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第2章 アルティナの縁談
3.物騒な憂さ晴らし
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「きゃあっ! あ、あのっ! クレスタ様!? 何をなさるんですか!?」
わざとらしく悲鳴を上げて、狼狽するふりをしたアルティナに向かって、彼は鼻息荒く、彼女の身体をまさぐり始める。
「いやぁ、年増にしてはなかなかの美形で、良い体つきじゃじゃないか。まあ、安心してくれ。私は若くなくても気にしないから、たっぷり可愛がってやるぞ?」
「そうですか……。それではここまでご案内、どうもありがとう、ございますっ!!」
「うあっ!!」
勿論、そのまま大人しくされるがままになっているわけは無く、アルティナは重みを増す為に、底に金属が仕込んである靴で、思いっきり体重をかけてクレスタの足を踏みつけた。その痛みで思わず彼が腕を緩めた瞬間、アルティナが拳を相手の顎に叩き込み、あっさりと床に殴り倒す。
「な、なん、ぐあっ!!」
「はっ! よっと! おっとと、ちょろすぎだわね!」
床に倒れたクレスタを蹴り転がしながら、アルティナは素早く左の袖の中に右手を突っ込み、紐状の物を掴み出した。そして手早くクレスタの腕を後ろに回し、その紐を両手首に巻き付けて、両端に付いている金具を組み合わせて一瞬で固定する。次いで右の袖の中から同様の物を取り出すと、それで暴れている彼の両足首を、先程と同様にいとも容易く拘束してしまった。
「あ、アルティナ殿! 一体何を、むごがぁっ!?」
流石に抗議の声を上げたクレスタだったが、屈んだままの姿勢でアルティナがスカートの裾を捲り上げ、ふくらはぎに括り付けていた物を取り出し、躊躇いなく彼の口内に突っ込む。更にそれの左右に伸びている紐を彼の後頭部に回し、そこでしっかりと結びつけてしっかりと固定してしまった。
「う、うえぁ、おうっ!」
ここまで驚くほどの短時間でやり遂げてしまったアルティナは、床に無様に転がっているクレスタと眺めながら、(やっぱり、緑騎士隊開発の拘束具は、優れ物だわ)と、道具の使い勝手の良さを改めて認識し、開発担当者の能力に感心した。そんな彼女の思考を遮る様にクレスタが呻き声を上げた為、アルティナはゆっくりと立ち上がり、酷薄な笑みを浮かべながら彼を見下ろす。
「今、口の中に入れた物は、細かい網目状の布地の中に、水分の吸収率と膨張率が抜群の、乾燥させた海藻の繊維質を寄り合わせた物が入っています。唾液を少しずつ含んで口の中で膨らんで、大声が出せなくなるんですの。ですから、遠慮なく呻いて宜しいですよ?」
「はっ、はごえっ! ろうな、おどうすえ!」
「はい? 何を仰られているか、全く聞こえませんわ。ここら辺に力を入れて、お喋りあそばせ!!」
「ぐばぁっ!」
明らかに顔色を変えて訴えてきた相手の腹部に、アルティナは容赦なく渾身の蹴りを入れる。そして相手が涙目で身体を丸めて縮こまろうとする中、組み合わせた指をわざと盛大に鳴らしながら、低い声で恫喝した。
「うふふ……、クレスタ様は私の事を可愛がって下さるそうですから、私も私なりの方法で、クレスタ殿を可愛がって差し上げますわ。両親の話では、クレスタ様の魅力はお腹の皮下脂肪だから、存分に堪能してくる様に言われておりますし」
「ぐほっ、うがぁっ、や、なんあ」
しっかり誤解を招く様に、両親の指示であると告げたアルティナに、クレスタが驚いた様に目を見張る。しかし彼女はわざとらしく「両親」という言葉を繰り返し、彼等が承知の上だとほのめかした。
