上 下
23 / 105
第一章:ダンジョンを作ろう!

第23話『銀色の髪の少女との邂逅』

しおりを挟む
 彼女は新しくこの村に加わった住人。
 王都でスカウトした女の子だ。


 身長はルナと同じくらい。
 年齢はおそらくユエと同じくらいだろう。


「とてもかわいらしい子ですね」

「だろ? 冒険者以外の客もぼちぼち増えて来たしなぁ……そろっと、看板娘が必要な頃合いだと思ったんだよ。そんで、俺がスカウトしたっちゅーわけ」


 銀色の髪に、ゴスロリ風の服をまとった少女。
 どことなく神秘的な雰囲気を感じさせる。

 彼女が着ている服は、裁縫が得意なユエが作った。
 たいした材料もないのによく作れるもんだと感心する。


「へ~。やるじゃないですか! ユーリさん、王都で美少女をゲットするとは、なかなかヤりますね!」

「まぁ、俺にかかればザッとこんなもんってもんよ。どやっ!」


「ユーリさん……、ルナちゃんみたいな分かりやすいドヤ顔になってますよ」

「マジで? 俺そんな顔してるか?」

 
 俺は、銀髪の少女に話を振ってみる。
 小さくこくりと頷いていた。


「ルナちゃん、ユエちゃんも看板娘じゃないですか?」

「ルナは看板娘ってタマじゃねーだろ。それに、ユエは男だ」


「男が看板娘でも良いじゃないですか。需要ありますよ?」

「マジか? ちょっとメモしとこ」



 銀色の髪の西洋人形のような少女。
 その肌は、透き通るほど白い。

 ユエが全身の肌が隠れる衣服を作ったのは考えあってのこと。
 同情や哀れみの視線が時に人を傷つけることを知っているのだ。

 ユエは、決してその意図は、言葉にはしないが。
 
 彼女の体のあちこちに焼きごてや、肉が抉られた傷痕が残っている。
 回復の泉での複数回の治療で彼女の表面的な傷は治った。

 だが、深く刻まれた傷痕を治すには、至らなかった。


 
「はじめまして。私の名前はアルテミス。よろしくね」

「ぁ…ぅ………テ……ミス」

「テミスちゃん、それがあなたの名前?」


 彼女はこくりと小さく頷く。
 おそらくアルテの言葉を繰り返しただけだろう。

 彼女が言葉を話すことは初めてのことだった。
 しばらくは、彼女をテミスと呼ぼう。

 必要があれば、自分から本当の名を語るだろう。


「テミスはな、ちょっとだけ、恥ずかしがり屋なんだ。まぁ、無口っ子キャラつー感じだな。嫌っているわけではないので、気にしないでいい」

「もちろん、わかっています。テミスちゃん、よろしくね」

「……ぅ……なの」


 テミスはアルテに向かって、頭を小さく下げる。
 少しずつ言葉を話そうとしているようだ。




 *



 俺がキャラバンを壊滅させた後の事を少し話したい。
 彼女、テミスの出会いを説明するために必要だからだ。

 囚われた者たちは中央ギルドで保護され、解放された。

 帰る場所がある者は、家族や恋人の元へ。
 帰る場所のない幼い子らは、王都の孤児院へ。

 ギルドで保護されていた人々はあるべきところに帰った。
 そんな中、銀色の髪の少女が、一人、取り残された。


 テミスは自身の出自を話す事ができなかった。
 言葉を話さなかったのである。
 ギルド職員は少女は喋る事ができないのだと思っていた。

 言葉での意志の疎通ができない。
