上 下
64 / 105
第六章『奇跡を起こすと決めた少女の覚悟』

第EX話『第零次正妻戦争!(仮)』

しおりを挟む
 本格的な作戦前の休憩。

 テーブルに紅茶やクッキー等の様々なお菓子が並ぶ。
 すべてユエの手作り。


 頭を使うなら糖分は不可欠だ。


 ルナとテミスは、甘いものに目がない。
 美味しそうに食べている。



「紅茶でも飲みながら、ユーリさんと交わした約束について話し合いませんか?」

「そうですね。約束を果たしてもらわないといけませんからね」

「はい。約束をしたからには、必ず帰ってきて、守ってもらわなきゃです」



「それでは、最初はボクから。ユーリさんとは、いつかお酒を一緒に飲みに行こうと約束していいました」

「なんか素敵ですね。男同士のそういう約束って、格好いいですよね。憧れちゃいます」

「ボクはまだお酒が飲める年ではないので、少し先になりそうですね。ははっ」



 ルナがすっと手を上げる。

 

「あたいは、ユーリにおはなしを聞かせてもらう、約束をしてた」

「ユーリさん、ルナちゃんにはどんなお話をしているんですか?」

「えーっと。冒険ファンタジーとか、ホラーとか、ラブコメとか、そういう話」


 
 ほとんどは、ユーリが前世で読んだうろ覚えの物語。
 ルナが『ホラー』と言っているのはユーリの前世の話。
 それを、物語風に誇張して語り物語風にしている。
 


「ルナちゃんは、どんな話が好きですか?」

「パパの話は、ぜんぶ好き。でも、トキーオとかいう世界の、ホラーのお話しの続きが気になるかなっ?」



「ルナちゃんホラー好きなんですか?」

「あたい、ホラーはあんま好きじゃないんだけど、話している時のパパの眉間にシワが寄る表情がおもしろいから好きっ。シュールで設定凝ってて続き気になるなっ」



「ユーリさんは、多くの約束を残していきましたね。これは、ちゃんと帰ってきて、その約束を果たしてもらわなければ、なりませんね!」



 アルテは、綺麗に話をまとめようとする。
 この雑談もここで終わりかと思われた。



 否――。ここからが本番。



 遅れて、テミスがすっと手を挙げる。




「そういえば、わたしも、ユーリと約束してた。話て、いい?」

「テーちゃんも、ユーリさんと約束を?」



「うん。約束した。ユーリと」

「いいですね! テーちゃんのお話し聞かせてください!」




「そういえば、3年後にユーリと結婚するって、約束してた」





「「「な、なんだってー!!」」」




 テミスからの意図せぬ爆弾発言。

 後に、と呼ばれる物である。

 ユーリの名誉のために補足しよう。
 ユーリはプロポーズしていない。

 単なるテミスの誤解である。
 だが、男ならその責任を取らねばなるまいっ!




「……あれっ、すこし、ちがったかな? でも、そう囁く……私のゴーストが」

「アルテさんの霊圧が消え、ましたね……」



「そういえば、婚約指輪の代わりも、もらってた」



 ユーリが、肌見離さず首から下げていた物。
 皆が、見覚えのある装飾品だ。
 アルテが、紅茶のカップを手から落とす。



「テーにゃん、もうやめてっ! おねーちゃんのライフはゼロよっ!」



 テミスによるトドメの一撃が炸裂!
 効果はバツグンだーっ!!



「ふふふっ!!……いいでしょう! ならば、――戦争ですっ!」



 アルテは立ち上がり、闘志をみせる!



