57 / 68
第四章 【学校入学編】
爺の過去と心配される嬉しさ
しおりを挟む
「それじゃあ、行ってきます!」
必要最低限の荷物を入れた肩掛けバックを肩に、家の玄関で両親や執事、メイドたちに元気よく挨拶をする。
だけど、元気な僕とは対照的に、僕を見送るみんなの雰囲気は暗かった。両親が落ち込むのはわかる。可愛がっていた子供が家を出るんだから悲しいのは当たり前だ。でも意外なのは、僕を嫌っていたはずのメイドや執事達が悲しそうにしていたからだ。あれかな。みんなにクッキーあげたのが良かったのかな。クッキーの力ってすごいね。
でも何故か爺だけはめっちゃ嬉しそうな顔してる。いつもは無表情なのに、そんなに僕が家を出てくのが嬉しいのか!?
っていうか、努力して試験に合格して、家を出るという大人への第一歩を踏み出そうとしてるんだから、少しくらい応援してくれてもいいと思うんですけど?
そんなことを思いながら最後にみんなを見渡していると、母さんが顔を歪めながら口を開いた。
「……ねえ、やっぱり家に——」
「いない! もう、いつまで僕を引き止めようとしてくるの!」
「だってだって! 私の可愛い天使がいなくなるって考えると胸が張り裂けそうなのよ! レイヴン達は全然甘えてくれないし! もう私のそばにはあなたしかいないのよぉ……!」
拗ねたようにそういう母さんは、体だけ成長した子供のようだった。
「なあノエル、貴族に色々言われたって気にしなくていいんだぞ? 学校に行くのが嫌ならそう言っていいんだからな?」
「僕は行きたいの! ちゃんとしたところで学んで友達とか作りたいの!」
「し、しかし……」
まだ納得しないと言った様子で口ごもる。そんな父さんを見かねたのか、もしくは僕を早く家から出て行かせたいのかわからないが、隣から爺が僕のフォローに入った。
「旦那様。これはノエル様の決めたことです。自由にさせてあげるのも教育には大切なことですぞ」
「……仕方ないか。ノエルは変なところで頑固だからな。……ノエル、行くからには精一杯やるんだぞ? でも辛かったらいつでも帰ってきていいんだからな?」
「……うん。ありがとう!」
僕の言葉に、父さんは満足そうに頷くいた。
「よしっ! それではあとは頼むぞ、爺」
「かしこまりました」
……ん? あとは頼む? 爺に? 何を?
「父さん? なんの話?」
「なんのって……爺、まさか話してないのか?」
「驚かれた顔を見て見たかったものですからつい。申し訳ありません」
「だからなんのこと? 何隠してるの?」
「お前の監視役として爺を選んだんだ。聞いて驚け! 爺は昔宮廷暗殺者をやっていたんだぞ?」
「きゅうてい? 暗殺者? ……ええええええええ!!?」
宮廷暗殺者……たしか王に仕えてる暗殺者で、その腕は一級品。他国に侵入して自国の不利益になる奴を密かに殺してるっていうあの!?
なんでそんな人がうちの執事なんてしてるの!?
「というわけですのでノエル様、今後とも宜しくお願い致します」
爺は僕にそう告げてお辞儀する。なんとも嬉しそうな表情で……だからなんでそんな嬉しそうなの?
