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第五部 六章「友人A」
「おはよう魔銃使い」
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不安を抱く星の瞳が、空を焦がす様な勢いで風と共に巻き起こる炎を見上げ、なかなか目が離せない。
「……不安です。豚さんがニーズヘッグさんにいじめられてないか……とっても不安です」
「いやいや、燃えていい様な奴よ? 金に物言わせて悪評高いし」
そう事実を突きつけられるも、やはりエリーとしては納得がいかない。
「だ、だって……っ、ニーズヘッグさんならあの綺麗なので吊るしたり、火を出して怖い事言ったりするので……。それに私、その豚さんがどんな魔族さんか知りませんが、どうしても可愛い豚さんしか頭に浮かばなくて」
エリーの頭の中では、どうしてもまん丸としたピンクで愛らしい豚がニーズヘッグにいじめられる構図しかなく、豚の方を持ってしまう。
実物を見せればいいのかとすらネアも思えたが、ニーズヘッグに対する悪い印象があるのならと、このままにしておくのも悪くない。などと、意地の悪い笑みを浮かべながら落ち着きのないエリーを眺めてしまう。
そのままあの蛇を嫌ってくれ、とすら願っているくらいだ。
「あう~、どうしましょうネアさんっ」
「中途半端なの嫌いだし、いっその事……」
そのまま大悪魔には悪いが悪事を突き進めと、背を押したい気分。
しかし、あたふたしていたエリーが再び窓にへと向き直ると……
「――姫君ただいま~♪ 愛しの俺様が返ってきたぞー! 寂しくなかったか?」
突然、外からニーズヘッグが窓に突撃する勢いで戻ってきた。
エリーは両目を丸くさせるも、すぐに何処か冷めた様子。
「豚さんに酷い事してないか不安でした」
「そう照れんなって~。俺は寂しかったぜ?」
「……さっさと入れ愚か者っ。外の愚か者どもの視線が集まるっ」
ニーズヘッグの後ろではフレズベルグが周囲を気にしていた。
魔界でも名を上げた大悪魔が二体。これは低級魔族からすれば目が引かれるのも無理はない。
ネアとしては問題な悪魔二体が堂々と姿を表にさらしている事には苦い表情を浮かべてしまう。
「うっわ、こっちも戻ってる。エリーちゃん離れてっ。野蛮なのの近くわ危険だわ」
「うっせー電気女! 誰が野蛮だっ」
「……邪魔だと言っているだろうが!!」
とうとうフレズベルグはニーズヘッグを足で蹴り入れる。
寸でネアはエリーをその場から遠ざけ、ニーズヘッグは床に激しくぶつけられた。
「まったく……。荒事で申し訳ないな姫」
部屋に入り、フレズベルグは真っ先にエリーに謝罪を入れる。
「い、いえ……大丈夫です」
「俺は蹴られて泣きそうだぞフレズベルグっ。泣いていいっすかー!?」
「……本当にこの馬鹿は愚か者で申し訳ない。昔っから幼子が好きなゆえ、それも自覚がなくてな。……ここしばらく迷惑かけただろう?」
「やだ、最悪! 前々から思ってたけどやっぱロリコンなわけ!? 余計にエリーちゃんに近づかないでっ」
「誰がロリコンだ!! フレズベルグも昔っからその誤解なんとかしろよ!」
「……事実だろう」
「…………えっと、なんですか? ……ろり……んん??」
「姫君は聞かなくていいの! むしろ覚えなくていいから!!」
なんとか話しについていこうとしたエリー。しかし、そこは炎蛇に強く止められてしまう。
更にニーズヘッグは話を急いでそらしだす。
「ほら! 持ってきたぞ姫君っ。これでクロトがなんとかなる!」
ずいっ、と。ニーズヘッグはミントに似た花を付けた植物を出す。
それがこの魔界に来てから探していたマカツ草なのだろうが、エリーにはそれが本物かどうかもわからない。
代わりにネアがそれを取り上げ、確認。
「……うん。確かにマカツ草だわ。ありがたいことに、お姉さんポーションの調合も簡易だけどできるからやってあげる。感謝なさい野郎ども」
「一々、一言二言多いぞ電気女……」
「頼むからさっさと作ってくれ。さすがに愚か者が目を覚まさないのは支障がでる……」
頼まれればネアは断りはしない。
ネアは前もって宿の主人から借りていた道具をすぐに取り出し、迷うことなく調合を開始した。
マカツ草をすりつぶし、少しずつ水を加えて混ぜ合わせていく。
そう黙々と作業している間。待つのみのニーズヘッグたちは床に腰を下ろし隣で語り合う。
「いや~、里帰りも悪くなかったなぁ。まさかこんな状況で魔界の空気吸えるとは思ってもいなかったぜ」
「こっちとしては、面倒な者に目を付けられなかっただけマシか。……お前はどうだった?」
「結構てんてこまいまい。ウサギには色々押し付けられるわ、めんどい奴には遭遇するわ……」
「……そうか。お前の事だから、故郷の火山にでも立ち寄るかと思っていたがな」
「あ~、爺に会う……か。そうだなぁ。会っても良かったかもな。……でもさ。たぶん俺の人間界での悪評とか伝わってるだろうし、会うのはちょっとな~」
「サラマンダーなら、知っていても今のお前を深く咎めはしないと思うぞ? なんだかんだで、お前には甘かったからな」
「へへっ。この姿で爺ちゃん言ったらハグしてくれっかねぇ?」
「……想像しずらいが、しそうな予感も」
「逆に俺が爺抱き上げれるって。身長とか、超えてるしな」
「そうだな。……もしも……もしも自由になれたなら、一緒に会いに行くのも良いかもな。私も幼い頃は世話になったからな」
「じゃあ、自由になったら行こうぜ」
無意識に。二体は隣にある手を握っていた。
今だけかもしれない。こうしてニーズヘッグとフレズベルグが外で直に触れ合う事など。
もうじき、二体は本来あるべき場所に戻らねばならないのだから。
それが少し、眺めていたエリーには寂しくもあった。
気持ちが表情にでも出ていたのか、ニーズヘッグが苦笑する。
「そうしょげんなよ姫君。……まあ、姫君を生で、それも自分の姿で一緒にいられるなんて、もうないかと思うと俺も寂しくなっちまうがな」
「……私、そんなに顔に出てましたか?」
「めっちゃ出てた」
「悪魔とはいえ、人の子にそのように思われるとはな……。魔武器になるまでは想像もしていなかった。それもまた、姫の良いところか。そこは感謝している」
「そんな……。私はなにもすごい事なんて……してませんよ?」
「俺も姫君には感謝してんだぞ? こうして、大事な【友人A】を失わずにいる。俺の最初の友人は、俺の大事な宝だからな」
「……お前もよくそういう事を恥もなく言えるものだ。まあ、そこがお前の良いところだな。我が【友人A】」
これが最後。これが最後でいいのだろうか?
エリーは、それを否定したくなる。
「きっと……、きっと、またこうやってお話できるようになりますよっ。……きっと……絶対にっ」
「姫君の励まし、すんげー期待したくなるよな。……大丈夫だって姫君。俺らもわかっているしな」
「ああ。例え目に見えずとも、声が聞こえずとも、近くにニーズヘッグがいるのはわかる。……なんの問題もない」
「……でも」
迷いがまだあるが、ネアの声が割り込む。
「話のとこ悪いけど、一応できたわよ? ……言いたい事あるなら、今のうちに言っときなさい。私は寛大だから」
恩でも売るかのように押し付けてくるネア。
だが、その時間は助かるところもある。
ニーズヘッグとフレズベルグは、互いに顔を見合い最後の言葉を交わす。
「――じゃあな、フレズベルグ。見えねぇけど傍にいるからよ」
「――お前こそ、私がいる事を忘れるなよ? 我が【友人A】」
両者は悔いを残さぬ様に言葉を交わし終わると、その目を伏せる。
炎と風。それを身に纏うと、次に現れたのは久方ぶりにも思えるクロトとイロハの姿だった。
二人とも深い眠りに落ちたまま。その目を開く気配がない。
「……クロトさん」
「今はまだ魔素に耐えられなくて寝ているだけよ。……それでねエリーちゃん。ちょーっと部屋の外に出てもらっていいかしら?」
「……?」
「寝ている野郎どもには荒療法しないといけないから、あんまり見せるのもあれだし。すぐ終わるからお願い」
「わかりました……」
そこまで言うならと、エリーは一時的に部屋から出る事となった。
それを見送った後、ネアは出来上がったポーションを手に眠る魔銃使いたちへ近づく。
普段から可愛げのない魔銃使いだが、寝ている時だけは無垢であるというもの。
すやすやと眠る二人の前で、ネアは何処悪知恵が働いたような不敵な笑みを浮かべた。
「さ~ってと。……おとなしく寝ているところ悪いけど、覚悟しなさいよ~」
薬品の小瓶には、元々のマカツ草の色はなく、ドス黒い色が混ざり合っていた。
二人の口を開け……ネアはその薬を一気に余すことなく全て放り込んだ。
部屋の前で待つエリーは、そわそわと扉を眺める。
時折耳を扉に当て、中の様子を確認しようとするも特にといった事はなく……。
「……大丈夫かな?」
何度目か、エリーは耳を扉に近づける……と……
「「ギャアァアアアァアアアアアアアアアッ!!!」」
エリーは、咄嗟の叫び声に、扉から耳を離し飛び上がってしまうほどの衝撃を受けた。
ウサギの耳など驚きのあまりにピンと立ち、声が聞こえなくなると共にぺたんと垂れてゆく。
「……? ……?? な、なに?」
困惑に身を硬直させていると、次に扉が開く。
「あ! エリーちゃんお待たせ~。もう入っていいわよ」
先ほどの叫び声とは打って変わって、ネアはなにやらすっきりした様子の表情。
いったいなにがあったのか。エリーは不安ながらも部屋の中を覗き込む。
先ほどまで眠っていたはずのクロトとイロハ。二人は床に這いつくばり、口を押えて悶えていた。
「……っ、が、は!? な……っ、なんなんだよ今のは!!?」
「びっくりだよ!? いきなり酷い味が口の中いっぱいで訳が分からないよ!!」
「あやうくあの世が見えるほどのえぐみか? 酸味か!? 若干甘味もあって意味わからんぞ!? この世のものとは思えないもん喰らわせた奴誰だ!!?」
「私だけど文句あるのかしら外道ども? ……やっぱり簡易のだと一番の問題と言われている味はどうしようもないわよね。まあ、いっか。こいつら起こすんならその程度」
「お前の仕業か!?」
「はいはい。水持ってきてあげるからおとなしくしてなさい野郎ども。お姉さんの優しさに感謝なさい」
目を覚まして早々、クロトたちはネアに酷い仕打ちを味合わされた。という印象が強くあり、何処に感謝すればよいのかわからないまま事が進んでしまう。
ネアはさっさと部屋から出ていく。残ったエリーは今も薬にやられて気落ちしている二人にへと向き直る。
「……あの、大丈夫ですか? クロトさん、イロハさん」
「大丈夫に見えるのかよ、これでっ?」
クロトはまだなんとか堪えているが、イロハなど寝込んでしまうほど。
「……ですよね」
「つーか、全然記憶がないんだが……? 確か石碑に引き込まれて……それから、森の中を走って……」
クロトは徐々に残る記憶をあさる。
確か、酷い眠気に襲われてしまい、耐えきれずに意識が遠のき……。最後には傍らにいた者に何かを託した気がした。
朧気だがそれなりには思い出せてきた。
あまり追い続けると頭痛すら感じられたため、いったん思い出す事をやめる。
不機嫌ながらエリーに向き直ると、クロトは直後「ん?」と首を傾けた。
それは、エリーを見て違和感を得たからだ。
違和感の正体は、少女から垂れているウサギの様な耳と尻尾。
「……なんだこれ?」
気になってしまったのか、クロトはなんの躊躇もなくエリーのウサギ耳に触れた。
「――ヒャッ!? ク、クロト……さんっ」
「作りものじゃねぇな……。本物か?」
むにむに……。ふにふに……。
本物か偽物か。その質感を確かめる。
クロトはただそれを確かめようとしているだけなのだが、実際に触られているエリーは問答無用な手つきに身を震わせてしまう。
今その部位はとても敏感になってしまっており、他者に触れられるというのは全身を駆け抜けるものがあり、顔を赤らめる。
エリーは首を横に弱々しく振り、それ以上はと訴えるが、残念な事に気づいてくれない魔銃使い。
更には追い打ちとして尻尾にまでも触れてきた。
