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第46話 宵闇小隊(3)

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 騎士たちが訓練する様子を見ながら図南がギードに聞く。

「魔法が重要と言っていたけど、神聖魔法が使える騎士か騎士見習いがこのなかにいるのか?」

「このなかにはいませんなー」

 神聖魔法が使えるのに騎士になるものは稀だった。
 そもそも、神聖魔法が使えると判明した時点で助祭の待遇が与えられるのだと言うと、笑いながら付け足す。

「カッセル神殿に在籍する騎士で神聖魔法が使えるのは小隊長殿を含めて二人だけです。まあ、どっちも変わり者ですな」

「その変わり者が誰なのか教えてくれるか?」

 ギードの遠慮のないセリフに苦笑しながら聞く。

「教えるのか構いませんが、私が『変わり者』と言ってたのは内緒にしてくださいよ」

 図南はもちろんだとうなずいて、ギードをうながす。

「第二連隊の連隊長を任されているヘンリエッテ・トットです」

「女性?」

「若い美人ですぜ。と言っても小隊長から見たらおばさんでしょうがね」

 そう言って快活に笑いだした。
 結局年齢を聞けず仕舞だったが、女性の年齢に拘るのも風聞が悪いだろうとその話題をそこまでで打ち切ることにした。

「どうです? 気になる騎士はいましたか? 何でしたら手合わせをしてみますか?」

 再び訓練風景に視線を戻した図南にギードが提案してきた。

「手合わせと言っても、剣を習ったことがないんだ。実際に手合わせをしても、こうして見ていても、判断材料としてはそう変わりはないだろな」

「ご冗談を。凄腕だって噂になってますよ」

「尾ひれ背びれが付いたようだな」

 図南が苦笑して尚も否定するがギードは引かない。

「何れにしてもメンバーを選ぶ際には、候補者から手合わせを挑まれると思いますぜ。覚悟だけはしておいてください」

「怖いな」

 セリフとは裏腹に怖がる素振りは微塵もなかった。
 そんな図南の様子にギードは楽しそうに口元を綻ばせると、訓練する騎士たちに視線を戻して言う。

「まあ、手合わせはさておき、気になる騎士はいましたか?」

「そうだな……、一人はあの女の子かな」

 透き通るような淡い水色の髪をした見習い騎士の少女を視線で示す。

 図南と同年代に見えた。
 まだ幼さを残してはいるが美しい少女だ。

(紗良の反応を考えると可愛い女の子は避けたいところなんだけど、やっぱり能力には代えられないよなー)

 華奢で小柄な身体からは想像もできないような速度とパワーで大柄な見習い騎士の少年を圧倒していた。
 だが、図南が彼女を選んだのは別のところにある。

【名 前】 カルラ・クロス
【H P】 197
【M P】 203
【スキル】 
身体強化   3/10
神聖魔法   0/10
水魔法    0/10
火魔法    0/10
風魔法    1/10

 図南の持つ解析を使うことで始めてることが出来る力。

(“0/10”ってことはまだ発現していない能力と言うことだよな)

 図南の考え通りであった。
 本人も周囲の認識も、彼女の評価は優秀な身体強化能力の保持者であり、風魔法の術者であるというものだ。

「なるほど、あの娘は目立ちますからな」

 ギードは納得するようにうなずき、

「自分からすれば子どもですが、小隊長から見れば十分に魅力的な異性に映るんでしょうな」

 今度はそう言って含み笑いを漏らした。

「容貌に目を惹かれたのは認めるけど、それ以上に彼女の才能が目を惹いたんだ! そこのところ勘違いしないでくれよ!」

「クッハハハ。分かりました。では、カルラ・クロスは副官としましょう」

 図南の反応に堪えきれずに笑いだした。

「いつまで笑っているんだ。次だ、次を選ぶぞ!」

 尚も笑い続けるギードをそのままに、図南は次の候補を選ぶべく再び視線を騎士たちへと向けた。

(ここで連続して女性を選ぶのは不味いよなー)

 次の候補者として目を付けていた少し年上の美人の見習い騎士から、少年の見習い騎士へと視線を移す。

「次の候補はあの見習い騎士の少年だ」

「子どもばかりですが、大丈夫ですか?」

「ここにいる騎士や騎士見習いなら誰を選んでもそうは変わらないんじゃないのか?」

「そんなわけないでしょ。騎士と騎士見習いとじゃ雲泥の差です!」

 ギードが額に手を当てて天を仰ぐ。
 彼からすれば、見習い騎士の経験すらない図南が隊長である。実質、副隊長である自分が小隊の運営をすることになるのは目に見えていた。

 そこへ年端もいかない見習い騎士が二人となれば、天も仰ぎたくなるだろう。
 そこへ図南が追い打ちを掛ける。

「三人目はあの見習い騎士」

 十七、八歳の女性の騎士見習いを示す。

「勘弁してくださいよ!」

 ギードが天に向かって吠えた。
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