お隣さんはオネエさん。

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本編

私という人間

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「ハルさん、おはようございます。」
「あらハルちゃん!おはよ。今日も大学?」
「はい!」
「そう。頑張ってね!」
「ありがとうございます!」

あの日から仲良くなった(というか私が心を開いた)私たちは、毎朝挨拶を交わすぐらいには進展した。私は大学に行くために外に出るけど、ハルさんはどうして外に出ているのかは知らない。
まぁそんなこと聞くのも変だし、大して気にしてないからいっか!

「じゃ、いってきます!」
「いってらっしゃい!」

私の大学へのお決まりルートは最寄駅から急行で行けば1本だけど、各駅停車の電車では17駅分でちょっと遠め。だから寝坊しすぎて急行を逃すと一限目は諦めるしかない。

「2人ともおはよー!」
「遥!おはよー!」
「おはようー」

大学に着くと親友の夏樹とその彼氏の南くんがいるときは何よりも先にその2人に挨拶する。2人は一限目からのときは来るのが異様に早い。付き合ってからは毎日一緒に来てるみたいだけど、本当にどっちか1人でいるのを見たことがない。1人でいるのはトイレのときぐらい。そのぐらい2人は一緒にいる。多分そのうち結婚するんだと私は勝手に思ってる。でも絶対結婚すると思うんだよね。

「遥ぁ~!南がいじめる~!」
「なんと!? 南くん、夏樹をいじめたら容赦しないよ!」
「いじめてないよー!誤解しないで遥ちゃーん!」
「あははは!分かってるって!」

そんな会話をしているといろんなところからくすくすと笑い声が聞こえてくる。この私たちの掛け合いは私たちの学年でちょっとした名物になっているらしい。随分前に南くんが私と夏樹で公開二股してるーなんて噂が立ったけどぶっちゃけ私は南くんはイケメンだとは思うけど恋愛対象としての興味なんて微塵もなかったし、夏樹と南くんがラブラブなおかげでそんな噂はすぐに消えた。

「遥、今日何限目まで?」
「今日は…最後までいるよー」
「そっかぁ…私たち午前中だけだから一緒に帰れないねー」
「そうだねぇ…2人でラブラブしながら帰りなさい。」
「ちょ、その言い方ー!」
「事実でしょー?」
「むー!」
「いひゃい、いひゃいっ」
「あはははっ」

頬をつねってくる夏樹の顔はまんざらでもなさそうでこっちも笑えてくる。南くんも爆笑してるし。

「あー!面白い!ホント2人って見てて飽きないよねー!」

南くんがそう言って笑いすぎて目尻に溜まった涙を拭う。

「その言葉、そっくりそのままお返しします!」

べ、と舌を出してそう言ったあと、険しい顔をしようとしてもすぐに緩んでしまう。
3人でいると笑顔が絶えない。それが何よりの幸せだ。

「じゃあ始めます。」

いつの間にか講義室に入ってきていた教授の声が響く。私たち3人は真面目なのでちゃんと教授の話を聞く。………一応ね。

午前中の講義が終わって、夏樹と南くんと別れたあと、1人でする食事に時間をかける必要もないためさっさと済ませてしまった。

「午後の講義めんどいー…」

誰に言ったわけでもない呟きをこぼす。
あの2人以外に友達がいないわけではないが、やっぱりあの2人といる方が楽しい。
さっさと午後の講義を終わらせてしまおうと考え、食べ終わったパンの袋をゴミ箱に捨てた。

「で、あるからー」

さっさと終わらせてしまおうと思っていた講義がよりにもよって1番つまらないと感じている講義だったとは。嫌でも長く感じてしまう。

(サボればよかったなぁ…)

そんなことをぼんやりと考えながら時間が過ぎるのを待った。

「やぁっと終わったー!」
「遥、おつかれー!おまえ、あの2人いないとテンション低すぎなー?」
「だってつまんないもーん。」
「いい加減あのリア充離れしなさい。」
「えー」

そこそこ仲の良い友人に後ろから背中を叩かれる。やっぱり離れないといけないかなぁ…でも嫌だし。ま、いつか私にも離れなきゃって思う日が来るはずだし、それまでは良いよね。

(その日がくるとしたら2人が結婚したときかなぁ…)

友人と別れるとそんなことをしんみりと考えながら帰路へついた。

「おかえりハルちゃん!」
「あ、ただいまハルさん!」

今日はどうだった?と笑顔で首を傾げるハルさんに、楽しかったです、とだけ告げて部屋に戻る。いつも通りの日常。それが幸せなんだと実感する。

この幸せがいつまでも続きますように。

そう願ってまたベッドへダイブした。
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