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鉱山の街防衛戦
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アンデッド達が入り乱れて戦いを繰り広げる中、剣を抜いたゼロは一点を見据えていた。
敵アンデッドの右翼後方。
その周辺から波紋のように魔力が流れ、その魔力にアンデッド達が反応している。
それは通常の軍隊の指揮伝達の速度に比べ、遥かに短時間で全体に行き渡る波であるが、ゼロはその流れを見逃さなかった。
「哀れな死霊達を道連れにしながらも引くつもりはないようですね。それならば、殲滅するのみです」
薄い笑みを浮かべるゼロは自軍に命令を下す。
「前進!敵を殲滅しなさい」
3体のデス・ナイトに指揮されたゼロのスケルトンウォリアー達が大盾を揃え、槍を構えて前進を始めた。
「ゼロ!あんたのアンデッドの邪魔をしないから俺達も出ていいか?」
「ゼロ様、私も参戦してよろしいですか?」
チェスターとイズがしびれを切らす。
「構いません。正面は私の軍団が引き受けます。本命は敵右翼側にいますが、もう少し消耗させなければ危険です。皆さんは敵左翼に回り込んで攻撃を加えてください。下位アンデッドとはいえ囲まれて数で押されると危険です。決して無理に突っ込まないように」
ゼロの指示を聞いたチェスター、カミーラ、イズの3人は敵左翼に向かって駆け出した。
ゼロの背後に1人残るリズ。
「どうしました?行かないのですか?」
振り返ることなく問い掛けるゼロの背を見るリズ。
「私はここでゼロ様の戦いを見届けます」
ゼロの下で死霊術を学ぶリズはゼロの死霊術の戦い方を学び取ろうとしていたが、彼女の気持ちはそれだけではない。
(あの人がいない今、ゼロ様を守るのは私しかいない。例えそれが今だけでも・・・)
リズはその想いを胸に秘め、弓に矢を番えてゼロの傍らに立つ。
ゼロの左右に控えていたオメガとアルファはそっと後ろに下がった。
一方、チェスター達はアンデッドの左翼側から猛烈な打撃を加えた。
イズは精霊魔法により岩石の雨を降らせてアンデッドを押し潰す。
カミーラが放った多数の符がアンデッドに貼り付けば、そこかしこでアンデッドが爆散したり、呪いにより身体が土塊と化して崩れ落ちる。
チェスターがアンデッドに斬り掛かれば次々と真っ二つに溶断され、炎に焼き尽くされる。
そして、3人の連携の隙をシャドウ、ミラージュ、ジャック・オー・ランタンが補完し、みるみるうちに左翼を崩してゆくが、敵も態勢を立て直そうと新たなアンデッドを次々と呼び寄せる。
一見すると不毛な消耗戦の様相を呈しているかに見えるが、ゼロの軍団が徐々に敵集団を押し始め、敵の再召喚が追いつかなくなりつつあった。
ゼロが新たな手勢を召喚する。
ゼロの前に並んだ10体の首無しの騎士デュラハンはそれぞれが白骨の馬が引く馬車に乗る戦車兵だ。
デュラハンの戦車兵はスケルトンウォリアーに打ち崩された綻びから突入して敵を蹴散らしながら敵右翼の深部へと突き進む。
リズがゼロの顔を覗き込むと、薄く開いた目で戦場全体をぼんやりと眺めているゼロ。
本気で死霊術を行使しているのだ。
(凄い、常に戦場全体を把握して死霊達を使役している。でも、本気で死霊術を操っているときのゼロ様は無防備のはず・・・)
リズは何時でも自らを盾とすることが出来るようにゼロに寄り添った。
とはいえ、戦局はゼロの軍団が圧倒しつつある。
敵もアンデッドを補充し続けるが、ゼロの猛攻による損害の方が大きい。
そんな中で敵の直中に突入したデュラハンの戦車隊は敵の陣形を分断した。
敵陣を貫いたデュラハン達は反転して背後からの再突入をすべく態勢を立て直している。
「流石に直線攻撃で討ち取られるような間抜けではありませんね」
ゼロが追う力の主が敵右翼後方から中心へと移動している。
それでも、ゼロの軍団の正面攻撃と左翼からのチェスター達の攻撃、そして、デュラハン戦車隊の突撃により敵陣形は瓦解しつつあった。
「頃合いですね」
ゼロが呟くと、それに反応し、シールドに前線の指揮を委ねたサーベルとスピアがゼロの下に後退してくる。
オメガとアルファも前に出た。
「敵陣に斬り込んで群れに紛れたリッチを討ち取ります」
サーベルとスピアがそれぞれ武器を構えてゼロの前に立ち、そこにオメガが加わった。
アルファは背後を守る。
「マスター、我々が道を切り開きます。マスターの思うがままにお進みください」
「主様は後方を気にする必要はございません」
オメガとアルファの声に頷いたゼロは駆け出した。
リズもゼロの後に続く。
デュラハンが穿った穴にねじ入り、その穴を埋めようとする敵を蹴散らしながら進む。
2体のデス・ナイトとオメガはまるで無人の野を征くが如き勢いで突き進み、対面からはデュラハンの戦車隊が再突入してくる。
その様子を見たチェスター達もゼロに合流すべく攻勢を強めた。
アンデッドの集団に紛れ込んでいたリッチは虚ろな思考ながら自らが何をすべきか、何が出来るのかを考えていた。
最早戦況を立て直すことは叶わない。
ならば、この場は引いて力を蓄えて再び軍勢を率いて来ればよい。
幸いにしてこの戦いでリッチとしての能力が上がった。
力を回復させればより強いアンデッドを召喚することが出来る筈だ。
リッチは群れに紛れて後方に移動し、その場から逃れようとしていた。
残存する数百の手勢はこの場に残し、時間稼ぎのために使い捨てても問題ない。
自分だけが逃れることができればいいのだ。
しかし
「逃がしませんよ」
いつの間にか目の前に黒衣の戦士、ネクロマンサーが立ちはだかっている。
更に周囲は複数の上位アンデッドや力の強い人間共に囲まれている。
無理矢理に押し通れば脱出することが出来るかもしれないが、それは得策ではない。
ならば、目の前のネクロマンサーを倒した方が早い。
実力は互角か、仮に差し違えたとしても自分は不死者だ、こちらに分がある。
リッチは剣を構えた。
群れに紛れるため、見てくれは朽ち果てた剣や鎧だが、それは擬態であり、強力な魔力を秘めた装備だ。
目の前のネクロマンサーを討つだけの力はある筈だ。
「大人しく眠っては・・・いただけないようですね」
ゼロも剣を構えた。
刹那、ゼロがリッチの懐に飛び込んだ。
地を這う程に姿勢を低く踏み込んだゼロの背後からリズがサラマンダーの力を宿らせた矢を放つ。
放たれた矢はリッチの頭蓋骨の額に突き刺さった。
続けてゼロの剣が走り、リッチの頭蓋骨を斬り飛ばす。
そして、跳ね上がった頭蓋骨にカミーラが投げた符が張り付いて爆発を引き起こした。
「仕留めたか?」
チェスターが叫ぶが、そう甘くはない。
直ぐに爆散した頭蓋骨を含め、リッチの身体が復元する。
「駄目か!」
チェスターが落胆するが、ゼロが首を振る。
「大丈夫です。しっかりとダメージを与えています。あと一撃程度、ダメージを与えれば!」
ゼロの言葉にチェスターとイズが反応した。
2人同時にリッチに襲い掛かる。
「任せろ!」
「お任せください!」
チェスターの剣がリッチを溶断し、イズが放つ精霊魔法が溶断されたその身体を押し潰す。
リッチを倒すには至らないが、ゼロは頷いた。
「十分です」
リッチは再び復元しようとするが、その正面にゼロが歩み出て手を翳す。
巻き込まれないようにオメガ達が距離を取った。
「・・・開門!」
復元途中のリッチの前に小さな門が現れた。
ゼロの究極の死霊術である送魂落冥術によって呼び出された冥府の門が開く。
復元中の不意を突かれたリッチは為す術なく門に吸い寄せられ、冥府の底へと飲み込まれていった。
直ちに門を閉じて剣を納めたゼロ。
「終わりました」
リッチ無き今となれば残された数百のアンデッドなどゼロにしてみれば何の脅威にもならない。
ゼロの支配下において冥界の狭間に戻せばいいだけだ。
鉱山の街を守る戦いは実に呆気なく終結を迎えた。
敵アンデッドの右翼後方。
その周辺から波紋のように魔力が流れ、その魔力にアンデッド達が反応している。
それは通常の軍隊の指揮伝達の速度に比べ、遥かに短時間で全体に行き渡る波であるが、ゼロはその流れを見逃さなかった。
「哀れな死霊達を道連れにしながらも引くつもりはないようですね。それならば、殲滅するのみです」
薄い笑みを浮かべるゼロは自軍に命令を下す。
「前進!敵を殲滅しなさい」
3体のデス・ナイトに指揮されたゼロのスケルトンウォリアー達が大盾を揃え、槍を構えて前進を始めた。
「ゼロ!あんたのアンデッドの邪魔をしないから俺達も出ていいか?」
「ゼロ様、私も参戦してよろしいですか?」
チェスターとイズがしびれを切らす。
「構いません。正面は私の軍団が引き受けます。本命は敵右翼側にいますが、もう少し消耗させなければ危険です。皆さんは敵左翼に回り込んで攻撃を加えてください。下位アンデッドとはいえ囲まれて数で押されると危険です。決して無理に突っ込まないように」
ゼロの指示を聞いたチェスター、カミーラ、イズの3人は敵左翼に向かって駆け出した。
ゼロの背後に1人残るリズ。
「どうしました?行かないのですか?」
振り返ることなく問い掛けるゼロの背を見るリズ。
「私はここでゼロ様の戦いを見届けます」
ゼロの下で死霊術を学ぶリズはゼロの死霊術の戦い方を学び取ろうとしていたが、彼女の気持ちはそれだけではない。
(あの人がいない今、ゼロ様を守るのは私しかいない。例えそれが今だけでも・・・)
リズはその想いを胸に秘め、弓に矢を番えてゼロの傍らに立つ。
ゼロの左右に控えていたオメガとアルファはそっと後ろに下がった。
一方、チェスター達はアンデッドの左翼側から猛烈な打撃を加えた。
イズは精霊魔法により岩石の雨を降らせてアンデッドを押し潰す。
カミーラが放った多数の符がアンデッドに貼り付けば、そこかしこでアンデッドが爆散したり、呪いにより身体が土塊と化して崩れ落ちる。
チェスターがアンデッドに斬り掛かれば次々と真っ二つに溶断され、炎に焼き尽くされる。
そして、3人の連携の隙をシャドウ、ミラージュ、ジャック・オー・ランタンが補完し、みるみるうちに左翼を崩してゆくが、敵も態勢を立て直そうと新たなアンデッドを次々と呼び寄せる。
一見すると不毛な消耗戦の様相を呈しているかに見えるが、ゼロの軍団が徐々に敵集団を押し始め、敵の再召喚が追いつかなくなりつつあった。
ゼロが新たな手勢を召喚する。
ゼロの前に並んだ10体の首無しの騎士デュラハンはそれぞれが白骨の馬が引く馬車に乗る戦車兵だ。
デュラハンの戦車兵はスケルトンウォリアーに打ち崩された綻びから突入して敵を蹴散らしながら敵右翼の深部へと突き進む。
リズがゼロの顔を覗き込むと、薄く開いた目で戦場全体をぼんやりと眺めているゼロ。
本気で死霊術を行使しているのだ。
(凄い、常に戦場全体を把握して死霊達を使役している。でも、本気で死霊術を操っているときのゼロ様は無防備のはず・・・)
リズは何時でも自らを盾とすることが出来るようにゼロに寄り添った。
とはいえ、戦局はゼロの軍団が圧倒しつつある。
敵もアンデッドを補充し続けるが、ゼロの猛攻による損害の方が大きい。
そんな中で敵の直中に突入したデュラハンの戦車隊は敵の陣形を分断した。
敵陣を貫いたデュラハン達は反転して背後からの再突入をすべく態勢を立て直している。
「流石に直線攻撃で討ち取られるような間抜けではありませんね」
ゼロが追う力の主が敵右翼後方から中心へと移動している。
それでも、ゼロの軍団の正面攻撃と左翼からのチェスター達の攻撃、そして、デュラハン戦車隊の突撃により敵陣形は瓦解しつつあった。
「頃合いですね」
ゼロが呟くと、それに反応し、シールドに前線の指揮を委ねたサーベルとスピアがゼロの下に後退してくる。
