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窮地
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「どういうことだ?」
突然意識を取り戻したゼロにオックスが問いかける。
「開けた場所での野戦に持ち込まれました。こうなると我々に勝ち目はありません」
包囲されたオメガ達アンデッドを戻したゼロは静かに語った。
前方の平原では魔王軍が左右に展開し、陣形の構築を完了している。
ゼロ達の攻撃により数を減らしてはいるものの、魔王軍は未だ2万近くの戦力を有している。
「どうする?撤退するか?」
オックスは副連隊長として皆を守るために意見具申したが、ゼロは再び千体近くのアンデッドを召喚して魔王軍の正面に配置した。
スケルトンウォリアーとスケルトンナイトの部隊を中軸に、後方にはジャック・オー・ランタン等の魔法部隊が控える。
更にオメガとその眷族を左翼に、デュラハンの機動部隊を右翼に配置した。
対峙する魔王軍に比べて遥かに少数で陣形の幅も狭く、薄い。
「アンデッドを再召喚できるとはいえ、あの数で押し潰されると追いつきません。その間に肉迫されて私が殺されたら終わりです」
ゼロは周囲にアルファ、サーベル、スピアを召喚した。
シールドは例によって最前線にいる。
ゼロの決死の覚悟を決めた様子を見て全員が奮起した。
だがしかし、ゼロの発した言葉は付き合いの長いレナ以外の者にとって予想外のものだった。
「魔王軍の目を引くために遊撃戦を行うという連隊としての目的は達成しました。勝敗はどうであれ、連合軍も我々の遊撃戦が必要な状況は脱した筈です。よって連隊を解散しますので、皆さんは離脱してください」
皆が唖然として顔を見合わせる中でオックスは次に何をすべきかを冷静に考えた。
離脱するにしても、ここは帝国領内だ、安全な場所など無いといっていい。
南方に脱出して連合軍に合流するか、迂回して山を抜けて連邦国に逃れるかだ。
オックスの考えは南方に向かい連合軍に合流するだが、それを皆に伝える前にレナがゼロの前に立つ。
その表情に怒りの様子はなく、寂しい笑顔だった。
「そう言うと思ったわ。貴方はいつもそう。自分だけを危険に曝そうとする。でもね、付き合いの長い貴方ならば分かっているでしょうけど、私は逃げない」
ゼロは無言のままだ。
「ゼロが残るならば俺達も残るぜ!」
ライズが笑い、他の皆も頷いている。
「連隊長としての命令はもう無駄だぜ?お前自身が連隊の解散を宣言したんだ。ここから先は俺達は仲間としてお前に付いていく」
ライズの言葉を聞いてオックスが大声で笑った。
「ゼロ、お前の負けだ。確かに連隊を解散したならば俺も副連隊長としてではなく仲間として戦わせてもらう」
ゼロはため息をつきながら皆を見渡した。
「戦いが始まったらもう離脱はできません。そして、この戦いは私の力ではどうやっても勝つことはできません。二刻いや一刻程も持ちこたえられません。そんな状況でここに残るなんて馬鹿者のすることですよ」
ゼロの言葉にレナが反応する前に
「私達が馬鹿者ならば、私達を導くゼロ様は大バカです!」
リズが声を上げ、皆が笑った。
「ゼロ、ダメよ諦めなさい。ほら、早く指示を出して」
レナがゼロの肩を叩く。
ゼロは再び魔王軍に目を向けた。
ケンタウロスを中心とした騎兵隊が直ぐにでも突撃して来そうな雰囲気だ。
「仕方ありません。ならば抗うだけ抗ってみましょう。作戦は今まで通り、戦闘はアンデッドに任せて皆さんは私の護衛です」
再びゼロを中心とした円陣を組んだ。
前方に展開するアンデッドとその後方にいる死霊術師を見たベルベットは勝利を確信していた。
ここまでは敵の死霊術師の地形を利用した戦法に翻弄されたが、開けた場所に出れば万が一にも負けることはない。
「さあ、ここからが本番よ」
ベルベットの命令一下、騎兵隊が敵の中央に向かって突撃を開始、左翼と右翼の歩兵隊が前進しアンデッドを包囲せんとする。
「目障りなアンデッドを先に潰す。貴方の命を奪うのはそれから・・・」
