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第3章 起死回生一発逆転
6.屋根裏部屋での密談
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なるべく道筋に設置されている術式に引っ掛からない様に、木から木へと飛び移りながら移動を続けたソフィアは、庭の大きな木が植えてある範囲を抜けてからは、目敏く四阿や倉庫、使用人棟の壁や屋根に取り付く箇所を発見し、それを利用して行った。
ある時は道具を使い、またある時は素手で建物を上り、屋上に到達してからは、主要な建物に同様に取り付き、傾斜のある屋根の上に上って行く。
この間、どうしても警備上の要所を何ヶ所か通る羽目になってはいたが、ジーレスから持たされた魔術探査用ブレスレットのおかげで、そこに施されている術式に引っかからずに、無事すり抜ける事ができた為、ソフィアは上司に対する感謝の念を新たにした。
「やっぱり地面より上の方が防御術式は少ないけど、警戒はしていたわね。これを持たせてくれた頭領に、後からもう一度お礼を言わないと」
そして建物全体の形状を把握して、頭の中の図面と照合させたソフィアは、屋根の上を足音を立てずに慎重に進み始めた。
「さてと、後はこの棟を進んで、向こうの棟に飛び移るだけよね。それから、用事のある部屋を間違えない様にしないと」
普通の人間にとってはとんでもない事を平然と呟きながらソフィアは進み、無事に隣接した棟に飛び移って、目的の場所に到達した。そして彼女は屋根に付いている明かり取りの窓を見下ろしながら、若干悩んでしまう。
「師匠が下調べしてくれた内容だと、彼女の部屋はここの筈なんだけど……」
窓枠の横に屈み込んで、既に真っ暗になっている室内を覗き込んだソフィアは、暗すぎて判断のしようが無い為渋面になった。しかしここで悩んでいても仕方がないと、無言のまま覆面を外す。
一方のルセリアは既に就寝していたが、窓の方から聞こえてきた微かな物音で、目を覚ました。
「……何?」
彼女が周囲を見回しながら上体を起こすと、再びコンコンと窓ガラスに何かが当たる様な物音が聞こえた為、彼女は壁に立て掛けてある鈎棒を手に取り、その先端に天井にある窓の留め金を引っ掛けて、軽く窓を押し上げてみる。
「気のせいだったのかしら?」
屋根の一部が欠けて、それが傾斜を転がって来た事で窓にぶつかったそれが、音を立てたのかと思ったルセリアだったが、特にそれらしきものが窓枠に引っ掛かっている気配が無かった為、彼女は一人首を捻った。しかし再び閉めようとした窓に手がかかり、次に見覚えのある顔がいきなりそこから現れた為、彼女の心臓は驚きで止まりそうになった。
「こんばんは、ルセリアさん」
「エッ、エルセフィーナ様!?」
反射的に叫んだルセリアに、ソフィアが慌てて抑えた声で、必死に訴えてくる。
「しいっ!! 声が大きい!」
「す、すみませんっ!!」
慌てて頭を下げたルセリアに、ソフィアは溜め息を吐いてから、静かに申し出た。
「取り敢えず、ちょっとお邪魔して良いかしら?」
「は、はい。どうぞご遠慮なく」
そしてその部屋の主の許可を貰ったソフィアは、窓から床へと静かに飛び降りた。そして黒装束の自分を呆気に取られて眺めているルセリアに、苦笑しながら声をかける。
「夜遅くに、失礼するわね」
そこで我に返ったルセリアは、自分に与えられている部屋の貧相さに恥ずかしくていたたまれなくなり、俯きながら詫びた。
「いえ、あの……、エルセフィーナ様にこんな狭くてみすぼらしい所にお出で頂くなんて、誠に申し訳無く……」
「それを言ったらお互い様よ。真っ当な貴族の令嬢なら、こんな時間にこんな格好で、余所様の屋敷に忍び込んだりしないわ」
部屋に入った瞬間彼女に与えられている物を確認したソフィアは、(幾らなんでも、これなら我が家の方がマシだわ)と密かに憤慨した。しかしそれは面には出さずに、自分の怪しげな出で立ちを詫びたソフィアだったが、それを聞いたルセリアが恐る恐る顔を上げ、来訪の理由を尋ねてくる。
「あの……、それでエルセフィーナ様は、一体どの様な理由でここにいらしたのでしょうか?」
そこでソフィアは気持ちを切り替え、真顔で彼女に問いを発した。
「あなたの、忌憚の無い意見を聞きたくてね。それと同意して頂けるなら、私達の計画に是非協力して貰いたいのだけど」
「意見?」
「時間が勿体無いから単刀直入に聞くけど、あなたは弟の事を、どう思っているかしら?」
唐突にそんな事を言われて面食らったルセリアは、思わず問い返した。
「イーダリス様の事ですか?」
「そう」
真顔のまま端的に答えたソフィアに、ルセリアは徐々に頬を染めながら、慎重に意見を述べる。
「それは、その……、直接お話しできた時間は短いですが誠実で、とても思いやり深い方だと思います……」
「じゃあもう少し踏み込んで聞くけど、結婚しても良いと思ってる?」
「結婚、ですか!? それはあの……、イーダリス様の様な方と結婚できたら良いとは思いますが、私には満足な持参金も出して貰えませんし……。それに……」
先程までは恥ずかしそうに述べていたルセリアが、結婚云々の話になった途端、真っ青になって否定的な言葉を延々と並べ始めた為、何となく察しがついたソフィアは、彼女の訴えを遮って尋ねてみた。
「ねえ、ひょっとして、首尾良く私達姉弟と結婚して、ステイド子爵家に入った後に、弟を殺す様にとか言われてるのかしら?」
そう尋ねた途端、ルセリアは驚愕して目を見開いた。
「どうしてそれを!?」
「……やっぱりねぇ。身内でちょっと調べてみたら、そうじゃないかという結論に至ってね。だからそう簡単に、結婚できない訳だ」
思わずソフィアが腕を組んでしみじみと口にすると、ルセリアは床に崩れ落ちると同時に、盛大に泣き出しながら頭を下げた。
「すみません、本当にごめんなさい! 私と結婚したら、確実にイーダリスさんが殺されてしまいます!! 私はどうなっても構いませんから、イーダリスさんには他の方と結婚して貰って下さい」
「え? 『私はどうなっても構いませんから』って、あなたはイーダリスと結婚しなかったらどうなるの?」
思わず問いかけたソフィアに向かって、ルセリアが正直に告げる。
「『イーダリス殿と結婚するように持ち込めなかったら、ダリッシュ子爵の後添えにするから、気合入れて垂らし込め』と父から言われましたが、そんな事、私には無理です! でも人殺しの片棒を担ぐ位なら、後妻に入る方がまだマシです!」
大泣きしながら問われるまま、ルセリアが正直にぶちまけた内容を聞いて、ソフィアは当然激怒した。
「ダリッシュ子爵って……、あのルーバンス公爵同様女にだらしなくて、立ち寄った街毎に庶子がいるって陰口を叩かれている、あの六十過ぎのくそジジイ!? 本当に何考えてんのよ、ここの連中は!!」
「私も評判は悪い事は存じていますが、お父様とは懇意にしていらっしゃるそうです」
「やっぱりろくでもない人間同士、波長が合うと見えるわね!!」
そして憤慨しているソフィアの前で、ルセリアは暫く泣き続けたが、ソフィアが黙って見守っているうちに段々涙が収まってきたらしく、最後は夜着の袖で涙を拭いて、気丈に彼女に向かって詫びを入れた。
「お騒がせして、申し訳ありませんでした。その上、エルセフィーナ様の話を中断してしまいまして、お詫びします」
そう言って礼儀正しく頭を下げた彼女に、ソフィアはこれまで同様に好感を覚えた。そして気を取り直して怒りを静め、冷静に話を進める。
「それは良いのよ。じゃあ、話を元に戻しましょうか。ルセリア嬢。あなたこのままこの家に居て、どうしても腐れ老人の後妻になりたい? それなら無理には止めないけど」
「え?」
「幸いと言うか何と言うか、私の弟があなたの事を気に入ってね。是非結婚して欲しいって言ってるのよ」
「あの……、ですが……」
途端に言葉を濁したルセリアに、ソフィアはとんでもない事を言ってのけた。
「勿論、このまま結婚して貰っては困るから、ルーバンス公爵九女のルセリア嬢には、死んで貰わなくてはいけないの」
そんな突拍子も無い事を言われて、流石にルセリアは戸惑った表情になった。
「……どういう事でしょうか?」
「つまり……」
そこでソフィアは、困惑している彼女に計画の一部始終を語って聞かせた。その間ルセリアは真っ青になったり不安を隠せない表情になっていたが、ソフィアが語り続けるうちに徐々に覚悟を決めていたらしく、終盤は迷いの無い目で彼女を見つめる。
「……私達が現時点で考えている計画は、こんな感じなのだけど、どうする?」
そこでソフィアは無理強いせずに相手の反応を待ったが、目を閉じて考え込んだルセリアは、再び目を開けると同時に、力強く頷いた。
「分かりました。この家に未練はありません。私を死んだ事にして下さい。全てエルセフィーナ様にお任せします。宜しくお願いします」
そう言ってルセリアが深々と頭を下げた為、ソフィアは安堵して笑いかけた。
「安心して頂戴、絶対上手くいかせてみせるから。じゃあ今日のところは帰るわね。また連絡するから。あ、この事は勿論他言無用よ?」
「はい。わざわざありがとうございました。お気をつけて」
別れの挨拶を口にしたソフィアは、降りる時に抜け目なく窓枠から垂らしておいたロープを伝って再び屋根へと上がり、慎重に窓を閉めてこの屋敷を脱出するべく、再び屋根の上を進み始めた。
ある時は道具を使い、またある時は素手で建物を上り、屋上に到達してからは、主要な建物に同様に取り付き、傾斜のある屋根の上に上って行く。
この間、どうしても警備上の要所を何ヶ所か通る羽目になってはいたが、ジーレスから持たされた魔術探査用ブレスレットのおかげで、そこに施されている術式に引っかからずに、無事すり抜ける事ができた為、ソフィアは上司に対する感謝の念を新たにした。
「やっぱり地面より上の方が防御術式は少ないけど、警戒はしていたわね。これを持たせてくれた頭領に、後からもう一度お礼を言わないと」
そして建物全体の形状を把握して、頭の中の図面と照合させたソフィアは、屋根の上を足音を立てずに慎重に進み始めた。
「さてと、後はこの棟を進んで、向こうの棟に飛び移るだけよね。それから、用事のある部屋を間違えない様にしないと」
普通の人間にとってはとんでもない事を平然と呟きながらソフィアは進み、無事に隣接した棟に飛び移って、目的の場所に到達した。そして彼女は屋根に付いている明かり取りの窓を見下ろしながら、若干悩んでしまう。
「師匠が下調べしてくれた内容だと、彼女の部屋はここの筈なんだけど……」
窓枠の横に屈み込んで、既に真っ暗になっている室内を覗き込んだソフィアは、暗すぎて判断のしようが無い為渋面になった。しかしここで悩んでいても仕方がないと、無言のまま覆面を外す。
一方のルセリアは既に就寝していたが、窓の方から聞こえてきた微かな物音で、目を覚ました。
「……何?」
