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第一話 灯台でうっかり死にかかっている人を助ける話
§5 - 午後三時四十五分(その一)
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(なんで手錠? え、これ、イジメの現場とか??)
一瞬、目を見開いたまま硬直してしまった。とはいえ、次の瞬間とっさに身体が動いた。なにせ強い風が吹き付けている上、コットン製と思しきグレーのパーカーとデニムのカーゴパンツという服装のせいか、少年の顔色は真っ青なのだ。
モッズコートを脱いで駆け寄り、すっかり冷え切った少年に被せる。転落防止柵の手すりに繋がれている左手にはアザができていた。きっと、手錠を外そうと動かした時にできたのだろう。
「だ、大丈夫キミ? どうしてこんなこと……」
「あああ、あのっ……ちょっと間違っちゃって……そこ……そこに鍵が……」
「間違い? カギ??」
ぶるぶる震える少年は、空いている右手の人差し指をドアの方へ向けた。振り返って下を見れば、小さな鍵が落ちている。長身の自分なら、柵に繋がれていても手を伸ばせばなんとか届く距離だが、彼には無理だったらしい。しかし、ひどいイジメだ。下手したら死ぬぞ。
「えっと、この鍵で手錠を外せばいいんだね?」
「は……はい……」
「ちょっと待ってて」
すぐに鍵を手に入れ、少年の左手と転落防止柵をつなぐ手錠に視線を向ける。その瞬間、既視感が襲った。よく見るとこれ、某量販店で売られているおもちゃの手錠じゃないか?
「あ、あのさ……この手錠、鍵が無くても外せるヤツだよ……」
「ゔえっ!?」
鼻水と涙でグチャグチャになった顔で少年が驚きの声を上げる。ガチャッという安っぽい音と共に、あっけなく手錠が外れた。
一瞬、目を見開いたまま硬直してしまった。とはいえ、次の瞬間とっさに身体が動いた。なにせ強い風が吹き付けている上、コットン製と思しきグレーのパーカーとデニムのカーゴパンツという服装のせいか、少年の顔色は真っ青なのだ。
モッズコートを脱いで駆け寄り、すっかり冷え切った少年に被せる。転落防止柵の手すりに繋がれている左手にはアザができていた。きっと、手錠を外そうと動かした時にできたのだろう。
「だ、大丈夫キミ? どうしてこんなこと……」
「あああ、あのっ……ちょっと間違っちゃって……そこ……そこに鍵が……」
「間違い? カギ??」
ぶるぶる震える少年は、空いている右手の人差し指をドアの方へ向けた。振り返って下を見れば、小さな鍵が落ちている。長身の自分なら、柵に繋がれていても手を伸ばせばなんとか届く距離だが、彼には無理だったらしい。しかし、ひどいイジメだ。下手したら死ぬぞ。
「えっと、この鍵で手錠を外せばいいんだね?」
「は……はい……」
「ちょっと待ってて」
すぐに鍵を手に入れ、少年の左手と転落防止柵をつなぐ手錠に視線を向ける。その瞬間、既視感が襲った。よく見るとこれ、某量販店で売られているおもちゃの手錠じゃないか?
「あ、あのさ……この手錠、鍵が無くても外せるヤツだよ……」
「ゔえっ!?」
鼻水と涙でグチャグチャになった顔で少年が驚きの声を上げる。ガチャッという安っぽい音と共に、あっけなく手錠が外れた。
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