ベルベットは冷酷な笑みを浮かべた。
ゼロは再び全力での死霊術に入った。
大盾装備のスケルトンウォリアーとスケルトンナイトが二段構えの防衛壁を構築するが、やはり向かって来る敵に比べて幅が足りない。
後方に控える魔法部隊が攻撃を開始、多数の敵が炎に包まれるが突撃の足を止めるには至らない。
やがてケンタウロスの槍が大盾に激突し、防衛壁が突き崩される。
即座に槍隊が前進を試みるが、勢いのついた騎兵を止めることはできずに蹴散らされた。
左右両翼に展開していたオメガとその眷族、デュラハンの機動部隊が左右からの攻撃を開始するが、その両部隊も側面からの攻撃を受け、十分な戦果を挙げることができない。
オメガですら自分に襲い掛かる敵兵を撃退するのに手一杯で戦場を思うように駆け巡れない。
デュラハンの機動部隊も同様だ。
千体からのアンデッドが魔王軍に飲み込まれた。
ゼロは包囲されたアンデッドを消し去り、後方に再召喚した。
「もうその手は通じないわよ」
先を読んでいたベルベットは最前線にいた騎兵集団と後続にいた騎兵を入れ替えて再突撃を掛けた。
ゼロは部隊を左右に分けてその間に敵集団を誘い込み、挟み撃ちを試みる。
挟み撃ちは成功したかに見えたが、それを上回る敵に飲み込まれる。
数に任せた猛攻撃を止めることができない。
魔王軍の先頭とゼロの距離がみるみるうちに接近する。
ゼロの前にオックス、ライズ、イズ、コルツが壁を作り、リリス、イリーナ、リズが矢を放ち始めた。
レナは広範囲魔法を魔王軍先頭部隊に撃ち込み、数十から数百の魔物を焼き尽くすが、それを上回る敵が押し寄せてくる。
更に魔王軍の後方の上空から接近してくる魔物の影が多数。
「後方からワイバーン、グリフォンが多数接近!」
リリスが叫ぶ。
虚ろな目でアンデッドを操っているゼロの表情は変わらないが、最早ゼロに魔王軍を止める術は無い。
全員が覚悟を決めたその時
「未熟者!なんだその体たらくは!」
響き渡った鋭い声、ゼロの目に光が戻る。
「・・・師匠!」
ゼロの声と共に数万のアンデッドが姿を現した。
突然意識を取り戻したゼロにオックスが問いかける。
「開けた場所での野戦に持ち込まれました。こうなると我々に勝ち目はありません」
包囲されたオメガ達アンデッドを戻したゼロは静かに語った。
前方の平原では魔王軍が左右に展開し、陣形の構築を完了している。
ゼロ達の攻撃により数を減らしてはいるものの、魔王軍は未だ2万近くの戦力を有している。
「どうする?撤退するか?」
オックスは副連隊長として皆を守るために意見具申したが、ゼロは再び千体近くのアンデッドを召喚して魔王軍の正面に配置した。
スケルトンウォリアーとスケルトンナイトの部隊を中軸に、後方にはジャック・オー・ランタン等の魔法部隊が控える。
更にオメガとその眷族を左翼に、デュラハンの機動部隊を右翼に配置した。
対峙する魔王軍に比べて遥かに少数で陣形の幅も狭く、薄い。
「アンデッドを再召喚できるとはいえ、あの数で押し潰されると追いつきません。その間に肉迫されて私が殺されたら終わりです」
ゼロは周囲にアルファ、サーベル、スピアを召喚した。
シールドは例によって最前線にいる。
ゼロの決死の覚悟を決めた様子を見て全員が奮起した。
だがしかし、ゼロの発した言葉は付き合いの長いレナ以外の者にとって予想外のものだった。
「魔王軍の目を引くために遊撃戦を行うという連隊としての目的は達成しました。勝敗はどうであれ、連合軍も我々の遊撃戦が必要な状況は脱した筈です。よって連隊を解散しますので、皆さんは離脱してください」
皆が唖然として顔を見合わせる中でオックスは次に何をすべきかを冷静に考えた。
離脱するにしても、ここは帝国領内だ、安全な場所など無いといっていい。
南方に脱出して連合軍に合流するか、迂回して山を抜けて連邦国に逃れるかだ。
オックスの考えは南方に向かい連合軍に合流するだが、それを皆に伝える前にレナがゼロの前に立つ。
その表情に怒りの様子はなく、寂しい笑顔だった。
