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邪教の儀式を食い止めろ2
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ゼロ達は渓谷の都市手前の廃村で先行していたチェスター、カミーラ、コルツの3人と合流した。
前衛を担うオックスとコルツ、中衛のゼロとチェスターは前衛に出ても十分以上に戦える。
そして、後衛のリリスとカミーラ。
アイラスとイバンス、2つの国の上位冒険者5人と勇猛な軍人が1人、回復を担う聖職者がいないが、それ以外ではパーティーとしては申し分ない。
そのうえ、集団戦闘ともなればゼロのアンデッドにより軍隊レベルの戦闘も可能だ。
ゼロは皆を見渡した。
「行方の分からないライズさん達のことも気がかりですが、優先すべきは奴等の儀式を阻止してセイラさん達の救出です。チェスターさん、何か情報は得られましたか?」
ゼロの問いにチェスターは首を振った。
「すまない。先行して色々と調べたが、捕まった2人の居場所は分からない。ゼロに言われたとおり、無理をしなかったのもあるが、周辺の街や村はともかく、渓谷の都市はアンデッドが多くて侵入も難しかったからな」
チェスターの言葉にゼロは頷いた。
「私も無理を承知でお願いしたのですからそれは仕方のないことです。渓谷の都市で太陽が天頂に来るのを見ることができる広場のような場所はありますか?」
「それならば都市の中央広場だ。渓谷の都市は谷の底に位置しているから日照時間は短いが、中央広場は1年を通して日が良く当たる憩いの場だ」
チェスターが書いた簡易的な地図で場所を確認する。
「なるほど。奴等の儀式はその広場で行われる筈です。だとすれば、現時点でセイラさんとレナさんの居場所は分からなくても儀式当日までは無事でいるでしょうから問題ありません。私達は儀式を狙って2人を救出しましょう」
ゼロが当日の計画を考え始めた横でカミーラがおずおずと手を挙げた。
「・・・あの・・都市の中に生きた人間がうろついている・・・」
カミーラの言葉にコルツが続く。
「確かに、多数の人間が都市に集まっています。その数は数十程度ですが、奇妙なことに彼等はアンデッドにも襲われることはありません」
その言葉を聞いたゼロの表情が険しくなる。
「想定はしていましたが。厳しくなりますね」
「それはどういうことだ?」
黙って聞いていたオックスが口を開く。
「レナさん達を狙った敵がこれまでのリッチのようなアンデッドでなく生きた人間の死霊術師だと聞いた時から懸念していました。今、都市に集まっているのは月の光教の信者達です」
「しかし、奴等は百年以上昔に消え去った教団じゃないのか?」
「地下に潜って何世代にも渡って密かに活動していたのでしょう。正直言って今回の騒動が滅んだ月の光教の残りカスによるアンデッドの大量発生ならば対処はそう難しくありませんでした。頭の中から魂まで腐った哀れな死霊達だけならば大軍をもって国を取り戻し、ノー・ライフ・キングを倒せばいいだけです。手間は掛かりますが力押しで対処できます。しかし、死霊術師を含めた生身の人間による組織が関与しているとなると厄介です。長きに渡って機会を狙っていたとなれば、この機会を逃さないよう様々な策を巡らせている筈です」
ゼロの説明にチェスターが頷く。
「つまり、何より恐ろしいのはアンデッドの軍勢でなく、それを利用する人間達ってことか」
「まあ、そういうことです。だから私達もあらゆる事態を想定して作戦を練りましょう」
ゼロはパーティーを2つに分けた。
オックス率いるリリス、コルツの3人による陽動隊とゼロ率いるチェスター、カミーラの3人の救出隊だ。
ゼロはカミーラを見た。
「レナさんを助け出すにはカミーラさんの力が必要になります。よろしくお願いします」
「・・・」
ゼロの頼みにカミーラは無言で頷いた。
ゼロが予測した儀式の日の朝、いつもと変わらず太陽は昇ったが、その太陽を追うように月が接近している。
ゼロ、チェスター、カミーラの3人は都市を見渡せる高台の上にいた。
「このままだと太陽と月が重なるな・・・。ゼロ、あんたすげえな、訳の分からない計算でこれを予測したのか?」
チェスターが気味悪そうに空を見上げている。
「季節による太陽と月の軌道の変化にイバンス王国の位置を重ねて計算しました。師匠に教えられた星の流れと輪廻の関係についての死霊術の学問が気に入りましてね、よく師匠と共に夜空を見上げながら語り尽くしたものです」
「・・・所謂天文学ね」
カミーラの答えにゼロが頷く。
「その学問の一種ですね。つまるところ、これから始まる日蝕は単なる自然現実ですが、奴等はそれを利用しているんですよ」
ゼロは高台から都市の中央広場を見下ろしていた。
先程から中央広場に教団信者と思われる者達やアンデッドが集まりつつある。
ゼロが予想したとおり、中央広場で儀式が行われることは間違いなさそうだ。
後は儀式が始まるのを待ち、作戦開始の瞬間を待つだけである。