オメガとアルファも前に出た。
「敵陣に斬り込んで群れに紛れたリッチを討ち取ります」
サーベルとスピアがそれぞれ武器を構えてゼロの前に立ち、そこにオメガが加わった。
アルファは背後を守る。
「マスター、我々が道を切り開きます。マスターの思うがままにお進みください」
「主様は後方を気にする必要はございません」
オメガとアルファの声に頷いたゼロは駆け出した。
リズもゼロの後に続く。
デュラハンが穿った穴にねじ入り、その穴を埋めようとする敵を蹴散らしながら進む。
2体のデス・ナイトとオメガはまるで無人の野を征くが如き勢いで突き進み、対面からはデュラハンの戦車隊が再突入してくる。
その様子を見たチェスター達もゼロに合流すべく攻勢を強めた。
アンデッドの集団に紛れ込んでいたリッチは虚ろな思考ながら自らが何をすべきか、何が出来るのかを考えていた。
最早戦況を立て直すことは叶わない。
ならば、この場は引いて力を蓄えて再び軍勢を率いて来ればよい。
幸いにしてこの戦いでリッチとしての能力が上がった。
力を回復させればより強いアンデッドを召喚することが出来る筈だ。
リッチは群れに紛れて後方に移動し、その場から逃れようとしていた。
残存する数百の手勢はこの場に残し、時間稼ぎのために使い捨てても問題ない。
自分だけが逃れることができればいいのだ。
しかし
「逃がしませんよ」
いつの間にか目の前に黒衣の戦士、ネクロマンサーが立ちはだかっている。
更に周囲は複数の上位アンデッドや力の強い人間共に囲まれている。
無理矢理に押し通れば脱出することが出来るかもしれないが、それは得策ではない。
ならば、目の前のネクロマンサーを倒した方が早い。
実力は互角か、仮に差し違えたとしても自分は不死者だ、こちらに分がある。
リッチは剣を構えた。
群れに紛れるため、見てくれは朽ち果てた剣や鎧だが、それは擬態であり、強力な魔力を秘めた装備だ。
目の前のネクロマンサーを討つだけの力はある筈だ。
「大人しく眠っては・・・いただけないようですね」
ゼロも剣を構えた。
刹那、ゼロがリッチの懐に飛び込んだ。
地を這う程に姿勢を低く踏み込んだゼロの背後からリズがサラマンダーの力を宿らせた矢を放つ。
放たれた矢はリッチの頭蓋骨の額に突き刺さった。
続けてゼロの剣が走り、リッチの頭蓋骨を斬り飛ばす。
そして、跳ね上がった頭蓋骨にカミーラが投げた符が張り付いて爆発を引き起こした。
「仕留めたか?」
チェスターが叫ぶが、そう甘くはない。
直ぐに爆散した頭蓋骨を含め、リッチの身体が復元する。
「駄目か!」
チェスターが落胆するが、ゼロが首を振る。
「大丈夫です。しっかりとダメージを与えています。あと一撃程度、ダメージを与えれば!」
ゼロの言葉にチェスターとイズが反応した。
2人同時にリッチに襲い掛かる。
「任せろ!」
「お任せください!」
チェスターの剣がリッチを溶断し、イズが放つ精霊魔法が溶断されたその身体を押し潰す。
リッチを倒すには至らないが、ゼロは頷いた。
「十分です」
リッチは再び復元しようとするが、その正面にゼロが歩み出て手を翳す。
巻き込まれないようにオメガ達が距離を取った。
「・・・開門!」
復元途中のリッチの前に小さな門が現れた。
ゼロの究極の死霊術である送魂落冥術によって呼び出された冥府の門が開く。
復元中の不意を突かれたリッチは為す術なく門に吸い寄せられ、冥府の底へと飲み込まれていった。
直ちに門を閉じて剣を納めたゼロ。
「終わりました」
リッチ無き今となれば残された数百のアンデッドなどゼロにしてみれば何の脅威にもならない。
ゼロの支配下において冥界の狭間に戻せばいいだけだ。
鉱山の街を守る戦いは実に呆気なく終結を迎えた。
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