「そう言うと思ったわ。貴方はいつもそう。自分だけを危険に曝そうとする。でもね、付き合いの長い貴方ならば分かっているでしょうけど、私は逃げない」
ゼロは無言のままだ。
「ゼロが残るならば俺達も残るぜ!」
ライズが笑い、他の皆も頷いている。
「連隊長としての命令はもう無駄だぜ?お前自身が連隊の解散を宣言したんだ。ここから先は俺達は仲間としてお前に付いていく」
ライズの言葉を聞いてオックスが大声で笑った。
「ゼロ、お前の負けだ。確かに連隊を解散したならば俺も副連隊長としてではなく仲間として戦わせてもらう」
ゼロはため息をつきながら皆を見渡した。
「戦いが始まったらもう離脱はできません。そして、この戦いは私の力ではどうやっても勝つことはできません。二刻いや一刻程も持ちこたえられません。そんな状況でここに残るなんて馬鹿者のすることですよ」
ゼロの言葉にレナが反応する前に
「私達が馬鹿者ならば、私達を導くゼロ様は大バカです!」
リズが声を上げ、皆が笑った。
「ゼロ、ダメよ諦めなさい。ほら、早く指示を出して」
レナがゼロの肩を叩く。
ゼロは再び魔王軍に目を向けた。
ケンタウロスを中心とした騎兵隊が直ぐにでも突撃して来そうな雰囲気だ。
「仕方ありません。ならば抗うだけ抗ってみましょう。作戦は今まで通り、戦闘はアンデッドに任せて皆さんは私の護衛です」
再びゼロを中心とした円陣を組んだ。
前方に展開するアンデッドとその後方にいる死霊術師を見たベルベットは勝利を確信していた。
ここまでは敵の死霊術師の地形を利用した戦法に翻弄されたが、開けた場所に出れば万が一にも負けることはない。
「さあ、ここからが本番よ」
ベルベットの命令一下、騎兵隊が敵の中央に向かって突撃を開始、左翼と右翼の歩兵隊が前進しアンデッドを包囲せんとする。
「目障りなアンデッドを先に潰す。貴方の命を奪うのはそれから・・・」
ベルベットは冷酷な笑みを浮かべた。
ゼロは再び全力での死霊術に入った。
大盾装備のスケルトンウォリアーとスケルトンナイトが二段構えの防衛壁を構築するが、やはり向かって来る敵に比べて幅が足りない。
後方に控える魔法部隊が攻撃を開始、多数の敵が炎に包まれるが突撃の足を止めるには至らない。
やがてケンタウロスの槍が大盾に激突し、防衛壁が突き崩される。
即座に槍隊が前進を試みるが、勢いのついた騎兵を止めることはできずに蹴散らされた。
左右両翼に展開していたオメガとその眷族、デュラハンの機動部隊が左右からの攻撃を開始するが、その両部隊も側面からの攻撃を受け、十分な戦果を挙げることができない。
オメガですら自分に襲い掛かる敵兵を撃退するのに手一杯で戦場を思うように駆け巡れない。
デュラハンの機動部隊も同様だ。
千体からのアンデッドが魔王軍に飲み込まれた。
ゼロは包囲されたアンデッドを消し去り、後方に再召喚した。
「もうその手は通じないわよ」
先を読んでいたベルベットは最前線にいた騎兵集団と後続にいた騎兵を入れ替えて再突撃を掛けた。
ゼロは部隊を左右に分けてその間に敵集団を誘い込み、挟み撃ちを試みる。
挟み撃ちは成功したかに見えたが、それを上回る敵に飲み込まれる。
数に任せた猛攻撃を止めることができない。
魔王軍の先頭とゼロの距離がみるみるうちに接近する。
ゼロの前にオックス、ライズ、イズ、コルツが壁を作り、リリス、イリーナ、リズが矢を放ち始めた。
レナは広範囲魔法を魔王軍先頭部隊に撃ち込み、数十から数百の魔物を焼き尽くすが、それを上回る敵が押し寄せてくる。
更に魔王軍の後方の上空から接近してくる魔物の影が多数。
「後方からワイバーン、グリフォンが多数接近!」
リリスが叫ぶ。
虚ろな目でアンデッドを操っているゼロの表情は変わらないが、最早ゼロに魔王軍を止める術は無い。
全員が覚悟を決めたその時
「未熟者!なんだその体たらくは!」
響き渡った鋭い声、ゼロの目に光が戻る。
「・・・師匠!」
ゼロの声と共に数万のアンデッドが姿を現した。
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