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竜騎兵相手の対空戦闘1
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魔王軍の竜騎兵は竜人が騎乗するワイバーンによって編成されている魔王軍の精鋭である。
それぞれが弩やランスを装備していて上空からの射撃や急降下攻撃を仕掛けてくる他に地上に降りたワイバーンによる直接攻撃も強力であり、竜騎兵1騎で通常の騎兵一個中隊に匹敵するとも言われている。
その竜騎兵が30騎、魔王軍部隊にしてみれば辺境の小部隊に過ぎないが、その戦力換算は実に10個大隊、連隊にすれば2から3個連隊に相当する。
アンデッドを最大限に召喚して数だけならばやっと連隊を編成できるゼロ連隊とは大違いである。
その竜騎兵がこちらに向かっているのだ。
ゼロは即座に防御態勢を整えたが、突然周囲に現れたスケルトンの軍勢に馬車を牽く馬達が恐怖して恐慌状態に陥りつつあった。
「レナさん、イズさん!馬達を眠らせてください」
「いいの?私の魔法や精霊魔法で眠らせると咄嗟の脱出ができなくなるわよ?」
「構いません。竜騎兵相手に脱出など不可能です。この場でけりを付けなければなりません」
ゼロの指示にレナの魔法とイズの精霊魔法で馬車を牽く馬を眠らせて混乱を抑えた。
弓を装備するリリス、イリーナ、リズが接近してくる竜騎兵に狙いを定める。
それを確認したゼロは周辺警戒に当たっていたスペクターを呼び戻すと共にジャック・オー・ランタンとウィル・オー・ザ・ウィスプを5体ずつ召喚した。
ゼロが召喚できるアンデッドで対空戦闘が可能なものだ。
「1体だけでは竜騎兵には勝てません。必ず複数で対峙しなさい。無理して落とさなくてもいいので牽制に徹してくれれば弓矢と魔法で叩き落とします」
ゼロの指示を受けてそれぞれが高度を取り上空に布陣する。
その間にも竜騎兵は接近を続け、未だに距離はあるものの、その姿が識別できるまでになった。
弓を構える3人の中でも一番強力な弓を装備するリリスが他の2人に先んじて矢を放つ。
風の精霊の力を乗せたリリスの矢が竜騎兵を捉えた。
自分達が空を制しているという傲りか、獲物まで距離があると甘く見ていたのか、リリスの放った矢は先頭を悠々と飛んでいた竜騎兵の操るワイバーンの首を貫通し、騎乗していた竜騎兵である竜人の頭を吹き飛ばした。
予想外の強烈な攻撃に他の竜騎兵は一時的に隊列を乱したが、そこはそれ、魔王軍の中でも精鋭と謳われる竜騎兵である。
一時の混乱は直ぐに立て直し、高度と速度を上げ、距離を取りながら様子を窺っている。
「しまった!もう少し引きつければ良かったわ」
先制したリリスが舌打ちする。
「大丈夫です。こちらの射程距離に追い込みます」
ゼロの合図で上空のアンデッド達が散開した。
ゼロの命令を忠実に守りスペクター2体、ジャック・オー・ランタン1体、ウィル・オー・ザ・ウィスプ1体の4体による分隊を組み、5個分隊が四方からワイバーンに襲いかかる。
接近するアンデッドに対して竜騎兵は弩を放つが、ジャック・オー・ランタン以外は実体を持たないアンデッドであるためその効果は無い。
実体を持つジャック・オー・ランタンですら鋭い機動で矢を躱したり、持っている大鎌で払い落としたりとやはり損害は無い。
やがて竜騎兵を射程に捉えたアンデッド達は衝撃魔法や火炎魔法で攻撃を繰り出し、それを避けた竜騎兵に隙が生じればジャック・オー・ランタンの大鎌による直接攻撃を仕掛ける。
とはいえ、竜騎兵も魔王軍の航空戦力の中核である。
それらの攻撃を難なく捌くが、それでも油断した数騎が低空まで追い込まれ、狙いすましたリリス、イリーナ、リズの矢やレナやイズの魔法攻撃に曝されて叩き落とされた。
その様子をゼロは冷静な目で見ていた。
今はまだゼロ達の予想外の攻撃に混乱した間抜けな竜騎兵が餌食になっただけであり、混乱を回復して反撃に出られたらこちら側が劣勢に陥ることは目に見えている。
「接敵で5騎落とせましたか。期待以上の戦果ですが・・・」
