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第二部 学校編

9.

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 朝日がまぶしい。
 母さんがまだ起きていなかったので、軽い朝食を作って運動がてら走って来たという小山田くんを道路まで見送った。

「また、あとでな!」

 元気な小山田くんの姿が見えなくなってから家に入る。
 時計を見るとまだ7時前だったので、もうちょっと眠れるかも……。


 二度寝から起きると、遅刻寸前の時間になっていた。

 慌てて制服に着替え、リビングの母さんに声をかけて家を出た。
 キィちゃんちのチャイムを鳴らすと、インターホンの向こうから林さんの声がした。

「おはようございます、和伊です。キィちゃんを迎えに来ました」
『はいはい、ちょっとお待ちくださいねー』

 車2台は通りそうな門扉から、ちょっと離れてキィちゃんを待つ。
 昨日もドキドキしたけど、この待っている間がドキドキだ。

 まさか、また不登校ってことにはならないよね?

 ほどなくして、門扉横の通用口が開き、キィちゃんが姿をあらわした。

「わあん!! キィちゃん、よかったあ!!」
「朝っぱらからうるせえよ……」

 キィちゃんが不機嫌そうに眉をしかめたので、負けじと唇を尖らせる。

「だってしょうがないじゃん! キィちゃん、前科があるんだもん」

 まえみたいに、ひとりさみしく登校するなんてもうイヤだよ!!

「今日は6時間目まであるからね? 間違えて帰ったりしないでね?」」
「うるせえな。オレは帰りたいときに帰る」

 なんという俺様……。
 とはいえ、学校に行く気力が湧いたことは喜ばしいことだよね。

「それより、オナホの使い心地はどうだった?」
「えっ?」

 ぼくは思わず尻穴を引き締めてしまった。

「な、なんで?」
「使わなかったのか?」
「つ、使ったけど……」

 かかかーっと頬に熱が集まってきた。
 もじもじしていると、頬をぎゅっとつねられる。

「イタッ!」
「朝っぱらからキモイ顔してんなよ」

 ぼくはキィちゃんの手が届かない場所まで移動して、ひりひりする頬をおさえる。
 
「やめてよ! ぼくのほっぺが伸びたらどうしてくれるの!?」
「オマエの顔がどうなろうと、だれも気にしやしねえよ」
「ぼくは気にするよ!!」

 ただでさえ見栄えのしない平凡顔なのに、これ以上ひどくなったらどうする。小山田くんのとなりに立てなくなっちゃうよ!!
 
 キィちゃんがぼくを馬鹿にしたように笑った。

「小山田だって、オマエの顔がどんなでも気にしちゃいねえだろ」
「え」

 ぼくはぽかんとして、キィちゃんを見上げる。
 キィちゃんて、ぼくや小山田くんのこと意外と見てるよね。

 ――いや、だからと言って、頬をつねる理由にはならないよ!!

 ふたたび伸ばされたキィちゃんの手を、ぼくはとっさに避けた。
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