「両親の話では、クレスタ様には被虐趣味がおありとか。それを公にできないと困っておられて、思い余った末に父に相談されて、私に白羽の矢が立ったと聞きましたわ。両親から『もう我慢なんか、しなくて良いから。クレスタ様とお似合いよ。思う存分おやりなさい』と言われて、この縁談の話を聞いた時、歓喜の涙を流しましたの」
「ふぇっ、うえぇぇっ! いあうっ!!」
そして恫喝口調から一転、今度は恍惚とし口調であらぬ方を見上げながら、独り言の様に告げるアルティナを見上げて、クレスタの顔色は死人の様に白くなった。そんな彼を見下ろしながら、アルティナが晴れやかな笑顔を振り撒く。
「私、幼い頃から破壊衝動が止められなくて、無抵抗の使用人達を何人も半死半生の目に……。あ、死者は出していませんので、ご心配なく。あっさり殺してしまったら、つまらないですから。因みに『生かさず殺さず』が、私のモットーですの。これから末永く、お付き合い下さいませ」
「よ、ひょうあんひゃ、あいおっ!!」
「今日、こちらに伺うにあたっては、両親からくれぐれも粗相の無い様にと言い付けられておりますので、力一杯、クレスタ様を愛でさせて頂きますわっ!!」
「ぐげぇっ!!」
宣言すると同時に、アルティナは先程蹴った腹を、体重をかけて思いきり踏みつけた。そしてそのまま不敵に微笑む。
「安心して下さい。他の方とのお付き合いもあるでしょうし、服の下だけに跡を残して差し上げます。これから長いお付き合いになるのですから、そこの所はきちんと信用して頂きたいですし。今回はお試しという事で」
「ぎぇっ!! ば、ばえでっ!!」
「さあ、軽く鬱憤晴らしといきましょうか……」
「ひぃっ! ああめへっ!」
そこで屈んだアルティナは、再びスカートの裾から、手先から肘まで位の長さの棒状の物を取り出し、恐怖に震えるクレスタの眼前に突き出しながら、不敵に微笑んだ。
わざとらしく悲鳴を上げて、狼狽するふりをしたアルティナに向かって、彼は鼻息荒く、彼女の身体をまさぐり始める。
「いやぁ、年増にしてはなかなかの美形で、良い体つきじゃじゃないか。まあ、安心してくれ。私は若くなくても気にしないから、たっぷり可愛がってやるぞ?」
「そうですか……。それではここまでご案内、どうもありがとう、ございますっ!!」
「うあっ!!」
勿論、そのまま大人しくされるがままになっているわけは無く、アルティナは重みを増す為に、底に金属が仕込んである靴で、思いっきり体重をかけてクレスタの足を踏みつけた。その痛みで思わず彼が腕を緩めた瞬間、アルティナが拳を相手の顎に叩き込み、あっさりと床に殴り倒す。
「な、なん、ぐあっ!!」
「はっ! よっと! おっとと、ちょろすぎだわね!」
床に倒れたクレスタを蹴り転がしながら、アルティナは素早く左の袖の中に右手を突っ込み、紐状の物を掴み出した。そして手早くクレスタの腕を後ろに回し、その紐を両手首に巻き付けて、両端に付いている金具を組み合わせて一瞬で固定する。次いで右の袖の中から同様の物を取り出すと、それで暴れている彼の両足首を、先程と同様にいとも容易く拘束してしまった。
「あ、アルティナ殿! 一体何を、むごがぁっ!?」
流石に抗議の声を上げたクレスタだったが、屈んだままの姿勢でアルティナがスカートの裾を捲り上げ、ふくらはぎに括り付けていた物を取り出し、躊躇いなく彼の口内に突っ込む。更にそれの左右に伸びている紐を彼の後頭部に回し、そこでしっかりと結びつけてしっかりと固定してしまった。
「う、うえぁ、おうっ!」
