恋の御伽噺を異世界で

冬咲 椿

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第一章 【2人の兄編】

レイヴン兄さんの嫉妬

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父さんに、王都には明日出発するから準備しておけと言われた僕は、昼ごはんを食べ終えてすぐに自室に戻り支度を始めた。

正直僕は王都に行かなくてもいいと思う。レイヴン兄さんとグレン兄さんは、それぞれ王都の騎士団と魔法学校に入ってるから戻らなきゃいけないけど……僕らね、別にいいと思うんだよね。だって現世の僕が好きだったアレクシスに、現時点での僕が会う必要もないし。

そもそも嫌われてるんだからあっても煙たがられるだけだし。

よくよく考えたら、父さんが現国王の弟だからアレクシスって僕の従兄に当たるんだよね。

それでもアプローチをしてる現世の僕ってすごい。そしてそれを許している両親もすごい。

まあ兄弟姉妹での恋愛が合法らしいし、別に変ではないんだろうけど。

今後どうするかアレコレ考えながら、スーツケースに自身の衣類を詰め込む。

あらかた支度を終えた頃、僕の部屋にレイヴン兄さんがやって来た。

「ノエル、俺だが入れてもらえないか?」

「あ、ちょっと待って」

スーツケースを一旦閉じて端の方にやる。

ドアを開け「どうしたの? 兄さん」と首をかしげる。

しかし返って来たのは返事ではなく兄さん逞しい手。優しく頭を撫でられた……なら良かったけど、肩を鷲掴みにされベッドへ叩きつけられた。

そして体勢を立て直す余裕すら与えられず、兄さんは僕に覆いかぶさって来た。 

「に、兄さん? どうしたの?」

「どうしてグレンと出かけたんだ?」

……あ、そういうことね。

「どうして……って、グレン兄さんに誘われたからだけど」

「俺を置いて、二人で出かけたのか……?」

「いや、だってグレン兄さんが二人でって……」

僕が言葉を発するたびに兄さんの顔が険しくなっていく。

こういうシチュエーションは小説や漫画で見てものすっごい憧れてたけど……実際にやられる側になるとめちゃくちゃ怖い。だってベッドの上で兄さんに覆いかぶされるだけでも迫力満点なのに兄さんの鬼のような表情が追加されてるんだもん。

……はぁ、こうなることを予想しておくんだった。
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