彼女が周囲を見回しながら上体を起こすと、再びコンコンと窓ガラスに何かが当たる様な物音が聞こえた為、彼女は壁に立て掛けてある鈎棒を手に取り、その先端に天井にある窓の留め金を引っ掛けて、軽く窓を押し上げてみる。
「気のせいだったのかしら?」
屋根の一部が欠けて、それが傾斜を転がって来た事で窓にぶつかったそれが、音を立てたのかと思ったルセリアだったが、特にそれらしきものが窓枠に引っ掛かっている気配が無かった為、彼女は一人首を捻った。しかし再び閉めようとした窓に手がかかり、次に見覚えのある顔がいきなりそこから現れた為、彼女の心臓は驚きで止まりそうになった。
「こんばんは、ルセリアさん」
「エッ、エルセフィーナ様!?」
反射的に叫んだルセリアに、ソフィアが慌てて抑えた声で、必死に訴えてくる。
「しいっ!! 声が大きい!」
「す、すみませんっ!!」
慌てて頭を下げたルセリアに、ソフィアは溜め息を吐いてから、静かに申し出た。
「取り敢えず、ちょっとお邪魔して良いかしら?」
「は、はい。どうぞご遠慮なく」
そしてその部屋の主の許可を貰ったソフィアは、窓から床へと静かに飛び降りた。そして黒装束の自分を呆気に取られて眺めているルセリアに、苦笑しながら声をかける。
「夜遅くに、失礼するわね」
そこで我に返ったルセリアは、自分に与えられている部屋の貧相さに恥ずかしくていたたまれなくなり、俯きながら詫びた。
「いえ、あの……、エルセフィーナ様にこんな狭くてみすぼらしい所にお出で頂くなんて、誠に申し訳無く……」
「それを言ったらお互い様よ。真っ当な貴族の令嬢なら、こんな時間にこんな格好で、余所様の屋敷に忍び込んだりしないわ」
部屋に入った瞬間彼女に与えられている物を確認したソフィアは、(幾らなんでも、これなら我が家の方がマシだわ)と密かに憤慨した。しかしそれは面には出さずに、自分の怪しげな出で立ちを詫びたソフィアだったが、それを聞いたルセリアが恐る恐る顔を上げ、来訪の理由を尋ねてくる。
「あの……、それでエルセフィーナ様は、一体どの様な理由でここにいらしたのでしょうか?」
そこでソフィアは気持ちを切り替え、真顔で彼女に問いを発した。
「あなたの、忌憚の無い意見を聞きたくてね。それと同意して頂けるなら、私達の計画に是非協力して貰いたいのだけど」
「意見?」
「時間が勿体無いから単刀直入に聞くけど、あなたは弟の事を、どう思っているかしら?」
唐突にそんな事を言われて面食らったルセリアは、思わず問い返した。
「イーダリス様の事ですか?」
「そう」
真顔のまま端的に答えたソフィアに、ルセリアは徐々に頬を染めながら、慎重に意見を述べる。
「それは、その……、直接お話しできた時間は短いですが誠実で、とても思いやり深い方だと思います……」
「じゃあもう少し踏み込んで聞くけど、結婚しても良いと思ってる?」
「結婚、ですか!? それはあの……、イーダリス様の様な方と結婚できたら良いとは思いますが、私には満足な持参金も出して貰えませんし……。それに……」
先程までは恥ずかしそうに述べていたルセリアが、結婚云々の話になった途端、真っ青になって否定的な言葉を延々と並べ始めた為、何となく察しがついたソフィアは、彼女の訴えを遮って尋ねてみた。
「ねえ、ひょっとして、首尾良く私達姉弟と結婚して、ステイド子爵家に入った後に、弟を殺す様にとか言われてるのかしら?」
そう尋ねた途端、ルセリアは驚愕して目を見開いた。
「どうしてそれを!?」
「……やっぱりねぇ。身内でちょっと調べてみたら、そうじゃないかという結論に至ってね。だからそう簡単に、結婚できない訳だ」
思わずソフィアが腕を組んでしみじみと口にすると、ルセリアは床に崩れ落ちると同時に、盛大に泣き出しながら頭を下げた。
「すみません、本当にごめんなさい! 私と結婚したら、確実にイーダリスさんが殺されてしまいます!! 私はどうなっても構いませんから、イーダリスさんには他の方と結婚して貰って下さい」
「え? 『私はどうなっても構いませんから』って、あなたはイーダリスと結婚しなかったらどうなるの?」
思わず問いかけたソフィアに向かって、ルセリアが正直に告げる。
「『イーダリス殿と結婚するように持ち込めなかったら、ダリッシュ子爵の後添えにするから、気合入れて垂らし込め』と父から言われましたが、そんな事、私には無理です! でも人殺しの片棒を担ぐ位なら、後妻に入る方がまだマシです!」
大泣きしながら問われるまま、ルセリアが正直にぶちまけた内容を聞いて、ソフィアは当然激怒した。
「ダリッシュ子爵って……、あのルーバンス公爵同様女にだらしなくて、立ち寄った街毎に庶子がいるって陰口を叩かれている、あの六十過ぎのくそジジイ!? 本当に何考えてんのよ、ここの連中は!!」
「私も評判は悪い事は存じていますが、お父様とは懇意にしていらっしゃるそうです」
「やっぱりろくでもない人間同士、波長が合うと見えるわね!!」
そして憤慨しているソフィアの前で、ルセリアは暫く泣き続けたが、ソフィアが黙って見守っているうちに段々涙が収まってきたらしく、最後は夜着の袖で涙を拭いて、気丈に彼女に向かって詫びを入れた。
「お騒がせして、申し訳ありませんでした。その上、エルセフィーナ様の話を中断してしまいまして、お詫びします」
そう言って礼儀正しく頭を下げた彼女に、ソフィアはこれまで同様に好感を覚えた。そして気を取り直して怒りを静め、冷静に話を進める。
「それは良いのよ。じゃあ、話を元に戻しましょうか。ルセリア嬢。あなたこのままこの家に居て、どうしても腐れ老人の後妻になりたい? それなら無理には止めないけど」
「え?」
「幸いと言うか何と言うか、私の弟があなたの事を気に入ってね。是非結婚して欲しいって言ってるのよ」
「あの……、ですが……」
途端に言葉を濁したルセリアに、ソフィアはとんでもない事を言ってのけた。
「勿論、このまま結婚して貰っては困るから、ルーバンス公爵九女のルセリア嬢には、死んで貰わなくてはいけないの」
そんな突拍子も無い事を言われて、流石にルセリアは戸惑った表情になった。
「……どういう事でしょうか?」
「つまり……」
そこでソフィアは、困惑している彼女に計画の一部始終を語って聞かせた。その間ルセリアは真っ青になったり不安を隠せない表情になっていたが、ソフィアが語り続けるうちに徐々に覚悟を決めていたらしく、終盤は迷いの無い目で彼女を見つめる。
「……私達が現時点で考えている計画は、こんな感じなのだけど、どうする?」
そこでソフィアは無理強いせずに相手の反応を待ったが、目を閉じて考え込んだルセリアは、再び目を開けると同時に、力強く頷いた。
「分かりました。この家に未練はありません。私を死んだ事にして下さい。全てエルセフィーナ様にお任せします。宜しくお願いします」
そう言ってルセリアが深々と頭を下げた為、ソフィアは安堵して笑いかけた。
「安心して頂戴、絶対上手くいかせてみせるから。じゃあ今日のところは帰るわね。また連絡するから。あ、この事は勿論他言無用よ?」
「はい。わざわざありがとうございました。お気をつけて」
別れの挨拶を口にしたソフィアは、降りる時に抜け目なく窓枠から垂らしておいたロープを伝って再び屋根へと上がり、慎重に窓を閉めてこの屋敷を脱出するべく、再び屋根の上を進み始めた。
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