オックス達も秘密裏に都市の内部に潜入してその時を待っている筈だ。
中央広場を見下ろしていたゼロの表情が険しくなる。
儀式の時がきたのだ。
前衛を担うオックスとコルツ、中衛のゼロとチェスターは前衛に出ても十分以上に戦える。
そして、後衛のリリスとカミーラ。
アイラスとイバンス、2つの国の上位冒険者5人と勇猛な軍人が1人、回復を担う聖職者がいないが、それ以外ではパーティーとしては申し分ない。
そのうえ、集団戦闘ともなればゼロのアンデッドにより軍隊レベルの戦闘も可能だ。
ゼロは皆を見渡した。
「行方の分からないライズさん達のことも気がかりですが、優先すべきは奴等の儀式を阻止してセイラさん達の救出です。チェスターさん、何か情報は得られましたか?」
ゼロの問いにチェスターは首を振った。
「すまない。先行して色々と調べたが、捕まった2人の居場所は分からない。ゼロに言われたとおり、無理をしなかったのもあるが、周辺の街や村はともかく、渓谷の都市はアンデッドが多くて侵入も難しかったからな」
チェスターの言葉にゼロは頷いた。
「私も無理を承知でお願いしたのですからそれは仕方のないことです。渓谷の都市で太陽が天頂に来るのを見ることができる広場のような場所はありますか?」
「それならば都市の中央広場だ。渓谷の都市は谷の底に位置しているから日照時間は短いが、中央広場は1年を通して日が良く当たる憩いの場だ」
チェスターが書いた簡易的な地図で場所を確認する。
「なるほど。奴等の儀式はその広場で行われる筈です。だとすれば、現時点でセイラさんとレナさんの居場所は分からなくても儀式当日までは無事でいるでしょうから問題ありません。私達は儀式を狙って2人を救出しましょう」
ゼロが当日の計画を考え始めた横でカミーラがおずおずと手を挙げた。
「・・・あの・・都市の中に生きた人間がうろついている・・・」
カミーラの言葉にコルツが続く。
「確かに、多数の人間が都市に集まっています。その数は数十程度ですが、奇妙なことに彼等はアンデッドにも襲われることはありません」
その言葉を聞いたゼロの表情が険しくなる。
「想定はしていましたが。厳しくなりますね」
「それはどういうことだ?」
黙って聞いていたオックスが口を開く。
「レナさん達を狙った敵がこれまでのリッチのようなアンデッドでなく生きた人間の死霊術師だと聞いた時から懸念していました。今、都市に集まっているのは月の光教の信者達です」
「しかし、奴等は百年以上昔に消え去った教団じゃないのか?」
「地下に潜って何世代にも渡って密かに活動していたのでしょう。正直言って今回の騒動が滅んだ月の光教の残りカスによるアンデッドの大量発生ならば対処はそう難しくありませんでした。頭の中から魂まで腐った哀れな死霊達だけならば大軍をもって国を取り戻し、ノー・ライフ・キングを倒せばいいだけです。手間は掛かりますが力押しで対処できます。しかし、死霊術師を含めた生身の人間による組織が関与しているとなると厄介です。長きに渡って機会を狙っていたとなれば、この機会を逃さないよう様々な策を巡らせている筈です」
ゼロの説明にチェスターが頷く。
「つまり、何より恐ろしいのはアンデッドの軍勢でなく、それを利用する人間達ってことか」
「まあ、そういうことです。だから私達もあらゆる事態を想定して作戦を練りましょう」
ゼロはパーティーを2つに分けた。
オックス率いるリリス、コルツの3人による陽動隊とゼロ率いるチェスター、カミーラの3人の救出隊だ。
ゼロはカミーラを見た。
「レナさんを助け出すにはカミーラさんの力が必要になります。よろしくお願いします」
「・・・」
ゼロの頼みにカミーラは無言で頷いた。
ゼロが予測した儀式の日の朝、いつもと変わらず太陽は昇ったが、その太陽を追うように月が接近している。
ゼロ、チェスター、カミーラの3人は都市を見渡せる高台の上にいた。
「このままだと太陽と月が重なるな・・・。ゼロ、あんたすげえな、訳の分からない計算でこれを予測したのか?」
チェスターが気味悪そうに空を見上げている。
「季節による太陽と月の軌道の変化にイバンス王国の位置を重ねて計算しました。師匠に教えられた星の流れと輪廻の関係についての死霊術の学問が気に入りましてね、よく師匠と共に夜空を見上げながら語り尽くしたものです」
「・・・所謂天文学ね」
カミーラの答えにゼロが頷く。
「その学問の一種ですね。つまるところ、これから始まる日蝕は単なる自然現実ですが、奴等はそれを利用しているんですよ」
ゼロは高台から都市の中央広場を見下ろしていた。
先程から中央広場に教団信者と思われる者達やアンデッドが集まりつつある。
ゼロが予想したとおり、中央広場で儀式が行われることは間違いなさそうだ。
後は儀式が始まるのを待ち、作戦開始の瞬間を待つだけである。
オックス達も秘密裏に都市の内部に潜入してその時を待っている筈だ。
中央広場を見下ろしていたゼロの表情が険しくなる。
儀式の時がきたのだ。
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