ふたりの灯台ラブストーリー

第二話 灯台でうっかり死にかかったら助けてもらった話

§7 - 午後三時二十分（その一）

　うっかり誤って飛び降りる可能性が無い状態で、安心して色々と絶叫した。気づいたら泣いていたらしい。涙がポタポタと手の甲に垂れている。

「高校三年間、無駄になっちゃった……無駄にしちゃった……ごめんなさい、先生、父ちゃん、母ちゃん、ジョージ、ゴン兄、クラスのみんな……」

　しゃくり上げながら、昨日から言いたくても言えなかったことを全て声に出した。悲しくて、苦しくて、やるせなくて、怒りがこみ上げてきて、でもやっぱり自分のせいだから辛くて。

「おれ、すっごく、すっごく頑張ったんだ。それなのに……」

　転落防止柵の手すりをぎゅっと握りしめ、頭をガンガンとぶつける。額でステンレスの冷たさを感じるが痛くはない。伊達政宗もこんな思いをしたことがあったんだろうか？

（いや、きっと、おれより遥かに辛い経験をしてきたはずだ）

　殺されかかったことだって何回もある、小田原攻めに遅参して死装束で秀吉の元へ行った時なんて、おれが想像できないくらいに苦しくて辛くて大変だったろう。でも、それを少しも表に出さず……。

「だけどやっぱりおれは伊達政宗じゃないからー！！」

　両親と兄たちに甘やかされて育った自覚があるので、辛いことは辛いし、しんどいことはしんどい。受験失敗という現実を受け入れるのは辛いし苦しいし耐えられない。忍耐力は別なところで発揮したい。

　人がいないのを良い事に、うわああああん！！　と大声を出して泣きじゃくった。