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第8話 魔物との戦闘
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ユリアーナの視線の先に意識を集中する。
「無理よ。まだ視認できる距離じゃないわ」
「どうして分かったんだ?」
「魔力感知よ。さっきのクマは魔力がなかったから、近付かれるまで分からなかったけど、魔物は魔力があるから分かるの」
魔力専用のセンサーみたいなものか。
「距離は?」
「およそ一キロメートル。敵はまだこちらに気付いていない、と思う」
俺は取り込んだ樹木で全身が隠れる大きさの盾を二つ作成し、一つをユリアーナに差しだす。
「少しはマシだろ」
「ありがとう」
盾を受け取ったユリアーナが、お礼の言葉に続いて選択肢を示す。
「隠れてやり過ごすか先制攻撃をかけるかよ」
「先制攻撃を仕掛けよう」
即答した。
「敵の正体が分からないのに?」
「こちらが敵の正体を確認する手段は視認しかないんだ。もし敵が犬やオオカミみたいに鼻が利く魔物だったり、聴覚が異様に優れた魔物だったりしたら、隠れても発見される可能性が高いんじゃないのか?」
「ええ、それはそうだけど……」
ユリアーナが不安そうに言い淀む。
「だったら見えるところまで近づこう」
「その選択肢は身体強化をそれなりに使えるようになってからにして欲しかったわ」
「百メートルだ」
それは先程、岩を取り込んだ距離。
「え?」
「百メートルまで近寄ることができれば、錬金工房に収納することができる」
クマを生きたまま収納できたのだ。
それが魔物だとしても生きた状態で収納できるはずだ。
俺の言わんとしていることを理解したのか、ユリアーナが静かに首肯する。
「いいわ、やりましょう」
俺たち二人は、ユリアーナの魔力感知を頼りに風下から敵の側面へと回り込むように近付いて行く。
しばらく進んだところで彼女の動きが止まった。
「ゴブリンよ」
彼女の視線の先を見ると、深緑色の皮膚をした小柄な魔物が周囲を警戒しながら進んでいた。
「数は分かるか?」
「魔力感知に引っ掛かったのは十二匹」
自分自身が敵の位置を把握できていないことに多少の不安はあったが、恐怖で足がすくむこともなければ混乱することもなかった。
普段以上に頭が冴えているのが分かる。
「本当に一人で大丈夫?」
「問題ない」
ユリアーナの不安そうなささやきに短く答えた。
「弓矢を持っているのが三匹と片手剣を手にしているのが二匹」
彼女の視線の先に目を凝らす。
弓矢を手にした三匹のゴブリンと、その両側を挟むようにして二匹のゴブリンが歩く姿を捉えた。
「OK。こちらでもその五匹を視認した」
言葉と同時に錬金工房を発動させる。
弓矢を手にした三匹のゴブリンとその両側を歩いていた二匹のゴブリンを瞬時に取り込んだ。
成功したことに俺は胸を撫で下ろす。
「鮮やかなものね」
感嘆の声に続いて、ゴブリンの位置を知らせるささやきが耳に届く。
「左の方に三匹。もうすぐ茂みから出てくる」
的確な指示だ。
すぐに三匹のゴブリンが茂みから姿を現し、そして消える。
あと四匹。
突然ゴブリンたちが騒ぎ出した。
「異変に気付いたようね」
「ユリアーナはゴブリンだけでなく、周辺を警戒してくれ。クマも見逃すなよ」
言外に魔力感知だけでなく視覚での周辺警戒もするよう告げる。
「言うじゃないの」
そう言って口角を吊り上げると、
「任せてちょうだい」
愛くるしい大きな目でウィンクをした。
それとほぼ同時に四匹のゴブリンが姿を現す。
残ったゴブリンたちは周囲を警戒しているというよりも、何が起きたのか分からずに慌てふためいているように見える。
「警戒していても慌てふためいても一緒なんだけどな」
