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第18話:少女の名は
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「あ、あんた、意外と怖いことするね……」
襲撃者と、ついでに戦いを見ていた冒険者に口止めをし終わり、少女の元へと戻るとそんな言葉を投げつけられた。
「あはは……それより、身体はもう動く?」
「ううん。……あと数十分は無理だと思う」
「どんだけ大きな技使ったんだ……」
思わずため息が漏れる。しかし、ここまでの反動がある技、一度見てみたいものだ。
「……獣人の秘技みたいなものよ」
心なしか表情が暗い。詳しく聞きたいところではあるが、獣人の秘技を簡単に口外していいとも思えないので掘り下げないでおこう。
「なるほどね」
「それよりあんたっ、どうしてそんなに強いのにこんなところに……?」
一転、少女は目をキラキラさせて尋ねてくる。
戦闘狂とあって、強さには興味が尽きないようだ。
普段なら誤魔化すところだが、ボコボコにした現場を見られているので下手なことは言いたくない。だが、広められるのも困るのでどうしよう……。
返答に困っていると、少女が口を開く。
「誰にも言わないからさっ」
無邪気な目が眩しいっ。これはどう足掻いても引いてくれなさそうな気がする。
「……本当に?」
「うん、約束するから!」
「……今、各国は魔王討伐に備えて人を集めるよね」
「まあ、そうね」
「俺はそれに行きたくないんだ。戦争の駒として使われたくない。だから、あまり目立たないように生活したいんだ」
「ふーん。……珍しいね、徴兵が嫌だなんて。国に名指しで指名されることって、名誉だって考える人も多いのに」
少女は俺の理由が意外だったのか、目を丸くしている。やはり、俺と世間では価値観に違いがあるようだ。その辺を押し付けることなく育ててくれた婆さんには頭が上がらないな。
「そうなんだ。ま、俺は自由に生きたいから。この学校に入学したのもいろんな人と出会うためだったりするし」
「へぇ~。あんた、思ったより悪い奴じゃないかもね。……なーんて、私の耳触った時点でもう頭カンカンだけどね」
「それは悪かったって」
そう言って、俺たちは笑う。
少し、彼女と打ち解けられたかもしれない。
「ねえ、君名前はなんて言うの? 自己紹介の時教えてくれなかったよね」
少女は少し悩んで、名乗る。
「ルージュ。私の名前はルージュ。よろしくっ」
「よろしく、俺はシアン。頑張って一位を取ろうっ」
俺はそう言って動けない白髪の少女ーールージュの手を取り、そのままおんぶする。
「よっと」
「え、ちょ、きゃあ!? は、恥ずかしいじゃんか!」
背中から可愛い悲鳴が聞こえるが、怒っている様子はない。五歳の俺が年上の女の子を背負っている姿を第三者が見ると、なかなか滑稽なんだろうな、なんて思っていると、ルージュが俺のお腹に尻尾を巻きつけてきた。
「シアン、ちっちゃくて不安だから……」
まだ小さな俺の背中に顔を押し付けてそう言うものだから、可愛さに笑みがこぼれる。
「ごめんね、安心感がなくて」
「う……ん……すーすー……」
どうやら寝てしまったらしい。主人の温もりで安心したんだろうか、と考えているのがバレるとまた口を聞いてもらえなくなるなあ。
そして、俺は勝負の分かれ目にぶち当たろうとしているクラスメートたちに追いつくべく、静かに林中を駆け出した。
襲撃者と、ついでに戦いを見ていた冒険者に口止めをし終わり、少女の元へと戻るとそんな言葉を投げつけられた。
「あはは……それより、身体はもう動く?」
「ううん。……あと数十分は無理だと思う」
「どんだけ大きな技使ったんだ……」
思わずため息が漏れる。しかし、ここまでの反動がある技、一度見てみたいものだ。
「……獣人の秘技みたいなものよ」
心なしか表情が暗い。詳しく聞きたいところではあるが、獣人の秘技を簡単に口外していいとも思えないので掘り下げないでおこう。
「なるほどね」
「それよりあんたっ、どうしてそんなに強いのにこんなところに……?」
一転、少女は目をキラキラさせて尋ねてくる。
戦闘狂とあって、強さには興味が尽きないようだ。
普段なら誤魔化すところだが、ボコボコにした現場を見られているので下手なことは言いたくない。だが、広められるのも困るのでどうしよう……。
返答に困っていると、少女が口を開く。
「誰にも言わないからさっ」
無邪気な目が眩しいっ。これはどう足掻いても引いてくれなさそうな気がする。
「……本当に?」
「うん、約束するから!」
「……今、各国は魔王討伐に備えて人を集めるよね」
「まあ、そうね」
「俺はそれに行きたくないんだ。戦争の駒として使われたくない。だから、あまり目立たないように生活したいんだ」
「ふーん。……珍しいね、徴兵が嫌だなんて。国に名指しで指名されることって、名誉だって考える人も多いのに」
少女は俺の理由が意外だったのか、目を丸くしている。やはり、俺と世間では価値観に違いがあるようだ。その辺を押し付けることなく育ててくれた婆さんには頭が上がらないな。
「そうなんだ。ま、俺は自由に生きたいから。この学校に入学したのもいろんな人と出会うためだったりするし」
「へぇ~。あんた、思ったより悪い奴じゃないかもね。……なーんて、私の耳触った時点でもう頭カンカンだけどね」
「それは悪かったって」
そう言って、俺たちは笑う。
少し、彼女と打ち解けられたかもしれない。
「ねえ、君名前はなんて言うの? 自己紹介の時教えてくれなかったよね」
少女は少し悩んで、名乗る。
「ルージュ。私の名前はルージュ。よろしくっ」
「よろしく、俺はシアン。頑張って一位を取ろうっ」
俺はそう言って動けない白髪の少女ーールージュの手を取り、そのままおんぶする。
「よっと」
「え、ちょ、きゃあ!? は、恥ずかしいじゃんか!」
背中から可愛い悲鳴が聞こえるが、怒っている様子はない。五歳の俺が年上の女の子を背負っている姿を第三者が見ると、なかなか滑稽なんだろうな、なんて思っていると、ルージュが俺のお腹に尻尾を巻きつけてきた。
「シアン、ちっちゃくて不安だから……」
まだ小さな俺の背中に顔を押し付けてそう言うものだから、可愛さに笑みがこぼれる。
「ごめんね、安心感がなくて」
「う……ん……すーすー……」
どうやら寝てしまったらしい。主人の温もりで安心したんだろうか、と考えているのがバレるとまた口を聞いてもらえなくなるなあ。
そして、俺は勝負の分かれ目にぶち当たろうとしているクラスメートたちに追いつくべく、静かに林中を駆け出した。
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