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夏休み編

カユ・・・ウマ・・・

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 高校男子はたいてい肉好きである。もちろんぼくも好きだ。

「小山田くん、ぼくのぶんもあげる」
「どうした、カズ。大きくなれないぞ?」

 小山田くんの言葉に、あはは、と気の抜けた笑いが出てしまう。

 夕飯の食卓に並んでいたのは、トンカツ、ステーキ、ハンバーグといった、とても肉々しいラインナップだった。

 ぼくは母さんの作る、あまり練られていないハンバーグが大好きだ。
 でもね、ぼく、昼過ぎくらいまで、お腹壊して寝てたの覚えてる……?

「――母さん、これぜんぶ小山田くん用のメニューだろ?」
「あらあら、ほんとだわ。ウフフ」

 ウフフじゃないよ……。

 しょうがないので、ぼくは父さんの帰りを待つ母さんをリビングに追いやって、キッチンに立った。

 朝からなにも食べてなかったので、食べるのならお粥がいいだろう。

 男子厨房に立つべからず、なんて頭の固いことを言う人もいるけれど、うちはその限りではない。

 将来ひとり暮らしになったときの役に立つようにと、学校で家庭科の授業が始まるとすぐに、母さんの指導のもと包丁を持たされた。

 お粥は米から作るのが好きなんだけど、時間がかかりすぎるから、今日はご飯を使うことにする。

 雪平鍋にたっぷりとお湯を沸かし、茶碗一杯のご飯を投入。
 コトコト煮立ったら、鶏ガラスープの素を入れてふたたび待つ。
 最後、溶き卵を入れてふたをしてちょっと置き、ふたを開けたら玉子粥の完成だ。

 好みでごま油を足しても美味しいよね。

 玉子粥を茶碗によそって食卓に戻る。
 小山田くんがぽかんとしながら、ぼくを見ていた。

「カズ、料理するんだ?」
「そりゃ、するよ」
「すごいな……」

 小山田くんがしきりに感心してくれるので、なんだか照れてしまった。

 レンゲにすくい、はふはふしながら食べていると、小山田くんが物欲しげな顔をしていたので、お粥をすくってふうふうしてから、口元に持って行ってやった。

「え、いいのか?」
「いいよ。ひと口くらい」

 ひと口を惜しむほど、ぼくはケチじゃない。

 小山田くんが困ったように眉を下げた。

「あーそっちの意味にとらえたか」
「ん? いらないの?」
「食べる」

 あーんと口を開けたので、ぼくは小山田くんの口に入れてやった。

「うまい」
「よかった」

 でも、ふた口目はあげないよ?
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