「それではノエル様、行きますよ」
爺に手を引かれ、玄関の外で待っていた馬車に乗り込む。
「いい? 体には気をつけるのよ? 怪我したらちゃんと回復魔法かけてね? 友達もちゃんと作るのよ? 好きな子ができたら紹介してね?」
「う、うん」
最後の最後まで子供扱いをやめない母さんを適当にあしらい、いよいよ僕は学校へと出発した。
しかし馬車が出発しても母さんの心配性は消えない。
「ノエルー! 元気でねー! 絶対にまた戻ってくるのよー!!」
母さんがハンカチを振りながら涙目にそう叫んでいた。僕も窓から、母さんの姿が見えなくなるまで大きく手を振った。
「ノエル様、寂しくはないですか?」
「全然……って言ったら嘘になるけど、でもそんなには寂しくないよ」
……だって、馬車で移動すると、一般学校って家までたったの1時間だもん。
休みの日なんかは簡単に帰れるし、家から通えるレベルだし。
なのにみんなあんな大げさに……まあ、寂しいって思ってもらえるのは素直に嬉しいけどさ。
心配してくれる人がいる、それが嬉しくてたまらない。
そんな嬉しさの余韻に浸りながら爺と今後の話をすること1時間。一般学校へと到着した。
必要最低限の荷物を入れた肩掛けバックを肩に、家の玄関で両親や執事、メイドたちに元気よく挨拶をする。
だけど、元気な僕とは対照的に、僕を見送るみんなの雰囲気は暗かった。両親が落ち込むのはわかる。可愛がっていた子供が家を出るんだから悲しいのは当たり前だ。でも意外なのは、僕を嫌っていたはずのメイドや執事達が悲しそうにしていたからだ。あれかな。みんなにクッキーあげたのが良かったのかな。クッキーの力ってすごいね。
でも何故か爺だけはめっちゃ嬉しそうな顔してる。いつもは無表情なのに、そんなに僕が家を出てくのが嬉しいのか!?
っていうか、努力して試験に合格して、家を出るという大人への第一歩を踏み出そうとしてるんだから、少しくらい応援してくれてもいいと思うんですけど?
そんなことを思いながら最後にみんなを見渡していると、母さんが顔を歪めながら口を開いた。
「……ねえ、やっぱり家に——」
「いない! もう、いつまで僕を引き止めようとしてくるの!」
「だってだって! 私の可愛い天使がいなくなるって考えると胸が張り裂けそうなのよ! レイヴン達は全然甘えてくれないし! もう私のそばにはあなたしかいないのよぉ……!」
拗ねたようにそういう母さんは、体だけ成長した子供のようだった。
「なあノエル、貴族に色々言われたって気にしなくていいんだぞ? 学校に行くのが嫌ならそう言っていいんだからな?」
「僕は行きたいの! ちゃんとしたところで学んで友達とか作りたいの!」
「し、しかし……」
まだ納得しないと言った様子で口ごもる。そんな父さんを見かねたのか、もしくは僕を早く家から出て行かせたいのかわからないが、隣から爺が僕のフォローに入った。
「旦那様。これはノエル様の決めたことです。自由にさせてあげるのも教育には大切なことですぞ」
「……仕方ないか。ノエルは変なところで頑固だからな。……ノエル、行くからには精一杯やるんだぞ? でも辛かったらいつでも帰ってきていいんだからな?」
「……うん。ありがとう!」
僕の言葉に、父さんは満足そうに頷くいた。
「よしっ! それではあとは頼むぞ、爺」
「かしこまりました」
……ん? あとは頼む? 爺に? 何を?
「父さん? なんの話?」
「なんのって……爺、まさか話してないのか?」
「驚かれた顔を見て見たかったものですからつい。申し訳ありません」
「だからなんのこと? 何隠してるの?」
「お前の監視役として爺を選んだんだ。聞いて驚け! 爺は昔宮廷暗殺者をやっていたんだぞ?」
「きゅうてい? 暗殺者? ……ええええええええ!!?」
宮廷暗殺者……たしか王に仕えてる暗殺者で、その腕は一級品。他国に侵入して自国の不利益になる奴を密かに殺してるっていうあの!?
なんでそんな人がうちの執事なんてしてるの!?
「というわけですのでノエル様、今後とも宜しくお願い致します」
爺は僕にそう告げてお辞儀する。なんとも嬉しそうな表情で……だからなんでそんな嬉しそうなの?
「それではノエル様、行きますよ」
爺に手を引かれ、玄関の外で待っていた馬車に乗り込む。
「いい? 体には気をつけるのよ? 怪我したらちゃんと回復魔法かけてね? 友達もちゃんと作るのよ? 好きな子ができたら紹介してね?」
「う、うん」
最後の最後まで子供扱いをやめない母さんを適当にあしらい、いよいよ僕は学校へと出発した。
しかし馬車が出発しても母さんの心配性は消えない。
「ノエルー! 元気でねー! 絶対にまた戻ってくるのよー!!」
母さんがハンカチを振りながら涙目にそう叫んでいた。僕も窓から、母さんの姿が見えなくなるまで大きく手を振った。
「ノエル様、寂しくはないですか?」
「全然……って言ったら嘘になるけど、でもそんなには寂しくないよ」
……だって、馬車で移動すると、一般学校って家までたったの1時間だもん。
休みの日なんかは簡単に帰れるし、家から通えるレベルだし。
なのにみんなあんな大げさに……まあ、寂しいって思ってもらえるのは素直に嬉しいけどさ。
心配してくれる人がいる、それが嬉しくてたまらない。
そんな嬉しさの余韻に浸りながら爺と今後の話をすること1時間。一般学校へと到着した。
0
お気に入りに追加
818
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
嘘の日の言葉を信じてはいけない
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
嘘の日--それは一年に一度だけユイさんに会える日。ユイさんは毎年僕を選んでくれるけど、毎回首筋を噛んでもらえずに施設に返される。それでも去り際に彼が「来年も選ぶから」と言ってくれるからその言葉を信じてまた一年待ち続ける。待ったところで選ばれる保証はどこにもない。オメガは相手を選べない。アルファに選んでもらうしかない。今年もモニター越しにユイさんの姿を見つけ、選んで欲しい気持ちでアピールをするけれど……。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う
まと
BL
色々と煩わしい為、そろそろ公爵家跡取りエルの取り巻きをこっそりやめようかなと一人立ちを決心するファヌ。
新たな出逢いやモテ道に期待を胸に膨らませ、ファヌは輝く学園生活をおくれるのか??!!
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
傾国のΩと呼ばれて破滅したと思えば人生をやり直すことになったので、今度は遠くから前世の番を見守ることにします
槿 資紀
BL
傾国のΩと呼ばれた伯爵令息、リシャール・ロスフィードは、最愛の番である侯爵家嫡男ヨハネス・ケインを洗脳魔術によって不当に略奪され、無理やり番を解消させられた。
自らの半身にも等しいパートナーを失い狂気に堕ちたリシャールは、復讐の鬼と化し、自らを忘れてしまったヨハネスもろとも、ことを仕組んだ黒幕を一族郎党血祭りに上げた。そして、間もなく、その咎によって処刑される。
そんな彼の正気を呼び戻したのは、ヨハネスと出会う前の、9歳の自分として再び目覚めたという、にわかには信じがたい状況だった。
しかも、生まれ変わる前と違い、彼のすぐそばには、存在しなかったはずの双子の妹、ルトリューゼとかいうケッタイな娘までいるじゃないか。
さて、ルトリューゼはとかく奇妙な娘だった。何やら自分には前世の記憶があるだの、この世界は自分が前世で愛読していた小説の舞台であるだの、このままでは一族郎党処刑されて死んでしまうだの、そんな支離滅裂なことを口走るのである。ちらほらと心あたりがあるのがまた始末に負えない。
リシャールはそんな妹の話を聞き出すうちに、自らの価値観をまるきり塗り替える概念と出会う。
それこそ、『推し活』。愛する者を遠くから見守り、ただその者が幸せになることだけを一身に願って、まったくの赤の他人として尽くす、という営みである。
リシャールは正直なところ、もうあんな目に遭うのは懲り懲りだった。番だのΩだの傾国だのと鬱陶しく持て囃され、邪な欲望の的になるのも、愛する者を不当に奪われて、周囲の者もろとも人生を棒に振るのも。
愛する人を、自分の破滅に巻き込むのも、全部たくさんだった。
今もなお、ヨハネスのことを愛おしく思う気持ちに変わりはない。しかし、惨憺たる結末を変えるなら、彼と出会っていない今がチャンスだと、リシャールは確信した。
いざ、思いがけず手に入れた二度目の人生は、推し活に全てを捧げよう。愛するヨハネスのことは遠くで見守り、他人として、その幸せを願うのだ、と。
推し活を万全に営むため、露払いと称しては、無自覚に暗躍を始めるリシャール。かかわりを持たないよう徹底的に避けているにも関わらず、なぜか向こうから果敢に接近してくる終生の推しヨハネス。真意の読めない飄々とした顔で事あるごとにちょっかいをかけてくる王太子。頭の良さに割くべきリソースをすべて顔に費やした愛すべき妹ルトリューゼ。
不本意にも、様子のおかしい連中に囲まれるようになった彼が、平穏な推し活に勤しめる日は、果たして訪れるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる