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後日談ーもう一度あの時をー 双子の義弟23
しおりを挟む「目が合ったり、手が触れただけで動悸がして調子が狂うから、誰にもそれを悟られないようにと必死だった。ちゃんと職務を全うしなければと思って」
「真面目だな、郁。それで避けられるから余計に俺は郁を追いかけまわしてた。思えば、あれから俺はずっと郁のこと追いかけてるな」
当時は、何度求愛しても受け入れてもらえなかった。あの頃の室見は、焦がれて焦がれて、自分の気持ちを押し付けるしか方法を知らなかった。そのせいで自ら関係を壊してしまった。けれど今は、すべて解った上で、郁は室見を受け入れようとしてくれている。もう過ちは繰り返さない。
「一生かけて郁に愛を教えてあげるって誓ったから、ゆっくり好きになってもらえればいいんだけどさ」
室見は少しだけ拗ねた顔を作って、郁の額の傷痕にキスをした。こんな風に、郁が心を開いて自分のことを話してくれるだけでも嬉しい。だが、欲望は果てがない。自分のように、とまでは求めないが、できれば郁には早く自分を好きになってもらいたいし、愛してもらいたいし、最終的には狂うほど求めるようになってほしい。
「一花。……ちゃんと好きだよ」
そう、こんな風に、告白もされたい。
「え?」
室見は、はた、と郁を見つめ返した。
頬をほんのり赤く染めて室見を見つめる郁の表情は、中学生の室見がずっと妄想していた、“郁が俺に告白してくれるとき”のものと寸分も違わない。
「伝わってなかったなら、ごめん。長い間、一花への好意は、いけないことだと思っていたから」
自分の中で、自分の気持ちを整理しきれない部分があるんだ。でも、と郁は続ける。
「目を合わせたり、手が触れてドキドキするのが、今はすごく嬉しいと感じるし、一花を喜ばせたいといつも思ってる」
郁は室見の左手を両手で掲げるように持ち、甲にキスを落とすとぎゅっと握った。そして、室見の目を見て微笑んだ。
「それって、一花のことが好きってことだよな」
室見の目には、照れながら微笑む郁が朝日を浴びているかのようにキラキラと輝いて見えた。口づけられた手の甲から、熱がどっと全身に広がっていく。
この、綺麗で真面目でちょっと抜けているところもあるけれど、そこも魅力でとんでもなく可愛らしいひとの、この、手を、取ることを許されている。自分だけが。
胸がいっぱいになって、室見は郁の手を両手で握り返した。
「俺、今、幸福感がすごい」
室見は深く息を吐き出して、今度は両腕を広げて郁を抱き締めた。
「愛してる。郁。うれしい。ありがとう」
耳元で囁くと、郁はこくりと頷いた。
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