6 / 10
6
しおりを挟む
断罪の日がやって来たのは、それから数日後のことだった。
謁見の間には、国王陛下夫妻、ユージーン殿下、私の父、宰相閣下が待っていた。
そして、何故かユージーン様のご学友の皆様も集まっていらした。
殿下の左隣には、光魔法の使い手として有名な聖女セレナ様。
そして、右隣には宰相閣下の御令嬢エリーゼ様。
さらに、その三人を挟むように、殿下が信頼されている護衛騎士のウィリアム様と、一千年に一度とも言われる稀代の天才魔術師ルーク様が立っていらした。
殿下を挟んで立つこの御二方の御令嬢のどちらかが、この魔法を解いたのだろうか。
そう考えると軋むように胸が痛むが、そんなことを言える立場ではないのは分かっている。
私はそんな胸の内が外に出てしまわないよう、精一杯の謝意を込めて頭を下げた。
最初に声を上げたのは、宰相閣下だった。
「クローデン侯は上手く隠したつもりだったろうが、リリアーナ嬢の生母の妹という人物から証言も取れております。国王陛下、この父娘が結託して王太子殿下を惑わしたのは明白であります!」
「リリアーナ様は魅了魔法で殿下を惑わしていたのですわ!そうでなければ、ユージーン様がわたくしを退けて、リリアーナ様を婚約者に選ぶなんて愚行をするはずがありませんもの。」
エリーゼ様は、そう言って私を睨みつけた。
その言葉が胸に突き刺さる。
確かに、私がユージーン殿下に選ばれたのは魅了魔法のためであり、それがなければ何も持たない私なんかに目を止めてくれる人などいるわけがないのだ。
と、その時、殿下を挟んで立つセレナ様が、エリーゼ様に飛びかからんばかりの勢いで口を出した。
「はあ?例えリリアーナ様が選ばれなかったとしても、あんたみたいな性悪女が婚約者に選ばれるわけないでしょ!私のこと平民出身だって、散々いじめ抜いてくれたこと忘れていないわよ!これ以上、リリアーナ様を馬鹿にするようなこと口にしたら、あんたの家の領地だけ結界を外してやるから!」
セレナ様の勢いは止まらず、そのままエリーゼ様に掴み掛かろうとし、またエリーゼ様も応戦する様子が見てとれた。
それを、間に挟まれたユージーン殿下が止めている。
よく見れば、二人の御令嬢の髪型やドレスは既に乱れており、この掴み合いが今始まったわけではないことを示していた。
確かに、以前から仲が良くないことは知っていたけれど、私が入る前に何かあったのだろう。
私が狼狽えていると、その様子に気づいたウィリアム様がこちらに近寄ってきた。
「ささ、リリアーナ様、こんなところに長居は無用です。早速、私の実家へ行きましょう。我が領地は王都とは違い、とても穏やかな場所です。きっと、リリアーナ様も気に入られると思いますよ。どうぞご安心ください。」
そう言って、ウィリアム様が私の目の前で跪いた。
謁見の間には、国王陛下夫妻、ユージーン殿下、私の父、宰相閣下が待っていた。
そして、何故かユージーン様のご学友の皆様も集まっていらした。
殿下の左隣には、光魔法の使い手として有名な聖女セレナ様。
そして、右隣には宰相閣下の御令嬢エリーゼ様。
さらに、その三人を挟むように、殿下が信頼されている護衛騎士のウィリアム様と、一千年に一度とも言われる稀代の天才魔術師ルーク様が立っていらした。
殿下を挟んで立つこの御二方の御令嬢のどちらかが、この魔法を解いたのだろうか。
そう考えると軋むように胸が痛むが、そんなことを言える立場ではないのは分かっている。
私はそんな胸の内が外に出てしまわないよう、精一杯の謝意を込めて頭を下げた。
最初に声を上げたのは、宰相閣下だった。
「クローデン侯は上手く隠したつもりだったろうが、リリアーナ嬢の生母の妹という人物から証言も取れております。国王陛下、この父娘が結託して王太子殿下を惑わしたのは明白であります!」
「リリアーナ様は魅了魔法で殿下を惑わしていたのですわ!そうでなければ、ユージーン様がわたくしを退けて、リリアーナ様を婚約者に選ぶなんて愚行をするはずがありませんもの。」
エリーゼ様は、そう言って私を睨みつけた。
その言葉が胸に突き刺さる。
確かに、私がユージーン殿下に選ばれたのは魅了魔法のためであり、それがなければ何も持たない私なんかに目を止めてくれる人などいるわけがないのだ。
と、その時、殿下を挟んで立つセレナ様が、エリーゼ様に飛びかからんばかりの勢いで口を出した。
「はあ?例えリリアーナ様が選ばれなかったとしても、あんたみたいな性悪女が婚約者に選ばれるわけないでしょ!私のこと平民出身だって、散々いじめ抜いてくれたこと忘れていないわよ!これ以上、リリアーナ様を馬鹿にするようなこと口にしたら、あんたの家の領地だけ結界を外してやるから!」
セレナ様の勢いは止まらず、そのままエリーゼ様に掴み掛かろうとし、またエリーゼ様も応戦する様子が見てとれた。
それを、間に挟まれたユージーン殿下が止めている。
よく見れば、二人の御令嬢の髪型やドレスは既に乱れており、この掴み合いが今始まったわけではないことを示していた。
確かに、以前から仲が良くないことは知っていたけれど、私が入る前に何かあったのだろう。
私が狼狽えていると、その様子に気づいたウィリアム様がこちらに近寄ってきた。
「ささ、リリアーナ様、こんなところに長居は無用です。早速、私の実家へ行きましょう。我が領地は王都とは違い、とても穏やかな場所です。きっと、リリアーナ様も気に入られると思いますよ。どうぞご安心ください。」
そう言って、ウィリアム様が私の目の前で跪いた。
13
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
仲良く政略結婚いたしましょう!
スズキアカネ
恋愛
養女として子爵令嬢になったレイアに宛がわれた婚約者は生粋の貴族子息様だった。
彼が婿入りする形で、成り立つこの政略結婚。
きっと親の命令で婚約させられたのね、私もかわいそうだけど、この方もかわいそう!
うまく行くように色々と提案してみたけど、彼に冷たく突き放される。
どうしてなの!? 貴族の不倫は文化だし、私は愛人歓迎派なのにオリバー様はそれらを全て突っぱねる。
私たちの政略結婚は一体どうなるの!?
◇◆◇
「冷たい彼に溺愛されたい5題」台詞でお題形式短編・全5話。
お題配布サイト「確かに恋だった」様よりお借りしています。
DO NOT REPOST.
魅了より愛してる
ゆゆよ
恋愛
普段から家を行き来する仲の公爵家と侯爵家には、年上のユーティスと2歳下のメルリーナがいた。
2人の仲はとてもよく、メルリーナはユーティスのことが大好きで、ユーティスはメルリーナを囲いたいほど愛していた。
そんな2人の間に魅了の魔法を使用した男爵令嬢が立ちはだかる!・・・・のか?
*誤字脱字あるかもしれませんが、暖かい目で見てくださると嬉しいです。
恋を再び
Rj
恋愛
政略結婚した妻のヘザーから恋人と一緒になりたいからと離婚を切りだされたリオ。妻に政略結婚の相手以外の感情はもっていないが離婚するのは面倒くさい。幼馴染みに妻へのあてつけにと押しつけられた偽の恋人役のカレンと出会い、リオは二度と人を好きにならないと捨てた心をとりもどしていく。
本編十二話+番外編三話。
魅了の力はもうないんですけど
ゆるぽ
恋愛
「男爵令嬢のアミィ様は魅了の魔法を使っています!」学園で定期的に行われるパーティで突如始まる告発。この国では魅了魔法の使用は大罪だ。罪を明らかにしようとする侯爵令嬢のカトリーヌの前に第一王子のミシェルが現れてから話は思わぬ方向へ…?/前後編の短編です。
幼馴染が恋をしたら、もれなく巻き込まれました
mios
恋愛
幼馴染が恋をした。相手には婚約者がいて、しかも彼女とは別に秘密の恋人とやらがいる。子爵令嬢でしかない幼馴染には絶対に絡まない方が良い人物であるが、彼女の行動力のおかげで、思わぬ方向に話は進んでいき……
※タイトルに誰視点かをつけてみました。読み易くなればよいのですが。
悪役令嬢?そんなの知りませんが迷惑です
空橋彩
恋愛
わたくしはクレア・ティンクライン
この国の公爵令嬢である。
婚約者の侯爵令息、ブラッドリー・ランプールとは10歳の時に婚約して、それから仲良く過ごしているの。
わたくしの頭の中には2つの記憶がある。一つはわたくしとして生きていた記憶そして、もう一つは、わたくしを物語として読んでいた記憶…そう、わたくしは2回生まれ変わっているの。
だから知っている、17歳になると学園に現れるヒロイン、アマリリスの魅了魔法により婚約者のブラッドリーは心を奪われてしまう。
だから幼い頃から善行をつみ、皆に好かれるようにした。ブラッドリーともラブラブだ。
でも彼女が現れたら私は…手を引こうと思うの。
それは、自分の国外追放から逃れるため。そして家のため。
そんなこと言われても困ります。私、全然興味ないんですけど?
このお話はよくある、悪役令嬢の回避行動に何も知らないヒロインが巻き込まれてメチャクチャに迷惑をかけられる話。
主役はヒロイン。
このお話は視点がコロコロ変わります。苦手な方はご注意を。ご都合主義なのでそちらも苦手な方はブラウザバック推奨
義妹に苛められているらしいのですが・・・
天海月
恋愛
穏やかだった男爵令嬢エレーヌの日常は、崩れ去ってしまった。
その原因は、最近屋敷にやってきた義妹のカノンだった。
彼女は遠縁の娘で、両親を亡くした後、親類中をたらい回しにされていたという。
それを不憫に思ったエレーヌの父が、彼女を引き取ると申し出たらしい。
儚げな美しさを持ち、常に柔和な笑みを湛えているカノンに、いつしか皆エレーヌのことなど忘れ、夢中になってしまい、気が付くと、婚約者までも彼女の虜だった。
そして、エレーヌが持っていた高価なドレスや宝飾品の殆どもカノンのものになってしまい、彼女の侍女だけはあんな義妹は許せないと憤慨するが・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる