15 / 65
第15話 討伐
しおりを挟む
「たっくん? 唐突に何を言いだすの?」
「この世界での俺の名だ」
「確かに偽名は必要かもしれないわね」
「神薙とは神を薙ぐこと。修羅とは最強の鬼。俺は神をも斬り割く最強の鬼となる! 改めて名乗ろう! 断罪者、神薙修羅だ!」
「色々と間違っているけど突っ込まないであげる」
ユリアーナは俺を気遣うようにささやくと盗賊たちに向きなおった。
「あ、あたしのことは気にしないで。悪人に名乗る名前は持ち合わせてないから」
「ゴチャゴチャとうるせー!」
「武器も持たずに俺たちと戦う気か? 奥に武器があるんだろ? 取ってこいよ。それくらいの時間は待ってやるぜ」
背筋に電流が走るような錯覚を覚えた。
自分らしくない言葉遣いに、えも言われぬ快感が襲う。
隙を見つけたつもりなのだろう、三人の男女が奥へと駆けだした。彼らが通路の陰に差しかかる直前に錬金工房で収納する。
これでいくら待っても奥から武器を持って戻る者はいない。
「奥から二人来るわよ」
ユリアーナの警告にうなずきながら、飛んでくる投げナイフを収納する。
「やった! え……?」
仕留めたと思ったか?
女の顔から笑みが消え、顔を蒼ざめさせる。
「お前の投げたナイフは銀のナイフか? それとも金のナイフか?」
馬車の中にあった銀食器と金貨を加工して作成したナイフを左右の手にそれぞれ出現させた。
「通じるわけないでしょ」
「ちょっとした冗談だよ」
ナイフを上に放り投げるような動作をして再び錬金工房へと収納する。
同時にナイフを投げた女も収納したが、部屋にいた全員が俺の手の動きに気を取られていて女が消えたことにすぐには気付かなかった。
「奥から二人、直ぐに姿を現すわ」
「OK」
男たちが姿を現した直後に収納した。
「助けてくれ。金も武器も全部差しだす。命だけは助けてくれ」
盗賊の一人が涙を流してその場に平伏すると、他の五人も同じように平伏して抵抗の意思がないことを示した。
「あなたたち、隊商か行商人を襲ったでしょ? 生き残りはいるの?」
ユリアーナの質問に残りの女たちが悲鳴で答えて奥へ向かって走りだした。
悲鳴を上げる女だからと言って容赦はしない。
通路に差しかかったところで、まとめて三人の姿と悲鳴が消える。
「もう一度聞くわ。生き残りはいるの?」
「行商人の仲間なのか?」
「荷物は返す。全部返す」
「助けてくれ、助けてくれ」
涙を流して懇願する男たちにユリアーナが三度問う。
「生き残りはいるの?」
三人の肩がビクンッと跳ねた。
「……いねえ。全員、殺しちまった」
「殺すつもりはなかったんだ。本当だ」
泣き叫ぶ二人と鬼の形相でユリアーナへと向かってきた男を同時に収納する。
部屋のなかに静寂が訪れた。
「これで全員か?」
「少なくとも魔力感知には何も引っかからないわ」
「盗賊たちが貯め込んだ盗品を頂くとしよう」
俺たちはアジトの奥へと歩を進めた。
「この世界での俺の名だ」
「確かに偽名は必要かもしれないわね」
「神薙とは神を薙ぐこと。修羅とは最強の鬼。俺は神をも斬り割く最強の鬼となる! 改めて名乗ろう! 断罪者、神薙修羅だ!」
「色々と間違っているけど突っ込まないであげる」
ユリアーナは俺を気遣うようにささやくと盗賊たちに向きなおった。
「あ、あたしのことは気にしないで。悪人に名乗る名前は持ち合わせてないから」
「ゴチャゴチャとうるせー!」
「武器も持たずに俺たちと戦う気か? 奥に武器があるんだろ? 取ってこいよ。それくらいの時間は待ってやるぜ」
背筋に電流が走るような錯覚を覚えた。
自分らしくない言葉遣いに、えも言われぬ快感が襲う。
隙を見つけたつもりなのだろう、三人の男女が奥へと駆けだした。彼らが通路の陰に差しかかる直前に錬金工房で収納する。
これでいくら待っても奥から武器を持って戻る者はいない。
「奥から二人来るわよ」
ユリアーナの警告にうなずきながら、飛んでくる投げナイフを収納する。
「やった! え……?」
仕留めたと思ったか?
女の顔から笑みが消え、顔を蒼ざめさせる。
「お前の投げたナイフは銀のナイフか? それとも金のナイフか?」
馬車の中にあった銀食器と金貨を加工して作成したナイフを左右の手にそれぞれ出現させた。
「通じるわけないでしょ」
「ちょっとした冗談だよ」
ナイフを上に放り投げるような動作をして再び錬金工房へと収納する。
同時にナイフを投げた女も収納したが、部屋にいた全員が俺の手の動きに気を取られていて女が消えたことにすぐには気付かなかった。
「奥から二人、直ぐに姿を現すわ」
「OK」
男たちが姿を現した直後に収納した。
「助けてくれ。金も武器も全部差しだす。命だけは助けてくれ」
盗賊の一人が涙を流してその場に平伏すると、他の五人も同じように平伏して抵抗の意思がないことを示した。
「あなたたち、隊商か行商人を襲ったでしょ? 生き残りはいるの?」
ユリアーナの質問に残りの女たちが悲鳴で答えて奥へ向かって走りだした。
悲鳴を上げる女だからと言って容赦はしない。
通路に差しかかったところで、まとめて三人の姿と悲鳴が消える。
「もう一度聞くわ。生き残りはいるの?」
「行商人の仲間なのか?」
「荷物は返す。全部返す」
「助けてくれ、助けてくれ」
涙を流して懇願する男たちにユリアーナが三度問う。
「生き残りはいるの?」
三人の肩がビクンッと跳ねた。
「……いねえ。全員、殺しちまった」
「殺すつもりはなかったんだ。本当だ」
泣き叫ぶ二人と鬼の形相でユリアーナへと向かってきた男を同時に収納する。
部屋のなかに静寂が訪れた。
「これで全員か?」
「少なくとも魔力感知には何も引っかからないわ」
「盗賊たちが貯め込んだ盗品を頂くとしよう」
俺たちはアジトの奥へと歩を進めた。
56
お気に入りに追加
782
あなたにおすすめの小説
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる