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第二部 学校編
4.
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文化祭まであと1週間。
放課後は教室に残ってナレーション係のメンバーと、読み合わせの練習だ。
「みんな、最初に比べて、ぐっとうまくなったね」
黒い髪を真ん中から分けた、見るからに賢そうな眼鏡男子は、クラス委員長の相川くんである。
彼は、ぼくらナレーション係を見回して、満足そうにうなずいた。
係でもないのに、こうして練習にも付き合ってくれるのは、彼が天文学部所属ということもある。
ひとりでも多くの人に興味を持ってもらい、部員を増やしたいらしい。
自分の目的のために、クラスを巻き込んでいるような気もするけど、まあ、趣味に走り過ぎたケモフレ喫茶のキィちゃんのクラスよりはマシか。
サー○ルちゃんの耳を付けたキィちゃん……想像だけでもヤバイ。
「それじゃあ、今日はここまで。明日、明後日は休みだけど、練習は忘れずにすること!」
「はーい。お疲れさまでしたー!」
メンバーが帰宅する中、ぼくは自分の席に戻った。
「あれ、上野はまだ帰らないの?」
「うん。小山田くんと帰るから」
「ああ、サッカー部か」
ぼくの返事に、相川くんが納得したようだ。
「君らって、仲いいよね」
「席がおんなじ列だからかな」
「僕もおなじ列なんだけど……」
「あっ」
そうだった。
相川くんはぼくらの列の、いちばん前の席なのだ。
これは相川くんのうしろの席の岩崎くんが悪い。
あの子、なんでかすぐに、ぼくのほうを向いちゃうんだよね。
左右は女子の列だから、相川くん、話かける男子がいなくて、居心地悪かっただろうな。
「上野たちのグループって目立つよね」
「ぼくは目立たないよ」
マドカにも平凡呼ばわりされてるしね。
「僕は上野に、類友って言葉を贈りたいな」
んんん?
「カズ、待たせたな! ……っと、委員長」
教室の入口から顔を出した小山田くんが、ぼくと相川くんの姿を見て、表情をひきしめる。
「小山田、廊下を走って来ただろ?」
「急いでたんだよ。勘弁してくれ」
「文化祭の準備でノコギリとかクギとか、ふつうに落ちてるからな。気を付けてくれよ」
「ああ」
ふだんは優等生な小山田くんもしゅんとしちゃって、なんだか子どもみたいだ。
おかしくて笑っていたら、小山田くんに鼻をきゅっとつままれた。
「痛いよ!」
「カズが笑うからだよ」
「もー!」
放課後は教室に残ってナレーション係のメンバーと、読み合わせの練習だ。
「みんな、最初に比べて、ぐっとうまくなったね」
黒い髪を真ん中から分けた、見るからに賢そうな眼鏡男子は、クラス委員長の相川くんである。
彼は、ぼくらナレーション係を見回して、満足そうにうなずいた。
係でもないのに、こうして練習にも付き合ってくれるのは、彼が天文学部所属ということもある。
ひとりでも多くの人に興味を持ってもらい、部員を増やしたいらしい。
自分の目的のために、クラスを巻き込んでいるような気もするけど、まあ、趣味に走り過ぎたケモフレ喫茶のキィちゃんのクラスよりはマシか。
サー○ルちゃんの耳を付けたキィちゃん……想像だけでもヤバイ。
「それじゃあ、今日はここまで。明日、明後日は休みだけど、練習は忘れずにすること!」
「はーい。お疲れさまでしたー!」
メンバーが帰宅する中、ぼくは自分の席に戻った。
「あれ、上野はまだ帰らないの?」
「うん。小山田くんと帰るから」
「ああ、サッカー部か」
ぼくの返事に、相川くんが納得したようだ。
「君らって、仲いいよね」
「席がおんなじ列だからかな」
「僕もおなじ列なんだけど……」
「あっ」
そうだった。
相川くんはぼくらの列の、いちばん前の席なのだ。
これは相川くんのうしろの席の岩崎くんが悪い。
あの子、なんでかすぐに、ぼくのほうを向いちゃうんだよね。
左右は女子の列だから、相川くん、話かける男子がいなくて、居心地悪かっただろうな。
「上野たちのグループって目立つよね」
「ぼくは目立たないよ」
マドカにも平凡呼ばわりされてるしね。
「僕は上野に、類友って言葉を贈りたいな」
んんん?
「カズ、待たせたな! ……っと、委員長」
教室の入口から顔を出した小山田くんが、ぼくと相川くんの姿を見て、表情をひきしめる。
「小山田、廊下を走って来ただろ?」
「急いでたんだよ。勘弁してくれ」
「文化祭の準備でノコギリとかクギとか、ふつうに落ちてるからな。気を付けてくれよ」
「ああ」
ふだんは優等生な小山田くんもしゅんとしちゃって、なんだか子どもみたいだ。
おかしくて笑っていたら、小山田くんに鼻をきゅっとつままれた。
「痛いよ!」
「カズが笑うからだよ」
「もー!」
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