「ユーリさんにはアルテさんという想い人がありながら。やはり、男ですね」

「えっ……いえっ、私、ユーリさんとは、まだ、なにも……」



「えっ? でも、アルテさん草むらで押し倒してキスしてませんでした?」

「ペロ、これは……犯罪!」

「わははっ! おねーちゃん、やるねっ! ふつーに犯罪だけどっ!」

「はい。ルナさんの言うとおり、ボクも犯罪だと思います」



「あっ……あれはっ、て。見ていたんですか? ユエさん」

「その、偶然。アルテさん、……えっちなのは、よくないと、思いますっ!」



「キス、……しただけです! 先っちょだけです! 減るものじゃないですっ!」

「でも安心しました。まだユーリさんとは、そういう仲ではなかったのですね」

「あのー。ユエ、……さん? 笑顔が、凄い輝いていますね」



 ルナは、テーブルのケーキを口に放る。
 3秒だけ考えた後に、口を開く。




「こうなったら、あたいが、パパのママになるしかないねっ!」

「ルナちゃん?」「ルナさん?」「わけがわからないよ」



 ダークホースの参戦。
 正妻の座を狙う者が、また一人。



「わははっ! 決めたっ! あたいが、パパのママになる」

「ルナルナ。その理屈はおかしい」



「ルナさん、そっ、それはっ……禁じ手、反則ですっ! ボクは認めません!」

「ふふふ。ユエっち、――いつから錯覚していた?……娘が、パパと結婚できないとっ! あたいが、ママになるんだよ!」



「ほー。ルナルナ、ユーリの、嫁になりたい?」

「テーにゃん。あたいは、なりたいんじゃないっ! 絶対にママになるんだっ!」

「ルナルナ、おそろしい子。だが、それがいいっ!」



 テミスがルナの手を固く握りしめる。
 仲間意識のような物を感じたようだ。

 2人の間に絆が芽生えつつある。
 わけがわからないよ。




「それがアリならっ!――ボクも、正妻戦争に参戦しますっ!」

「まともなユエさんまで、……ってユエさん男じゃないですかっ!」




「むしろ、それはアドバンテージです! ユーリさんが求めるなら、女の子にだってなってみせましょう! 気合でっ!」

「わははっ! ユエっちが、ゆーと、ガチでなれる気がするのが、ヤバいっ」



「( 争え  もっと  争え )」

「あの、テーさん。心の声、……漏れてますよ」

「てへ、ぺろっ」



「それに、いままでアルテさんとユーリさんが正式にお付き合いしていると思って、我慢してきましたが、まだ勝敗は決していないようですね。負けませんよ!」

「いえいえ。みなさん……、ユーリさんのファーストキスを奪ったのは、私だということをお忘れでしょうか! これは、もう結婚したようなものでは?」



「アルテ、犯罪行為は、ノーカン」

「わははっ! だよね。さすがに、犯罪はねーっ」

「ボクも、ルナさん、テーさんに同意します!」






(ユーリすわぁーん! 早く帰って来てくださぁーーいっ!!)

 アルテの心の声である。






 ・・・・第零次正妻戦争から10分経過。
 ルナがある、真理を導き出す。
 その言葉を、シュークリームを頬張りながら、語る。




「いっそ、みんなでパパと結婚すれば、よくねっ?」

「さすルナ……そこに気づくとはっ、……やはり天才っ!」




「テーさんは、ユーリさんに奥さんが何人居ても気にならないのですか?」

「おっけ。わたしの器、大きい。星だけに」




 テミスは、無表情ドヤ顔ダブルピースを決める。




「ボクもルナさんの意見に同意します。ですが、正妻の座は一つです!」

「ええ。ユエさんの言うとおりです。正妻の座は譲る気はありませんっ!」



「たたかわなければっ 生き残れないっ!」

「あたいもっ! まけないよーっ!」




 アルテが、パンッと手を叩く。
 そろそろ、真面目な作戦を詰める頃合いと判断した。
 何だかんだで、アルテのきまじめな性格は隠しきれないのであった。




「この続きは、ユーリさんが、帰ってきたらにしましょうっ!」

「ですね! 絶対に帰ってきてもらわなきゃ、いけませんねっ!」

「ユーリに責任、とってもらう」

「だね! そんために、あたいらでがんばろーよっ!」






「「「「 おーっ! 」」」」






 ==========================

 番外編をお読み頂き、誠にありがとうございます。
 箸休めのギャグパロネタオンリーのお話でした。

 みなさま、ここまで読み進めていただき、
 誠にありがとうございます。
 感謝の言葉もありません。

 次話より、本編に戻ります。
 クライマックスに向け、
 物語はクライマックスに向け加速していきます。


 引き続きお付き合いいただけますと幸いです!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

この声は届かない

豆狸
恋愛
虐げられていた侯爵令嬢は、婚約者である王太子のことが感知できなくなってしまった。 なろう様でも公開中です。 ※1/11タイトルから『。』を外しました。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...