 だから、労働力として期待することができない。
 彼女を引き取ろうとする者がいなかった最たる理由だ。


 ギルドに保護されているのは今や、彼女だけ。
 俺は少女に向け、言葉をかける。


「いまさ、絶賛従業員募集中なんだけど、一緒に働いてみない?」


 ……なんとも冴えない言葉の掛け方である。
 というか、微妙にナンパっぽくも聞こえなくもない。
 
 あまりにうさん臭すぎる。
 もう少しなんか気の利いた言葉を言えたらと頭をかいた。


 そんなイケてない言葉に、彼女はこくりと頷いた。


「元廃村で住み込みで働くことになるけど、それでも良いか?」


 少女は、こくりと小さく頷いた。


「それなら、決まりだ。俺はユーリ。これからよろしくな」


 言葉はなかった。


 ただ俺の瞳をみつめ、手をまっすぐ差し伸べていた。
 少女のか細い手を取り、掴み、その手を握るのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】異世界に来たのに俺だけ経験値がセックスな件〜エロスキルで成り上がる

ビニコン
ファンタジー
 突然の学校のクラス全員が転生からの、テンプレ通りの展開で始まる、職業はエロ賢者というアホのような職業だった。  アホのような職業で直ぐに使えないと判定からの、追放されることになる。  ムッツリスケベであった陰キャ主人公が自分の性欲を解放していき、エロで成り上がる。

垂れ耳兎は蒼狼の腕の中で花開く

朏猫(ミカヅキネコ)
BL
兎族の中でも珍しい“垂れ耳”として生まれたリトスは、弟が狼族の花嫁候補に選ばれたことで家を出ようと決意する。劣勢種の自分が近くにいては家族に迷惑をかけてしまいかねないからだ。そう思って新天地の酒場で働き始めたものの、そこでも垂れ耳だと知られると兎族を庇護すべき狼族にまで下卑た悪戯をされてしまう。かつて兎族にされていた行為を思い出したリトスは、いっそのことと性を売る華街に行くことを決意した。ところが華街へ行くために訪れた街で自分を助けてくれた狼族と再会する。さらにとある屋敷で働くことになったリトスは……。仲間から蔑まれて生きてきた兎族と、そんな彼に一目惚れした狼族との物語。※他サイトにも掲載 [狼族の名家子息×兎族ののけ者 / BL / R18]

ゲロトラップダンジョン-女騎士は適量とペースを守って酒なんかに負けたりはしない!-

春海水亭
ファンタジー
女騎士ノミホ・ディモ・ジュースノーム(20)は王命を受け、ダンジョンの攻略に挑む。 だが、ノミホの屈強なる精神力を見込まれて赴いた先は、 すえた吐瀉物と濃いアルコールの臭いが立ち込めるゲロトラップダンジョンであった。 ノミホは先人が残した嘔吐マッピング機能を利用して、ゲロトラップダンジョンの攻略を開始する。

転生したら死にそうな孤児だった

佐々木鴻
ファンタジー
過去に四度生まれ変わり、そして五度目の人生に目覚めた少女はある日、生まれたばかりで捨てられたの赤子と出会う。 保護しますか? の選択肢に【はい】と【YES】しかない少女はその子を引き取り妹として育て始める。 やがて美しく育ったその子は、少女と強い因縁があった。 悲劇はありません。難しい人間関係や柵はめんどく(ゲフンゲフン)ありません。 世界は、意外と優しいのです。