最初の衝突でゼロ達は竜騎兵を5騎仕留めたが、これは敵がゼロ達を過小評価していた上に予想外の攻撃により意表を突かれたための戦果だ。
現にゼロの放ったアンデッドは1騎たりとも竜騎兵を仕留めてはおらず、牽制してリリス達の射程に追い込むことに徹している。
これはゼロの命令を守っているものでもあるが、何よりもスペクター2体とジャック・オー・ランタン、ウィル・オー・ザ・ウィスプ各1体の分隊では竜騎兵1騎にすら対等に渡り合えないのだ。
そのことを把握した竜騎兵達はアンデッドと地上からの弓や魔法攻撃を警戒しつつ、攻撃目標をゼロに定めてきた。
アンデッドを使役しているのがゼロであることを見抜いたのだ。
ゼロに向かって上空から弩が打ち込まれる。
「流石ですね。的確に指揮者を潰しにきましたか」
降り注ぐ矢を剣で払い、躱しながらゼロは呟いた。
「ゼロ下がれ!お前がやられるとお終いだ!」
ライズが叫んだ。
しかし、ライズもオックスもイズもゼロの援護には回れない。
彼等は弓で竜騎兵を狙っているリリス達の援護から離れられないのだ。
唯一レナだけがゼロの傍らに駆け寄り、障壁魔法でゼロを守るが、竜騎兵の放つ強力な弩の全てを止めることができない。
レナの他にシールドがゼロの前に立ち、大盾を翳してゼロの守りにつく。
オメガとアルファは不足している上空戦力の援護に入っているが、流石のオメガも竜騎兵相手には分が悪いようで、アルファと連携してどうにか対等に渡り合っている。
それでも竜騎兵を1騎を仕留めることに成功していた。
「これで6、残りが24。やはり厳しいですね」
上空からの弩による攻撃では効果が望めないことを悟ったのか、竜騎兵達は長大なランスを構えた。
「急降下攻撃に備えてください!」
ゼロが皆に警告したその時、ワイバーンが翼をたたみ、一斉に急降下を開始した。
狙いは指揮官のゼロの他、リリス達の対空戦力だが、何騎かは周辺でスケルトンウォリアーに守られている馬車を狙っている。
リリス、イリーナ、リズは急降下してくる竜騎兵目掛けて次々と矢を放つが、竜騎兵は放たれた矢に対して降下の勢いを殺さないように最小限の機動で回避しつつ、ランスの矛先をリリス達に向けた。
それぞれが弩やランスを装備していて上空からの射撃や急降下攻撃を仕掛けてくる他に地上に降りたワイバーンによる直接攻撃も強力であり、竜騎兵1騎で通常の騎兵一個中隊に匹敵するとも言われている。
その竜騎兵が30騎、魔王軍部隊にしてみれば辺境の小部隊に過ぎないが、その戦力換算は実に10個大隊、連隊にすれば2から3個連隊に相当する。
アンデッドを最大限に召喚して数だけならばやっと連隊を編成できるゼロ連隊とは大違いである。
その竜騎兵がこちらに向かっているのだ。
ゼロは即座に防御態勢を整えたが、突然周囲に現れたスケルトンの軍勢に馬車を牽く馬達が恐怖して恐慌状態に陥りつつあった。
「レナさん、イズさん!馬達を眠らせてください」
「いいの?私の魔法や精霊魔法で眠らせると咄嗟の脱出ができなくなるわよ?」
「構いません。竜騎兵相手に脱出など不可能です。この場でけりを付けなければなりません」
ゼロの指示にレナの魔法とイズの精霊魔法で馬車を牽く馬を眠らせて混乱を抑えた。
弓を装備するリリス、イリーナ、リズが接近してくる竜騎兵に狙いを定める。
それを確認したゼロは周辺警戒に当たっていたスペクターを呼び戻すと共にジャック・オー・ランタンとウィル・オー・ザ・ウィスプを5体ずつ召喚した。
ゼロが召喚できるアンデッドで対空戦闘が可能なものだ。
「1体だけでは竜騎兵には勝てません。必ず複数で対峙しなさい。無理して落とさなくてもいいので牽制に徹してくれれば弓矢と魔法で叩き落とします」
ゼロの指示を受けてそれぞれが高度を取り上空に布陣する。
その間にも竜騎兵は接近を続け、未だに距離はあるものの、その姿が識別できるまでになった。
弓を構える3人の中でも一番強力な弓を装備するリリスが他の2人に先んじて矢を放つ。
風の精霊の力を乗せたリリスの矢が竜騎兵を捉えた。
