なの?」
ユリアーナがロッテに訊いた。
「普段、騎士様とお話することはありませんから」
「孤児院の少女が騎士と接点がある方が不自然よね」
二人の会話を背中で聞きながら街並みと道行く人々に意識を向ける。
改めて街を見回すと図書館でみたイラストを彷彿とさせるような街並みが広がっていた。
石造りの頑丈そうな建造物と木造の建造物が入り混じり、雑然とした感じはするが人通りも多く賑わっている。
ファンタジー世界に登場する亜人と呼ばれる人と異なる種族ともすれ違った。
「このラタの街は周辺の街と比べて人口は多いのか?」
「他の街に行ったことがないのでよく分かりませんが、大人の人たちの話だと同じくらいの規模のようです」
この街から出たことがないのに行商人の馬車に潜り込んで逃げだしたのか。
大した度胸と行動力だ。
「これからどうするの?」
「ロッテのいた孤児院へ行こうと思う」
「え?」
「どうした?」
「やっぱり孤児院に帰されるんですか?」
なぜ、帰されないと思った?
孤児院から脱走した少女を保護したんだから、普通に考えたら孤児院まで送り届けるだろ。
だが、俺もユリアーナもその点に関して言えば普通じゃないし、何よりも今のロッテをそのまま孤児院に帰すのは危険だ。
悪代官とのもめ事を解決したら、そのまま孤児院に帰すつもりだったが、考えが変わった。「ロッテには孤児院へ戻らないで、行商人として俺たちと一緒に来て欲しい」
「え? いいんんですか!」
ロッテの表情が明るくなった。
「孤児院に挨拶に行く目的の一つはロッテを引き取るためだ」
「そんなー……」
赤く染まった頬を両手で覆い、ニヤニヤとしだした。
チョロいなー。滅茶苦茶チョロいぞ、こいつ。
とは言って、下手なことして変に警戒されるのも嫌だし、何よりユリアーナにバレたら神罰を下されそうだ。
ここは世界の救世主、女神の助手として振舞としよう。
奥底に湧きあがった邪な考えを振り払って言う。
「俺たちの商会で雇いたい、と正式に話をする」
「え?」
何、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしているんだ。
「手土産を用意したいから、市場か商店が並ぶ通りに案内してくれ」
「じゃあ、市場がいいです。にぎやかですよ」
楽しそうにそう言うと、足早に先を歩きだす。
「立ち直りが早いのは助かるわ」
「まだまだ子どもだよな」
「言っとくけど、たっくんとロッテちゃんは二歳しか違わないんだからね」
年上ぶるなとクギを刺したいらしい。
そう、二歳しか違わない。
セーフだよなー……。
いや、ダメだ。
再び湧き上がった雑念を振り払ってロッテの後姿を探した。
人通りがそれ程多くない道を足取り軽く走っている。
浮かれて走るロッテの後を追って、出店や屋台が並ぶ市場へと向かった。
詰所から離れたことで安心したのか、
「それにしても頭にくるわね、あのオヤジ!」
ユリアーナはそう吐き出すと見えない相手を殴るように拳を振り回した。
「いけ好かないヤツだったが、部下を従えていたし、騎士団の中ではそれなりの地位にありそうな中年オヤジだったから……」
中年オヤジは盗賊のアジトには盗品の残りがあると信じ込んで上機嫌だった。
空っぽのアジトを目の当たりにしたら矛先はこっちに向くよな。
「明日は揉めるかもしれないな」
「どうするつもり?」
「俺たちが移動している間に、知らない誰かが持っていたことにしよう」
自分で言っておいて何だが、あの横暴な中年オヤジが納得するとは思えない。別の手立てを考えておく必要があるな。
「この街の騎士団って、皆あんなに横暴なの?」
ユリアーナがロッテに訊いた。
「普段、騎士様とお話することはありませんから」
「孤児院の少女が騎士と接点がある方が不自然よね」
二人の会話を背中で聞きながら街並みと道行く人々に意識を向ける。
改めて街を見回すと図書館でみたイラストを彷彿とさせるような街並みが広がっていた。
石造りの頑丈そうな建造物と木造の建造物が入り混じり、雑然とした感じはするが人通りも多く賑わっている。
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「このラタの街は周辺の街と比べて人口は多いのか?」
「他の街に行ったことがないのでよく分かりませんが、大人の人たちの話だと同じくらいの規模のようです」
この街から出たことがないのに行商人の馬車に潜り込んで逃げだしたのか。
大した度胸と行動力だ。
「これからどうするの?」
「ロッテのいた孤児院へ行こうと思う」
「え?」
「どうした?」
「やっぱり孤児院に帰されるんですか?」
なぜ、帰されないと思った?
孤児院から脱走した少女を保護したんだから、普通に考えたら孤児院まで送り届けるだろ。
だが、俺もユリアーナもその点に関して言えば普通じゃないし、何よりも今のロッテをそのまま孤児院に帰すのは危険だ。
悪代官とのもめ事を解決したら、そのまま孤児院に帰すつもりだったが、考えが変わった。「ロッテには孤児院へ戻らないで、行商人として俺たちと一緒に来て欲しい」
「え? いいんんですか!」
ロッテの表情が明るくなった。
「孤児院に挨拶に行く目的の一つはロッテを引き取るためだ」
「そんなー……」
赤く染まった頬を両手で覆い、ニヤニヤとしだした。
チョロいなー。滅茶苦茶チョロいぞ、こいつ。
とは言って、下手なことして変に警戒されるのも嫌だし、何よりユリアーナにバレたら神罰を下されそうだ。
ここは世界の救世主、女神の助手として振舞としよう。
奥底に湧きあがった邪な考えを振り払って言う。
「俺たちの商会で雇いたい、と正式に話をする」
「え?」
何、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしているんだ。
「手土産を用意したいから、市場か商店が並ぶ通りに案内してくれ」
「じゃあ、市場がいいです。にぎやかですよ」
楽しそうにそう言うと、足早に先を歩きだす。
「立ち直りが早いのは助かるわ」
「まだまだ子どもだよな」
「言っとくけど、たっくんとロッテちゃんは二歳しか違わないんだからね」
年上ぶるなとクギを刺したいらしい。
そう、二歳しか違わない。
セーフだよなー……。
いや、ダメだ。
再び湧き上がった雑念を振り払ってロッテの後姿を探した。
人通りがそれ程多くない道を足取り軽く走っている。
浮かれて走るロッテの後を追って、出店や屋台が並ぶ市場へと向かった。
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