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本編

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 ◆

「……物が増えてないか?」

 わたくしの寮の部屋をおとずれたアルバートが、ベッドの上に並べられたアダルトグッズを呆れたように見つめている。
 低温ろうそくに、猿ぐつわ……これらがすべて、ヒロインから贈られたものである。

 世間知らずな王子様は、これらの道具をなにに使うのか、あまりわかっちゃいないでしょうね。まあ、そこがかわいいのだけれど。

「へえ。いいものがあるじゃないか」
「あ、それは」

 アルバートが目を留めた物は、乗馬用のムチだった。先日贈られた細長い箱の中身である。

 あのヒロイン、わたくしが元女王様だと見抜いているのかしら?
 敵ながら恐ろしい子!!

 でもね、正直、ムチ打ちは趣味じゃないのよね。

 わたくしは身体に直接ダメージを与えるよりも、じわじわと精神的に追い詰めるほうが好きなの。
 だから、アルバートにはグッズ類は使わない。わたくしが手ずから、苦しめたいのよ。

 ムチを手に取ったアルバートが、ひゅんとひと振りする。
 ヒロインの言葉通り、しなりは抜群。身をすくませるような風切り音は、さぞかしマゾヒストどもの心を震わせるでしょうね。

「これはいいな。高かったんじゃないのか?」
「さあ? よろしかったら、差し上げますわよ」

 手元に置いておきたくないし。

「いいのか? では、遠駆けの際にでも使うことにする」
「……光栄です」

 なんだか疲れてしまったわ。

 ふう、と息を吐くと、ベッドに腰を下ろしたアルバートに手招きされる。
 おとなしく従うと腕をとられ、アルバートの膝の上に乗せられた。

「元気がないな。今日はオレを縛らないのか?」 
「わたくしにだって、気分が乗らない日もあってよ」
「弱っているヴィアもかわいいな」

 頭を撫でていたバートの手のひらが、わたくしの腰まで下りてきた。
 就寝の支度を済ませていたので、薄い部屋着の上から撫でられるとぞくんとする。

 あごに手をかけられ、ついばむようなキスをされた。
 たいていはわたくしが主導権を握っているけれど、このようにされるがままのことだって、たまにはあるのよ。

「ん、ちゅ、んっ、はぁ、っバート……」

 互いの唇をくっ付けるだけのキスも気持ちがいいわ。
 しばらくちゅっちゅとしていると、大きな手のひらがわたくしの胸をわしづかみにしてきた。

「ヴィアの胸はオレの手には余るくらいだな」

 ___だれと比べているの?

 むっとしたけれど、痛いくらいに胸を揉まれて気が逸れた。

「あんっ、痛いわ」
「すまない」

 アルバートの膝の上で身じろぎすると、ベッドにやさしく横たえられた。
 ボタンが外され、部屋着の前が開かれる。バート、あなた童貞よね? 手際がよすぎない?

 ふるんと現れたわたくしの乳房を目にしたアルバートの喉が、ごくりと動いた。

「……さわってもいいのよ?」
「あ、ああ」

 手のひらで押し上げ、乳房を盛り上げて見せると、いきなりむしゃぶりつかれた。
 おいい! だれが、吸っていいと言った!?

「あっ、あン!  やっ、あ、バート!」

 前世以来の久しぶりの官能に、わたくしは身悶えする。

 両の乳房を舌や手でまんべんなく愛撫するアルバートの手が、わたくしの下半身へと移動してきた。
 じんじんする部分を下着越しに触られ、弾かれたように腰を浮かせる。

「あンっ!」
「もうびしょびしょじゃないか。漏らすなんて、しつけの悪いメス犬だな」

 ___メス犬ですって!?

 かっとなったとたん、熱くなっていた気持ちが一気に冷めた。

「いつかのお返しのつもりかしら?」

 わたくしはアルバートの胸元をぐっと引き寄せ、互いの位置を逆転させた。いきなり反撃に出られたバートは、目を白黒させたまま動けないでいる。

「犬がわたくしをどうこうするなんて、10年早いわよ」
「ヴィア!?」

 アルバートの背中に全体重をかけながら、ベッドに並べてあった拘束具のひとつ、革のベルトを使って両手を縛り上げる。

「ヴィア! おい、なにをする気だ!」
「だまって見ていらっしゃい」

 わたくしはベッドの上で膝立ちになり、ベッドに転がるアルバートの前で下着を脱ぎ捨てた。

 前世の美容知識で磨き上げたこのお肌を、とくとごらんあれ。しっとりつやつや、真珠のような輝きでしょう? もちろん、下生えもお手入れ済みよ。

「でも、見せてあげるだけよ」

 わたくしはバートの目の前で足をM字に広げ、下半身に手をやった。

 途中までとってもいい気分でいたのに、まったくアルバートったら!!

 わたくしはしっとりと濡れている下生えへと手を伸ばし、自身の肉芽を指でくりくりといじくった。

「んぅ、あっ。あンっ! ああんっ!」
「ヴィア、よせ!!」

 よせ、なんて言っておいて、アルバートはわたくしの痴態から目を離せない。

「わたくしっ、しつけの悪いメス犬だからぁ、んんっ! ここをこうして刺激すると、すぐにイってしまうんです。ああんっ!!」

 わざと甲高い声をあげ、イったふりをしたわたくしは、アルバートの様子をうかがった。
 アルバートは股間が張り詰めて痛いのか、腰を高くあげて荒い息を吐いている。

 わたくしはやはりヒロインからもらった潤滑剤を手に取って、たっぷりと手のひらに垂らした。

「今度はなにをするつもりだ?」
「決まってるでしょ?」

 わたくしは肉芽を刺激したことで、とろりとぬかるんだスリットに指を挿入する。

「ねえ、見える? 中、すっごく熱いわよ。柔らかくて、わたくしの指にぴったり張り付いてくるようだわ」

 ぐちゅぐちゅと音を立て、指を抜き挿しする。
 元女王様時代は、犬どもの前でもこんなえっちなお仕置きはしたことはない。光栄に思うことね!

「バート、はぁんっ、とっても気持ちがいいわ! バート、あん、そこ!! ああっ、すごくいいわよ、バート!」

 中をいじりながら、アルバートの名をいやがらせのように呼んでやる。ちょっと恥ずかしいけれど、お仕置きだもの。このくらいはしなくちゃ!!

「ヴィア、ヴィア! オレが悪かった!!」

 目の前で裸の女がえっちなことをしているのに、ただ見ているだけだなんてくやしいでしょうね?
 元女王様のわたくしを一瞬でも、メス犬扱いした罰よ。

「おーほほほ、この国の王子が発情期の犬みたいにみっともないわね!!」
「おまえは悪魔か!!」

 涙目になったアルバートが叫んだ。

 あら、いやね。わたくしただの悪役令嬢よ? ざまをごらんあそばせ!!
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