ここまで驚くほどの短時間でやり遂げてしまったアルティナは、床に無様に転がっているクレスタと眺めながら、(やっぱり、緑騎士隊開発の拘束具は、優れ物だわ)と、道具の使い勝手の良さを改めて認識し、開発担当者の能力に感心した。そんな彼女の思考を遮る様にクレスタが呻き声を上げた為、アルティナはゆっくりと立ち上がり、酷薄な笑みを浮かべながら彼を見下ろす。
「今、口の中に入れた物は、細かい網目状の布地の中に、水分の吸収率と膨張率が抜群の、乾燥させた海藻の繊維質を寄り合わせた物が入っています。唾液を少しずつ含んで口の中で膨らんで、大声が出せなくなるんですの。ですから、遠慮なく呻いて宜しいですよ?」
「はっ、はごえっ! ろうな、おどうすえ!」
「はい? 何を仰られているか、全く聞こえませんわ。ここら辺に力を入れて、お喋りあそばせ!!」
「ぐばぁっ!」
明らかに顔色を変えて訴えてきた相手の腹部に、アルティナは容赦なく渾身の蹴りを入れる。そして相手が涙目で身体を丸めて縮こまろうとする中、組み合わせた指をわざと盛大に鳴らしながら、低い声で恫喝した。
「うふふ……、クレスタ様は私の事を可愛がって下さるそうですから、私も私なりの方法で、クレスタ殿を可愛がって差し上げますわ。両親の話では、クレスタ様の魅力はお腹の皮下脂肪だから、存分に堪能してくる様に言われておりますし」
「ぐほっ、うがぁっ、や、なんあ」
しっかり誤解を招く様に、両親の指示であると告げたアルティナに、クレスタが驚いた様に目を見張る。しかし彼女はわざとらしく「両親」という言葉を繰り返し、彼等が承知の上だとほのめかした。
「両親の話では、クレスタ様には被虐趣味がおありとか。それを公にできないと困っておられて、思い余った末に父に相談されて、私に白羽の矢が立ったと聞きましたわ。両親から『もう我慢なんか、しなくて良いから。クレスタ様とお似合いよ。思う存分おやりなさい』と言われて、この縁談の話を聞いた時、歓喜の涙を流しましたの」
「ふぇっ、うえぇぇっ! いあうっ!!」
そして恫喝口調から一転、今度は恍惚とし口調であらぬ方を見上げながら、独り言の様に告げるアルティナを見上げて、クレスタの顔色は死人の様に白くなった。そんな彼を見下ろしながら、アルティナが晴れやかな笑顔を振り撒く。
「私、幼い頃から破壊衝動が止められなくて、無抵抗の使用人達を何人も半死半生の目に……。あ、死者は出していませんので、ご心配なく。あっさり殺してしまったら、つまらないですから。因みに『生かさず殺さず』が、私のモットーですの。これから末永く、お付き合い下さいませ」
「よ、ひょうあんひゃ、あいおっ!!」
「今日、こちらに伺うにあたっては、両親からくれぐれも粗相の無い様にと言い付けられておりますので、力一杯、クレスタ様を愛でさせて頂きますわっ!!」
「ぐげぇっ!!」
宣言すると同時に、アルティナは先程蹴った腹を、体重をかけて思いきり踏みつけた。そしてそのまま不敵に微笑む。
「安心して下さい。他の方とのお付き合いもあるでしょうし、服の下だけに跡を残して差し上げます。これから長いお付き合いになるのですから、そこの所はきちんと信用して頂きたいですし。今回はお試しという事で」
「ぎぇっ!! ば、ばえでっ!!」
「さあ、軽く鬱憤晴らしといきましょうか……」
「ひぃっ! ああめへっ!」
そこで屈んだアルティナは、再びスカートの裾から、手先から肘まで位の長さの棒状の物を取り出し、恐怖に震えるクレスタの眼前に突き出しながら、不敵に微笑んだ。
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