独り言を口にしながら残る四匹のゴブリンを錬金工房へと取り込んだ。
「無理よ。まだ視認できる距離じゃないわ」
「どうして分かったんだ?」
「魔力感知よ。さっきのクマは魔力がなかったから、近付かれるまで分からなかったけど、魔物は魔力があるから分かるの」
魔力専用のセンサーみたいなものか。
「距離は?」
「およそ一キロメートル。敵はまだこちらに気付いていない、と思う」
俺は取り込んだ樹木で全身が隠れる大きさの盾を二つ作成し、一つをユリアーナに差しだす。
「少しはマシだろ」
「ありがとう」
盾を受け取ったユリアーナが、お礼の言葉に続いて選択肢を示す。
「隠れてやり過ごすか先制攻撃をかけるかよ」
「先制攻撃を仕掛けよう」
即答した。
「敵の正体が分からないのに?」
「こちらが敵の正体を確認する手段は視認しかないんだ。もし敵が犬やオオカミみたいに鼻が利く魔物だったり、聴覚が異様に優れた魔物だったりしたら、隠れても発見される可能性が高いんじゃないのか?」
「ええ、それはそうだけど……」
ユリアーナが不安そうに言い淀む。
「だったら見えるところまで近づこう」
「その選択肢は身体強化をそれなりに使えるようになってからにして欲しかったわ」
「百メートルだ」
それは先程、岩を取り込んだ距離。
「え?」
「百メートルまで近寄ることができれば、錬金工房に収納することができる」
クマを生きたまま収納できたのだ。
それが魔物だとしても生きた状態で収納できるはずだ。
俺の言わんとしていることを理解したのか、ユリアーナが静かに首肯する。
「いいわ、やりましょう」
俺たち二人は、ユリアーナの魔力感知を頼りに風下から敵の側面へと回り込むように近付いて行く。
しばらく進んだところで彼女の動きが止まった。
「ゴブリンよ」
彼女の視線の先を見ると、深緑色の皮膚をした小柄な魔物が周囲を警戒しながら進んでいた。
「数は分かるか?」
「魔力感知に引っ掛かったのは十二匹」
自分自身が敵の位置を把握できていないことに多少の不安はあったが、恐怖で足がすくむこともなければ混乱することもなかった。
普段以上に頭が冴えているのが分かる。
「本当に一人で大丈夫?」
「問題ない」
ユリアーナの不安そうなささやきに短く答えた。
「弓矢を持っているのが三匹と片手剣を手にしているのが二匹」
彼女の視線の先に目を凝らす。
弓矢を手にした三匹のゴブリンと、その両側を挟むようにして二匹のゴブリンが歩く姿を捉えた。
「OK。こちらでもその五匹を視認した」
言葉と同時に錬金工房を発動させる。
弓矢を手にした三匹のゴブリンとその両側を歩いていた二匹のゴブリンを瞬時に取り込んだ。
成功したことに俺は胸を撫で下ろす。
「鮮やかなものね」
感嘆の声に続いて、ゴブリンの位置を知らせるささやきが耳に届く。
「左の方に三匹。もうすぐ茂みから出てくる」
的確な指示だ。
すぐに三匹のゴブリンが茂みから姿を現し、そして消える。
あと四匹。
突然ゴブリンたちが騒ぎ出した。
「異変に気付いたようね」
「ユリアーナはゴブリンだけでなく、周辺を警戒してくれ。クマも見逃すなよ」
言外に魔力感知だけでなく視覚での周辺警戒もするよう告げる。
「言うじゃないの」
そう言って口角を吊り上げると、
「任せてちょうだい」
愛くるしい大きな目でウィンクをした。
それとほぼ同時に四匹のゴブリンが姿を現す。
残ったゴブリンたちは周囲を警戒しているというよりも、何が起きたのか分からずに慌てふためいているように見える。
「警戒していても慌てふためいても一緒なんだけどな」
独り言を口にしながら残る四匹のゴブリンを錬金工房へと取り込んだ。
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