天界に帰れなくなった創造神様は、田舎町で静かに暮らしたい

白波ハクア
ファンタジー
 その世界はたった一柱の創造神『ララティエル』によって創られた。 【錬金術を語り継げなさい。さすればこの世界は、永久に発展し続けるでしょう】  原初の民にそう言い残し、創造神ララティエルは世界を創った疲れを癒すため、深い眠りについた。  それから数千年後──まだ眠いと寝返りを打ったララティエルは、うっかり体を滑らせて下界へと落ちてしまう。  何度帰ろうとしても、天界に回路が繋がらない。  部下と連絡を取ろうとしても、誰とも連絡がつかない。  というか最高神である創造神ララティエルが落ちたのに、誰も迎えに来ない。  帰りたいのに帰れない?  よろしい、ならばスローライフだ。  潔く諦めたララティエルは、創造神という地位を隠し、ただの村娘『ティア』として下界で静かに暮らすことを決意する。  しかし、ティアが創った世界では、彼女も予想していなかった問題が生じていた。 「魔物って何! なんで魔族敵対しているの! どうして錬金術師滅んでるのぉおおおおおおおお!?」  世界を放って寝ていたら、知らない生物が誕生していた。世界が栄えるために必要な種族が、全種族から敵視されていた。あれほど広めろと言った錬金の技術が、完全に廃れていた。 「いいよもう! だったら私自ら錬金術を広めてやる!」  冒険者ギルド専属の錬金術師として働くララティエルの元には、召使いとして召喚した悪魔公、町で仲良くなったハーフエルフ、王国の姫、勇者パーティーの元メンバー、様々な仲間が集うようになっていた。更には魔王まで訪ねて来て!? 「え、待って。私のスローライフは何処……?」  ──これはうっかり者の創造神が、田舎でスローライフを堪能しながら、人類が必要ないと切り捨てた錬金術の素晴らしさを世界に広めていく物語である。

さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~

遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」 戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。 周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。 「……わかりました、旦那様」 反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。 その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。

幽霊じゃありません!足だってありますから‼

かな
恋愛
私はトバルズ国の公爵令嬢アーリス・イソラ。8歳の時に木の根に引っかかって頭をぶつけたことにより、前世に流行った乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまったことに気づいた。だが、婚約破棄しても国外追放か修道院行きという緩い断罪だった為、自立する為のスキルを学びつつ、国外追放後のスローライフを夢見ていた。 断罪イベントを終えた数日後、目覚めたら幽霊と騒がれてしまい困惑することに…。えっ?私、生きてますけど ※ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください(*・ω・)*_ _)ペコリ ※遅筆なので、ゆっくり更新になるかもしれません。

【第一部完結】風変わりな魔塔主と弟子

めーぷる
BL
魔法使いが暮らしている魔塔の天辺に住む魔塔主のテオドールは 見た目は魔法使いには全く見えない筋肉質。 接近戦もいけるのに、国随一の魔法使いという規格外。 おまけに 自堕落、破天荒、ギャンブラーなどなど。 様々な不名誉な二つ名を欲しいままにする要注意人物。 その魔塔主の弟子であるレイヴンは魔塔主を支える補佐官。 テオドールに振り回されながらも真面目に努力を続けている。 ひたむきで癒されると評判の、街でも人気な美形魔法使い。 だがその実態はテオドールに対しては言いたい放題の毒舌持ち。 子どもっぽさが抜けない猫かぶりなツンデレ気質で極度の鈍感。 「1人ですんのも飽きたんだって。別に減るもんじゃねぇし、たまにはいいだろ」 「頭まで酔ってんのかこのおっさんは……殴ってやろうか…」 そんなテオドールが酒に酔って気分が良くなった勢いでレイヴンに手を出してしまって…… 鈍感で思い込みの激しい弟子に思いは伝わるのか? 年の差11歳の師匠と弟子が周りを巻き込む ドタバタ恋愛あり、バトルありのファンタジーコメディ。 ※魔塔主のテオドールはとても口が悪い設定です。 汚い言葉を使う場面も多々ございますが、それを推奨する意図はありません。 あくまでもフィクションとしてお楽しみいただければ幸いです。 ・ストックが切れたので書きあがり次第、更新してます。 ・R18描写アリの話は※付いてます。読む時はご注意下さい。 ・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。 ・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。 ・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。 ・フジョッシーさん、ムーンさんにも掲載しています。 内容はほぼ変わりませんが、そちら2つは三人称視点です。 こちらは攻め視点で書き直しています。 ・細かい台詞回しなどの訂正がありますが、三人称と一人称で根本的な違いはありません。

処理中です...