自分達が空を制しているという傲りか、獲物まで距離があると甘く見ていたのか、リリスの放った矢は先頭を悠々と飛んでいた竜騎兵の操るワイバーンの首を貫通し、騎乗していた竜騎兵である竜人の頭を吹き飛ばした。
予想外の強烈な攻撃に他の竜騎兵は一時的に隊列を乱したが、そこはそれ、魔王軍の中でも精鋭と謳われる竜騎兵である。
一時の混乱は直ぐに立て直し、高度と速度を上げ、距離を取りながら様子を窺っている。
「しまった!もう少し引きつければ良かったわ」
先制したリリスが舌打ちする。
「大丈夫です。こちらの射程距離に追い込みます」
ゼロの合図で上空のアンデッド達が散開した。
ゼロの命令を忠実に守りスペクター2体、ジャック・オー・ランタン1体、ウィル・オー・ザ・ウィスプ1体の4体による分隊を組み、5個分隊が四方からワイバーンに襲いかかる。
接近するアンデッドに対して竜騎兵は弩を放つが、ジャック・オー・ランタン以外は実体を持たないアンデッドであるためその効果は無い。
実体を持つジャック・オー・ランタンですら鋭い機動で矢を躱したり、持っている大鎌で払い落としたりとやはり損害は無い。
やがて竜騎兵を射程に捉えたアンデッド達は衝撃魔法や火炎魔法で攻撃を繰り出し、それを避けた竜騎兵に隙が生じればジャック・オー・ランタンの大鎌による直接攻撃を仕掛ける。
とはいえ、竜騎兵も魔王軍の航空戦力の中核である。
それらの攻撃を難なく捌くが、それでも油断した数騎が低空まで追い込まれ、狙いすましたリリス、イリーナ、リズの矢やレナやイズの魔法攻撃に曝されて叩き落とされた。
その様子をゼロは冷静な目で見ていた。
今はまだゼロ達の予想外の攻撃に混乱した間抜けな竜騎兵が餌食になっただけであり、混乱を回復して反撃に出られたらこちら側が劣勢に陥ることは目に見えている。
「接敵で5騎落とせましたか。期待以上の戦果ですが・・・」
最初の衝突でゼロ達は竜騎兵を5騎仕留めたが、これは敵がゼロ達を過小評価していた上に予想外の攻撃により意表を突かれたための戦果だ。
現にゼロの放ったアンデッドは1騎たりとも竜騎兵を仕留めてはおらず、牽制してリリス達の射程に追い込むことに徹している。
これはゼロの命令を守っているものでもあるが、何よりもスペクター2体とジャック・オー・ランタン、ウィル・オー・ザ・ウィスプ各1体の分隊では竜騎兵1騎にすら対等に渡り合えないのだ。
そのことを把握した竜騎兵達はアンデッドと地上からの弓や魔法攻撃を警戒しつつ、攻撃目標をゼロに定めてきた。
アンデッドを使役しているのがゼロであることを見抜いたのだ。
ゼロに向かって上空から弩が打ち込まれる。
「流石ですね。的確に指揮者を潰しにきましたか」
降り注ぐ矢を剣で払い、躱しながらゼロは呟いた。
「ゼロ下がれ!お前がやられるとお終いだ!」
ライズが叫んだ。
しかし、ライズもオックスもイズもゼロの援護には回れない。
彼等は弓で竜騎兵を狙っているリリス達の援護から離れられないのだ。
唯一レナだけがゼロの傍らに駆け寄り、障壁魔法でゼロを守るが、竜騎兵の放つ強力な弩の全てを止めることができない。
レナの他にシールドがゼロの前に立ち、大盾を翳してゼロの守りにつく。
オメガとアルファは不足している上空戦力の援護に入っているが、流石のオメガも竜騎兵相手には分が悪いようで、アルファと連携してどうにか対等に渡り合っている。
それでも竜騎兵を1騎を仕留めることに成功していた。
「これで6、残りが24。やはり厳しいですね」
上空からの弩による攻撃では効果が望めないことを悟ったのか、竜騎兵達は長大なランスを構えた。
「急降下攻撃に備えてください!」
ゼロが皆に警告したその時、ワイバーンが翼をたたみ、一斉に急降下を開始した。
狙いは指揮官のゼロの他、リリス達の対空戦力だが、何騎かは周辺でスケルトンウォリアーに守られている馬車を狙っている。
リリス、イリーナ、リズは急降下してくる竜騎兵目掛けて次々と矢を放つが、竜騎兵は放たれた矢に対して降下の勢いを殺さないように最小限の機動で回避しつつ、ランスの矛先をリリス達に向けた。
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