「はうぅっ!!?」
「これも本物か……? お前なんでこんなもんつけてんだよ? どういう原理だ?」
疑問が晴れるまで続くかと思えた時だ。
『……おい。クロト』
クロトを呼び止める声が響く。
しかし、クロトは気づかなかったのか完全なスルー。
『おいっ。おいって!』
ようやく気付いたのか。クロトはピクリと反応し、手を止めた。
この頭に響いてくる声はニーズヘッグだ。
「……ん? なんだニーズヘッグ?」
『何じゃねーよ! 姫君がやばい事になってるって!』
狼狽する声に、クロトはその状況というモノを目にする。
さんざん耳と尻尾を弄られたエリーは床に転げている。妙に発情したような赤らんだ顔と、時折身を痙攣させており……。
「……何やってんだお前?」
『お前のせいだから!! 俺だって姫君のそこまで触ってねーのに、羨ましいわ爆ぜろ!! いいから手を放せって!!』
同時だった。
グリアの実の効果が切れたのか、手にしていたウサギ要素がポンッ! と消えて元のエリーに戻る。
「うぅ……、クロトさん、酷いですぅ……」
「全然わからんのだが? なんでお前そういう事になってたんだよ?」
「……っ、そ、それは。ニーズヘッグさんが助けてくださって、クロトさん、魔界で眠ってしまったので」
エリーはぽつぽつと説明しようとするも、言葉がまだおぼつかない。
代わりにニーズヘッグから直接説明が入った。
『え~、我が主ぃ。お前らいきなり魔界に飛ばされちまったわけ。そんで魔素の影響で寝ちまった代わりに俺が表出てたんだよ。姫君は呪いのせいか魔素の影響を受けなかったんでな。さすがに人間を魔界で連れ回すのはよくねーし、カモフラージュみたいなもんよ。激レアのウサ耳で触りたい気持ちわかるっすけど、超敏感な部位だから……あれいろんな意味で拷問な? 今後あったら気を付けろ』
「……つまり、数日間お前に体乗っ取られてたってわけか。……無性にイラつく」
『俺すんげー頑張ってたんだが、酷い扱いだな。感謝の一つを覚えて我が主、お願いっ』
今後の人生に不安を感じ、ニーズヘッグは親の気持ちで泣き言を口にしてしまいたくなる。
とにもかくにも。魔銃使い二人の永眠危機は免れた。
意識を取り戻したクロトたち。次に彼らが目指すのは、魔界からの脱出だ。
***********************
『やくまが 次回予告』
ニーズヘッグ
「おはよう我が主! まあ、なんだぁ。お前が寝ちまってる間は俺が姫君と嬉し恥ずかしのランデブー期間で、ちょっと名残惜しくもあるがさすがに主人公をいつまでも取り残しておくっているのはマジで可哀そうかなって、ここまで頑張った俺に礼の一つくらいあってもいいと思うんだが、そこんとこどうよ?」
クロト
「お前に体を乗っ取られてたって事実に屈辱しかないな」
ニーズヘッグ
「もう、照れ隠しなのか素なのか、ウチの主は本当にクソガキ感満々で絶好調だな」
クロト
「誰がクソガキだ? 17歳は大人の部類だろうが、ガキ扱いするな」
ニーズヘッグ
「いやいや、俺からしたら赤子の様なガキなわけでありましてね。十代? そんなん数百代の俺にとってはマジで可愛いもんなんよ。……口は可愛くねーけど」
クロト
「俺にそんな要素求めるな。そういうのはない!」
ニーズヘッグ
「いや、寝ている時は結構可愛いと思うぞお前。きっとな~、幼少期は可愛かっただろうな~。なんならクロトを幼児化させる魔草で可愛げある姿を見るのも悪くないっ。なんだったら愛でてやってもいいぞ?」
クロト
「ただの拷問で地獄じゃないか」
ニーズヘッグ
「そんな事より我が主。次回からは魔界編後編だぜ? まあ、あの電気女いるから人間界に戻るなんざ造作もないだろうが、なんかひと騒動ありそうな予感だな。魔界上級者の俺から言えるのは、油断禁物だぞってことだ」
クロト
「……それ、魔界に限った話じゃねーだろ」
ニーズヘッグ
「次回、【厄災の姫と魔銃使い】第六部 一章「闇の声」。もしかしてだが、今回活躍した分、俺の出番が減る……なんて事はねーよな?」
クロト
「さーてな。それはそれでありがたい」
ニーズヘッグ
「嫌わないで我が主ぃ。俺メンタルガラスだからマジで傷つくのー」
「……不安です。豚さんがニーズヘッグさんにいじめられてないか……とっても不安です」
「いやいや、燃えていい様な奴よ? 金に物言わせて悪評高いし」
そう事実を突きつけられるも、やはりエリーとしては納得がいかない。
「だ、だって……っ、ニーズヘッグさんならあの綺麗なので吊るしたり、火を出して怖い事言ったりするので……。それに私、その豚さんがどんな魔族さんか知りませんが、どうしても可愛い豚さんしか頭に浮かばなくて」
エリーの頭の中では、どうしてもまん丸としたピンクで愛らしい豚がニーズヘッグにいじめられる構図しかなく、豚の方を持ってしまう。
実物を見せればいいのかとすらネアも思えたが、ニーズヘッグに対する悪い印象があるのならと、このままにしておくのも悪くない。などと、意地の悪い笑みを浮かべながら落ち着きのないエリーを眺めてしまう。
そのままあの蛇を嫌ってくれ、とすら願っているくらいだ。
「あう~、どうしましょうネアさんっ」
「中途半端なの嫌いだし、いっその事……」
そのまま大悪魔には悪いが悪事を突き進めと、背を押したい気分。
しかし、あたふたしていたエリーが再び窓にへと向き直ると……
「――姫君ただいま~♪ 愛しの俺様が返ってきたぞー! 寂しくなかったか?」
突然、外からニーズヘッグが窓に突撃する勢いで戻ってきた。
エリーは両目を丸くさせるも、すぐに何処か冷めた様子。
「豚さんに酷い事してないか不安でした」
「そう照れんなって~。俺は寂しかったぜ?」
「……さっさと入れ愚か者っ。外の愚か者どもの視線が集まるっ」
ニーズヘッグの後ろではフレズベルグが周囲を気にしていた。
魔界でも名を上げた大悪魔が二体。これは低級魔族からすれば目が引かれるのも無理はない。
ネアとしては問題な悪魔二体が堂々と姿を表にさらしている事には苦い表情を浮かべてしまう。
「うっわ、こっちも戻ってる。エリーちゃん離れてっ。野蛮なのの近くわ危険だわ」
「うっせー電気女! 誰が野蛮だっ」
「……邪魔だと言っているだろうが!!」
とうとうフレズベルグはニーズヘッグを足で蹴り入れる。
寸でネアはエリーをその場から遠ざけ、ニーズヘッグは床に激しくぶつけられた。
「まったく……。荒事で申し訳ないな姫」
部屋に入り、フレズベルグは真っ先にエリーに謝罪を入れる。
「い、いえ……大丈夫です」
「俺は蹴られて泣きそうだぞフレズベルグっ。泣いていいっすかー!?」
「……本当にこの馬鹿は愚か者で申し訳ない。昔っから幼子が好きなゆえ、それも自覚がなくてな。……ここしばらく迷惑かけただろう?」
「やだ、最悪! 前々から思ってたけどやっぱロリコンなわけ!? 余計にエリーちゃんに近づかないでっ」
「誰がロリコンだ!! フレズベルグも昔っからその誤解なんとかしろよ!」
「……事実だろう」
「…………えっと、なんですか? ……ろり……んん??」
「姫君は聞かなくていいの! むしろ覚えなくていいから!!」
なんとか話しについていこうとしたエリー。しかし、そこは炎蛇に強く止められてしまう。
更にニーズヘッグは話を急いでそらしだす。
「ほら! 持ってきたぞ姫君っ。これでクロトがなんとかなる!」
ずいっ、と。ニーズヘッグはミントに似た花を付けた植物を出す。
それがこの魔界に来てから探していたマカツ草なのだろうが、エリーにはそれが本物かどうかもわからない。
代わりにネアがそれを取り上げ、確認。
「……うん。確かにマカツ草だわ。ありがたいことに、お姉さんポーションの調合も簡易だけどできるからやってあげる。感謝なさい野郎ども」
「一々、一言二言多いぞ電気女……」
「頼むからさっさと作ってくれ。さすがに愚か者が目を覚まさないのは支障がでる……」
頼まれればネアは断りはしない。
ネアは前もって宿の主人から借りていた道具をすぐに取り出し、迷うことなく調合を開始した。
マカツ草をすりつぶし、少しずつ水を加えて混ぜ合わせていく。
そう黙々と作業している間。待つのみのニーズヘッグたちは床に腰を下ろし隣で語り合う。
「いや~、里帰りも悪くなかったなぁ。まさかこんな状況で魔界の空気吸えるとは思ってもいなかったぜ」
「こっちとしては、面倒な者に目を付けられなかっただけマシか。……お前はどうだった?」
「結構てんてこまいまい。ウサギには色々押し付けられるわ、めんどい奴には遭遇するわ……」
「……そうか。お前の事だから、故郷の火山にでも立ち寄るかと思っていたがな」
「あ~、爺に会う……か。そうだなぁ。会っても良かったかもな。……でもさ。たぶん俺の人間界での悪評とか伝わってるだろうし、会うのはちょっとな~」
「サラマンダーなら、知っていても今のお前を深く咎めはしないと思うぞ? なんだかんだで、お前には甘かったからな」
「へへっ。この姿で爺ちゃん言ったらハグしてくれっかねぇ?」
「……想像しずらいが、しそうな予感も」
「逆に俺が爺抱き上げれるって。身長とか、超えてるしな」
「そうだな。……もしも……もしも自由になれたなら、一緒に会いに行くのも良いかもな。私も幼い頃は世話になったからな」
「じゃあ、自由になったら行こうぜ」
無意識に。二体は隣にある手を握っていた。
今だけかもしれない。こうしてニーズヘッグとフレズベルグが外で直に触れ合う事など。
もうじき、二体は本来あるべき場所に戻らねばならないのだから。
それが少し、眺めていたエリーには寂しくもあった。
気持ちが表情にでも出ていたのか、ニーズヘッグが苦笑する。
「そうしょげんなよ姫君。……まあ、姫君を生で、それも自分の姿で一緒にいられるなんて、もうないかと思うと俺も寂しくなっちまうがな」
「……私、そんなに顔に出てましたか?」
「めっちゃ出てた」
「悪魔とはいえ、人の子にそのように思われるとはな……。魔武器になるまでは想像もしていなかった。それもまた、姫の良いところか。そこは感謝している」
「そんな……。私はなにもすごい事なんて……してませんよ?」
「俺も姫君には感謝してんだぞ? こうして、大事な【友人A】を失わずにいる。俺の最初の友人は、俺の大事な宝だからな」
「……お前もよくそういう事を恥もなく言えるものだ。まあ、そこがお前の良いところだな。我が【友人A】」
これが最後。これが最後でいいのだろうか?
エリーは、それを否定したくなる。
「きっと……、きっと、またこうやってお話できるようになりますよっ。……きっと……絶対にっ」
「姫君の励まし、すんげー期待したくなるよな。……大丈夫だって姫君。俺らもわかっているしな」
「ああ。例え目に見えずとも、声が聞こえずとも、近くにニーズヘッグがいるのはわかる。……なんの問題もない」
「……でも」
迷いがまだあるが、ネアの声が割り込む。
「話のとこ悪いけど、一応できたわよ? ……言いたい事あるなら、今のうちに言っときなさい。私は寛大だから」
恩でも売るかのように押し付けてくるネア。
だが、その時間は助かるところもある。
ニーズヘッグとフレズベルグは、互いに顔を見合い最後の言葉を交わす。
「――じゃあな、フレズベルグ。見えねぇけど傍にいるからよ」
「――お前こそ、私がいる事を忘れるなよ? 我が【友人A】」
両者は悔いを残さぬ様に言葉を交わし終わると、その目を伏せる。
炎と風。それを身に纏うと、次に現れたのは久方ぶりにも思えるクロトとイロハの姿だった。
二人とも深い眠りに落ちたまま。その目を開く気配がない。
「……クロトさん」
「今はまだ魔素に耐えられなくて寝ているだけよ。……それでねエリーちゃん。ちょーっと部屋の外に出てもらっていいかしら?」
「……?」
「寝ている野郎どもには荒療法しないといけないから、あんまり見せるのもあれだし。すぐ終わるからお願い」
「わかりました……」
そこまで言うならと、エリーは一時的に部屋から出る事となった。
それを見送った後、ネアは出来上がったポーションを手に眠る魔銃使いたちへ近づく。
普段から可愛げのない魔銃使いだが、寝ている時だけは無垢であるというもの。
すやすやと眠る二人の前で、ネアは何処悪知恵が働いたような不敵な笑みを浮かべた。
「さ~ってと。……おとなしく寝ているところ悪いけど、覚悟しなさいよ~」
薬品の小瓶には、元々のマカツ草の色はなく、ドス黒い色が混ざり合っていた。
二人の口を開け……ネアはその薬を一気に余すことなく全て放り込んだ。
部屋の前で待つエリーは、そわそわと扉を眺める。
時折耳を扉に当て、中の様子を確認しようとするも特にといった事はなく……。
「……大丈夫かな?」
何度目か、エリーは耳を扉に近づける……と……
「「ギャアァアアアァアアアアアアアアアッ!!!」」
エリーは、咄嗟の叫び声に、扉から耳を離し飛び上がってしまうほどの衝撃を受けた。
ウサギの耳など驚きのあまりにピンと立ち、声が聞こえなくなると共にぺたんと垂れてゆく。
「……? ……?? な、なに?」
困惑に身を硬直させていると、次に扉が開く。
「あ! エリーちゃんお待たせ~。もう入っていいわよ」
先ほどの叫び声とは打って変わって、ネアはなにやらすっきりした様子の表情。
いったいなにがあったのか。エリーは不安ながらも部屋の中を覗き込む。
先ほどまで眠っていたはずのクロトとイロハ。二人は床に這いつくばり、口を押えて悶えていた。
「……っ、が、は!? な……っ、なんなんだよ今のは!!?」
「びっくりだよ!? いきなり酷い味が口の中いっぱいで訳が分からないよ!!」
「あやうくあの世が見えるほどのえぐみか? 酸味か!? 若干甘味もあって意味わからんぞ!? この世のものとは思えないもん喰らわせた奴誰だ!!?」
「私だけど文句あるのかしら外道ども? ……やっぱり簡易のだと一番の問題と言われている味はどうしようもないわよね。まあ、いっか。こいつら起こすんならその程度」
「お前の仕業か!?」
「はいはい。水持ってきてあげるからおとなしくしてなさい野郎ども。お姉さんの優しさに感謝なさい」
目を覚まして早々、クロトたちはネアに酷い仕打ちを味合わされた。という印象が強くあり、何処に感謝すればよいのかわからないまま事が進んでしまう。
ネアはさっさと部屋から出ていく。残ったエリーは今も薬にやられて気落ちしている二人にへと向き直る。
「……あの、大丈夫ですか? クロトさん、イロハさん」
「大丈夫に見えるのかよ、これでっ?」
クロトはまだなんとか堪えているが、イロハなど寝込んでしまうほど。
「……ですよね」
「つーか、全然記憶がないんだが……? 確か石碑に引き込まれて……それから、森の中を走って……」
クロトは徐々に残る記憶をあさる。
確か、酷い眠気に襲われてしまい、耐えきれずに意識が遠のき……。最後には傍らにいた者に何かを託した気がした。
朧気だがそれなりには思い出せてきた。
あまり追い続けると頭痛すら感じられたため、いったん思い出す事をやめる。
不機嫌ながらエリーに向き直ると、クロトは直後「ん?」と首を傾けた。
それは、エリーを見て違和感を得たからだ。
違和感の正体は、少女から垂れているウサギの様な耳と尻尾。
「……なんだこれ?」
気になってしまったのか、クロトはなんの躊躇もなくエリーのウサギ耳に触れた。
「――ヒャッ!? ク、クロト……さんっ」
「作りものじゃねぇな……。本物か?」
むにむに……。ふにふに……。
本物か偽物か。その質感を確かめる。
クロトはただそれを確かめようとしているだけなのだが、実際に触られているエリーは問答無用な手つきに身を震わせてしまう。
今その部位はとても敏感になってしまっており、他者に触れられるというのは全身を駆け抜けるものがあり、顔を赤らめる。
エリーは首を横に弱々しく振り、それ以上はと訴えるが、残念な事に気づいてくれない魔銃使い。
更には追い打ちとして尻尾にまでも触れてきた。
「はうぅっ!!?」
「これも本物か……? お前なんでこんなもんつけてんだよ? どういう原理だ?」
疑問が晴れるまで続くかと思えた時だ。
『……おい。クロト』
クロトを呼び止める声が響く。
しかし、クロトは気づかなかったのか完全なスルー。
『おいっ。おいって!』
ようやく気付いたのか。クロトはピクリと反応し、手を止めた。
この頭に響いてくる声はニーズヘッグだ。
「……ん? なんだニーズヘッグ?」
『何じゃねーよ! 姫君がやばい事になってるって!』
狼狽する声に、クロトはその状況というモノを目にする。
さんざん耳と尻尾を弄られたエリーは床に転げている。妙に発情したような赤らんだ顔と、時折身を痙攣させており……。
「……何やってんだお前?」
『お前のせいだから!! 俺だって姫君のそこまで触ってねーのに、羨ましいわ爆ぜろ!! いいから手を放せって!!』
同時だった。
グリアの実の効果が切れたのか、手にしていたウサギ要素がポンッ! と消えて元のエリーに戻る。
「うぅ……、クロトさん、酷いですぅ……」
「全然わからんのだが? なんでお前そういう事になってたんだよ?」
「……っ、そ、それは。ニーズヘッグさんが助けてくださって、クロトさん、魔界で眠ってしまったので」
エリーはぽつぽつと説明しようとするも、言葉がまだおぼつかない。
代わりにニーズヘッグから直接説明が入った。
『え~、我が主ぃ。お前らいきなり魔界に飛ばされちまったわけ。そんで魔素の影響で寝ちまった代わりに俺が表出てたんだよ。姫君は呪いのせいか魔素の影響を受けなかったんでな。さすがに人間を魔界で連れ回すのはよくねーし、カモフラージュみたいなもんよ。激レアのウサ耳で触りたい気持ちわかるっすけど、超敏感な部位だから……あれいろんな意味で拷問な? 今後あったら気を付けろ』
「……つまり、数日間お前に体乗っ取られてたってわけか。……無性にイラつく」
『俺すんげー頑張ってたんだが、酷い扱いだな。感謝の一つを覚えて我が主、お願いっ』
今後の人生に不安を感じ、ニーズヘッグは親の気持ちで泣き言を口にしてしまいたくなる。
とにもかくにも。魔銃使い二人の永眠危機は免れた。
意識を取り戻したクロトたち。次に彼らが目指すのは、魔界からの脱出だ。
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『やくまが 次回予告』
ニーズヘッグ
「おはよう我が主! まあ、なんだぁ。お前が寝ちまってる間は俺が姫君と嬉し恥ずかしのランデブー期間で、ちょっと名残惜しくもあるがさすがに主人公をいつまでも取り残しておくっているのはマジで可哀そうかなって、ここまで頑張った俺に礼の一つくらいあってもいいと思うんだが、そこんとこどうよ?」
クロト
「お前に体を乗っ取られてたって事実に屈辱しかないな」
ニーズヘッグ
「もう、照れ隠しなのか素なのか、ウチの主は本当にクソガキ感満々で絶好調だな」
クロト
「誰がクソガキだ? 17歳は大人の部類だろうが、ガキ扱いするな」
ニーズヘッグ
「いやいや、俺からしたら赤子の様なガキなわけでありましてね。十代? そんなん数百代の俺にとってはマジで可愛いもんなんよ。……口は可愛くねーけど」
クロト
「俺にそんな要素求めるな。そういうのはない!」
ニーズヘッグ
「いや、寝ている時は結構可愛いと思うぞお前。きっとな~、幼少期は可愛かっただろうな~。なんならクロトを幼児化させる魔草で可愛げある姿を見るのも悪くないっ。なんだったら愛でてやってもいいぞ?」
クロト
「ただの拷問で地獄じゃないか」
ニーズヘッグ
「そんな事より我が主。次回からは魔界編後編だぜ? まあ、あの電気女いるから人間界に戻るなんざ造作もないだろうが、なんかひと騒動ありそうな予感だな。魔界上級者の俺から言えるのは、油断禁物だぞってことだ」
クロト
「……それ、魔界に限った話じゃねーだろ」
ニーズヘッグ
「次回、【厄災の姫と魔銃使い】第六部 一章「闇の声」。もしかしてだが、今回活躍した分、俺の出番が減る……なんて事はねーよな?」
クロト
「さーてな。それはそれでありがたい」
ニーズヘッグ
「嫌わないで我が主ぃ。俺メンタルガラスだからマジで傷つくのー」
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